糖尿病を患って働けなくなり、公園でホームレスを始めた。所持金が53円になった2014年夏、生活保護を申請。身を落ち着けてから職を探したが、病気もあって15社以上応募しても不採用が続いた。
すると今年3月、市役所から「保護の廃停止について弁明の機会を設ける」と通知された。3日後の面談で、担当者らに「就労意欲が消極的」と言われた。男性はその月も、企業の面接に行っていた。まじめに取り組んでいるのに、なぜ廃止なのか。怒って席を立った。役所との面談の翌日付で保護が廃止された。
保護申請を助けてくれた弁護士に市役所と交渉してもらうと、担当者は男性が職探しを続けていた事実を確認せず、廃止を決めていたことが発覚した。約1カ月後、処分は取り消され、男性は再び生活保護を受けるようになった。
この間、男性は寝泊まりしていた宿泊施設を立ち退かされ、支援団体などから紹介された住宅やアパートを転々とした。インスタントラーメンなどの食べ物はフードバンクからもらった。
「よく調べずに命にかかわる廃止決定を出すなんて。役所が人間を徹底的に追いつめている。許されない」。男性は四日市市に慰謝料を求める裁判を起こした。市の担当者は「受給者のプライバシーにかかわるので経緯は答えられない」としている。
この記事について有料公開の部分も含めちょっと幾つか言及したいことがあります。
労働意欲?
引用した部分は働けるのに労働意欲が無いと判断されたことで生活保護の支給が打ち切られた人の話です。
この『実態を調査せずに打ち切った』という行政の不適切な対応は本当に担当者は何をしていたんだ?としか言い様がないと思います。(生活保護などのソーシャルワーカーが人数不足で忙しくなっていることも有ったのかもしれないですが・・・)
その上でいいたいのですが、労働意欲を問う生活費支給って、それは生活保護ではなく『失業手当』という名目にすべきではないのでしょうか?
現状は生活保護の前に機能するべきであるものが機能していないから生活保護が過負担状態になっていると言うべきなのではないか?と思うんです。
今の雇用保険関係で給付を受けられる手当が機能不足になっているから、生活保護という最後の砦に追いつめられてしまっているという状況と言えるのではないでしょうか?
労働意欲を促すことで犠牲にするもの
この記事では労働意欲を計るものとして、就職活動をしているかどうか企業の面接に行っているかどうかで判断していました。
しかし、この労働意欲を促すことは慎重に行わないと行けない場合もあります。
それが鈴木大介氏の東洋経済オンラインに連載している記事の1つ『若い貧困者が「見えない傷」をこじらせる理由 生活保護と貧困スパイラルの密接な関係』という記事に例示されています。
ずさんな就労支援を行うことにより生活保護者が生活保護から抜け出すことを明らかに阻害するケースが存在しているのです。
これは明らかに様々な事情を抱えている生活保護受給者複数人を同一ケースワーカーに担当させることによる被害が起こっているとしか言えないのではないでしょうか。
労働意欲を促すべき人とそうでない人をきちんと分けるべき、つまりきちんと失業手当のようなものの給付を幅広く使えるように拡充すべきだ、とこういう事情を考えても思ってしまうのです。
低所得者層が文句?
朝日新聞の記事の有料で読める部分にこういう記述があります
ある自治体の福祉担当者は「『受給者が遊んで暮らしている』という抗議の電話が、特に低所得の人々から多い。厳しくチェックせざるを得ない」と話す。
この『特に低所得の人々から』って何を根拠に言っているんですかね?誰が通報してるのか、通報者の所得まで把握しているということなのでしょうか?そこまで把握されているというのは怖いんですけど・・・。
もし本当は把握していないとしても、このようなことを取材に話してしまう福祉担当者がいるという事が非常に怖いといいますか、嫌だなぁ、と思います。
また抗議の電話に責任転嫁しているかのような言動も気になります。
抗議電話の対応が面倒なのはわかりますが、それが生活保護受給者の不利益になってしまうというのは、やはり生活保護の仕組みなどが悪いとしか言いようが無いと私は思います。
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