「私が全ての顧問を引き受けている」記者問題

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朝日新聞を自ら辞めようとしていた記者が、他社の記事を公表前に見せろと要求していたことが発覚しました。

 調査結果によると、ダイヤモンド編集部は外交や安全保障に関するテーマで安倍氏にインタビューを申し入れ、3月9日に取材を行った。取材翌日の10日夜、峯村記者はインタビューを担当した副編集長の携帯電話に連絡し、「安倍(元)総理がインタビューの中身を心配されている。私が全ての顧問を引き受けている」と発言。「とりあえず、ゲラ(誌面)を見せてください」「ゴーサインは私が決める」などと語った。副編集長に断られたため、安倍氏の事務所とやりとりするように伝えた。記事は3月26日号(3月22日発売)に掲載された。

 峯村記者の行為について本社は、政治家と一体化して他メディアの編集活動に介入したと受け取られ、記者の独立性や中立性に疑問を持たれる行動だったと判断し、同編集部に謝罪した。

 峯村記者は社内調査に、「安倍氏から取材に対して不安があると聞き、副編集長が知人だったことから個人的にアドバイスした。私が安倍氏の顧問をしている事実はない。ゲラは安倍氏の事務所に送るように言った」と説明している。昨年、副編集長から取材を受けたことがあり、連絡先を知っていたという。

 峯村記者は「安倍氏とは6年ほど前に知人を介して知り合った。取材ではなく、友人の一人として、外交や安全保障について話をしていた。安倍氏への取材をもとに記事を書いたことはない」と説明している。

 朝日新聞社は峯村記者の行為を裏付けるために安倍氏の事務所に質問書を送った。事務所からは「ダイヤモンド社の取材を受けた際、質問内容に事実誤認があり、誤った事実に基づく誤報となることを懸念した。峯村記者が個人的に(副編集長を)知っているということだったので、(安倍氏が)マレーシア出張で時間がないこともあり、事実の誤りがないかどうかについて確認を依頼した。峯村氏からは電話で『インタビューの内容について確認はできなかった』と聞いている」との回答が寄せられた。

朝日新聞社編集委員の処分決定 「報道倫理に反する」 公表前の誌面要求:朝日新聞デジタル

これについて、私が一番気になるのは「安倍晋三との関係」という点で、これまでどういう感じだったのか、安倍晋三以外の政治家との関係でも類似した事例がないのか、自身の記事に政治家との関係がどこまで影響があったのかなどの部分が気になりました。

それについて、峯村氏本人が書いた反論?記事やTwitterでの動きが、今回の問題の根深さと言うか、ろくでもなさを示しているように思います。

朝日新聞社による不公正な処分についての見解|峯村健司
4月13日付けで朝日新聞社から停職1カ月の処分を受けます。元々、4月20日の退職が決まっていたため、実質的には1週間の停職となります。 私は、最大の政治トピックの一つになっているニュークリアシェアリング(核共有)について、重大な誤報記事が掲載されそうな事態を偶然知り、それを未然に防ぐべく尽力し、幸いにして、そのような誤...

この記事では主に「動機」の点が強調されているように思いました。

「重大な誤報記事が掲載されそうな事態を偶然知り、それを未然に防ぐべく尽力し、幸いにして、そのような誤報は回避」
「私はひとりのジャーナリストとして、また、ひとりの日本人として、国論を二分するニュークリアシェアリングについて、とんでもない記事が出てしまっては、国民に対する重大な誤報となりますし、国際的にも日本の信用が失墜しかねないことを非常に危惧しました。また、ジャーナリストにとって誤報を防ぐことが最も重要なことであり、今、現実に誤報を食い止めることができるのは自分しかいない、という使命感も感じました。」
「私は1997年の就職活動の時から「朝日新聞こそが社会正義を実現できる」と信じて入社、四半世紀にわたって朝日新聞社および日本、世界の平和や正義のために身を粉にして尽くしてきたと自負しています。また、複数の大学でジャーナリズムの担い手となりうる学生たちの教育もしております」
「この時、私の頭によぎったのが、朝日新聞による慰安婦報道です。誤った証言に基づいた報道が国内外に広まり、結果として日本の国益を大きく損なった誤報でした。」

このように「使命感」だ「日本の信用」だ「正義」だ「国益」だという大きい言葉を使っているのが私には印象的で、それは記者としてちょっと単純すぎやしないか?と思うのです。

また、朝日新聞は処分理由として記者行動基準内の「独立と公正」を用いたようです。

【独立と公正】
記者は、自らの職務に誇りをもち、特定の個人や勢力のために取材・報道をしてはならず、独立性や中立性に疑問を持たれるような行動をとらない。事実に基づく公正で正確な報道に努める。いかなる勢力からの圧力にも屈せず、干渉を排して、公共の利益のために取材・報道を行う。取材先と一体化することがあってはならず、常に批判精神を忘れてはいけない。

朝日新聞 記者行動基準

これについて「本人の取材先ではないこと」「金銭を授受していないこと」等を反論にしていますが、ちょっとそれは「取材先と一体化」というものを狭くとらえすぎではないでしょうか?

依頼を受けて『顧問』と名乗って取材した記者に対応するのは依頼先との一体化ではないのでしょうか?

そもそも本人が取材対象でなくても、峯村氏が取材していた「国際」「社会」の動きに政治家が関わっているものが多いのは明白であり、本人の取材がなかろうが関係性には気をつけないといけないのではないでしょうか。(LINEの問題は経済安保として甘利氏が関わっていたようですし…)

また『安倍氏からは完全に独立した第三者として専門的知見を頼りにされ助言する関係であった』のも記者だからであって、その前提のある依頼なのですから記者としての振る舞いが求められるのは当然なのではないでしょうか。

また、峯村氏本人の取材先ではなくても、朝日新聞という組織の取材先ではあるということも配慮が必要ではないでしょうか?

そういう細かい配慮が『社会正義』『日本の信用が失墜しかねない』という大きな正義を優先することで吹っ飛んでいるのが、危ういものがあると感じざるを得ません。

で、その危うさが今回の処分に至った行動にも露骨に現れているように思います

A記者からは「安倍氏に取材したのをどうして知っているのか」「ゲラをチェックするというのは編集権の侵害だ」などと強く反発されましたが、私も重大な誤報を回避する使命感をもって、粘り強く説得しました。「全ての顧問を引き受けている」と言ったのも、安倍氏から事実確認を依頼されていることを理解してもらうためでした。

これはありえないでしょう。

個人的には安倍氏がそういうことを気軽に友人のジャーナリストに頼んで、その結果生まれたものについて「今回の件については朝日新聞社と峯村氏との間のことであり事務所としてコメントは差し控えさせていただきます」と他人事のような反応をしてしまうのが、安倍氏周りの人脈で問題が起こる理由であったりすると思うのですが、それはそれとして。

安倍氏から事実確認の依頼を受けて(そもそも受任していることも問題でしょうが)「全ての顧問を引き受けている」と言い出すほどに直接的に動くことを選択するのが、そういう行動力がある種の取材力の源泉なのでしょうが、その緩さのようなものは危ういと言わざるを得ないでしょう。(下にリンクを貼った記事からもそういう取材スタンスが読み取れますが…)

人は「落とさない」「誑(た)らさない」|峯村健司
早速、拙note第1回目にたくさんの方から「いいね」をいただき、心からかんうれしいです。感謝いたします。 実は、こういった自分のことを表現することは苦手、というか恐怖心すら感じています。 なぜなら、新聞記者が文章を書くときは、極力「自分」を出ないように努めているからです。新聞記事に求められているものは「客観性」。つまり...

また、記事内容の確認について強い態度で迫ったことが相手の強い反発を生んだことも明白でしょう。

『重大な誤報を回避する使命感』と言うならば、記者としての取材で何らか使命を果たすべきであって、こういう非公式な動きでやるべきではないのではないでしょうか。(そういう非公式な記者の動き・人脈で色々と政治・社会が動いているのは、渡邉恒雄主筆だったりで色々とあるのは知っていますが、こういうものではないでしょう)

スシローと呼ばれても 田﨑史郎さんが隠し持つオフレコ:朝日新聞デジタル
ここ数カ月、政治家や官僚の会食が関心を集めている。コロナ禍での会食の是非が発端だったが、官僚と民間企業、官僚と政治家接待と、次から次へと明るみに出て、幹部の辞任にまで発展している。そもそも政治家はな…

さらに気になるのは、今回の言い訳に朝日新聞の慰安婦報道を利用していることです。

他紙の報道は:朝日新聞デジタル
他の新聞社は慰安婦問題をどう報じてきたのか。国立国会図書館に所蔵されているマイクロフィルムや記事を検索できる各社のデータベースなどを参考に、特に1980年代後半以降の読売新聞、毎日新聞、産経新聞の記…

そもそも報道と国益についてシンプルに考えすぎている可能性がこういう記述から垣間見えるように思うのですが、今回の案件で思い出すべきは朝日新聞が検閲された歴史であったりするのではないでしょうか?

そして、ちょっと話は変わるのですが、慰安婦報道を持ち出した理由について、Twitterでの動きで悪い予感がするのです。

それは峯村氏を応援するツイートを峯村氏本人がリツイートしているのですが、そのチョイスにちょっと…と思うんです。

以下、最新のリツイートの二つ目、三つ目、四つ目をピックアップしました。

いや、もう少し選んだら?と思ってしまうのですが、『#峯村砲』や『朝日新聞の良心』とかでの峯村氏の言動を見ると、元々言動が一々仰々しかったり、そういうセンスが怪しい人なのだろうと思いました。

今後、こういう『朝日新聞の良心』という言葉を使う人間にとって、この峯村氏が都合の良い存在になるだろうというのが新田哲史が立ち上げたサキシルの記事であったり、(新田哲史が昔編集長をしていた)アゴラの記事から察することができます。

LINE報道以後、経済安全保障の論客としても注目度が高まった反面、左派のネット民などから“朝日のネオコン”などと揶揄されるほどの活躍を見せ、護憲リベラル路線の朝日の論調との乖離を指摘する声も少なくなかった。

朝日新聞が退職予定の峯村記者に停職1カ月の懲戒処分、峯村氏は徹底抗戦
退職する朝日新聞エース記者の峯村氏が他社にゲラ見せろと迫り停職に
朝日新聞社は、峯村健司記者によるダイヤモンド編集部に対して編集権の侵害行為があったとして、峯村記者を停職1カ月とする懲戒処分を決めました。安倍晋三元首相が週刊ダイヤモンドのインタビュー取材を受けた後、ダイヤモンド編集部の副編集長に、公表前の

朝日新聞を批判するための材料として、峯村氏が活躍したら『朝日新聞らしくない追い出された人』という名誉の裏切り者として扱い、峯村氏が下手こいたら『所詮朝日新聞出身者』として扱うのでしょう。

そういう構図に峯村氏が喜々として乗っていくであろうことが、先程のリツイートや「結論ありきで、朝日新聞的な「角度をつけた」もの」「朝日新聞社の悪しき「病理」が今なお存するのであれば、自ら犠牲になってでも、それを徹底的に排除する」という言動から察せられてしまい、これからの未来にうんざりしてしまいました。

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