知の巨人のトランプ理想論

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ロシアのウクライナ侵攻前後で鈴木宗男氏の自分でも「鈴木宗男=ロシア」と自称しているような言動が注目されていましたが、それと同時に鈴木宗男氏と過去一緒に逮捕されて外務省批判をタッグを組んで行っていた佐藤優氏の言動も一部では批判対象となっていました。(改めて事件内容を確認すると色々今に繋がってますね)

鈴木宗男事件 - Wikipedia

この佐藤優氏の言動、Twitterで見たのは朝日新聞のサイト内でのコメントの内容に注目していたものだったのですが、個人的に気になったのは「トランプ」に関する一つの記事での評価でした。

さすがにロシアがウクライナに軍事侵攻した後の2月26日の演説では、「ロシアのウクライナへの攻撃は、決して許してはならない残虐行為である」と非難したものの、

「プーチンは賢い。問題は我々の国の指導者たちが愚かなことだ」
「プーチンは(バイデン米政権の)情けないアフガン撤退を見て、無慈悲なウクライナ攻撃を決断したことは疑いない」
「私は21世紀の米国大統領で、任期中にロシアが他国に侵攻しなかった唯一の大統領だ」
「私が大統領ならこれは起きなかった」(2月28日・同前)

などと語って、バイデン政権やNATOの対応を批判しています。

トランプ氏の見方は、意外と事柄の本質を突いているといえます。

要するに「俺だったらすぐプーチンに電話をかけて、直にディールをする」と言いたいのでしょう。きちんと取引していればこんな事態に至らなかったという指摘は、トランプ氏の言う通りです。

トランプ氏ならばモスクワに飛んで行ってプーチン大統領と会談し、「ロシアがウクライナに軍事介入するならば、アメリカも軍を送る。アメリカ第一主義はひと休みだ」と言ってプーチン大統領を脅したうえで、取り引きを持ちかけ、戦争を回避したと思います。

佐藤優「もしもアメリカがトランプ大統領のままなら、ロシアのウクライナ侵攻は起こらなかった」 「ロシアが軍事介入するなら、アメリカも軍を送る」と脅せたはず

これは何もトランプのこれまでの言動を反映していない妄言としか言いようがないでしょう。

まず、トランプが言及している「アフガン撤退」を厳密にトランプがどう思っていたのかを確認するべきでしょう。

このアフガン撤退時にトランプは「出て行くのは良いことだが、バイデンほどひどい撤退の仕方をした者はいない。米国史上最大の恥だ」「あの国を守るために年間420億ドル(約4兆6千億円)を費やし、何も得ていない」「私はタリバンの指導者と何度も話した。私は最初に、『米国民に万が一のことがあったり、米国内に足を踏み入れようとしたりしたら、どの国も受けたことがないほどの打撃を与える』と伝えた。」とあくまでもアメリカ第一主義、アメリカ人の名誉とアメリカの名誉を守ると言う観点だけで批判しています。

「米国史上最大の恥だ」 トランプ氏、バイデン氏を批判:朝日新聞デジタル
トランプ前米大統領は17日、アフガニスタンからの米軍撤退について「出て行くのは良いことだが、バイデンほどひどい撤退の仕方をした者はいない。米国史上最大の恥だ」とバイデン大統領の対応を批判した。 FO…

こういう点を考えても「アメリカ第一主義はひと休みだ」ではなく、何らかの介入を行う場合のトランプの理由は「アメリカの名誉のため」というような、アメリカ第一主義から外れない範囲のものになるのではないでしょうか。

ちなみに、トランプは「任期中にロシアが他国に侵攻しなかった唯一の大統領」なんて言っていますが、新たな侵攻が行われなかったのみで、紛争介入・選挙介入等々の力の行使はずーっと行っていたのではないでしょうか?そんななかで新たな侵攻が行われなかったことは何か誇れることなのでしょうか。

で、現状のトランプの言動は「アメリカの名誉のため」にどう動いているかと言うと「バイデンの秘密を暴露せよ」という方向であったり、プーチンをほめてバイデンを貶す方向に動いています。

米国のトランプ前大統領は、29日に新たに公開されたインタビューの中でロシアのプーチン大統領に対し、バイデン米大統領の家族にとって不利になるあらゆる情報を公表するよう呼び掛けた。国内の政治にかかわる支援を米国最大の敵対国に求めるという、見境のない要求に踏み切った形だ。

トランプ氏はこれまでにも国内政治に関する外国勢力からの手助けを積極的に求め、受け入れてきた。それは現在ウクライナで血みどろの戦争を主導しているプーチン氏に対しても同様だ。

トランプ氏はジャストザニュースとのインタビューで、バイデン氏の息子のハンター氏がロシアで結んだ商取引に関する立証されていない主張を強調。プーチン氏に対し、事態について把握している可能性のあるあらゆる情報を公表するよう求めた。当該の主張に関する何らかの物的資料が存在するのかどうか、あるいはロシア政府が同資料にアクセスできるのかどうかは不明。

トランプ氏はハンター氏がロシアで結んだ可能性のある商取引に言及し、「プーチン氏はその答えを知っているだろう。」「彼はそれを公表するべきだと思う。我々は答えを知るべきだろう」との見解を示した。

バイデン大統領が副大統領だったころ、息子のハンター氏がウクライナや中国といった外国でコンサルティング業務に携わり、多額の報酬を得ていたのは事実だ。司法省は現在、これらの商取引を犯罪として捜査しており、金融犯罪に発展する可能性もある。

しかしこれまでのところ、トランプ氏の主張を裏付ける証拠は見つかっていない。トランプ氏はバイデン氏父子が汚職に関与したり、個人的な利益のために米国の政治に影響を与えたと訴えている。バイデン大統領は捜査に関係しておらず、ハンター氏も不正行為を否定。捜査が終われば疑いは晴れるだろうと述べている。

トランプ氏とその陣営は2016年の大統領選で、ロシアによる干渉を受け入れ、対立候補のヒラリー・クリントン氏に対する電子メールのハッキングといった行為を利用して選挙戦を戦った。トランプ氏の取り巻きのメンバーがロシアの工作員と選挙期間中に会い、クリントン氏に不利な活動を行うとの約束を取り付けたこともあった。

19年にはウクライナのゼレンスキー大統領に圧力をかけ、当時の大統領選の対立候補だったジョー・バイデン氏に対する根拠のない汚職疑惑についての捜査を立ち上げさせようともした。計画の一環として米国からの約4億ドルの軍事支援を凍結し、これが1回目の弾劾(だんがい)裁判につながった。

20年の大統領選でも、トランプ氏の同調者の一部がロシアのスパイと目される人物と連携し、バイデン氏とその家族にまつわる虚偽の情報を広めている。

バイデン氏父子の「スキャンダル公開」、トランプ氏がプーチン氏に要求

トランプ氏は2月14日、「私が大統領だったなら、こんなことは絶対になかった」とツイートしたのに続き、22日には保守系ポッドキャスト「クレイ・トラビス&バック・セックストン」のインタビューでこう吠えた。

「テレビを見て、『こりゃ天才だ!』と叫んだよ。プーチンはウクライナの大部分に軍隊を侵攻させ、東部地域を独立国家だと宣言した。すごいことだ。私は『プーチンは頭がいい』と言った。この軍隊は(ウクライナ政府と独立派住民の)調停者だ。強力な和平監視役になる。こんなに多くの戦車は見たことがない。

 アメリカもこんな軍隊を(不法移民が殺到するメキシコとの)国境に派遣できればよかった。我々もいずれ(ウクライナ問題に)加わって平和を維持する。プーチンという男はまったく抜け目がない。私は彼を知り尽くしている」

(略)

「プーチンの作戦は不動産買収のようなものだ。たった2ドルの制裁金(欧米による経済制裁)を払って広大な土地とそこに住む住民を買い取った。たいしたもんだ」

【アメリカ発】トランプは見抜いていた「バイデンはウクライナを見捨てる」|NEWSポストセブン

これ、記事タイトルに「バイデンはウクライナを見捨てる」とあるのですが、重要な点は、トランプも共和党支持者もウクライナを見捨てる方向にしか動いてないという点でしょう。

「この軍隊は(ウクライナ政府と独立派住民の)調停者だ。強力な和平監視役になる」と思いっきり紛争に介入していた陣営を「和平監視役」と中立であるかのように認め、その前提の下で「我々もいずれ(ウクライナ問題に)加わって平和を維持する」というのは、ロシアと対立しているウクライナを見捨てると同等な言動ではないでしょうか?(軍事侵攻を「制裁金を払って広大な土地とそこに住む住民を買い取った」なんて言っているわけで)

また「「ウクライナ情勢に関与すべきでない」と答えた共和党支持者は55%」なわけで、共和党も「ウクライナを見捨てる」ことに賛成気味なわけです。

トランプはそういう支持層の代表として「アメリカ第一主義」を背負って大統領になっていたわけで、現状もそうであることを考えると、ウクライナを見捨てることを批判しているわけではなくて「中途半端な介入がアメリカの名誉を損なっている」というような「アメリカの利益になっていない」という理由での批判以上の物はないと考えるのが妥当ではないでしょうか。

だから、「アメリカもこんな軍隊を(不法移民が殺到するメキシコとの)国境に派遣できればよかった。」というロシアのようなことがしたい願望のような言葉が出てくるのでしょう。

これらを考えれば、トランプが今回のウクライナ侵攻で軍を出す可能性は「アメリカ国民が被害を受けた」事態にならない限りはあり得ないという原則から離れることはないでしょうし、むしろロシアに肩入れしている以上アメリカへの被害を少なめに見て介入を躊躇する可能性が高いでしょう。(それこそ「ディープステートへの被害」へと言い換えるなどして)

そんな現実を無視して「トランプだったらロシアとディールした」などというのは、トランプの行動を「読めない」と定義することで好き勝手に願望を載せるようなものではないでしょうか?
(個人的には「ハンターバイデンの秘密を暴露してくれたら味方に付くよ」というディールのほうがリアリティありそうですよね。過去の弾劾されかけた事例からして。)

世界の常識は嘘ばかりと言うより、まずは常識を抑えたうえで、物事を考えないといけないのではないでしょうか?
(うがった見方をすると「世界の常識は嘘ばかり」だとか「トランプ待望論」にちかい言説を流すことで何かあるのかもしれませんが・・・。スティーブバノンの指摘する「プーチンはいわゆるウォーク(社会的不公平、人種差別などに対する意識の高い米東部的インテリ)ではない。むしろ反ウォークだ。彼は(我々と同じく)同性愛やトランスジェンダーに反対している。」という勢力の強化的な〈これこそまさに陰謀論〉)

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