なぜかトランプが仕掛けた陰謀論が日本で爆発していたので、記録と反論を。
そもそも大量のトランプ票が捨てられていたなんてソースはありません。
ありませんし、現在トランプは開票を止めろという主張はしていますが、票を捨てられたと言う主張はしていないはずです。
で、この一見違和感のあるように見える?らしいグラフはきちんとそうなった理由があります。
そもそも「リラ」というアカウントが触れている開票率というものは、推計でしかなく厳密に正確な数字を示しているわけではありません。
例えばAP通信では『エジソン・リサーチ社は記録された票数と総票数の最良推定値を元に開票率を算出している。方法論はこちら(英語)』と書いてありますし、実はツイートが根拠としている画像にもそういう開票率が推計であり、調整されるものであることが明記されています。
なので1%でどれだけの票が動いても誤りとは言えません。
一方、この10万以上の票が一気に動いたことについてですが、どちらも根拠があります。
一枚目のウィスコンシン州のデータですが、まず「全てがバイデン票」と書くことでトランプに全く入ってないように見せかけていますが、バイデンのグラフに被る形で、トランプのグラフも上昇しています。(終結点を見るとトランプも上昇していることがわかると思います)
つまりこのタイミングで同時に両者に票が入っています。
そのうえで、この票が動いたタイミングになにがあったかというと、ウィスコンシン州の「ミルウォーキー市」の約16.9万票あった不在者投票の開票結果が報告・発表されたタイミングなのです。
このミルウォーキーの不在者投票は多くがバイデン支持層に活用されたということで、上記のグラフのような動きになったわけです。(ちなみに実際はバイデンに14万票という動きだったようです。)
一方ミシガンの数字ですが、具体的な地域はわからないものの、ミシガンも不在者投票のバイデン氏の割合が7割と多いことから、この票が開いたものであるか、もしくは大都市票が一気に報告されたかのどちらかでしょう。
総票数から見たらこの程度の傾きは出てもおかしくはないと思います。
さて、このような選挙不正論については、トランプの狙い通りの反応と言えるかもしれません。
なぜそう言えるのかをこれから説明します。
まず、トランプは数か月前から布石を打っていました。郵便投票は不正の温床であると何度も述べることで。
ドナルド・トランプ米大統領のツイートに対し、ツイッターは26日、初めてファクトチェック(事実確認)に関するラベルを付けた。
トランプ氏はこの日、「郵送投票は実質的に不正なものにならないとは(絶対に!)言い切れない。郵便受けから盗まれ、投票用紙は偽造され、違法に印刷すらされ、不正に署名される。カリフォルニア州知事は何百万の人々に投票用紙を送っている」とツイートした。
ツイッター、トランプ氏の投稿に「事実確認」の警告ラベル – BBCニュース
で、この布石が、トランプが行った勝利宣言によって見事に効き始めるのです。
トランプ氏のスピーチは、バイデン氏のアリゾナ州当選確実の報道が出る直前に行われた。トランプ氏は4日未明の午前2時20分過ぎ、ホワイトハウス内の会場に、鮮やかな青色のネクタイを身につけて登場。スピーチの予定時間に遅れて現れた。
トランプ氏が「勝ったも同然だ。もっと言えば、私たちは勝利した」と勝利宣言。
「投票所が閉まった後に票が加えられるべきではない」と訴え、「我々は大きな勝利に向かっている。しかし彼ら(民主党)は選挙不正をしようしている」
と根拠なく批判した。また、「最高裁判所に行く。全ての投票をやめさせる」と、訴訟を起こして開票作業をやめさせると従前の主張を繰り返した。
報道各社はジョージアとノースカロライナの各州はまだ集計中としているが、トランプ氏は、激戦のジョージアとノースカロライナでも勝利をおさめるだろうと言い切り、「勝負は決まった。開票作業をやめるべきだ」と訴えた。
「開票するな」一方的勝利宣言のトランプ氏、「最高裁判所に行く。全ての投票をやめさせる」【アメリカ大統領戦】(Update) | ハフポスト
この「投票所が閉まった後に票が加えられるべきではない」という勝利宣言は、事前の不正の主張も含めた開票が遅くなる郵便投票などを狙い撃ちした発言であると言えます。
これらの発言が組み合わさった結果、どさっと郵便投票が開票し、多くの票がバイデン氏に入ったことを「不正だ」と考えるフレームが出来上がると言うわけです。
ちなみに日本では、このトランプの発言を「投票日は過ぎたから投票期限が切れた投票の開票を中止しろ」だと主張する人間がいたのですが、その後トランプは日付が変わった後に開票された票について「票を見つけている」と述べているので、「投票期限が切れた票≒会見時現在開票されていない票」となり、「すべての開票」であったことは間違っていなかったと言えるでしょう。
アメリカで大統領選挙の結果が判明しないまま一夜明けた4日午前10時すぎ、日本時間の5日午前0時すぎ、トランプ大統領はツイッターに「私は昨夜の時点でほとんどの場合、民主党の知事が治める主要な州で確実にリードしていた。しかし、突然出てきた票が集計され始めると、それが次々と魔法のように消えていった。とても不思議だ」と投稿しました。
AP通信の集計などでは激戦州のミシガンなどで当初、トランプ大統領がリードしていましたが、郵便投票の開票も進む中、バイデン氏と激しい競り合いになったため、こうした状況を指摘しているものとみられます。
そして「世論調査の専門家を名乗るものは完全に間違っていて、これは歴史的な過ちだ」としたうえで、その後の投稿で「郵便投票の票の束を集計するたびに、なぜこんなに票差が変化し、なぜこんなに破壊力があるのだ?」と記し、郵便投票について改めて不正を主張して、不満を示しました。
また、「彼らはペンシルベニアで当初あった50万票の差を早く消してしまおうとやっきになっている。ミシガンや他の場所でも同様だ」「彼らはバイデンの票をあちこちで見つけてまわっている。アメリカにとってとてもまずいことだ」と投稿しました。
トランプ大統領「主要州のリードが魔法のように消えて」 | アメリカ大統領選 | NHKニュース
ちなみにこの接戦州で、開票が遅れた票でバイデンが迫っていき、場合によっては逆転すると言う形は、共和党によってつくられている場合があります。
共和党が、一部の州で郵便投票の事前開票を拒否し、投票日や直前まで大量の郵便投票の票を処理できない状態にしたのです。この結果郵便投票の開票が遅れた州が接戦州にいくつか存在します。
トランプ陣営は選挙当日の夜には勝者が宣言できるよう集計作業を迅速に行うべきだと主張。だが、選挙管理当局者は州の総票数の認証まで数日から数週間をかけて集計を処理することが認められている。
特にミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシンの3州は、共和党多数の州議会が他州と同様に票の事前処理を可能にする法律の修正案を否決。投票日やその直前まで票の処理が認められない状況となっていた。
CNN.co.jp : 殺到する郵便投票、勝敗のカギ握る4州で集計遅れる 訴訟も開始
つまり、バイデンが有利になりがちな郵便投票の開票を遅れるようにして、当日投票だけではトランプがリードできるので、「これ以降の票は不正の可能性が高い」とリードしているうちに宣言することで不信を煽り、印象を操作しつつ裁判に持ち込みずるずると確定を先延ばししつつ一発逆転を狙う。という悪あがきシナリオだったわけです。
それがアメリカではなく日本で見事にはまっているのを見たり、なぜかナイジェルファラージが元気に不正選挙の可能性についてコメントしているのを見ると「世界を巻き込んで酷いことになるんだろうな・・・」と暗澹たる気分になります。
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