衆院予算委員会は現在、与党2割、野党8割の割合で質問時間が配分されている。割合は変動するが、野党に多くの時間を配分することを慣例としてきた。法案について与党は国会提出前に政府から説明を受け、了承しているためだ。
しかし、衆院選で自民党が大勝したことを受け、自民党内で質問時間の配分を見直す案が浮上。萩生田光一・幹事長代行によると、安倍晋三首相(自民党総裁)は27日、首相官邸で萩生田氏に「これだけの民意を頂いた。我々(自民党)の発言内容にも国民が注目しているので、機会をきちんと確保していこう」と指示したという。菅義偉官房長官も同日の記者会見で「議席数に応じた質問時間の配分を行うべきだという主張は国民からすればもっともな意見だ」と述べた。

時間配分の割合は、麻生太郎政権(平成20~21年)までは「与党4、野党6」が慣例で、その後の旧民主党政権では一時、「与党1、野党9」となった。現在も「与党2、野党8」と数の少ない野党議員に多くの時間が与えられるため、質問内容が重なるなどの弊害も生じている。
(産経新聞が弊害と書いている内容は審議時間が多いからではなく、質問に回答されていないと判断しているからという場合と、野党議員の質問力が足りない場合、もしくは審議してる対象の質問対象が狭いなど複数のパターンがあり、審議時間配分が主原因とは言えない気がします。重要法案などでは、逆に、質問時間が足りず質問を端折るシーンも良く見る気がしますし。また、与党側も時間を貰っても余ってしまう事があります。IR法案では、議員立法だったり、賛否が色々あった法案なので、自民党で党議拘束が行われなかった代わりに、与党議員にも長めに時間が与えられたように記憶していますが、その結果、時間を余らせた与党側が般若心経を唱えだしたり、なかなか豪快な私見披露で時間稼ぎする一幕がありました。これを踏まえると、質問が被ることがあるのは、野党に与えられた時間が長い弊害ではないとわかるのではないでしょうか?)


ひどい事件だったよね pic.twitter.com/U4Ce99NWEQ
— ゆ@普通のおとめ座超銀河団の労働者階級 (@U_fort) October 27, 2017
衆院で圧倒的多数、参院でも過半数を占める与党は数の論理だけから考えればどんな法案でも成立させることができる環境にある。だから、野党との間でどんなやりとりがかわされようとも、淡々と審議を進めていけばいいと思ったのかもしれない。だが、自民党の国対戦略と安倍晋三首相ら閣僚の答弁技術は数の利を生かすには未熟だった。
安倍首相は野党の挑発に乗って答弁席からヤジを飛ばして謝罪に追い込まれた。それだけではく実質的な政策論争でも、野党の質問を的確にはじき返したとは言えない。そもそも自民党国対は審議の入り口で失敗している。与党と野党の質問時間の配分をなんと1対9という、かなり野党に偏重した形にしたのだ。野党の質問時間を十分にとることによって法案に反対する野党を懐柔し、なおかつ野党質問に適切に答えることで、法案に対する国民理解を深めようとしたのだ。
だが、安倍首相ら大臣の答弁はその作戦を遂行するには力量不足だった。
民主党政権時代の一時期や、安保法案の審議の際には1対9まで譲っていたと言われる審議時間。
最近の加計学園関連の質疑では、3対7でも大幅譲歩と言われるくらい渋るようになりました(自民党と共に下野する産経新聞だから、自民党が譲歩したかのように書いてるのかもしれませんし、塩崎氏の言うように、審議対象によって時間配分の基準が違うことが反映しているのかもしれません。)
両党が対立していた衆院予算委での質問時間の配分は与党が1時間半、野党が3時間半で、「与党3割、野党7割」となる。自民党は与党側の質問に対する首相の説明時間を確保するため、均等配分を開催の条件としていたが、国会運営の慣例通り「野党8割」を強く求めた民進党に大幅に譲歩した。
なお、審議時間の配分については、今回3:7即ち与党1時間半、野党3時間半で決定しました。そもそも質問時間は議席数に応じて割り振られるのが基本でありますが、予算案や法案の審議であれば、与党は事前審査を行なっているために2:8と譲っているわけです。しかしながら、今回は事前審査を行うような内容ではなく、また、国家戦略特区の意義や背景についてもしっかりと質すため、このような時間配分となりました。ちなみに、通常の参考人質疑では各党均等に時間配分を行っていることを申し添えます。
自民党は今年7月にも審議時間配分について見直しを主張していました。その時は与野党一対一を主張していたようです。
TBSです。 予算委員会集中審議における与野党の質疑時間の配分について現在、協議が続いていますが、幹事長代理はどのようにお考えですか。
Answer
やはりもちろん与野党間で話し合っていただく。これはまさに国対マターですので、現場でそこはしっかりと審議をしていただきたいと思いますが、一般的に考えれば、やはり国会のなかで50:50、お互いに同じ時間で審議をしていただくのが国民の皆さんの目線からして分かりやすくていいのではないかなと私自身はそう思っておりますが、あくまでも現場で取り決めをしていただく。そういうことでございます。
一方で、最終的には2対8となっていた民主党政権時代にも、実は審議時間配分で野党分を減らすことが国対で話し合われたことがあります。
これに対して、自民党は『民主党は審議をさせたくないから、審議拒否させるためにそんなめちゃくちゃを言い出しているんだ。』という反応だったわけですが、今回の自民党の検討もそういう、意図的に国対の話し合いを決裂させる目的なのでしょうか?
(以下、ウヨテキストサイトより引用)
10年度補正予算を審議した昨年の臨時国会では、与党側が野党側に配慮し、第一党である民主党よりも長い質問時間を自民党に割り当てた。
2日の日程協議では、自民党の衛藤晟一筆頭理事が同様の時間配分を求めたが、
民主党の森裕子筆頭理事は応じず、決裂した。
自民党の脇雅史参院国対委員長は同日夜、国会内で記者会見し、「与党による予算案審議の拒否だ。暴挙だ」と与党の対応を批判した。
さて、この質疑時間配分については、塩崎恭久氏が書いているように、現在の与党には、総務会や政策部会などで法案や予算案、税制改正大綱案などの事前審査を行うことができるシステムが備わっています。
その事前審査を行ったあとの案が国会に出てきている、という前提があり、与党の質問は事前審査と被るので必要以上に質疑時間を与党は確保せず、事前審査ができない野党の質問を優先し、それに答えて説明責任を果たす、という組み立てになっているはずです。
しかし、最近は野党の質問に答弁することで、法案について理解を深めるという動きにはならず、与党質問に回答することで、国民への理解を図る、という形で国会質問を利用しようとする動きを安倍内閣は行っています。
これは、前に引用したフォーサイトの『野党質問に適切に答えることで、法案に対する国民理解を深めようとしたのだ。だが、安倍首相ら大臣の答弁はその作戦を遂行するには力量不足だった。』ということも原因になっているでしょう。
事前にある程度意思疎通している人相手でないと冷静に中身を説明できない、国民の信頼を得られる答弁ができない、ということです。
相手に接待してもらうことで、池上彰氏のようなポジションに落ち着かないと、満足に説明することができないのでしょう。(池上彰氏が接待されている、というわけではありません)
『これってこういうことだと思うんです』『良い質問ですね〜』『やった〜』 みたいな池上さんの番組みたいなの国会でやられても困る
— 限界サヨクのツイ栗鼠しらず (@desPAiR0906) October 27, 2017
一方で、今回の質問時間配分見直しの要求が政府側だけではなく、若手議員から出てきているのにも注目したほうがいいと思います。
石崎氏は記者団に「若手議員の中に『国会の場でもっと仕事をしたい』という思いが非常に強い」と述べ、自身は所属する予算委員会でこの1年間、1度も質問の機会が回ってこなかったと訴えた。
これにはいくつかの理由があると思います。
例えば、利益誘導政治が表向き無くなった結果、国会で質問をしたかどうかばかりが有権者に活動されたかどうかの判断として注目されてしまうこともあるでしょう。
NPO法人の『万年野党』などが、野党の活動量を図る一指標であると言える、国会質問回数、質問主意書、議員立法の数を根拠に与党議員にも仕事をしていないと言い出しているのも拍車をかけているように思います。
http://www.news-postseven.com/archives/20170926_615855.html
(自民党の大西英男氏とかがそれっぽい主張をしてるようですね。)
平成27年4月16日 総務委員会https://t.co/22BVC24jjn https://t.co/NEZ5egG1r5
— 踊♥️ウタマ口 (@utamaro_) October 28, 2017
他方で、安倍政権が成立してから一年位たった後、安倍政権と自民党の関係が『政高党低』と表されるようになりました。
Q 政が高くて、党が低いの? よくわかんないよ。
A 政というのは政府のこと。党は政党だね。今いわれているのが、国が物事を決めるとき、政府つまり安倍晋三内閣の決定権が強くて、自民党が弱いという構図なんだ。
このように内閣支持率で党内手続きを押し切っている、という話が出てくることにより、安倍政権に従ってるだけの案山子議員なのではないか?と言われてしまっているのではないでしょうか?
そういう『意見を伝えられないヒラ議員』という印象を払拭するには、国会で政府側に質問している、という事実を作るこたが効果的であるでしょう。
また、本当に党内手続きが押し切られているのならば、国会という公開の場である程度政府側に質問したい議員が出てくるのもおかしくはないでしょう。事前審査が形骸化していると言えるわけですから。
一方で、政府側も支持率が微妙に低下しつつある中で、うるさ型の議員の息抜き場として事前審査が機能しなくなっているなら、国会で質問することと引き換えに黙って貰えるなら、野党が目立つ場面も減らせるし、政権維持のためには一つで二度美味い話でしょう。
このような自民党の党内事情が、今回の質問時間配分見直し検討の背景にはあると思われます。
本来、質問時間配分というのは、与党と政府の関係をどう定義付けるのか、というところからスタートしないといけないのですが、本来やりたい形と政府の能力やら党所属議員の意思やらが噛み合ってないのが現状なのかな、と思われます。
ちなみに民主党政権では、党と政府の一体化が鳩山政権では志向される一方、自民党のような事前審査制度について密室政治だと否定していたので、政調や政策部会をなくすという事を行っていました。
その結果、若手議員などをどうするのか持て余すという事態が起きていたように思います。意思決定プロセスとして内閣に取り込むことを想定していたように思うのですが、それがはっきり出来なかった。
そのせいで、国会で質問できない与党議員の意見を取り入れるプロセスが欠けてしまっていたように思います。
そしてそのようになった結果、決定プロセスが混乱し、決められないとかブレるとか言われる結果に至ったのだろう、と。(政治家個人のブレもありましたが、決定プロセスから来るブレも大きかったと思います。)
このように、国会の与党の質問時間を考えることは、与党と政府の関係を組み立てることにつながります。
もし、本当に自民党が質問時間を議席比例で確保するならば、これまで党内でやっていた法案審査·修正プロセスを党内では行わず、国会で行うことが前提になると思います。
しかし、それを国会で行うことは、結果として与党の優位を手放す事に繋がりかねないと思うのです。
国会は数の多少はあれど、与野党等しく場が開かれているのです。
一方、事前審査は野党は参加不可能なので、そこで決められてしまう限り、自分の考えを政府に飲んでほしい人たちは、みんな与党自民党に入りたがるわけです。
その与党としての優位を手放すことが出来るとは思えないわけで、それを考えると、現状の与党の質問を増やすという考えは、余りにも与党が政治プロセスを独占し過ぎてしまう、と思うのです。
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