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行政の公平性や説明責任が有耶無耶になっていく

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上記ブログでも触れた、ワクチンの優先順位がキャンセル分で有耶無耶になる問題、けっこうな人が「批判を気にしてワクチンが捨てられる」問題だと思っているようですが、個人的にはそれは、そう思う側の人の一部が「5月13日の発言」だと思い込んだ、4月13日の河野大臣発言が出た時点で一定程度過ぎた話であるように思います。

一方、今回問題になっているのは、例えば以下のツイートのように「キャンセルが出て2時間以内で来れる手近な人に打っている」「誰でもいいから打っている」、と言えるようなケースではないのではないか?と言うことが今回のブログで書きたいことです。

例えば一番最初に問題にされた城里町のケースは以下のような説明です。

 町の説明によると、接種を受けた町関係者29人のうち、上遠野町長ら12人は、医療従事者向け接種でキャンセルが発生したことを受け、ワクチンの廃棄を避けるために、上遠野町長らは医療従事者、高岡秀夫教育長(65)は学校の教職員の枠で接種を受けた。これまで公表しなかった理由について、上遠野町長は「医療従事者が接種を受けるのは当たり前」と述べた。

 最初の会見で、上遠野町長は「キャンセルが急に12人も出ると思っていなかった」と説明。約10人分のキャンセル待ちリストに、リスト外から副町長や教育長らを急きょ加え、接種したと説明した。

 しかし、2度目の会見では、「キャンセルリストは12人分あった」と説明を変更。他の医療従事者に声をかけた上で、上遠野町長らが接種を受けたとした。町は食い違いの理由について「朝早い会見で情報が整理できていなかった」と説明している。

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誰でもいいから打った、わけでもないし、キャンセルが出たから2時間以内に来れる人を急遽探したわけでもなく、事前にキャンセル待ちリストを作った上で、優先順位を設定し、接種しているのです。
もしこの説明の通りならば、わざわざキャンセル待ちオンリーで接種するのではなく、きちんと普通に医療従事者として予約して接種していてもおかしくはないという理由なのです。
(だから町長は「医療従事者が接種を受けるのは当たり前」というわけです。)

それ以外の接種を受けた首長からも「誰でもいいからうった」ではなく、「私が優先される理由があったので接種を受けました」という説明が行われているのです。

山名町長は神戸新聞の取材に「町が設置する神崎総合病院の開設者として、会議などで同病院を訪れる機会が多いため」と説明している。

 町によると、前田義人副町長が4月下旬、院内での感染リスクを考慮して「町長はワクチン接種を受けなくてもよいか」と病院側に相談。町職員でもある病院事務長から「キャンセルが出たワクチンで対応できる」と返答があり、受けることを決めたという。

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このように事前に「自己が優先されるべき理由あるのでは」と浮かんで、それを根拠に各所調整して、ワクチン接種を受けている、というのが、今回問題になっているキャンセル待ちワクチン接種の多くの実態であって、「誰でもいいから」「手近に打てる人見つける」とは違う実態が存在しているのです。

なので、「自己が優先されるべき理由」について批判されたり、キャンセルリストに掲載されている優先順位について批判しているのです。

以下の事例はキャンセル待ちではない事例ですが、同じタイミングで報道されていて、私にとっては同じカテゴリの事例です。

森田町長は取材に「自分も接種現場に滞在して状況把握や改善指示などを行っており、今回の接種が問題とは考えていない」とコメントした。

大阪・河南町長ら50人接種 医療従事者枠で | 2021/5/14 - 共同通信

このように「誰でもいいから打つ」ではなく「首長には優先されるべき理由があって打つんです」という説明を事後でしているからこそ、その説明をしなくてもいいと思ったことも含めた理由や判断が問われる事態になっているのだろうと思うのです。

で、このような事例を受けて、河野太郎規制改革担当大臣や田村憲久厚生労働大臣は以下のような発言を記者会見でしています。

一方、河野大臣は一部の自治体で、市長や町長などが廃棄を防ぐためとして、ワクチンを接種していたことについて「『廃棄しないように』とお願いしてきたので、高齢者や医療従事者などに声をかけ、むだにしない対応をお願いしたい。他方で『ワクチンを打ちたい』という住民の非常に強い要望もあるので、説明責任はしっかり果たしてもらいたい」と述べました。

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田村氏は「余らせたものを破棄することをなるべく避けていただきたい思いがあり、残ったものを打つ体制も作るよう(自治体に)お願いしている」と説明。一方で「説明責任を果たさずに対応いただくことは難しい」と述べ、首長らの「優先接種」には住民の理解が不可欠との認識を示した。

「住民に説明つく対応を」 首長らの「優先接種」で田村厚労相 | 毎日新聞

ここで注目すべきなのは、2点あって、まずは河野大臣が「高齢者や医療従事者などに声をかけ」と述べていることです。たとえ過去に「キャンセル分は接種券の有無、年齢、住所を問わず、誰に打っても構わない」という趣旨の発言をしていたとしても、できる限りの範囲では一応優先順位に沿ってほしいということなのではないかと思うのです。そしてその「優先順位」をある程度守るために事前に「残ったものを打つ体制を作る」のではないか、そしてその体制の形があまり表に出ていなかったので、表に出された結果今問題とされているのではないかと思うのです。

そのうえで注目すべき2点目は、河野大臣も田村大臣も「説明責任を果たす」ことに言及している点です。

正直現内閣もろくに守っているとは思えない説明責任ですが、今回のワクチン接種についての方法で出てくる「公平ばかりで効率が悪い行政」「公平性の罠」という論でも、説明責任(説得責任?)は果たさないといけないというのが前提にあったりするのです。

行政は自分たちの業務の進め方には「公平性」が不可欠だと信じており、また住民も「公平性」を求めます(どうしてあそこばかり優遇されるのか、など) 両方とももっとなことなのですが、そのせいで、「公平性の罠」に陥って身動きがとれなくなることがよくあります。「公平性の罠」とは、長期的にはみんなのためになる「重点投資」ができず、効果が挙げられない状態のことです。効果が上がらないので、みんなじり貧です。

これは、「入り口の公平性」、つまり「分配の公平性」だけを見ているからです。「だれもが同じように分配を受けるべきだ」と。

それに対して、「分配は不公平だけど、重点投資を行うおかげで、全体に対する効果が得られるから、最終的にはみんなが幸せになる」という、「結果の公平性」に考え方をシフトできるか?

そして、「分配は不公平だけど、重点投資を行うおかげで、全体に対する効果が得られるから、最終的にはみんなが幸せになる」ことをきちんと「見える化」してわかりやすく伝え、「たしかにそうだ。それなら、分配は不公平だけど、しかたない」と住民に言ってもらえるまで、しっかり説明できるか?

上に書いた「本当のまちづくりを進めるための成功パターン」の1つは、「トップのリーダーシップ牽引型」です。

首長が、現状と長期的な見通しをきちんとデータとして持った上で、「これまでどおり」を続けるのではない、痛みを伴う変革を進める。そのときに、「なぜ重点投資(=不公平な分配)がみんなのためになるのかをしっかり説明・説得することで「公平性の罠」に陥らない。

この「言うは易し」の取り組みを実際にしっかり進め、しっかり実績をあげておられるすばらしい例の1つが、富山市・森市長の取り組みです。

(略)

長く、「行政に求められるものは説明責任だ」と言われてきましたが、説明責任で止まっては駄目なのです。必要なのは説得責任です。「反対」と言う人たちをも説得する。そして乗り越えて、将来市民のために必要な施策を進めること。それが行政の責任だと思うのです。

とにかく説明をきちんとすること、嫌がられても、一番反対しそうな所に飛び込んでいって、こういうデータを出して、説得するということです。

「まちづくりに必要な3つの力」~「公平性の罠」~富山市・森市長の取り組み (2018.08.11)|イーズ 未来共創フォーラム

ここでいう重点投資が今回の「ワクチンの優先接種」であることは言うまでもないでしょう。

今回のワクチンを首長が無説明で優先接種した話は、この文章に当てはめると「行政は自分たちの業務の進め方には「公平性」が不可欠だと信じており」という部分が当てはまりません。少なくともワクチンについてはこの辺を信じていないからこそ首長など「優先接種する順位」を作っているわけです。

だとすれば必要な物は『「分配は不公平だけど、重点投資を行うおかげで、全体に対する効果が得られるから、最終的にはみんなが幸せになる」ことをきちんと「見える化」してわかりやすく伝え、「たしかにそうだ。それなら、分配は不公平だけど、しかたない」と住民に言ってもらえるまで、しっかり説明できるか?』の部分なのではないでしょうか?
(病院で働いている方にとっては「普段やらなくていい業務」なのかもしれませんが)

その部分が欠如したまま「私は医療従事者だから当然」だとか勝手に理屈を作り開けていたからこそ、最終的に公平性は守られますか?本当にみんな幸せになれますか?という批判が始まっているのではないでしょうか。

ちなみに、この説明責任と言うのは、多くの人が称賛したように見える「オードリータン」氏が述べていることでもあったように思います。
(その台湾も新規感染者が多く出たようで大変なようです。これ以上拡大せず、落ち着くことを願っております)

だからこそ、私は毎日、民主主義をオープンにしなければならないと思って行動しています。関心のある国民から何か寄せられたときはただちに対応することです。

そのとき、透明性はたしかに重要ですが、それはひとつの柱にすぎません。もうひとつの柱は、「政府がこれをしているのはなぜなのか」ということを国民に説明する、アカウンタビリティ(説明責任能力)です。

オードリー・タン「#(ハッシュタグ)が世の中を変える」(語り)オードリー・タン, 構成)クーリエ・ジャポン) | 現代ビジネス | 講談社(4/4)

ちなみに、そもそも政府の優先順位から首長がすっぽ抜けてるのがおかしいと言う論もあるようで、そこにかんしては政府の説明責任があるようにも思いますし、その論に立つと、政府が地方自治体に首長がワクチン接種するための制度の設定や説明責任を投げたと言えるのかもしれません。

 地方自治論が専門の野田遊・同志社大教授は、「首長は自治体の意思決定を行う決裁権者。優先接種を受けるべき立場であり、受けなくてはならない」と断じる。「もし首長が感染すれば、ワクチン供給や感染防止対策は大きく遅れ、住民が不利益を受ける。余ったワクチンを打つこと自体、本来はそこまで問題視されることではない」との立場だ。
 優先接種に厳しい目が向けられたのは、ワクチンの供給遅れや予約システムの不備など、行政の不手際に不満がたまっていたことが背景にあると分析。「首長側は『自分も医療従事者』などと言い訳せず、市民のために接種を受けたと丁寧に説明していくべきだ」と話した。
 京都大大学院の児玉聡准教授(医療倫理)は、厚生労働省が過去に定めた新型インフルエンザワクチンの接種ガイドラインでは、医療従事者のほか首長や警察官などの「社会機能維持者」も優先対象だったと説明。「なぜ新型コロナでは含まれなかったのか。不透明な形での優先接種は、公平性の観点から問題がある」と批判した。
 児玉准教授は「菅義偉首相も訪米前、例外的に優先接種を受けているが、バイデン米大統領に会うためとあって当時は騒がれなかった」とも指摘。余ったワクチンの扱いも含め、例外や拡大解釈を許さないような厳格なガイドラインを作っておくべきだったと語った。

「首長優先」許される? ワクチン接種、識者の見解は―新型コロナ:時事ドットコム

いずれにせよ、ワクチンを誰に接種させるかの判断について、説明しなくていいかのような反応には、私は賛同しませんし、説明して説得することができる理由をきちんと作ることが、日常の行政の公平性を守るために、ワクチン行政についても必要であると言うのが、私の立場です。

(非常時のトリアージにも、きちんと優先順位を決める基準があると思いますし、その基準がなぜ正当であるのかについては、平時にはきちんと検証されていると思いますし、「よきサマリア人の法」についても「悪意」がある場合については当然例外でしょうから)

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