新型コロナウイルス感染の疑いがあったプロ野球阪神の藤浪晋太郎投手(25)ら3選手がPCR検査を受けた結果、陽性だったことが26日、関係者への取材でわかった。国内の主なプロスポーツ選手で陽性と診断されたのは初めて。チームは1週間の活動休止に入った。
球団などによると、藤浪投手は24日に「コーヒーなどのにおいがしない」と球団トレーナーに訴え、25日に病院で感染の疑いを指摘され、26日にPCR検査を受けたという。
阪神・藤浪投手、新型コロナ陽性 プロスポーツ選手で初:朝日新聞デジタル
阪神タイガースの藤浪晋太郎投手がCOVID-19のPCR検査で陽性であったことが発表されました。
これの記者会見の内容について産経新聞で報じられていました。
重要だと思う情報を引用します。
-今後、入院は
「ないと思う。軽症者は基本、自宅や宿泊施設待機になっている。入院させてくれないと思う。本人も倦怠(けんたい)感や発熱もなく、せきもない。嗅覚だけがない。専門家を入れた対策連絡会議でも、若者がウイルスを取り入れたときに起こる初期症状で嗅覚や味覚の不全が起こるという説明を受けていなかった」
--藤浪の症状は
「本人は『2日連続でワイン、朝のコーヒーのにおいがせず、これは気持ち悪い』ということだった。一昨日(24日)は耳鼻咽喉科と内科を回ったが、季節特有のアレルギーか何かという診断で、特に何もなかった。ただ(25日の)朝のコーヒーがまたにおわず、心配になったため、チームドクターの紹介で受診した耳鼻咽喉科で、(新型コロナウイルス感染)の可能性があるということで保健所に連絡が入った」
阪神・藤浪PCR検査…チームは1週間自宅待機 谷本副社長が状況説明
(朝日新聞もこういう記者会見の文字起こしくらいは基本的な情報として無料記事としてほしいと思いますね。記者会見の情報は共通財産的なものだと思いますし。解説はもちろん有料で。)
重要なのは、当初からCOVID-19を疑ったわけではないこと、そして症状としては嗅覚の異常のみで、医師の判断でPCS検査に繫がっている、という点、そして「軽症者は基本、自宅や宿泊施設待機になっている。」と説明している点です。
まず「軽症者は基本、自宅や宿泊施設待機になっている。」点について。
これはこれが今のところ出来ないから、陽性かどうかの検査は最小限にしないといけない。という論立てがよくされていたように記憶していますが、いつの間にこの決定がなされたのでしょう。少なくとも検索で私が見つけた中での最新の報道では兵庫県としてはまた検討段階のように思うのですが、何も決定しなくてもこのように振る舞えるということでしょうか?
兵庫県内で新型コロナウイルスへの感染者が増え続ける中、県は、専門家を集めた会議で、今後の医療体制についての考え方を示しました。
この中では、感染者が急増した場合、病床数が足りなくなるおそれがあるとして、軽症者については入院させず、自宅療養に切り替える必要があるとしています。
自宅療養になるのは、24時間、37度5分以上の発熱がなく、呼吸器症状が改善傾向にある場合や、酸素投与などの治療が必要なく、高齢や持病などがない人が対象になるとしています。
そのうえで、重症患者を優先的に入院させ、治療にあたるとしています。
会合の中で井戸知事は「いまはベッドに空きはあるが、重症化した人が急増すればたちまち足りなくなる。医療崩壊を防ぐために検討を進めたい」と述べました。
“軽症者は自宅療養”検討へ|NHK 兵庫県のニュース
今回の藤浪晋太郎選手のようにできるのならば、陽性と判明した数が一定数増えても、重症でないならば大丈夫だ、ということになると思いますが。
(その後の報道で藤浪選手は入院する予定という報道がありました。やはりまだ入院前提のようです)
ただ、この自主隔離というのも、やり方に依っては他の誰か(家族等)を巻き込んでしまったりとても難しい話だとは思いますが。
一方、当初『病院で感染の疑いを指摘され、26日にPCR検査を受けた』というような書き方から医師の判断から「保険診療」の検査に繋がったように思ったのですが、記者会見の内容を読むと「保健所が仕切ってる」とか「保健所に連絡が行った」と言っていることから、保険適用で民間検査したわけではなく、医師を介した行政検査という当初から行うことが出来たことをやったに過ぎないようです。
この医師が判断したら、検査ができるというのは、保険医療の決定と共に変わった原則のように思いがちですが、実は保険医療云々の前である2月25日にきめられた新型コロナウイルス感染症対策の基本方針の時点から認められていた実態ではあります。
ア)現行
新型コロナウイルス感染症対策の基本方針
① 感染症法に基づく医師の届出により疑似症患者を 把握し、医師が必要と認めるPCR検査を実施する。 患者が確認された場合には、感染症法に基づき、積極的疫学調査により濃厚接触者を把握する。
ただ、「医師が必要と認める」かどうかについての基準の中に、どうも、PCR検査のできる能力に限りがある、もしくは陽性の方を隔離する病床がないという話が含まれ、結果「軽症者のPCR検査は優先順位は低い」という原則?が優先されていたようにも見え、そこから検査力が上がったという情報はあまりなく、SNSなどの啓発的発信でも、帰国者・接触者電話相談センターの条件を強調したり、偽陽性や偽陰性の可能性を持ち出し「軽症者はPCR検査を求めるな」的な発信(発している本人は「全員検査するのはおかしい」や「症状はない人間が不安だからと検査されるのはおかしい」と言っているつもりなのだけれど、論の内容や文脈を精査するとそこに軽症者が含まれていることが多い)が優勢だったように思います。
本所において、職員に対して聞き取り調査を行ったところ、
感染者の範囲を調査により特定し、対応を行っていく積極的疫学調査のあり方についてアドバイスを行った
検査に関する議論の中で、「軽症の方(あるいは無症状)を対象とした検査については、積極的疫学調査の観点からは、「PCR検査確定者の接触者であれば、軽症でも何らかの症状があれば(場合によっては無症状の方であっても)、PCR検査を行うことは必要である」と述べた
「一方、接触歴が無ければ、PCR検査の優先順位は下がる」と述べた
とのことでした。
職員が述べた考え方は、感染伝播の状況を把握することを目的とした、積極的疫学調査における一般的な考え方です。しかし、この考え方は、体調を崩して医療機関を受診する患者さんに対するPCR検査についての考え方ではありません。現在の政府の方針、すなわち、「医師が総合的に新型コロナウイルス感染症の疑いありとした患者に関しては検査が可能である」という考え方を否定する趣旨はなく、また、医療機関を受診する患者さんへのPCR検査の実施可否について、積極的疫学調査を担っている本所の職員には、一切、権限はございません。
新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査に関する報道の事実誤認について
・風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続いている。(解熱剤を飲み続けなければならないときを含みます)
・ 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある。
※高齢者や基礎疾患等のある方は、上の状態が2日程度続く場合
新型コロナウイルス感染症にかかる相談窓口について 東京都福祉保健局
問3 検査を受けたい人なら誰でも受けられるのですか?
いいえ、誰もが受けられるわけではありません。症状が長引いていて、かつ医師が必要と認める患者さんだけです。
公費が充てられるとのことで、自己負担はありませんが、そもそもは1回あたり1万8000円もする検査です。風邪症状だけで皆さんが使い始めたら大変なことになります。ただでさえひっ迫している社会保障費ですから、必要な患者さんに絞られるべきです。
新型コロナウイルス感染症、PCR検査の受診と診断のタイミングは? 医師が解説 | ハフポスト
そんな訴えがある一方、医師が保健所に掛け合っても断られたケースがあったと医師会が明らかにし、改善が必要であると訴えてもいました。
新型コロナウイルスの検査をめぐっては、医師が感染が疑われるとして保健所に依頼しても断られたケースが報告されています。
日本医師会は今月16日までの20日間、全国の医師会を通じて調査した結果、こうしたケースは26の都道府県で合わせて290件あったと公表しました。
断られた理由については「肺炎の症状があったが、もう少し経過をみてほしいと言われた」とか「検体を取りに行きたいが人手が足りない」などの回答があったということです。
日本医師会の釜萢敏常任理事は「地域の体制が十分ではなく、応じられなかったのではないか。公的保険の適用後は検査につながりやすくなったという話もあるが、厚生労働省と改善策を協議したい」と述べました。
ウイルス検査「拒否」全国で290件 日本医師会が調査結果公表 | NHKニュース
この訴えの前から、政府はPCR検査能力の拡充の方針は出しているものの、保険適用のPCR検査は地方だとうまく機能しない可能性が指摘されていたり、地方での検査方法を把握していないような言動が厚生省に見受けられるなど、「こういうときはその地方の首長を筆頭にした行政の手腕に頼るしかないのだろうな」というのと「かといって中央政府が何もサポートする気なしにに地方に投げてるようにしか見えないのだけれど、どうなの?」という感想を持ちます。
これまでの検査は保健所が認めた場合に限られており、行政検査と呼ばれる。6日の保険適用を機に、感染症の診療体制を備えた医療機関(帰国者・接触者外来、県内は30施設)の医師が感染を疑い必要と判断すれば、保健所を介さず民間検査会社に直接検体を送るなどして検査できるようになった。
県健康危機管理課によると、県内でPCR検査ができる検査会社は4社あり、いずれも県外に本社を置く支店や営業所。検体は専用の宅配便で県外の研究機関に車で運ぶため、医療機関から検査依頼を受けて結果が判明するまで最長1週間かかるという社もある。
さらに、各社とも1日に検査できる件数は全国の数字しかなく、熊本県内分の処理可能件数は不明。予約制を取る社もあり、“順番待ち”が発生する場合もあるという。
患者は検査結果が判明するまで行動制限を受けるため、現時点では3時間程度で結果が分かる行政検査の方がメリットが大きいようだ。このため「現時点では県内は行政検査が主流」(県の担当者)という。
熊本県内、行政検査続く 新型コロナ、保険適用から1週間 | 2020/3/14 – 熊本日日新聞
海外で実施されている、車に乗ったまま受けられるドライブスルー方式の検査については、厚生労働省が3月5日に公式アカウントで、「医師の診察が伴わないため、我が国では、実施しておりません」とツイート。だが、実施国では医師が診察していることがわかり、訂正するハメに。そればかりか、国内でも新潟市や名古屋市がドライブスルー方式を導入しているのだ。新潟市保健所の担当者が話す。
「2009年の新型インフルエンザの検査でもドライブスルーを採り入れており、ノウハウはあります。1人当たりわずか2、3分で済みます」(市保健管理課)
安倍首相のコロナ対策に異議あり! PCR検査などめぐり相次ぐ「地方の乱」 (1/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
今回の藤浪晋太郎選手の事例に戻ると、今回は嗅覚の異常があることがPCR検査につながったということです。
「新型コロナウイルス感染症らしくない人が検査をしても、かえって混乱を招くことになりえます」というのが上記の『PCRの限界を知っておこう』という記事に書いてあるわけですが、「嗅覚の異常」が「COVID-19らしさ」であると認められた、ということになるのでしょうか
しかし、厚労省の目安にはまだ嗅覚などは載っていなかったりするわけで、当初藤浪晋太郎選手が「季節特有のアレルギーか何かという診断」をされていたように、嗅覚の喪失がどこまでCOVID-19の決め手になるのか?というのは、各医師の判断に依るところになるのではないでしょうか。
また、今回の藤浪晋太郎選手の件だと、普通にいくつかの医者と接触しているわけで、今回のように他の病気の検査をして、それらの治療で治らないという形で、他の病気の可能性を否定されてからPCR検査をしているわけですが、そのような形を正式ルートととしてしまうと、それこそ感染者が病院に赴くこととになりCOVID-19感染拡大の可能性も出てくるような気もしますし、何らかの方針は打ち出されないといけないように思います。
(ただ、ここ一週間ぐらいで一気に注目されているようなので、近々なんらかの基準が出てくるのではないでしょうか?一方で、早速過剰検査の心配を煽りだす人もいるようですから、どうなるかはわかりませんが・・・)
そしてこういうTweetから垣間見える病院側の患者を信用しない態度のように、医者の言うことを患者は信用しなくなるのではないでしょうか。
そういう鶏と卵的な循環が必然なんだろうと思います。
また、今回の事例は藤浪晋太郎選手に「球団のチームドクター」という気軽に相談できる、一種の「かかりつけ医」のような存在がいたからこそ、別な耳鼻科医に繋がり、COVID-19の可能性を指摘されるということに至ったように思います。
こういうところは、そういう特殊な環境下だから出来たことであって、一般人には真似できなさそうだな、と思うところですね。
普通は別の耳鼻科に行くよりも、別な医療機関に行かずに一通り治療を受けてみるように勧めるような見解が多いように思いますし、少なくとも今回のように診察の翌日にドクターに相談して別な医者に行ったほうがいいと判断することはなかなか不可能でしょう。
「別の病院に行くと、過去の受診歴・検査歴が分からず、経過が見れなくなります。検査が最初からやり直しになる可能性もあるので、逆にPCR検査をするまでに時間がかかる可能性もあります。なるべく一つの病院を続けて受診して欲しいです」
日本のPCR検査は十分か?の疑問を徹底解説。新型コロナウイルス診断現場の実情|BUSINESS INSIDER
上記のTweetのように「報道したせいだ!めんどくせえ」みたいな反応をする医師・看護師を見るに、そういう病院で医師や看護師に心配だからと相談することも医師の無駄な仕事を増やすからと否定的なのでしょうし、本当にどんな医師、どんな病院に当たるか、または、どんなコネを持てるか次第で己の運命が決まるんだな、ということを、(常日頃からそうなのですが)改めて実感する次第です。
そういう意味で、相談できるチームドクターのいるスポーツチームに入ったり、きちんと相談できる産業医のいる企業なんかに入れるかどうかで、医療関連へのアクセスの良さがだいぶ変わるように思います。
今回の藤浪晋太郎氏の件はそういうコネの差があぶり出された案件のように私には思えます。
藤浪晋太郎氏は普段から丁寧にチームドクターに相談できるけど、一般的な人は、心当たりがあるからといって軽症では相談は困難であるという案件ではないでしょうか?
そこも考えてなのかもしれませんが、今回の公表について「啓蒙」や「周知」という言葉が使われていました。が、Twitterを見ると、その啓発の効果は、とても暗澹たるものなのではないかと思ってしまいます。
今回、検査結果が出る前に発表した経緯について、球団関係者は「嗅覚異常の症状でPCR検査を受けるという、今まであまり表に出ていなかった案件ということで、本人もこれが啓蒙じゃないですけど、周知につながるのであれば名前を出してもらっても大丈夫だというような形で了解を得ています」と説明した。
【阪神】藤浪晋太郎が嗅覚異常で球界初のPCR検査へ 結果が出る前に経緯を公表した理由 : スポーツ報知
(藤浪晋太郎選手の味覚障害は治っているようです。このまま3選手ともに軽症で治ることと、他の選手への影響がないことをお祈りいたします。)
プロ野球阪神は27日、兵庫県西宮市の球団施設で会見し、藤浪晋太郎投手(25)、伊藤隼太外野手(30)、長坂拳弥捕手(25)の3選手が新型コロナウイルス感染を調べるPCR検査を受け、陽性反応が出たことを明らかにした。 藤浪投手は24日に「においを感じにくい」といった自覚症状を訴え、兵庫県内の病院で受診。医師の判断でPCR検査を受けた結果、26日夜に陽性反応が確定した。球団によると、藤浪は入院する予定で保健所の指示を待っているが、発熱やせきなどの風邪の症状はなく、嗅覚の異常も改善しているという。
阪神が藤浪、伊藤隼、長坂のコロナ陽性を発表 藤浪の嗅覚異常は改善
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