東京都足立区の区立中学校で今月行われた性教育の授業が、学習指導要領に照らして不適切だとして、東京都教育委員会が区教委に対して近く指導をすることがわかった。16日の都議会文教委員会で自民党の都議が授業の内容を問題視し、都教委が調査していた。区教委は「不適切だとは思っていない」としている。
このニュースを見て、私は「またか」と呆れました。
この、古賀俊昭都議の事について書いた際に触れていますが、十年以上前にジェンダーフリーバッシングの一環として、七生養護学校での性教育が過激だとされ、都議会議員や市議、産経新聞記者、都の教育委員会の人間がガサ入れのように学校に乗り込んた案件がありました。
今回、そこから全く関係者の認識が変わっていないということが、明らかになったわけです。
朝日新聞の記事の有料部分にある、授業の内容などの経緯についての部分を引用します。
授業は3月5日、総合学習の時間で3年生を対象に教員らが実施。高校生になると中絶件数が急増する現実や、コンドームは性感染症を防ぐには有効だが避妊率が9割を切ることなどを伝えた。その上で「思いがけない妊娠をしないためには、産み育てられる状況になるまで性交を避けること」と話した。また、正しい避妊の知識についても伝えた。
この授業について、16日にあった都議会文教委員会で、自民党の古賀俊昭都議が「問題ではないのか」と指摘。都教委が区教委を通して授業内容を調査し、不適切な授業を行わないように区教委を指導し、来月の中学校長会でも注意喚起することを決めた。
都教委が問題としたのは、「性交」「避妊」「人工妊娠中絶」という言葉を使い、説明した点。中学の保健体育の学習指導要領には記されておらず、「中学生の発達段階に応じておらず、不適切」(都教委)としている。
今回も主役は古賀俊昭都議会議員と、都の教育委員会です。
古賀俊昭都議会議員がとある区立中学校で行われた性教育について文教委員会で取り上げ、都の教育委員会がそれに『「性交」「避妊」「人工妊娠中絶」という言葉を使』うのは不適切である、と応えている、と。
古賀俊昭都議会議員は朝日新聞の取材に以下のように答えているようです。
今回、都議会で質問したことについて古賀都議は「中学生の段階で性交や避妊を取り上げるべきではない。行政を監視するのが我々の役割で、不当介入にはあたらない」と話した。
『中学生の段階で性交や避妊を取り上げるべきではない。』
不適切な行為についての情報は、それを予防する意味であったとしても遮断しないといけない、というのが要するに彼らの言い分のようです。
学校で取り上げなかったところで他のルートで情報を得たりしてしまうであろうことは明白だと思うのですが、そういう事にも向き合いたくないんでしょうね。
インターネットも携帯もブロッキングすれば大丈夫とでも思っているのでしょう。
そのように必要な知識を全く与えないまま自由に行える年齢になると、今度は『自由にやっていいけど、自己責任な!』という世界に、必要な知識を身につける前に放り投げだされる可能性が非常に高いのではないですか?
荻上チキさんの過去のブログによると、七生養護学校に乗り込んた人の発言に「具体的でないと分からないというなら、セックスもやらせるのか。体験を積ませて学ばせるやり方は共産主義の考え方だ」という意味不明な共産主義認定発言があったようですが、乗り込んた人達が要求する教育は、まさに『大人になったら、体験を通して学べばいい』と言っているような物ではないでしょうか?
それは、共産主義かどうかは知ったことではないですが、少なくとも子供のためにはならないのではないですか?
単に『俺はそんなこと教えていない』『そんなやつに育てた覚えはない』と子供に全責任を押し付けるための回避なのではないですか?
一方、教えた側の関係者は以下のように話しているといいます。
足立区教委の担当者は、「不適切だとは思っていない」と言う。「10代の望まぬ妊娠や出産を防ぎ、貧困の連鎖を断ち切るためにも、授業は地域の実態に即して行われ、生徒と保護者のニーズに合ったものだ」。性交や避妊は引き続き教えるという。
授業を実施した中学校の校長も「授業は自信を持ってやっている。自分やパートナーを大切にすることを伝える内容で、避妊方法に触れるからといって、性交をしてもいいとは教えていない」と話す。
私は、子供がよりよく生きる力を育むためには、この方々ような教育への姿勢のほうが素晴らしいと思います。
ちなみに、現在の総理大臣は、当時の性教育バッシングに際し、過激な性教育・ジェンダーフリー教育に関する実態調査プロジェクトチームの座長という形で表立ってバッシングに参加·協力していた方ですので、この分野の改善はしばらく見込めない可能性が高いです。
ところで、小池百合子知事就任以降、古賀俊昭氏の質問が都を動かしたのは明示的にもう一つあります。
東京大震災での朝鮮人虐殺に関する追悼文の送付を拒否した事例です。
なぜ、古賀俊昭氏のこういう質問に反応してしまうのか、それは小池百合子知事にそういう側面があると考える他ありません。
七生養護学校に対する介入も、石原慎太郎氏が、都議会での答弁にて共感を示したことが後押ししていたようですし、都が動くということは、都知事の考えがそのようなものであると考えていいはずです。
これを否定するためには、都知事がきちんと抑制する動きをしていることが示されないといけないでしょう。
また、都議会議員さんもこれを受けてどう動くのか、注視しておこうと思います。(ちなみに、足立区選出都議は都民ファーストが2人、公明党が2人、自民党1人、共産党1人という内訳です。)
参考にどうぞ
産婦人科医で積極的に性教育の講演も行っている河野美代子さんは、自身が性教育についてバッシングを受けたことを告白。裁判になったことを明かした。「私が『避妊をちゃんとしなきゃ』って教えていたことを『河野は若者たちにセックスをそそのかして家庭を崩壊させ、革命を狙っている』って裁判で言われたんです」と話し、SHELLYをはじめ出演者たちから驚きの声があがった。
さらに「セックスという言葉も使ってはダメ。今では中学生に避妊を教えることはタブーです。昔はよかったのですが、今教えると学習指導要領のはみ出しになります。教科書にも載っていません」と話し、日本の性教育への現場に疑問を投げかけた。
「日本の保健体育や理科の教科書は、性に関する内容がとても薄いんです。小学校の理科の教科書には『性交』という言葉がなく、『人の発生や成長』を学ぶ単元があっても、性交についてはまったく書かれていません」(同)
その理由は、文部科学省が「受精に至る過程については取り扱わない」という規定を設けているからだ。そのため、子どもたちは胎児の成長については学ぶことができても、どんな行為で妊娠するのかを知ることができない。
これは、小学校だけでなく中学校でも同様だ。セックスについて正面から向き合おうとせず、中学校の保健の学習指導要領は避妊を取り上げず、コンドームの装着法についても避け続けている。LGBTについても同様で、そのような子どもたちへの配慮はしても、教科書は異性愛主義によって書かれ、その下で性教育が行われているのが実情だ。
つまり、子どもたちが本当に知りたいこと、本当に必要としていることを学ぶことができないのが日本の性教育の現状といえる。
(中略)
2002年頃に一部の保守派やマスコミによって“性教育バッシング”が始まり、日本の性教育が一変してしまう。
「教育方法や教材・教具が槍玉に挙げられ、都立七生養護学校の性教育に対して激しい攻撃が始まりました。その後、10年近い訴訟の末に七生養護学校の先生方が勝訴し、『学習指導要領は基準を示すもので、教師たちの創意工夫による性教育は違法ではない』と認められました。しかし、当時の性教育バッシングがトラウマになっているのか、学校現場ではいまだに性教育に対して萎縮ムードが続いています」(同)
その結果として、今も日本の性教育は諸外国に比べて遅れているわけだ。
「諸外国のような性教育を受けていれば、女性の生理について勘違いする大人もいなくなるはずです。何より気の毒なのは、学ぶ権利を奪われた子どもたちですよね」(同)
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