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消費者問題 行政

国民生活安定緊急措置法とティッシュ・トイレットペーパーは2020年3月6日現在無関係

2020/04/0244views 

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この記事の所要時間: 111

2020年2月28日に、国民生活安定緊急措置法の特定品目に、トイレットペーパーとティッシュペーパーが入っているというTweetがなされ拡散されましたが、実際にはこの時点では国民生活安定緊急措置法に基づく物品には、何も指定されておらず、国民生活安定緊急措置法違反にはなりようがありませんでした。

https://twitter.com/sakurai7715/status/1233301968413573122?s=19

国民生活安定緊急措置法というのは、オイルショックに関連して制定された法律です。

法律の目的は1条に定められています。

(目的) 第一条 この法律は、物価の高騰その他の我が国経済の異常な事態に対処するため、国民生活との関連性が高い物資及び国民経済上重要な物資の価格及び需給の調整等に関する緊急措置を定め、もつて国民生活の安定と国民経済の円滑な運営を確保することを目的とする。

◎国民生活安定緊急措置法

価格及び需給の調整とここにあるように、この法律では、価格統制に類することを行うことが出来ます。

そして、実際にオイルショックのときにはこの法律をもとに標準価格が定められ、物価の上昇を抑える措置がなされました。

上記Tweetの画像にある価格の内容は、当時、生活二法を解説している秋田県の総合広報誌「あきた」の記事の一部です。

当時の県の広報の内容も貴重な資料ではあり、色々と面白くはあるのですが、ここではこの記事の内容が、オイルショック当時のものである、ということを確認するにとどめます。

さて、この国民生活安定緊急措置法について、今回のTweetが誤情報であると判断するために重要な2つの内容があります。

まず、この法律による指定期間についての条文です。

第三条 物価が高騰し又は高騰するおそれがある場合において、国民生活との関連性が高い物資又は国民経済上重要な物資(以下「生活関連物資等」という。)の価格が著しく上昇し又は上昇するおそれがあるときは、政令で、当該生活関連物資等を特に価格の安定を図るべき物資として指定することができる。
2 前項に規定する事態が消滅したと認められる場合には、同項の規定による指定は、解除されるものとする。

第五条 (略)
2 標準価格は、第三条第一項の規定による指定が解除されたときは、その効力を失う。

この法律はあくまでも『緊急措置』法であるため、物資の指定は、事態が消滅したら解除され、その際に標準価格も効力を失う、ということが定められているのです。
つまり、オイルショックに関連して指定されたわけですから、その事態、つまりオイルショックが終わった後に、指定解除が行われ、標準価格も無意味なものとなっています。

昭和48年、第一次石油ショックによる物価の高騰・モノ不足パニックが起こり、国において「生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律」及び「国民生活安定緊急措置法」が制定され、法に基づく指定物資の監視体制がとられました。
 大阪市でも昭和49年1月に「大阪市生活関連物資緊急対策本部」「同対策室」を設置し、同年5月には「物価モニター制度」を発足し、生活関連物資の価格及び需給動向を把握するなど、市民の消費生活の安定・向上に資するための体制整備を図りました。
 その後、昭和51年5月に価格の鎮静化に伴い指定物資が解除されたが、『価格の安定は経済政策の基本である』とされ、以降、物価安定対策事業は、職員及び民間調査員(物価モニター)による生活関連物資等の監視調査を根幹とし、各種の啓発や情報提供を行ってきました。
(略)

大阪市消費者センター:6.その他 (消費者センター情報)

というわけで、冒頭のTweetにある標準価格も、オイルショック当時に効力を持っていたものであり。現在とは関連のない数字である、ということになります。

また、もう一つ重要なのは、この法律が国会への報告義務が存在しているといいうことです。

(国会への報告)
第二十八条 政府は、おおむね六月に一回、国会に、この法律の施行の状況を報告するものとする。

このように、国民生活安定緊急措置法が動いている場合は、半年に一回の報告の中で、その状況を確認することが出来ます。

その報告は上記のように消費者庁のホームページに掲載されていて、最新のものは2020年1月に報告されているものです。

内容としては『令和元年7月1日から同年12月31日まで、国民生活安定緊急措置法(昭和48年法律第121号)に基づき、国民生活との関連性が高い物資及び国民経済上重要な物資の価格及び需給の調整等に関する緊急措置を講じたことはない。』ということで、2019年12月31日まで、国民生活安定緊急措置法に基づく措置は何も行われていなかったことがわかります。

また、Tweetされた当時の国民生活安定緊急措置法に基づく措置に関する情報について、もう一つ参考になる情報として、党首自身が辞任してしまったことによって繰り上げ当選した、存在感がとても薄いNHKから国民を守る党の浜田聡議員が出した質問主意書があります。

この質問主意書への回答が令和二年二月二十一日付で行われていて、内容が以下の通りになっています。

現在の全般的な物価動向からみて、国民生活安定緊急措置法(昭和四十八年法律第百二十一号)第三条第一項に規定する事態とまでは認められない現段階においては、同項の規定によりマスクを特に価格の安定を図るべき物資として指定する状況ではないと考えている。

この質問自体、トイレットペーパーやティッシュペーパーではなく、マスクに関する話ではあるのですが、そもそもトイレットペーパーやティッシュペーパーよりも緊急度が高いと言えるマスクですら、とても慎重に対応していることが読めますので、ティッシュペーパーやトイレットペーパーは言わずもがな、と言えるでしょう。

つまり、上記のTweetのように、ティッシュペーパーやトイレットペーパーが国民生活安定緊急措置法に関わる特定品目に入っているというのは、過去の話であって、現状の話としては誤情報となります。

(このTweetをしているアカウントは、他の情報も怪しい情報が多く、意図的にそういう粗雑な情報を流す悪質なアカウントのように私には見えます。)

ちなみに、浜田聡議員が質問主意書で問うていたマスクには、3月に入ってから動きがありました。

まず、北海道にマスクを届けるために、国民生活安定緊急措置法が利用されたとのことです。

 3月1日の新型コロナウイルス感染症対策本部での総理指示を受けて、本日、国民生活安定緊急措置法第22条第1項に基づき、厚生労働大臣から一般家庭用マスクの製造販売事業者及び輸入事業者に売渡しを指示しました。

マスクの売渡し指示及び北海道への優先配布について

しかし、安倍首相は北海道の市町村のために、この法律に基づき、マスクのメーカーからマスクを買い取ることを表明したと報道されている。トイレットペーパー同様、マスクは品目に指定されていないが、可能なのだろうか。

消費者庁の担当者によると、次の22条が適用されているという。
【22条 主務大臣は、特定の地域において生活関連物資等の供給が不足することにより当該地域の住民の生活の安定又は地域経済の円滑な運営が著しく阻害され又は阻害されるおそれがあり、当該地域における当該生活関連物資等の供給を緊急に増加する必要があると認めるときは、当該生活関連物資等の生産、輸入又は販売の事業を行う者に対し、売渡しをすべき期限及び数量、売渡先並びに売渡価格を定めて、当該生活関連物資等の売渡しをすべきことを指示することができる。】

担当者は、「22条は他の条文と異なり、品目を指定する必要はありません。今回であれば、厚生労働大臣によって、メーカーに売り渡すよう求めることになります。また、この条文が適用されるのは、今回が初めてです」と説明する。

マスクやトイペの買い占め対策? 石油ショック時の「国民生活安定緊急措置法」に注目 - 弁護士ドットコム

安倍晋三首相が1日の政府の対策本部で同法に基づくマスク供給を指示。政府は3日、予備費から約4000万枚分に当たる22億8500万円の支出を決めていた。同省は卸価格相当での売り渡しを指示した。

北海道2市町にマスク400万枚提供、緊急措置法を初発動: 日本経済新聞

ここでは買い入れのために措置法を利用したということで、この段階では物品指定は行われていないそうです。

ちなみに、この買い入れ配布は、政府が配布を宣言した数量の買い入れが未だ出来ていないようですが、それでも地元住民にとってはありがたい措置になっているようです。

政府は道内で1世帯当たり約40枚ずつ配るとし、まず感染者の人口比率が高い2市町への配布が決まった。ただ、5日の配布は1世帯当たり7枚にとどまった。厚生労働省によると品薄で確保できなかったといい、残りは確保でき次第支給する予定。

1世帯7枚だけ、北海道に政府支給マスクが到着 : 国内 : ニュース : 読売新聞オンライン

これに続いて2020年3月5日、政府対策会議での総理の締めの発言にて、国民生活安定緊急措置法を適用しマスクの転売を禁止する手続きに入ることが宣言されました。

需要面では、インターネットにおいてマスクが高額で取引されている事例が報告され、こうした転売を目的とした購入が、店頭におけるマスクの品薄状態に拍車をかけている、との指摘があります。このため今般、国民生活安定緊急措置法を適用し、マスクの転売行為を禁止いたします。速やかな施行に向け、政令の決定に向けた手続きを進めて下さい。

令和2年3月5日 新型コロナウイルス感染症対策本部(第17回) | 令和2年 | 総理の一日 | ニュース | 首相官邸ホームページ

10日の閣議で政令を改正し、マスクを同法の適用対象に指定する。政令には罰則も盛り込む方針だ。今月中旬に施行する。

中韓からの入国者、2週間待機 マスク転売を禁止―安倍首相表明:時事ドットコム

罰則に関連する条文は下記のものです。

(割当て又は配給等) 第二十六条 物価が著しく高騰し又は高騰するおそれがある場合において、生活関連物資等の供給が著しく不足し、かつ、その需給の均衡を回復することが相当の期間極めて困難であることにより、国民生活の安定又は国民経済の円滑な運営に重大な支障が生じ又は生ずるおそれがあると認められるときは、別に法律の定めがある場合を除き、当該生活関連物資等を政令で指定し、政令で、当該生活関連物資等の割当て若しくは配給又は当該生活関連物資等の使用若しくは譲渡若しくは譲受の制限若しくは禁止に関し必要な事項を定めることができる。

第三十七条 第二十六条第一項の規定に基づく政令には、その政令若しくはこれに基づく命令の規定又はこれらに基づく処分に違反した者を五年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する旨の規定及び法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して当該違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する旨の規定を設けることができる。

五年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金という内容の規定を設けられる、とのことで、冒頭のTweetのようなティッシュペーパーやトイレットペーパーは国民生活安定緊急措置法は無関係で、マスクこそが今後国民生活安定緊急措置法で罰則付きの転売禁止になるということのようです。

ちなみに、今回の措置はあくまで転売という方法での譲渡の制限の物品指定であって、標準価格の設定は行われないでしょう。
(標準価格の設定となると、転売だけでなく一般的な商店の価格にも規制がかかることになりますから、それは今回は無関係でしょうから)

また、26条の2項に『前項の政令で定める事項は、同項に規定する事態を克服するため必要な限度を超えるものであつてはならない。』と定められているように、あくまでも『必要最低限』のものが定められる決まりであることにも気をつけないといけないでしょう。

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