デフレマインドという言葉がある。長年のデフレによって定着してしまった考え方全般を指す言葉だという。
この言葉が使われる際、大抵は消費者が抱く考え方について批判的に言及されているように思う。
また、同じような形で合成の誤謬という概念も使われているように思う。
「消費者がデフレだからといって安物ばかり買ったり、貯蓄ばかり増やすという、(短期的な)自己利益ばかり追っかけているから景気が好転しないんだ」的な感じで。
デフレマインドで、企業について触れられるのは、大抵消費者心理の後のような印象がある。
まるで、消費者が先で企業は消費者に合わせているだけかのように。
しかし、この消費者のデフレマインド批判について、私は多少疑問に思うところがある。
例えば、デフレマインドの例として、金融資産や貯蓄の一人あたり平均の増加が挙げられている。
一方、それと同時に、金融資産ゼロの世帯も、一人あたり平均額同様、増加している。
これらの数字を合わせると、「消費者がデフレマインドを持っている」というような、消費者一般の事を金融資産関係の数字で語るのは間違いではないのだろうか?
消費者の中でも、高額の金融資産を抱えるものと金融資産ゼロのものが増加している。
そしてその両端の格差は、上が昇ったことにより、酷くなっている。金融資産から言えることはそういうことだろう。
金融資産を多額抱えてる人間はデフレマインドを持っているかもしれないが、そうではない世帯はデフレマインドすら持てていない、そんな状況なのではないだろうか。
一方、企業。
政府統計では、景気は改善しているという。
しかし、政府が賃上げを要請したり、賃上げ減税を行っても、賃上げ自体は鈍いという評判である。
これについては、「賃上げを分析するデータは平均賃金であり、新しく市場に参加した労働者が多いから、初めは安く雇われるのが賃上げが鈍く見える原因。賃金の総額では増えている」というような説を聞く。
しかし、早急に現在いる労働者の賃上げなどを行わないと、結果的に定年間近の高給(?)労働者と安い労働者が入れ替わっただけ、のような形になりかねないのではないか。
それも政府はわかっているから、新規採用の促進だけではなく、賃上げ要請も行っているのだろう。
賃上げの鈍さとは裏腹に、政府統計では企業の業績自体は好調。
そうなると、賃上げしない理由は、この好景気が続かないと考えている(これぞデフレマインド)か、実態がないと考えているか、自社にとって賃上げすることが業績に好影響を与えると考えていないか、のどれかになるのではないか。
どこで見聞したかは忘れたが、企業にとって(もしくは株主にとって)労働者の賃金などの人件費は固定費であり、固定費が増えることは経営的にリスクになると考えるから、賃上げしないし、労働力はいつでも解雇できる(つまり賃金が固定費にならない)非正規やバイト、派遣社員に頼るのだ、みたいな説もある。
もしそうならば、各々の企業が“個々の企業的に正しい”ことを追求しているのが、今現在なのではないだろうか。
そして、その結果賃上げがなされず、好景気の循環が全く起こらない。
これこそまさに「合成の誤謬」なのではないだろうか。
ちなみに、この個々の企業的に正しいことについては、社会保障費の負担を回避することも含まれている。
一方自民党政権は、生活保護費削減などの政府の社会保障費抑制策と、それを補うための、子ども食堂推進や雇用増加促進策(企業福祉にて補うということ)。
これは、公助を削減し、自助と共助を第一として掲げるという“自民党的に正しい”信念に基づいた行動である。
一方、国民的には、税金の使い道への不満や、年金事業の杜撰さ、また手取りで見たときの差っ引かれている額を見たときの衝撃などから、社会保障負担について不満を貯めている人も多いのではないか?
そして、そうなったら、“個々人にとって正しい“のは、社会保障費負担を回避することとなる。
このような社会保障を巡るマインドを変えるのも、デフレマインドの払拭と同等に必要なのだろう。
参考記事
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