衆議院での令和6年度予算審議は立憲などの野党が今後の質問機会増などを確保することと引き換えに2024/03/02中の採決となりました。
なぜかこの辺の動きについて日本維新の会の参議院議員が人ごとのように、立憲だけで決めていて維新は何も知らないし何も影響を与えていないかのような書きぶりで触れていたのですが、実際のところ、テレ東の官邸キャップが多分安住国対の発言として「四党足並み揃えてゴールしたい」と書いているように、国会内で一応野党側に位置を置き、一定程度の勢力を持つ維新(と国民民主党)の意向が何も影響を与えないことは有りえず、その二党が日程云々はやらないと言ったらできない、というのが現在の安住国対下の国会の現状なのではないかとおもいます。
正直この辺の日本維新と国民民主の言動は、立憲民主に批判の対象になり得る、与党との日程闘争を使った審議充実等の駆け引きという汚れ仕事をアウトソーシングして、自分の身は綺麗なまま文句だけ言ってるみたいに見えるのですが。(それが野党第一党の義務であり負うべき責務だといわれたらそうなのですが)
一方、与党側が予算が政府の思い通りに通らないことについて「年度内に成立しないと能登半島地震の復興が」みたいなことを言い募っているのですが、何、原因を人ごとのように語ってんだと思います。
まず、そもそも今年の予算審議は例年より遅れてスタートしているようです。
これが日程が苦しくなった理由となったわけですが、なぜ審議スタートが遅れたかというと、やはり政治とカネの問題なわけです。
政権中枢にいた議員が相次いで任意聴取を受けるという異常事態での国会召集となるため、予定通りに予算審議に入れない可能性も想定。政府・与党内には1月22日の召集を求める意見もある一方、捜査の行方を見極める上で、できる限り遅い日程がよいとの判断から、26日を軸に調整することになったという。
通常国会、1月26日召集を軸に調整 裏金問題と政治改革が焦点に [岸田政権]:朝日新聞デジタル
で、審議入りしてからも政治とカネの問題で審議がまともに出来ない有り様となっていました。
官邸内からは「政治とカネばかりで、他の大事な議論が進まない」との恨み節も聞こえるが、首相はその「大事な議論」でも、正面から答える姿勢が見られなかった。
「政治とカネ」のせいなのに 少子化対策も「国民負担」も、議論が深まらないまま予算案採決するなんて:東京新聞 TOKYO Web
「政治とカネの問題は長引かせたくない。早急に全容解明し、予算審議に挑むのが与野党一致した意見だ」。立民の山井和則氏は今国会の冒頭から、首相にこう迫っていた。だが首相は裏金事件の実態解明を遅々として進めず、政治改革の具体案も示さないまま。「国民の信頼回復を果たした上で重要政策を実行していく」とする首相の言葉は空手形に終わりかねない。
立憲民主党 泉 健太 代表
与野党対立激化で異例の深夜国会 きょうも予算案審議 | TBS NEWS DIG (1ページ)
「裏金問題で審議日程が遅れて裏金問題で審議時間が確保できず、そのしわ寄せを全部我々は逆に自民党から押し付けられた、そんな格好ですね」
これらは全て自民党の身から出た錆であって、野党は、2月以内までの流れは基本的に、サッカーで言うならば相手のミスでこぼれてきたボールを蹴っていただけに過ぎないようにも見えるほどの自滅を与党がしていたわけです。
一方、これでもし、ほんとうに震災対応が遅れるとしたら、責任はどこにあるかといえば、私は、本予算の予備費で震災対応の予算を出すことにこだわった与党の判断ミスであると思います。
先ほども触れたように本予算審議は政治とカネの問題で酷いことになるのは目に見えていたわけです。
そこで、本予算審議を回避して、揉める可能性を低くする方法が明らかにあったわけです。それは野党から何度も提案されていました。
立憲民主党の安住国会対策委員長は記者団に対し「震災の状況を確認したいので、通常国会の召集前に衆参両院の予算委員会の集中審議の開催を提案し、持ち帰ってもらった。政治とカネの問題については、通常国会の冒頭で集中審議を求めたい。復興は長期に支えていかなければならず、新年度の補正予算案をきちんと組み、財源を手当するスキームを作るべきだと申し上げた。予備費で十分だと思ったら大間違いだ」と述べました。
立民 “衆参予算委で集中審議を” 能登半島地震の対応で | NHK | 令和6年能登半島地震
国民民主党の玉木雄一郎代表は会談で23年度第2次補正予算の編成を視野に入れた財政対応をすべきだと申し入れた。記者団に「来年度の一般予備費を増やして対応するのはずいぶん悠長な気がする」と話した。
岸田文雄首相、与野党に協力要請 能登半島地震の対応で6党首会談 – 日本経済新聞
打越議員は冒頭、岸田政権が昨年末に閣議決定した来年度予算案に関し、能登半島地震を受け、1月16日に国会審議をせずに使途を限定しない予備費を5000億円を積み増した決定を問題視。本来は迅速に本年度の第2次補正予算案を編成すべきとした上で、それが困難であればせめて予備費を積み増すという「奇策」ではなく、財政民主主義の観点から「復旧復興のための具体的な事業をきめ細やかに盛りこんだ」来年度の補正予算案を編成すべきだと強調しました。
【参院予算委】初動の遅れを指摘 杉尾、打越両議員 – 立憲民主党
この野党が早期から行っていた補正予算の提案、明示されていない効果として補正予算という形にして震災関連に絞ることで、その他の問題を持ち込みづらくして揉めてる中でもその分野だけは予算成立をさせやすくするという効果もあったのではないかと思います。(ここで邪魔されたらそれこそ震災対応を邪魔する云々と印象操作できるわけで)
それを否定し予備費が「最もスピード感がある」と判断したのは与党なわけで、その与党の判断の結果、他の話に巻き込まれて予算確定が遅れたり、執行が遅れたりして、なんらかの震災対応に支障をきたすことになったら、そのやり方を判断した与党の責任は免れないでしょう。
岸田首相は衆院予算委で、能登半島地震の復旧・復興に向けた財政措置を巡り、補正予算案編成に否定的な考えを示した。「予備費増額が最もスピード感があり適切だ」と述べた。
首相、能登地震対応の補正予算編成に否定的(共同通信) – Yahoo!ニュース
ちなみに、地元首長の馳浩知事も補正予算を要求していました。規模については大げさな気もしなくはないですが。
石川県の馳浩知事は10日の年頭記者会見で、能登半島地震からの復興のため政府に「数兆円規模の補正予算の編成を1カ月以内にお願いしたい」と述べた。能登はアクセスが脆弱な半島で、高齢化率が5割を超える地域もある。「こうした要件も踏まえた補正予算をお願いしたい」と訴えた。
能登半島地震で馳知事、政府に「数兆円規模の補正予算を」 – 日本経済新聞
また、2月の頭に共同通信が配信した記事には、どうも、裏金問題で審議時間が長引いたら野党に批判が向くのを狙って被災地関連予算を予備費に計上したと、どこかの省庁の幹部が話していたことが書いてありました。露骨ですね。
一方、野党側は衆議院での予算案審議に対して「目安の80時間」というキーワードを何度も出しているように見えます。
昨日の夕刻、衆議院で突如、今朝9議に予算委員会が委員長職権で立てられ、13時の本会議も立てられました。もちろん予算を無理やり通すための職権セットですが、自民党が自らの「政治と金」の問題で、国民のみならず立法府や多方面から疑義を受け、総理が火の玉になって改革する反省すると言って、政倫審が昨日・今日とやっているんです。この政倫審は、自民党の衆議院議員が申し開きをしたい、説明したいと言って、自ら手を挙げて開催したわけです。ここで反省し、事実を話し、これからどうするんだということを話す会の途中です。昨日一日、総理と武田さんがやっただけで、謝っているかと思ったら、頭を下げたその直後に急所を蹴り上げてくるんだから、全く反省していないということです。まだ一番メインの、安倍派の皆さんが誰ひとり説明していない段階で、予算の強行採決を職権で立ててくるわけです。衆議院ではおおむね予算は80時間くらい審議するのが従来からの国会の慣習です。それがまだ67時間しかしていないのに、いきなり強行採決です。しかも安倍派の誰ひとり説明していない。しかも今日午後には今の派閥のトップである塩谷さんが説明する前に、先に本会議をやっているんだから、まったくもって筋が通らないです。野党をばかにしているのではなく、国民をばかにしているんじゃないですか。国民に対する説明責任をなんら果たさないで強行採決をやってくる。少なくとも2日間の政倫審をやってから、まだ足りないかもしれないがぜひ予算の成立に協力してくださいと頭を下げて、それでも野党がだめだと言ったらじゃあどうしようかという議論はある。けれども、自分からやりたいと言った政倫審が終わらないうちに、舌の根も乾かぬうちに殴りつけてくるというのは、まったくもって反省していないということです。岸田さんはこれをもってリーダーシップと言っているのかもしれませんが、こんなのはリーダーシップでもなんでもないです。乱暴極まりない。
国民民主党 幹事長定例会見(2024年3月1日) | 新・国民民主党 – つくろう、新しい答え。
この目安の時間さえ確保していれば(つまりあと数日分ほど審議を行っていれば)、近年の与党優位で予算が通過してきた実態から見て、2月末になんとか通過はできていたように見え、やはり政治とカネの問題、つまり自民党の都合で審議開始が遅れたのが悪いのではないか、と思ってしまいます。
(ちなみに産経が昨年の予算審議にて目安時間を70時間と書いた記事を出しているのですが、多分与党内ではそう言われているのでしょうね。過去に下野した新聞ですから与党内の意見に詳しいでしょうし)
この結果、予算委の審議時間は15日までで63時間と順調に積み上がり、採決の目安となる70時間も視野に入ってきた。自民の国会対策関係者は、27日の集中審議を挟んで28日の衆院本会議で採決し、憲法の規定で年度内成立を確実にするスケジュールを描く。
衆院予算委、不祥事少なく野党難渋 政府・与党ペース – 産経ニュース
ちなみに、2019年までの予算審議時間について書いているブログがあって、なかなか面白かったのでリンク貼っておきます。
このようにどう考えても予算審議が遅れたのは与党のせいであって、これを野党の問題にしようとする与党の方々はちょっと呆れるのですが、なんか政府の方々は笑顔で写真取ってるようですし、ほんとうに唖然とするしかないですね、
最後に山井氏の予算委員長解任決議案の趣旨弁明の一部を産経の記事を引用する形で貼っておきます。与党支持者の一部にはこれが漫談に聞こえるようですが。
「ここに裏金議員のリストがある。自民党議員は『裏金』といっていないが、裏金でいいんですよね。なぜ裏金と認めないんですか。裏金問題を幕引きしようとするから、小野寺委員長は解任に値するんじゃないですか。読み上げますよ」
山井氏は趣旨弁明を開始して約25分後、こう述べるとクリップ止めした資料を取り出した。資料には不記載が指摘された51人があいうえお順にそれぞれ「氏名」「選出選挙区や比例代表」「不記載額や時期」「扱い」が書かれているという。51人を巡っては、野党は全員の政治倫理審査会(政倫審)出席を求めたが応じられなかった経緯がある。山井氏は51人全員の事案を読み上げることで議事録に残す狙いがあったとみられる。
山井氏は、ただ読み上げるだけではない。
「『還流分を使用することなく保管していた』…?自民党さん、税務申告しないといけないのでは」など独自の講評をまじえ、「急ぎます」といいつつも、ほぼ全ての議員で話が〝脱線〟している。議場からはヤジも飛ぶが、山井氏はひるむそぶりはなく、逆にこう皮肉を繰り返す。「社会保障などライフワークの質問をしたかったが、『裏金の真相究明すべきだ』と国民の声が強いから、ぐっとこらえている。本来は自浄作用で自民党議員が自主的に果たすものではないのか」
立民・山井氏が衆院でフィリバスター、2時間54分の新記録 不記載の51人読み上げ – 産経ニュース
「自民党の皆さん、納税するのか、脱税するのか」
おまけ
スポーツ新聞のコタツ記事を見ていたら、維新の音喜多参議院議員が、首相の政治倫理審査会出席について「総理であれば予算委員会でも質疑できる」みたいなことを書いて「予算委員会で質疑したら予算委員会が滞るでしょ」と突っ込まれて?いたようです(記事執筆者は音喜多側が突っ込まれてると気づかずに「自民党の対応のまずさへの非難」の中に丸めてしまっていますが。ほんとこういうたぐいのコタツ記事は何もわかってない感がすごいですね。これでどのくらいの小銭稼ぎになってんでしょうね。)。維新が予算委員会でスキャンダル質疑をするなと散々言ってきた効果が出ているようですね。
音喜多議員は、「総理の心意気は良いが、総理であれば予算委員会でも質疑できる」とした上で、「学級崩壊状態の党内へプレッシャーをかけることが目的か」との見解も示した。
維新・音喜多駿参院議員「意味はほぼない」岸田首相の政倫審出席表明に反応「学級崩壊状態」(日刊スポーツ) – Yahoo!ニュース
フォロワーからは「予算委員会で質疑したら予算委員会が滞るでしょ」「自民党やその支持者と見られる型から、『野党は政倫審で国会の運営を止めるな』のような見当違いの批判があります。政倫審に意味がないと行ってしまったら、予算委員会を含めあらゆる委員会には意味がないと言っているに等しいです」「自民内部で批判を強める人もいないのはあまりに舐めている」などと、自民党の対応のまずさに非難が続出した。
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