ハンガリーの与党が好き勝手いじった選挙制度が興味深い

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選挙制度見直しで与党有利に
オルバン首相が率いる与党「フィデス」は、憲法の改正が可能な議会の3分の2を超す議席を獲得した2010年以降、多くの選挙制度を見直してきました。

ハンガリーの議会は、オルバン政権になって、定数が以前の半分近い199議席にまで削減され、106の小選挙区と93の比例代表の並立制で争われます。

このうち小選挙区では、選挙区の区割りを見直し、それによって「フィデス」の候補が勝利しやすくなったと指摘されています。

また、小選挙区で当選した候補の得票数から次点の候補の得票数を引いた票数が、比例代表で当選候補者の政党に上積みされる仕組みに変え、これも与党に有利に働いたとされています。

さらに、政党が比例代表に届け出る要件を緩和したことで、今回は8年前のおよそ4倍に上る23の政党が乱立することになりましたが、得票率が5%に満たない政党には議席が配分されないことから、上位の政党の獲得議席が増える傾向にあります。

ハンガリー議会選 「反難民・移民」の与党が圧勝 | NHKニュース

今年4月のニュースになるのですが、ハンガリーで強権的な与党が選挙で圧勝したというNHKのニュースにて説明されていた、与党により設計された選挙制度が面白いものでした。

定数を半減させたということが語られていますが、定数減というのは一般論として、議席一つあたりの有権者数が増えることから推察できるように、一議席を確保するハードルを高めるものとなります。
つまり、この段階で小政党が国会に存在する可能性が減ることになります。

その上で、比例代表に出れる政党の要件を緩和するというのは、一見多様な民意を尊重しているように思いますが、このあと言及する改正と、定数減の改正と合わせることにより、文脈としては実際は多様な民意を議会に届けるのを阻害するための一連の改正である、という評価を下すのが妥当なのだろうと思います。

(直近のカンボジアの事例でも似たような事がありました)

カンボジア総選挙の衝撃
広報担当者は、これまでの集計で人民党の得票率が77.8%に達していると述べ、「まだ流動的ながら、123~124議席を獲得できるだろう」と語った。 また、2番手につけるフンシンペック党が議席獲得に十分な票を取れない可能性もあると指摘し、人民党

また、『小選挙区で当選した候補の得票数から次点の候補の得票数を引いた票数が、比例代表で当選候補者の政党に上積みされる仕組み』というのは個人的に想定外な制度設計でした。
小選挙区の勝利を比例区の結果に反映させるという点では、小政党に議席を割り振られやすくするために、小選挙区で確保した議席数を反映して、比例での議席確保を困難にさせるような制度は聞いたことがありました(小選挙区比例代表連用制)。

特に、衆議院の制度設計としては、比例代表制を小選挙区で切り捨てられる小政党などの小さな民意を比例区で拾うという設計意図があるので、そのような制度を検討するのは当然でしょう。

一方、ハンガリーはその真逆で、小選挙区で大勝したボーナスを比例の結果に上乗せする形式です。
比例区を補完関係ではなく、小選挙区で出た民意をより強く補強する形で活用しているのです。

日本でこのような制度が使われた場合、2005年の郵政選挙、2009年の政権交代選挙、2012年の政権再交代選挙、これらの選挙での与野党の議席差が更にひどいことになるでしょう。
これらの選挙では第一党以外が100議席は確保していたのですが、場合によっては半分以下になってしまうのではないでしょうか。

特に、自民党が勝った選挙では、負けた側に常に圧勝する鉄板区が少ない可能性が高いのでよりひどい結果になりがちでしょう。
(特に2012年の日本維新の会はほぼ全滅しそうな気がします。地盤の大阪でも接戦でしょうし)

このような制度、机上の理論としてではなく、実際に運用されているというのは貴重な事例のように思います。

一方、このような制度は個人的にはあまり良い結果にはつながらないように思うので、このような事例が少しでも減ることを願うばかりです。

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