都道府県議会での『住所要件』について

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埼玉県選挙管理委員会は13日、さいたま市内で会議を開き、4月9日に投開票された県議選で南1区(草加市、定数3)で初当選した中村美香議員(36)(日本維新の会公認)について当選の無効を決めた。立候補者の居住要件を満たしていないと判断した。県選管は、関係者に決定内容を説明したうえで発表する。

埼玉県議選挙で維新初の議席、中村美香議員の当選無効…県選管 : 読売新聞

埼玉県の選挙管理委員会が、中村美香氏についての疑義について、申し立てられていた主張を認め当選無効の判断を下したようです。

今回の判断は、各種報道に書いてありますが、これで当選無効が確定するわけではなく、まだ争うことが出来ますので、少なくとも30日は確定しません。

埼玉県選挙管理委員会によりますと、中村議員は今回の決定に不服がある場合、来月17日までに、決定の取り消しを求めて東京高等裁判所に提訴することができます。

東京高等裁判所が訴えを退けた場合は最高裁判所に上告でき、決定が確定するまでは、議員の身分を失わず、報酬を受け取ることができるということです。

不服を申し立てなければ、来月17日に当選の無効が確定する見通しで、その場合、草加市選挙管理委員会が、被選挙人の要件を満たしているか確認したうえで、次点だった立憲民主党の新人の小森克己氏の当選が決まります。

“住所要件に疑義”維新の県議 埼玉県選管が当選無効の決定 | NHK | 統一地方選

これについては例えばNHK党の松田美樹氏は2019年の9月に当選無効の決定を受け、最高裁まで持ち込んだ結果、2021年の5月まで争っていたりしているので(さすがにこれはコロナ禍の中で裁判が停滞したとかありそうですが)、相当時間、中村美香氏が県議で有り続けることが可能であると思います。

19年の新宿区議選 浅見氏当選を決定 松田氏「無効」高裁確定で:東京新聞 TOKYO Web
二〇一九年四月の新宿区議選で当選した松田美樹氏(当時・NHKから国民を守る党)の当選無効が東京高裁で確定したことを受け、区の更正決定選...

今回の案件の事実関係については、無効を最初に報じたであろう毎日新聞の報道にて触れられています。

東京都内在住だった中村氏は2022年12月末、三郷市に住民票を移した。23年1月20日に南1区の公認予定者として発表され、2月1日に草加市に転居したという。同月に草加市を地盤とする同党参院議員(比例代表)、青島健太氏の事務所で働き始め、青島氏と二人三脚で選挙戦を戦っていた。地方選の選挙権と被選挙権を持つには、公選法は同一自治体に3カ月以上居住していることを条件としている。

維新の埼玉県議、当選無効決定 「居住実態3カ月以上」認められず | 毎日新聞

都道府県議会の被選挙権は公職選挙法10条三号で『都道府県の議会の議員についてはその選挙権を有する者で年齢満二十五年以上のもの』と定義されており、選挙権を有することが必要となっています。そして選挙権が公職選挙法9条3項にて『日本国民たる年齢満十八年以上の者でその属する市町村を包括する都道府県の区域内の一の市町村の区域内に引き続き三箇月以上住所を有していたことがあり、かつ、その後も引き続き当該都道府県の区域内に住所を有するものは、前項に規定する住所に関する要件にかかわらず、当該都道府県の議会の議員及び長の選挙権を有する。』となっているので、同一市町村で三ヶ月以上住所を有することが被選挙権の要件にもなってくるのです。

で、この書き方からすると、都道府県内の区域内であれば、どの市町村に住所を有しているかについては、投票する選挙区には関係しますが、出馬できる選挙区には関わらないものと思われます。

なので三郷市から選挙公示日まで引っ越しをしなければ、要件を満たしたものになっていたと思われます。

ちなみに、住所を有するというのは、単に住所があるだけではなく、居住実態がないといけないとされています。

そして実際に住んでいるかどうかは、住居、職業、生計を一にする配偶者その他親族の存否、資産の所在等の客観的事実に加え、言動等により外部から客観的に認識することができる居住者の居住意思等を総合的に考慮したうえで判断される。

具体的には、

(1)平日および休日の生活

(2)生活基盤の整備状況としての電気、ガス、水道、インターネット、し尿のくみ取り等の利用契約と使用量

(3)住所地にある家電製品の有無や使用状況

(4)住民票の移動や運転免許証の住所の移動、郵便局への転居届等

(5)新聞の契約、ATMの履歴や地域住民との交流

などを証拠として判断されるのが通例である。

「N国党」新宿区議員の当選が取り消された理屈 地方議員に3カ月の居住実態が必要となる意味 | 国内政治 | 東洋経済オンライン

と、ここまで書いたところで、テレビ埼玉がより細かい事実関係について触れた報道を行いました。

県選管によりますと、中村氏は去年10月2日に都内から父が住む三郷市の家に移り住み、去年12月26日には三郷市の別の場所に住民票を移し、ことし2月1日草加市に転居したということです。

 中村氏は草加市に転居する前にあわせて3か月以上三郷市に住み続けていたと主張していました。

 しかし、県選管は、水道や電気、ガスの代金の支払い状況などを総合的に判断し、去年12月25日までは都内に住んでいたとして三郷市に3か月以上の居住実態が認められないとして当選無効を決定しました。

維新の中村県議の当選無効 居住実態なしと判断/埼玉県(テレ玉) – Yahoo!ニュース

このように、三ヶ月以上の要件は三郷市で満たすことにして、12月より前に三郷市に住んでいたという主張が退けられたということのようです。

ちなみに、決定書は埼玉県ホームページで読めるようになっています。

埼玉県議会議員一般選挙(南第1区 草加市)における当選の効力に関する異議申出に対する決定について

それを読むと、こんな記述がありました。

県議会議員の被選挙権の住所要件の認識について、「県内に住民登録があればと認識を誤っていた」、「言葉は良くないですが、運よく私は10月から三郷にいたということになりますので、私のちょっと認識不足もあったことは確かです」と証言している。

・県議会議員の被選挙権の住所要件と住民登録の必要性の認識について、住民登録をしなければならないという意識はあったんですかとの質問に対し「もちろんです」、住民登録のタイムリミットは具体的に何日頃と考えていたんでしょうかとの質問に対し「タイムリミットは12月26頃だったと思います。3月31日が告示日だったので、その3か月前となると年末、12月25日前後がタイムリミットだったと認識していました」と証言している。

・県議会議員の被選挙権の住所要件は埼玉県内の同一の市町村に引き続き3か 月以上居住していなければならないという要件だと分かったのはいつかとの質問について、「市内というのは、今回、正直問題が起きてから知りました。というのは、市をまたいだとしても、県内にという認識が正直、その引き続きの理由をちょっと勘違いしておりまして、なので、だから、今それを知っていれば草加市に引っ越さなきゃよかったとしか言いようがないんですけれども、ちょっと勘違いしていたのは事実です」、今回この異議の申出があってから初めて引き続きじゃないと駄目なんだというのが分かったということかとの質問に対し、 「そうですね、はい」と証言している。

埼玉県議会議員一般選挙(南第1区 草加市)における当選の効力に関する異議申出に対する決定について – 埼玉県

正直、10月から三郷市に住んでいたという主張は後出し感が否めないものだと思ったのですが、本人もどうもたまたま選挙準備のために三郷市の家を使っていたから主張できるかも、みたいな認識のように見えます。

また、当初報道を見たとき私はTwitterで『三ヶ月前に埼玉県内にいればセーフと見ていたのか』と書いていたのですが、中村美香氏の認識はそういう感じだったようです。

一方、この決定書では、他にも面白いことが書かれていて、それは中村美香氏の双子の妹にもふれられていることです。

(三郷市PR大使)辞退届提出の際、これから生まれて初めて姉妹で別々(草加市とさいたま市)に住むことになるとの発言があった。

令和5年2月1日に初めて妹と別生活になったと発言したことについて、「完全に2人別々に住居を持ったというのは初めて」、「妹は10月、11月は完全に東京都内(A室)が拠点になりますね」、「12月に関しては妹は半分くらいですかね、三郷市(D室)に私と一緒にいる時間が結構あったので」と証言し ている。

埼玉県議会議員一般選挙(南第1区 草加市)における当選の効力に関する異議申出に対する決定について – 埼玉県

当選人の妹の三郷市(D室)での居住について、「妹は11月から週2回程度 三郷市(D室)に来る位だった。三郷市(B室)に引っ越すまでは東京都内(A 室)に住んでいた。転出・転入届の提出関係は分からない」旨を証言している。

埼玉県議会議員一般選挙(南第1区 草加市)における当選の効力に関する異議申出に対する決定について – 埼玉県

当選人の妹から三郷市役所に対して、自身を世帯主、当選人を世帯員とし、届出日が令和4年12月26日、異動日が令和4年12月26日として、東京都内(A室)から三郷市(B室)に転入する旨の住民異動届がなされている。

埼玉県議会議員一般選挙(南第1区 草加市)における当選の効力に関する異議申出に対する決定について – 埼玉県

これらの事実は、当選人と妹が三郷市(B室)に住民登録した令和4年12月26日が境目で、同日頃、当選人が東京都内(A室)に居住しなくなったと見ても矛盾はない。

埼玉県議会議員一般選挙(南第1区 草加市)における当選の効力に関する異議申出に対する決定について – 埼玉県

これ、姉妹揃って住民票を動かしていたように見えますし、当選していたら妹の中村梨香氏の住所要件も疑義が生まれていたのではないでしょうか。

(決定書にある中村美香氏の草加市への転入届の日付と同じ2月1日に中村梨香氏も何らかの手続きをさいたま市の南区役所で行っている旨をツイートしていて、これ、もしかしてさいたま市への転入届の手続きだったのでは…?)

https://web.archive.org/web/20230714235512/https://twitter.com/nakamurarika__/status/1620648400416034818?t=WWEYe9DKJjVSC5yD9ijAzA&s=19

また、決定書には、本当は三郷市から出たかったのに、みたいな出馬の経緯のことなども書かれていました。

本件選挙への立候補の経緯について、「令和4年9月12日に某議員に県議会議員一般選挙に出馬しないかと打診され、三郷市(東第10区)からの立候補の検討を始めた。立候補を父親に相談したのは、令和4年9月24日だった。立候補の意思は、9月24日までに固まった。9月24日の日付はスケジュールにも書いてある(当委員会に提出されたスケジュールは、令和4年10月か ら同年12月のスケジュールであった)。選挙区を南第1区(草加市)にしたのは、令和5年1月19日頃、日本維新の会での出馬会見の時である。県の東部地区出身なので、草加市、三郷市、春日部市で立候補を希望した。正直、三郷市からがよかったが、三郷市からは立候補できないことになったので、草加市一択しかなくなった」旨を証言している。

埼玉県議会議員一般選挙(南第1区 草加市)における当選の効力に関する異議申出に対する決定について – 埼玉県

選挙区決定が出馬会見のタイミングといっていたり、そもそも埼玉維新が組織としてドタバタしていた?から今回の事案が発生したように思えます。

だれか一人でも中村美香氏に住所要件について基礎的な正しい知識を与えていれば、選挙区決定時に現住所を確認した上で、どうすればいいか打ち合わせていれば防げた事案であるはずです。

有権者の意思を無駄にしないためにも、立候補者はきちんと立候補要件を満たしているのか、確認することを怠らないでほしいものですが、一方で事前審査等の投票に至る前のタイミングで何らかの対策が選管側で取れないのか…とも思ってしまいます。(2019年には住所要件を満たさない事案がいくつもあり[主にわざとやったNHK党周りが目立ったように思いますが、自民党も岩手でやらかしました]、公職選挙法が改正され、宣誓書に住所要件についても含まれるようになったようですが…選管の積極的な動きについては『立候補の自由を侵害したとして問題になる』からと慎重なようです。)

『自己の被選挙権も防衛できなかった元自衛隊員候補  岩手県議選 前代未聞の当選無効』
自己の被選挙権も防衛できなかっ…

加陽氏は立候補届け出時点から住所要件を満たしていないことを公言しており、同党は被選挙権を認めない公選法と区選管の方針を批判していた。無効の判断が開票当日になったことについて区選管は「届け出段階では形式的な審査しかできず、足立区の住所を書かれたら受け付けざる得ない」としている。

5548票が「無効」に 足立区議選で居住実態ない女性候補 – 産経ニュース

第10次地方分権一括法が6月3日に成立し、地方議会議員選挙の立候補の届出書に添付する宣誓書の宣誓内容に「当該選挙の期日において住所要件を満たす者であると見込まれること」を追加する公職選挙法の一部改正が行われた。一括法は同月10日に公布され、今回の公選法の改正は3ヶ月後の9月10日から施行される。

 総務省によると、昨年行われた一部の議員選挙で、住所要件を満たさず当選を得られないことを承知の上で立候補するイレギュラーな事案が発生。最高裁の判例などによると選挙長には実質的な審査権がなく届出を受理せざるを得ないことから、最終的に開票で「無効票」として処理された。こうしたことを受け、効率的な事務の実施などの観点から、地方分権改革の中で公選法の改正が自治体から提案された。

令和2年6月3日 地方議会議員選挙の立候補届に係る公職選挙法の一部改正

過去の判例では、住所要件を満たしていないことを自治体選管などが事前に公表することは、「選挙運動を著しく妨害する」とされてきた。

住所要件の確認、法改正で強化 地方議員選挙:朝日新聞デジタル –

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