昨日、厚生労働委員会にて派遣法改正案の総理大臣が出席しての質疑が強行されました。
その強行に抗議するために野党は審議を拒否、それに対して一部の方々が『審議拒否は仕事をサボることだ!』と噴き上がっていました。
こういう反応の一部に重大な誤解がある気がしたので、今回の記事を書いています。
その重大な誤解というのは総理大臣出席質疑の重要さというか、位置づけがずれているように思えるのです。
総理出席しての委員会質疑というのは、通常は行わなくても良いものです。
しかし、『重要広範議案』という、とても重要な法案だといえる物は、慎重な質疑が必要だという理由で、総理が委員会に出席して質疑を行ったり、参考人を呼んで質疑を行ったりする事が、採決の前提になっているわけです(慣例として)。
この総理出席質疑というのは、委員会側が要求するという形で行われます。なんで、大臣がだめだから総理がケツをふきに出てくる、なんてことは絶対に有り得ません。そんなに総理は暇ではありません。
委員会側が要求するということは、要するに総理を呼ぶ理由がある程度必要だということです。
大抵は審議時間を十分に取れたので、後は総理入り質疑だけ行えば委員会で採決が出来る、みたいな事態になって初めて総理を呼ぶことが多いように私が見たところ思います。
しかし、今回は委員会で法案の審議が殆ど行われていないのに、与党の委員長の職権で無理矢理総理に出席要請、委員会をセットしたのです。
職権を使ってまで委員会が昨日の委員会開催、総理出席にこだわった理由は単純明快で、十分な審議時間が経過した後に総理出席要請という段取りを行うと、今の臨時国会の会期では、派遣法改正案を成立させることが不可能になってしまうような日程になってしまっているからです。
そんな日程になってしまっている理由は、第一に『大臣辞任による日程の遅れ』が一つ。
そしてもうひとつに『総理の外交日程』が存在しています。
要するに今月の中旬から、総理が外交に行ってしまうことで、総理出席の質疑が不可能になり重要広範法案の成立条件をみたすことができなくなるため、与党出身委員長が機械的に日程を強行した、というのが今回の総理出席質疑が組まれた理由です。
それ以外の理由は本当に見当たりません。
そして派遣法改正案の質疑の内容を見ると、まだ総理質疑を行うべきではない、基本質疑の部分を担当の厚生労働大臣と時間をかけて詰めることを優先するべきである、と言える理由のほうがあっさりとみつかってしまいます。
それは、このブラック企業被害対策弁護団代表など、労働問題に弁護士として関わっている佐々木亮さんの書いた記事、厚労相さえも理解できない派遣法改正案の中身~そのゴマカシの“歯止め”措置を読むとよくわかると思います。
要するに、総理が質疑をする前に、委員会の委員にきちんと説明するなどの責任を負うはずの、厚生労働大臣自身が法案の内容を間違って答弁してしまっているのです。
しかも塩崎厚生労働大臣の言い方は「企業内の民主主義が成り立たず、労働局が指導をすることは当然だ」というように、さも厚生労働大臣の説明が間違いならば、それは法律のほうが間違っていると取れる言い方をしています。
そしてこれは実際に内閣提出の法律の内容がおかしいのだというのが野党の主張なのです。
また、コレ以前にもなぜか、与党である公明党が、内閣提出のこの法律に突然修正案を提出しだすなど、派遣法改正案は曰く付きの法案としか言い様がない事態が2つも起こっているわけです。
それをまるで無かったかのように平然と総理を呼んで、通常運転の委員会を開催しようとするのは、正直内閣(与党)の怠慢であると思うのですが、そこが通用しない人も多そうなのが・・・
・おまけ
昨日の委員会では塩崎大臣がこのように法案と真逆の答弁をしたので野党議員が驚いて「法案には、そんなことを書いてないでしょう」と言ったのに、また付き添いの官僚も答弁を修正するように言ったのに大臣は耳を貸さずに間違った答弁を5回連発。#fb pic.twitter.com/sQg6vxzMbl
— やまのい和則 (@yamanoikazunori) November 6, 2014
この『意見聴取で反対一色だった場合』に「全く無視したら指導」「きちっと説明をしないと指導」「意見を聞かなければ指導」「全く意に返さないと指導」みたいな答弁が修正され『対応方針を説明していなければ指導』という答弁に統一されてしまったことが、個人的には安倍総理の『丁寧に説明はした、後の反対意見は知らん』みたいな態度とリンクしている気がするのは、私だけでしょうか?
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