トランプと国民皆保険制度

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 オバマケアは、オバマ政権が国民皆保険を目指して導入した政治的な遺産。トランプ氏は保険料の高騰を招いたとして廃止を唱え、より市場原理を採り入れた制度に切り替えると主張していた。インタビューでも、現行制度は「使えない」と話した。

その一方で、オバマ大統領との10日の会談でオバマ氏から廃止を再考するよう求められたと説明。それを受け、少なくとも(1)保険会社が患者の既往症を理由に保険加入を拒否することを禁じる(2)子どもが成人しても一定年数は親の保険に加入し続けられる――という2点は「非常に好ましい」と話し、新たな制度でも受け継ぐ姿勢を示した。

そのうえで「オバマケアは修正されるか、廃止されて(新制度に)代わるかだ」と述べ、必ずしも廃止にこだわらない姿勢をにじませた。

トランプ氏、オバマケア修正も示唆 米紙インタビュー  :日本経済新聞

なんかオバマの顔をたてました、みたいな感じの内容になってますが、実際はそういうことはなく、往来の主張を変えてないというだけです。

例えば、過去に共和党予備選挙時代にはこう述べていたようです。

 

「あなたはシングルペイヤー(国民皆保険制度)の支持者ですか?」と聞かれるとトランプは「いや違う」と答える。

「あなたはオバマケアをどのように考えますか?」と聞かれると「あれは酷い。めちゃくちゃだ」と答える。

「あなたは貧しくて病院に行けない人をどうしますか?」と聞かれると「私が大統領になったら誰も道端で野垂れ死にしないようにする」と答える。

「保険会社が既往症を持つ人の加入を認めるでしょうか?」と聞かれると「私は”mandate”(強制加入)の考えが好きだ」と答える。

共和党ディベート・テキサス 場外乱闘&トランプ崩壊 | Conservative Blog Japan

(横道にそれますが、ここで引用している「Conservative Blog Japan」というBlogで主張されている内容が『ブラック労働も少子化もぜーんぶ規制が悪い!規制をなくせば自然と良い形になるんだ!』という経済を教科書通りにしか考えられない市場原理主義者で、それにそぐわないものはあっさりと『極左』と言ってしまう残念なものだったことを書いときます。最低限の認識は信用するので引用はしますが、独自の主張をしている部分がアレなため、その信用も不安なものとなっています。)

このように、確かにオバマケアについては廃止を訴えていたものの、既往症を持つ人も強制加入で拾うことも認めていたり、「私が大統領になったら誰も道端で野垂れ死にしないようにする」と暗に国民皆保険制度を理想としているかのような発言をチラチラとはしてきたわけです。

実際にトランプ氏は2000年にアメリカ改革党から大統領選挙に出ようとした時は『財政赤字削減のために超富裕層に税率14.25%を一度だけ課し、同性愛者差別を禁止するため1964年公民権法を改正し、法人税引き上げを財源に国民皆医療保険を実現するなどと主張』というように、国民皆保険制度実現を主張していたようですし。

またこのような考察もあります。

 「トランプケア」とも呼ばれる、トランプの「7ポイントプラン」は以下のようなものである。1)個人への保険加入義務付けの廃止、2)保険者が州を超えてプランを提供することへの許可、3)個人の保険料に対する税控除の完全実施、4)医療貯蓄口座の拡大、5)医療サービス提供者に対する透明性の確保、6)メディケイド(低所得者・障害者向け公的医療保険)の包括補助金化、7)海外からの輸入を認める医薬品市場のさらなる自由化による価格抑制。

挙げられた7つの項目の中で注目すべきは、1)の個人に対する保険加入の義務付けを否定した点である。2月のCNNのタウンホールミーティングでは「私は(個人への)義務付けという考えは好ましいと思う」と発言しており、明らかに方針を変更している。この点だけ見れば、トランプはより“共和党らしい”候補者になったと言える。

しかし、総論の部分はそうとも言えない。彼はこれまで、もし大統領になったら「医療サービスが高いという理由では誰も死なせない」と繰り返し言ってきている。今回の「7ポイントプラン」でも「医療サービスが全てのアメリカ人の手に届くように医療の価格を下げ、質を高める」と太文字で記している。他の多くの共和党候補者は、「全てのアメリカ人」という言葉を使うことを避ける。なぜならばこれが連邦政府の役割強化につながり、皆保険につながり、そして医療の社会主義化につながると考えるからである。

(中略)

共和党候補者の共通のスローガンは「オバマケア破棄」である。しかし、問題は破棄してどのような代替案を示すのか、より具体的には、オバマケアを破棄することで保険を失う者をどのように救済するかを示すことである。

共和党はこれまでこの救済案についてまとまることができなかった。なぜならば、全ての人々を救済しようとすると皆保険を認めることになるからである。

そこに現れたのがトランプである。彼が示した改革案には多くの説明不足や矛盾が含まれるとはいえ、全てのアメリカ人に対する医療保障を何らかの形で実現することに未だ含みを持たせている。これは、既存のイデオロギーを重視した共和党政治家にとっては脅威に映る。他方、ブルーカラー労働者などにとっては大きな安心に映るといえる。

アメリカ大統領選挙UPDATE 3: 「トランプケア」と共和党 | 現代アメリカ | 東京財団

また、この、トランプケアが出る前に、トランプ氏の保険制度に対する考え方について、このように解説しているサイトも有りました

トランプはACA〔オバマケア〕を廃止しようとはしておらず、不合理な罰則や税制を取り除こうとしている。トランプの主張は煎じ詰めれば、「誰もが費用を負担できるような万人向けのヘルスケアが必要だ」ということになる。ただしトランプのプランには「全員のためのメディケア」が含まれていない。

米大統領選、最大のテーマはヘルスケア制度―主要候補の提案を検討する | TechCrunch Japan

このようにトランプ自身は保険制度に関しては従来から柔軟な態度を見せ続けていたようです。(というか元々民主党支持だったり、人格の酷さ以外は柔軟な態度といいますか、悪く言うと軸がないような感じだったという論評をよく見ますね)

ただし、トランプ自身がどうかんがえていても、議会と大統領を支えるスタッフが強硬な方の共和党の人脈で出来上がっているのを考えると、考えていることがそのまますんなりと制度になるとは考えられず、柔軟なトランプと強硬な共和党人脈が悪魔合体した時にどんな制度が出来上がるのか?というのが本当に気になりますね。

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