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カンボジア総選挙の衝撃

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 広報担当者は、これまでの集計で人民党の得票率が77.8%に達していると述べ、「まだ流動的ながら、123~124議席を獲得できるだろう」と語った。

 また、2番手につけるフンシンペック党が議席獲得に十分な票を取れない可能性もあると指摘し、人民党の全議席独占もあり得るという見方を示した。選挙管理委員会による集計結果の発表は8月中旬の予定。

与党、議席ほぼ独占=野党は結果認めず-カンボジア下院選:時事ドットコム

先日行われたカンボジアの総選挙にて、与党人民党が125議席すべてを独占する可能性がある、というニュースを見て、衝撃を受けました。

カンボジアの選挙制度を調べると、今回の選挙は25の比例代表選挙区で全125議席を争うものとなっています。

比例代表制度というのは、日本でも小選挙区制で不利である小政党の救済として採用されているように、比較的小政党が議席を得やすい制度となっていると見られがちです。(この点について、ちょっと違う面もあるということを後に説明します)

その制度を採用した上で、議席が一党独占になるというのは、異常事態としか言いようがありません。

ただ、この見通しは与党のスポークスマンの見通しを広報したものであることに注意が必要ですし、その内容の報道にも、多少ブレがあることにも気をつけるべきでしょう。

選挙管理委員会の獲得議席に関する公式発表はまだだが、フン・セン首相が率いる与党・人民党の高官はNNNの取材に対して、独自の集計で全体の9割近くとなる少なくとも110議席を獲得したと述べ、与党が地滑り的な勝利を収める見通しとなった。

カンボジア総選挙の開票終了 与党圧勝へ

カンボジア人民党(CPP)は30日、前日に投開票された国民議会(下院、定数125議席)の総選挙で、95%超の120議席以上を獲得したとする党の独自集計を明らかにした。国連主導で現在の民主的選挙が始まった1993年以降、歴史的な大勝利となる。上院も人民党が全議席を独占しており、ほぼ一党独裁状態になる。

与党寄りといわれるフンシンペック党と、選挙戦で若者らに支持された民主主義同盟党(LDP)が残りの5議席以下を分け合うことになりそうだ。

カンボジア総選挙、人民党120議席 ほぼ一党独裁に: 日本経済新聞

カンボジア下院総選挙(定数125)について与党・人民党関係者は30日、少なくとも全議席の9割以上にあたる114議席を獲得できると明らかにした。2月の上院選でも与党が公選の全58議席を押さえており、一党独裁にさらに近づいた。中国は与党の大勝を歓迎する一方、米国や選挙に参加できなかった最大野党・救国党は批判を強めている。

 人民党関係者によると、獲得議席数は▽人民党114▽フンシンペック党6▽草の根民主党5--の見通しという。選挙管理委員会は8月15日に結果を公式発表する予定だ。人民党は改選前(当時の定数123)は79議席だった。

カンボジア総選挙:与党圧勝 「一党独裁」近づく - 毎日新聞

これらの情報について、私は、以下の産経新聞の入手情報のように、他の政党が数議席を確保していくのではないか、と思っています。
それぐらい信じられないです。

産経新聞が入手した国家選挙管理委員会の途中集計では、人民党は114議席と議席の9割超を獲得し、フンシンペック党が6議席、民主主義同盟党が5議席となっている。選管担当者は、8月5日にも暫定結果を公表するとしている。前回は1・6%だった無効票が、今回は8%以上に増加しているとみられ、これらの精査も急ぐ。
カンボジア総選挙、与党が「全議席獲得」か 強まる独裁に国際社会反発必至

一方で、なぜこんな異常事態が起こっているかと言うと、理由は以下のヒューマン・ライツ・ウォッチの指摘にあるような野党に対する国家による弾圧などが大きな原因でしょう。

よく、日本のネットにいる右の方々が「野党に国家反逆罪を」などと述べていることがありますが、それを本当に実行しているのが、カンボジアだと言えるのではないでしょうか。

また、これ以外にも、例えば、メディアのシャットアウトなんかは堂々と行われているようです。
これまでやってきた弾圧に加え、フェイクニュース関連の理屈を、自党に都合よく利用しているのでしょう。

27日には、多数の独立系ニュースサイトを表示させないよう、政府がインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)に命じている。これにはラジオ・フリー・アジアやボイス・オブ・アメリカ、ボイス・オブ・デモクラシーが含まれる。

英字紙のニュースサイトも表示できなくなった。

BBCニュース - カンボジア総選挙で与党圧勝 米など公平性を疑問視

今回の与党の大勝には、最大野党の解党から派生して、与党以外の勢力が細分化されていることにも原因があります。

選挙管理委員会によりますと開票作業はほぼ終わり、比例代表で争われた25の選挙区で、人民党はそれぞれ有効票の68%から87%の票を得ていますが、議席の配分についてはまだ発表されていません。

これについて与党・人民党のスポークスマンは、「選挙管理委員会が発表している政党ごとの得票数によれば、人民党以外の19の政党が議席を獲得する可能性はない」と述べ、人民党が125すべての議席を獲得するとの見通しを明らかにしました。

カンボジア総選挙 与党が全125議席独占の見通し | NHKニュース

このNHKのニュースによると、今回の選挙は20の政党で争われているようです。

比例区は、大きい定数のもとでは小さな得票率で小政党が議席確保できる制度となるのですが、今回のカンボジアは125議席を25選挙区で分けて争う形。
つまり、一選挙区5議席前後で争われる選挙となっているのではないかと思われます。(実際は選挙区ごとに人口比率などで議席数は大きく違うと思いますが。)

その程度の規模感となると、選挙制度として目立つ特徴として、「小政党が議席確保できる」という小選挙区制度と対比した特徴ではなく、中選挙区制と比較して「得票を無駄にせずに効率よく複数議席を確保できる」という側面が目立ちだすのではないでしょうか。

日本の参議院の選挙区を想像してほしいのですが、例えば東京都選挙区の定数は現行だと6議席と、カンボジアの選挙区規模と似たようなものになっているのではないかと想定できます。

このような規模の選挙区制度の場合、よく言及される事象として、共倒れや特定候補者への票の偏りなど、党として得た票を見て得られる理論上最大の議席と、実際に確保される議席が乖離することがあります。

同じような規模の定数で、比例代表制度を採用するというのは、要するにそのような理論と実態の乖離をなくす。
効率的に同党の候補者に票を分配できる中選挙区制、のような効果が出てくるのです。

そう考える場合において、大政党として比例代表制度を採用するメリットが出てくるわけです。

一方で、そのような大政党の候補者調整のミスによる議席確保失敗が望めなくなる小政党としては、そのような規模の比例代表制度というのは、実力差がはっきりと現れてしまう制度と言えてしまうわけです。

また、共倒れ、という点からすると、このような一議席を確保できるかどうかで争っている事態のもとでは、野党同士が別政党として出ることが共倒れとなる、という理屈も成り立ちます。

そのような点を考えると、最大野党を追放しているという事態に加え、この小党乱立も狙ったものなのではないか、という疑いが私の中にはあります。
それは毎日新聞の社説にある以下の記述を読んだことにより生まれたのですが。

今回の選挙に参加した計20の政党は、大半が与党の支配下にあるとされる。異論を封じ、与党に有利な状況で実施された選挙だった。

社説:与党圧勝のカンボジア選挙 「中国式モデル」の広がり - 毎日新聞

支配下にあるのに一党に統一せずにいるというのは、第一の狙いは「多党で選挙してるんだから、民主主義成り立ってるよ」とアピールするためだと思うのですが、それ以外にも自党以外の票の分散化の効果を狙った手法なのではないか、とも思ってしまうのです。

ちなみに、一党で比例選挙区の議席を独占するには、単純に言うと(第一党の得票÷定数)が、第二党の得票を上回る必要があります。

それを踏まえた上で、過去のカンボジアの選挙結果をウィキペディアなどで見てみると、追放された政党以外の得票が散々であり、実際に独占が多々起こるであろうことは容易に想像ができます。

このようによほどのことがないと発生しない事態が、カンボジアでは起こっているわけです。

そこで、個人的に気になるのは、この事態に日本も関与してしまっている、という話です。

例えば、追放された最大野党の選挙は無効との主張に対して、今回の選挙の正当性を与党が主張する際に、投票率が高まったことを論拠の一つにしているようです。

しかし、この投票率の上昇は、投票数の上昇ではなく、登録された有権者数の制限によって発生したことが報じられています。(また、圧力の存在も主張されています)

政権は総選挙の正当性を示すため有権者に投票を呼びかけた。選挙委は有権者の二重登録の排除を進め、登録された有権者数の大幅減が投票率を押し上げたもようだ。「人民党による(投票を促す)組織的で脅迫的な圧力があった」(人権団体、ヒューマンライツ・ウオッチのアジア担当のフィル・ロバートソン副部長)との見方もある。

カンボジア総選挙、与党「圧勝」 投票率80%超: 日本経済新聞

投票率 大幅アップはなぜ
今回の総選挙の投票率は82.17%で、与党・人民党と最大野党・救国党が激しく競り合った前回、5年前の投票率69.61%を12ポイント余りも上回りました。

しかし、投票者数で比べてみると、今回が688万5000人余り、前回は673万5000人余りで、今回は前回よりおよそ2%しか増えていません。

一方、有権者数は、今回が838万人なのに対して前回は967万5000人で、国の発展に伴って人口は増えているにもかかわらず、有権者数はこの5年間でおよそ130万人も減ったことになります。

これについて、カンボジアの選挙管理委員会は、前回の有権者登録で二重登録などの不備があったためだと説明しています。今回の投票率が前回を大幅に上回ったのは、有権者数の数え直しによるところが大きくなっています。

ただ、投票率が80%を超えたのは15年前、2003年の総選挙以来で、フン・セン政権としては高い投票率を基に選挙の正当性を訴えるものとみられます。

カンボジア総選挙 与党がほとんどの議席獲得する勢い | NHKニュース

このような事態の中で、日本はカンボジアでどのようなことをしたかというと、産経新聞いわく以下のとおりです。

 国際協力機構(JICA)で、2016年に選挙管理分野の専門員となり、2月からカンボジア国家選挙管理委員会に現地で助言する辰巳知行氏は、「選挙改革支援は選管への技術協力。特定の政党に対する支援ではない」と訴える。国連職員として、コソボやイラクなど紛争地域で選挙協力をしてきた自負もある。

 指紋や顔など生体認証を用いた有権者登録で二重登録を解消。日本の教科書を参考に、選挙後も民主主義の理解を子供たちに深める取り組みも進めている。

【カンボジア総選挙】「野党解体」選挙に是非 欧米は支援停止、日本は… 

こういう言い方はあまりよろしくないかもしれませんが、民主主義の外面を整えるのに、日本は協力してしまっているのです。

二重登録の解消は正当性の論拠として利用されてしまったわけです。

また、日本の教科書を元に民主主義を教えるという行為も、現在日本国内で「民主主義」という概念がどう扱われているかを鑑みた上で考えると、選挙制度の形だけ整えてあればそれで良いという理解が広まってしまう懸念が私にはあります。

このような支援から手を引くというのも、中国の接近と欧米の撤退を考えると行いづらいのでしょうが、そのような懸念をきちんと顧みた上で様々な支援を行わないと、単にカンボジア政府に都合のいい支援だけを行う、人民党追従勢力的な話になってしまうと思われます。

今回の選挙結果は、そのようなことを改めて考えさせるための警笛のようなものになっているのではないか、と個人的には思ってしまいました。
(カンボジアの皆様、他人事な受け止め方ですみません)

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