2014/10/29 感染症法改正案が明日審議開始の理由を推測してみる

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というわけで、明日審議入りすることになった感染症法改正案。
これに対し『14日に提出されて、30日に審議入りすることになったのは遅いのではないか』という疑問がおき、そこから『つるしをしていたから遅くなったんだ』みたいな推測があるんですけど、個人的にはそんなことよりもっと単純な理由で明日審議入りすることになっているだけだと思います。

そう推測するに至った材料をこれから提示します。

1、参議院厚生労働委員会の審議状況
今回、感染症法改正案は、参議院の厚生労働委員会で審議が始まります。
その、参議院の厚生労働委員会、実は昨日(10月28日)まで、別な法案審議を行っていました。

それが『専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案』という、今年の通常国会で参議院に回ってきて、そのまま継続審議となっていた法案です。
まず、この法案を通過させない限り、参議院の厚生労働委員会では審議できないという状況になっていました。

2、衆議院厚生労働委員会の審議状況
参議院で審議できないならば衆議院で審議すればいい、と思うかもしれませんが、衆議院には大物『労働者派遣法改正案』が存在しています。
この労働者派遣法は、政府肝いりの法案です。なので最優先に委員会を通そうと躍起になっています(自民党の国対委員長が 「11月7日に参院(本会議)で趣旨説明できるよう努力しなければいけない」と述べたりしているほど)。
それなのに『同改正案は首相出席で本会議での趣旨説明と質疑を行う「重要広範議案」』であったせいで、この法案は『経産大臣や法務大臣の辞任の影響』をうけ、中々本会議での趣旨説明、審議が出来ない状況に陥っていました。
更に、総理は11月に外遊を行うために『参院審議入りは首相が外遊から帰国後の同19日以降になる見通しで、同30日までの会期内成立は一段と厳しくなった』という状況に陥っています。

つまり、労働者派遣法がずーっと衆議院で滞っているので、参議院でさっさと通したり、参議院を後回しにしてもほぼ意味が無いのです。

3、議院運営委員会の状況
参議院議院運営委員会の状況を見るに、10月1日以降は、委員会の理事会のみが開かれている状況です。で29日に会議に付する案件で委員会が開かれて、そこで感染症法改正案が厚生労働委員会に付された、ということでしょう。

要するに、ひと通り10月1日に通した後は、随時、空いた委員会に法案を下ろしていく、みたいな形を取ったのだと推測できます。
ここに、つるしも何も無いと思われます。

4、法案の内容
この肝心の感染症法改正案の内容ですが、法案の内容を見る限り、急ぐ必要性があるのかな?というもののように感じます。
その印象を受けた理由は特に附則の施行期日にあります

第一条 この法律は、平成二十八年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 第六条の見出しの改正規定、同条に一項を加える改正規定並びに第十三条第一項及び第二項にただし書を加える改正規定並びに附則第四条及び第五条の規定 公布の日
二 第六条の改正規定(同条第二十二項第二号の改正規定及び同条に一項を加える改正規定を除く。) 公布の日から起算して二月を経過した日
三 第六条第二十二項第二号、第十二条第一項第一号及び第五十三条の十四(見出しを含む。)の改正規定、同条に一項を加える改正規定並びに附則第三条の規定 公布の日から起算して六月を経過した日

これ、どういうことかというと、要するに『きちんと宣伝して関係者に準備をしてもらってから施行しないと混乱をきたす、という慎重さが必要な法案である』ということなのだと思います。
例えば労働者派遣法も『この法律は、平成二十七年四月一日から施行する。ただし、附則第十一条の規定は、公布の日から施行する。』とありますし、一方で内容が薄いと批判されている『まちひとしごと創生法案』は『この法律は、公布の日から施行する。ただし、第二章から第四章までの規定は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。』です。

公布の日に施行されるのは『見出し【(定義)から(定義等)へ】の変更』と『厚生労働大臣は、第三項第六号の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、あらかじめ、厚生科学審議会の意見を聴かなければならない。』などのブレーキの内容。

二月経過に施行されるのは、定義等の変更。

六月経過で施行されるのは『厚生労働省令で定める五類感染症も届け出の義務が発生』ということと『結核での家庭訪問指導を行える人が増える』というものだと思います。

要するに、報道されている『感染症の疑いがある患者から強制採血可能』という内容は再来年の四月まで施行出来ないような立て付けの法案のようなのです。
なので、そんな慎重な施行を設定しているような法案を、急いで国会を通過させようとするということは、あまり考えづらいのではないか?と個人的には思います。

5、東京新聞の報道
感染症法改正案 審議遅れる恐れ 国内エボラ対策「政治とカネ」余波』という記事が東京新聞に掲載されていました。
これは24日に掲載された記事ですが、この時点で『政府は法案を参院に提出し、「感染症に関する情報収集体制を強化する。速やかに審議をお願いしたい」(塩崎恭久厚生労働相)と求めている。参院厚生労働委員会で十月末に審議入りする見通しで、今のところ野党から法案自体に反対する声は出ていない。』とあり、何らかの予定の狂いが参議院の審議入りの時点で起こったような記述は散見されていません。
(『野党は政治資金問題などを抱える現職閣僚を引き続き追及する構え。法案審議に時間が割かれるかどうかは微妙だ。参院を通過しても、衆院厚生労働委では労働者派遣法改正案をめぐり与野党が対立するのは確実で、感染症法改正案の先行きは見通せない。』と記事にありますが、これは審議入り以降の話ですので、現在はまだ発生していない予想内容の記述です。)

これらの1~5を総合した結果、審議拒否はまだ存在せず、単純に『参議院厚生労働委員会で、前の法案が存在していたために提出から遅れただけで、前の法案を通過させたので、円満に明日審議入りすることになった』だけだと私は推測します。
ただし、大臣辞任の影響で、新たな大臣の所信表明という手順を衆参二度踏んだために、間接的にいろんな法案の審議が遅れている、ということはあると思いますが。

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