今回のコロナウイルス対策で、政府周辺から打ち出されてくるメッセージと、実際に政府周辺の人間が採っている行動に、矛盾したものがあるような気がするので、それについて2点触れます。
布マスク
政府は全戸に布マスクを配布するとして、現在日本郵政が頑張って配布しています。
ただし、日本郵政に4月25日現在で納入・配布されているのは、必要な量の4%でしかないですが。
日本郵政の増田寛也社長は27日の記者会見で、政府が全国5000万超の全世帯無料配布を決めた布マスクの配送先について、別居世帯宛てなどを含め約6300万カ所に上ると明らかにした。配布は新型コロナウイルス感染者数最多の東京都から始まったが、25日時点で郵便局に納入されたのは4%相当、約230万カ所分にとどまるという。
布マスクは1世帯2枚ずつ配送される。全国1100の郵便局に納入され次第、配達員10万人規模で各家庭に届ける仕組み。
布マスク、配布4%どまり 26億円で受注―日本郵便:時事ドットコム
さて、この遅々として進まない全戸配布ですが、なぜ配るに至ったかの政府のQ&Aを改めて確認してみましょう。
問3 布製マスクに効果はあるのですか?
布製マスクには以下のような効果があると考えています。
①せきやくしゃみなどの飛散を防ぐ効果があることや、手指を口や鼻に触れるのを防ぐことから、感染拡大を防止する効果。
②マスクの着用により、喉・鼻などの呼吸器を湿潤させることで風邪等に罹患しにくくなる効果。
③洗濯することで繰り返し利用することができるため、店頭でマスクが手に入らないことに対する国民の皆様の不安の解消や、増加しているマスク需要の抑制により、医療機関や高齢者施設などマスクの着用が不可欠な方々にしっかり必要な量を届けるという効果。
Q&Aには「布製マスクを全戸配布する理由はどのようなものですか。」というなぜ配布するに至ったか、そのものズバリの問いもあるのですが、その理由の説明としては、その問に対する何を言っているのか読み取りづらい回答文(「店頭でのマスク品薄が続く現状を踏まえて、確保の目途が立った」から?)よりも「布マスクの効果」を説明している場所のほうが適切であるように見えるので、そちらを引用しています。理由と効果はつながっている方が適切だと思うのですが、そこがバラバラなのが今回の施策の問題点の一つのように思います。
で、今回取り上げるのは上記答えの③です。
「店頭でマスクが手に入らないことに対する国民の皆様の不安の解消」「増加しているマスク需要の抑制により、医療機関や高齢者施設などマスクの着用が不可欠な方々にしっかり必要な量を届ける」これが配布により狙っている効果だと述べているわけです。
ここで本当に「増加しているマスク需要の抑制により、医療機関や高齢者施設などマスクの着用が不可欠な方々にしっかり必要な量を届ける」と思っているならば、政府・与党の採っている行動で、これと相違することがありませんか?
与党議員も含め、国会議員の着用率が低いのはなぜか。閣僚経験者は「使い捨てのマスクも薬局にもぼちぼち出回り始めている」と、自前で確保したマスクを優先していると説明。「小さくて使い勝手が悪い」(衆院中堅議員)との声もある。別の閣僚経験者は「家族に使ってはダメだと言われた」と、不良品が相次いで見つかったことによる品質の問題を懸念する。
首相が率先して着け続ける姿をみて、扱いに悩む自民議員も少なくない。自民党関係者は、着用するかしないかで「首相に対する忠誠心を見られているのかも……」と不安を吐露する。幹事長経験者は、マスク配布を首相自ら発表しただけに「せめて閣僚くらいは着ければいいのに」と嘆く。
自民議員に届く「アベノマスク」忠誠心問われると臆測も:朝日新聞デジタル
布マスク配布施策で「増加しているマスク需要の抑制により、医療機関や高齢者施設などマスクの着用が不可欠な方々にしっかり必要な量を届ける」と国民向けに言いながら、医療機関や福祉施設がマスク不足にあえいでいる中、施策を採用した自分たちは「使い捨てのマスクも薬局にもぼちぼち出回り始めている」感じで市販の不織布マスクの需要を減らす気配がない。
自分たちが行った施策がどういう理由付けされているのか知らないんですか?
この施策を現場で勧めているはずの厚生労働大臣も、布マスクは使用せず、市販の不織布マスクを利用しているように見えます。
なんなら環境大臣だって、環境問題とリンクしてマスクの話をしてもいいと思うんです。不織布マスクの原料はポリエステル繊維などでしょうから、石油製品よりも、何度も使えてエコでクールな布マスクをつかって。セクシーにエコ生活をしましょう、的なことを言ってみてはどうですか?ゴミ袋にメッセージのような何も解決しないものを持ち出すより、有益な議論になるでしょう。
で、この布マスク話って、もっと重要なこととして、不織布マスクの方が、(自作)布マスクより安全である可能性が高いっぽいという点があります。
つまり、市販のマスクはより重要な人に、というのは、国民に対し「リスクを負え」という話に繋がります。
ここで、本来的な意味として「身を切る」行為が出てくるのではないでしょうか?
10万円受け取らないとか給与削減と言った何も産まないことを言ってる場合じゃなくて、市販のマスクは必要な人に回して、国会議員自ら(自作)布マスクを使う。それこそ施策推進のためには必要な「身を切る」行為なんではないですか?
このまま、国会議員は(秘書に手に入れさせたりして)市販のマスクをつけ続け、忙しい住民ほど品質がよくわからない布マスクをつけないといけないなんて理不尽な状況を許容するんですか?
現状貯蓄しているマスクの放出は、寄付の禁止に引っかかる可能性などで慎重なのかもしれませんが、安倍総理の東日本大震災の武勇伝のように、必要な物資を必要なところに届けようとする努力をもっと見せてくれてもいいんじゃないんですか?
少なくとも「増加しているマスク需要の抑制により、医療機関や高齢者施設などマスクの着用が不可欠な方々にしっかり必要な量を届ける」という理屈を受け入れた政府与党の方々は見せ方ははっきりしているはずですよね?
まぁ、そんな推進してるはずの総理自身すら布マスクはアピール目的でしか使ってなさそうで、豪快に外して近距離で閣僚や官僚と話しているのを見ると、全てがどうでも良くなりますけど。
ほんとふざけてるんですか?
PCR検査
「陰性の証明」のために相談・受診すると、本当に必要な患者さんを待たせ、利用できなくさせてしまいます。
新型コロナの陰性証明はできません!|コロナ専門家有志の会
西村大臣は念のためウイルス検査も受けましたが、陰性だったということです。
西村経済再生相 公務復帰へ 濃厚接触者に当たらず 新型コロナ | NHKニュース
ひどい言い方をすると、一般国民は「陰性証明はできない」けれど、危機管理という理屈を通すと、閣僚などの『上級国民』のみ「医師や自治体」に「必要と判断」されて陰性証明を受けられてしまう、なんてことになります。
それで本当にいいんですか?
『PCR検査は、新型コロナの感染者を100%正確に「陽性」と判定することはできません。』なんて検査の不確実性を強調している話が一般人に向けて発せられているのに、なぜか国務大臣は危機管理として陰性を100%正しいものとして活動しているわけです。
有識者の主張を信ずるならば、本来は、一定期間自主隔離するのが一番の危機管理であるはずなのに。
それとも、ここまで陰性は信用できないと太字にしてまで書いているのは、実は。いつかの原発事故の「可能性はゼロではない」というような無視していい確率であるとでも、内閣として、コロナ担当大臣の言動で証明しているということなのでしょうか?
総理大臣が、日本以外にマスク配布をしようとしている都市として挙げられたパリが首都のフランスでは、政府がマスク不足をごまかすためにマスク不要だと嘘をついたという世論が生まれているようです。
日本でPCR検査についていろいろと言われているのも、こういう構図が生まれているのではないでしょうか?
そう考えると、このような言行不一致がなくならないと、政府周辺の言動を信用するのはなかなか難しいのではないでしょうか?
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