安倍晋三首相は29日の記者会見で、経済的理由で就学できない若者を支援するための返済不要の給付型奨学金制度の創設を明言した。「本当に厳しい状況にある子どもたちには返還がいらなくなる給付型の支援によって、しっかり手を差し伸べていく」と述べた。財源や対象基準など具体的な言及はなかった。
夏の参院選から選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられることから、若者への支援をアピールした形。無利子奨学金を拡充することも明らかにした。
さて、これまで給付型奨学金について、安倍政権の姿勢は以下のとおりでした
安倍晋三首相は二十一日の参院決算委員会で、大学生らを対象とした給付型の奨学金について「財源確保や対象者の選定など、導入には検討が必要だ。若い人への支援は大学だけではない」と、早期の導入には慎重な考えを示した。実現に前向きな考えを表明していた馳浩文部科学相も、当面は貸与型奨学金を受けた学生の卒業後の年収に応じて返還額が変わる「所得連動型」の導入を優先させる意向を強調した。
麻生太郎財務相は給付型について「単なる財政支出になる。将来世代から借金して今の奨学金に充てることと同じ。財政当局としては適当ではないと思う」と否定的な考えを示した。
3月14日に行われた参議院予算委員会で安倍晋三首相は、返済義務のない給付型奨学金の導入に対して、財源の確保や対象者の選定が難しいとして「さらに検討が必要」と慎重な姿勢を見せた。一方で、卒業後の所得に応じて月々の返済額が決まる「所得連動返還型奨学金制度」を2017年4月入学者から導入する方針を表明。これによって「奨学金のせいで卒業即借金地獄」というケースが減ればいいのだが、果たして。
こんな慎重だったのが、先日、国会答弁で「全面的に否定的なことを言ったことはない」と言い出し、更に今回導入を明言したということです。
大学生を対象にした返済不要の給付型奨学金創設については、「全面的に否定的なことを言ったことはない」と述べ、検討の余地はあるとの立場を示した。馳浩文部科学相も恒久財源や対象者の選定方法など四つの課題を挙げ、「与野党で議論すべきだ」と語った。
なぜ会見で明言することになったのか?と言われると、与野党の突き上げを安倍政権が喰らっていたから、ということと、民進党の選挙での主張を潰すという二つのことがあると思います。
まず与野党の突き上げについて、給付型奨学金については民進党(の前身、民主党時代)はもちろん、社民党、共産党、閣外与党とも言える日本のこころを大切にする党、そして政権与党である公明党から突き上げを喰らっていました。
(2016年度政府予算案・福島みずほ反対討論)
文科省予算が、前年度比0.25%減の5兆3216億円となったことも問題。今こそ「学生ローン」と化している奨学金制度を抜本的に改め、有利子から無利子型への転換、給付型奨学金の創設を急ぐべき。#seiji #kokkai #奨学金— 社民党OfficialTweet (@SDPJapan) 2016年3月29日
今日、ついに安倍総理が、給付型奨学金の創設を言いました。大内裕和さんや岩重弁護士をはじめみんなの頑張りの成果です。300万以上署名を集めたのですものね。
わたしも予算委員会などで、質問してきた甲斐がありました。— 福島みずほ (@mizuhofukushima) 2016年3月29日
高すぎる大学学費負担軽減のため給付型奨学金の創設を求めました。
給付型奨学金の創設を含め、奨学金制度を拡充し、希望する全ての人が高等教育を受けられるようにします。
次世代の党は給付型奨学金制度の創設を掲げ、先の通常国会で私が質問し、下村文部科学大臣より「まず無利子型の奨学金を増やし、給付型奨学金についても着手したい」との答弁を引き出すことが出来ました。
奨学金制度について浮島さんは、大学生向けの給付型の創設を主張。
例えば教育分野では、公明党が一貫して訴えている幼児教育の無償化や給付型奨学金の創設などが検討に値するのではないか。
このように自民党以外の政党の殆どから突き上げを食らっていたわけで、公明党との関係のためにも給付型奨学金の導入の言及は必要だったといえます。
更に、民進党は民主党時代に共生社会創造本部にて給付型奨学金(渡しきり奨学金とも表現)のを含んだ提言をまとめ、これを民進党へも引き継ぎ、公約にも反映させるということになっています。
民主党の共生社会創造本部(本部長・岡田克也代表)は18日、経済・社会政策に関する最終報告をまとめた。「1億総活躍社会」を掲げる安倍政権に対抗し、返済不要の「渡しきり奨学金」を創設するなど、格差是正や弱者救済に重点を置いた。最終報告は、維新の党と結成する「民進党」に引き継ぎ、参院選公約の柱に位置付ける。
教育格差の壁を打ち破る――「子どもの貧困」と戦う
(1)児童扶養手当の大幅拡充
(2)渡しきり(給付型)奨学金の創設
ここまで突き上げを食らっていて、民進党のみが公約に掲げ自民党は知らんぷりという態度を取ってしまうと、どう考えてもその土俵では惨敗なわけです。
その惨敗を回避するために、今回会見で明言したのだろうと推定できます。
また、今回の言及で注目すべきは『本当に厳しい状況にある子どもたちには』という前置きなんではないでしょうか?
この言及の直前には『児童養護施設や里親の下で育った子供たちが進学した場合』の条件付き免除制度を始めたことに触れています。これを考慮すると、この給付型奨学金制度は、非常に厳しい条件が付くのではないか?という想定が出来るのではないでしょうか?
財源だとか条件だとか、そういう詳細はこれから検討されるのでしょうが、個人的には期待せずに待っていたほうがいいのだろうな、と思います。
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