若宮啓文著「忘れられない国会論戦」

この記事のアクセス数
64PV
この記事は約3分で読めます。
記事内にアフィリエイトリンク等の広告が含まれています。
忘れられない国会論戦―再軍備から公害問題まで (中公新書)

若宮 啓文 中央公論社 1994-10
売り上げランキング : 612463

by ヨメレバ

この本は1950年前後を中心に、国会での目立つ論戦を取り上げている本です。

あとがきにて、この本が執筆された経緯が書かれていて、それは、アメリカの湾岸戦争開始時の党議拘束のない自由討論の様子を比較してショックを受けたこと。
そして、日本のPKO国会での牛歩戦術ばかり目立って論戦がなかったことと、細川内閣を倒すために自民党が結局「審議拒否」を行ったことや細川政権などのキーマンであった小沢一郎氏が国会論戦に出てこなかったことなどに言及し、(まえがきいわく)もっと政治にわくわくする論戦がほしいという思いで書かれたとのことです。

この本では、論戦を「因縁対決」「失言」「爆弾質問」「涙の質疑」「異色の本会議演説」の5つのカテゴリで紹介しています。

各々の論戦の内容も面白いのですが、近年の国会を見聞している人間としては、所々で出てくる当時の国会の仕組みというか、運用実態が面白いです。

例えば、社会党の石橋政嗣委員長(当時)と自民党の中曽根康弘総理(当時)の予算委員会での論戦について、NHKの中継から外されたことが書かれています。
そして、その外された理由が、石橋氏の質問が社会党の二番手であり、『NHKの予算委テレビ中継は、各党の質疑を映すのが慣例』であったことが理由だったと書かれているのです。
今のNHKは予算委員会を中継する場合、その予算委員会を時間いっぱいまで全部中継することが前提となっていることを考えると、どのような流れで変わったのかが気になります。

また、河野一郎氏が吉田茂総理に仕掛けた爆弾質問の背景として、鳩山一郎自由党が「質問内容を事前通告しない」宣言をして国会に望んでいたこと、そしてそれを受けて河野一郎氏の質問内容を探れなかったことが理由で、吉田茂が指定に帰ってしまい予算委員会が一度流れたり、質問を受けて政府の調査を待つために予算委員会を休憩したところ、吉田茂氏が発熱を理由に公邸にこもってしまいその日は再開できずに終わってしまったことが書かれていて、今の国会ではこんなこと絶対できないよなぁ、なんて思いました。(ちなみに、質問内容は対米債権4700万ドルが宙に浮いているのに、アメリカと政権は全くまともに交渉する気がない、と問題視する内容)

今の国会では有り得ないつながりとしては、「涙の質疑」に入っている参院の外務委員会での当時左派社会党の羽生三七氏の質問のきっかけが、その日の予定質問者の質問が終わったときに時間が余ったので、外務委員長が「羽生さん、一問くらいの時間ですが、何かありますか」と水を向けたことだったというのも、今では考えられないなと思いました。

このような論戦自体だけではなく、その論戦の背景がみえてくるのが面白いです。

これを読んで、最近だと、TBSラジオでやっている荻上チキ氏のSession22にて「国会珍プレー好プレー」をやっていたり、一昔前には日テレのニュース番組内で「マル秘ウォッチ永田町」なんていう物がありましたが、そういうものが動画や音声だけではなく、書籍のようにアーカイブとして入手しやすい形として残されていたりすると、当時の雰囲気とか背景がうかがい知れて良いのではないかな、と思いました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました