前川:高校中退を防ぐのも貧困対策の大事なテーマだ。私が行っていた出会い系バーでも女の子はほとんど中退で、親の方が学歴が高いケースがけっこうあった。中退は自己肯定感を失わせるし、その先の進路にもかかわってくる。
中退をなくすには数学の必修を廃止するのがいい。国立教育政策研究所の調査結果にもあるが、高校1年生の中退する子としない子を比べると、1~2学期の間に急速に授業についていけなくなる。
その一番の要因は数学にあると思っている。現在は数学Iまで履修しないといけない。数学は義務教育まてで十分。論理的思考力を養うために必要というが、それは国語の授業でやったらいい。
学力の低い学校に行くと、九九ができない子もいるし、分数の足し算引き算がわかる子も少ないのに、高校の数学は高度すぎる。
中退を防ぐためにはもう一つ、学ぶ動機づけとなるような機会をたくさん作ることが大切だ。自分の将来をある程度考えながら、今を見られるようにしたい。
(週刊東洋経済2018年4月14日号 前川喜平×湯浅誠対談より引用)
週刊東洋経済2018年4月14日号にて、上のように前川喜平氏が語ったことが一部で批判されています。
週刊東洋経済 2018年4月14日号 [雑誌](連鎖する貧困)
東洋経済新報社 2018-04-09
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私は、この文章への批判に『ヘタレ文系』という言葉が使われていてなんだそれ?みたいな反発を覚えて記事を読みました。
(発言者についてクズ理系だという印象でも抱いておけばいいんでしょうか)
前川喜平氏のこの言及については、なんというか『退官したから危ないことも言ってやる』感があるな、というか。
結論以外は妥当な研究結果とかありそうな感じなんですけど、結論だけなんか一歩飛び越えてる感じがします。
この話について色々気になったことを調べているうちに、以下の記事を見つけました。
この記事、非常に(私はどうせヘタレ文系と言われそうな人間ですが)納得できるんです。
中学2年生に対するアンケートで、5人中3人が「数学が嫌い」と答えています。数学の成績を良くするためには「考えさせる」というより「問題を多く解かせる」「解く手法やコツを身につける」学習をしなくちゃいけない。それって、解ける人には楽しいのですが、数学が本来持つ面白さとは違う方向性なんですね。
問題に対して試行錯誤したり、現実の問題解決のために数学的モデルを考えていったり、構造そのものも数学の持つ魅力です。ただ、これらを理解したところで点数が上がるわけではないのです。
ここらへんとか、前川喜平氏の問題意識的なものと通じるものがあるように思うんです。(数学苦手とか)
そして、こういう学問としての魅力を伝えるのが中退を防ぐために必要な事として前川氏が触れている『学ぶ動機づけとなるような機会』につながるのではないか?と思うんです。
また、魅力と試験のズレというのも改善する余地はあるのではないか、と思わなくはないです。
そういう義務教育内での改善とかを抜きにして『必修廃止』に向かうのは、義務教育改善までの緊急措置としてはあり得るかもしれませんが、緊急措置だとしても、緊急措置の時代にたまたま含まれたその世代のみ混乱を押し付けられる、みたいな話になりかねませんし。
ちなみに、これも、この記事に関連して調べものをしていたときなのですが、2008年に『文部科学省初等中等教育局メールマガジン』に当時「大臣官房審議官(初等中等教育局担当)」という役職であった前川喜平氏が寄せている文章を見つけました。
この文章的にも、当時から『子どもの編入学や進級・卒業認定にあたっては、その子の成長のために良いか悪いかを第一の判断基準にすべきではないのか。』というように、「全体より個に合わせる」かつ「わからない人の方に合わせて考える」的な思考をしていることが伺えます。
また、『前川さんは辞任後、二つの夜間中学校の先生、子どもの貧困・中退対策として土曜日に学習支援を行う団体の先生として、三つのボランティア活動をしている。最近、子どもたちに因数分解をわかりやすく教えるため、『とってもやさしい数学』という学習参考書も買った。(AERA「前川喜平はウソつきか? インタビューで答えた“総理と加計の関係”」より引用)』という感じで、決して数学自体を否定しているわけではないと思うんです。
それだけに、エキセントリックに見えるような提案をしてしまっているのが、残念だなぁ、と思いました。
(前川喜平氏自体エキセントリックな方であるという指摘は想定済みかつ理解済みです。)
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