6月頃から、朝日新聞が外国人技能実習生制度について記事をいくつか書いています。
外国人技能実習生については、5月末に、三菱自動車で、本来計画されていた業務内容と本来行っていた業務が違うことを朝日新聞が報じています。
それ以降も同じ監理団体が扱う、多数の事例に似たような実態があることなど、朝日新聞は続報を一定期間ごとに記事にしており、力を入れていることがよくわかります。
ちなみに、三菱自動車では、適正な実習計画に添えない実習生を、事前に決められていた実習期間分の給与を払った上で帰国させるという選択をしました。
他に計画通りの業務ができる部署に移動になっている実習生もいることから、帰国した実習生のほとんどは現地で実習目的以外の説得を受けて制度を利用していた人なのではないかと推測されます。
(「同じ時期に就労し連帯意識があったので」という帰国理由の方は、そこは怪しいと思いますが)
このようなとこからは、現行制度の問題点に「本当に技能実習をしたい実習生」と「日本でお金を稼ぎたいがメインの実習生」とが混在してしまっていること、があることが把握できると思います。
一方で、実習生を受け入れている側にも多様な目的が混在してしまっています。
実習生を都合のいい労働者として利用したい層がいるというのはよく指摘されることです。
以下の有料記事でも実習生をひどい賃金(最低賃金以下、倒産による賃金未払いなど)で扱っている事例が出ています。
上記記事の終盤にはこのような言及も存在しています。
男性は、いまの実習生制度にも疑問を持っている。「働けるのが3年とか5年では、育成して技術を身につけてもらうのも難しい。スキルを身につけてもっと長くいてくれれば賃金も上げられるのですが」
これと似たような意見を述べている人が出ているのが以下の有料記事です。
これらは、適正な労働者として雇用したいけれど、それができないので、仕方なく不完全な制度を使っているというケースに当たる。(裁縫業の方の事例はシンプルにそう言い切れるのか疑問もありますが)
このような業者は「現行制度を都合よく捻じ曲げて利用している」という点では同じですが、能動的か受動的かで、悪質さが変わるようにも思いますし、解決に向けて取るべき手段も違うように思います。
まず、受動的に行っている人をやめさせる場合、日本の労働環境そのものを改善する必要があるように思います。
例えば、以下のようなひどい研修が平然と受け入れられるような環境で一業者として生存しようとすると、労働者の弱みにつけ込んでハチャメチャな扱いをしたほうが経営に有益であるということを受動的に受け入れないとやっていけないような市場が出来上がってしまう可能性が高いように思います。
そして、そのような環境では一般の労働者は当然として、そこと比較して転職や作業内容等に様々な縛りがある労働者として受け入れられる外国人技能実習生が一般の労働者よりひどい扱いになってしまうのは明白であろうと思います。
一方、能動的にやってる人にはとにかく指導や処罰する以外にできることはないと思うのですが、指導や処罰をしたところで業務が続く場合、例えば残業時間を指導された結果、仕事を減らすことなく残業禁止を指示するだけで結局労働者に圧力をかけることで問題解決してしまうようなアホなことにしかならなかったりするので、そういうところを改善しないと、労基署も活動しづらい中で実績だけを積み上げようと不毛な動きをして、結局労働環境改善になんら効果がない動きになってしまうというオチになってしまうのではないか、と思うのです。
少なくとも、そういう労働環境改善を行わないまま、受け入れ増加とかしても、社会は短期的に維持するものの、問題と犠牲者は増加していく、ということになってしまうのではないでしょうか。
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