「HIVは、特に男性間の性的な接触によって広がっている。条例ができた場合、話題性もあり、たくさんの人が集まり、HIV感染の中心になったらどうするのか、という議論が市民から出てくる」
「差別の意図はない。支援の必要性は認めている。人権は大切だが全体の利益の中でのバランスが必要だ」
「宝塚に同性愛者が集まってHIV(エイズウイルス)感染の中心になったらどうするのか、という議論が市民から出る」
「女子校や男子校などでは同性カップルが多い。環境によって後天的に同性愛者になる。学校での児童生徒への啓発活動が同性愛を誘発する可能性を否定できない」
「差別する意図はなく、発言を取り消すつもりはない。LGBTへの支援は必要だが、同性婚容認につながる条例制定に反対する立場から発言した」
市のLGBT支援方針について質問。学校での啓発について「教室という密室で、判断能力がない子供たちに啓発することは慎重にすべきだ」と意見を述べた。
質問の中で、エイズウイルス(HIV)の感染経路の7割が同性間の性的接触との新聞記事を示し、「条例ができた場合、『同性愛者が集まり、HIV感染の中心になったらどうするんだ』という議論も市民から起こる」と発言。
この質問、既視感があるなと思ったら『渋谷区での条例議論時のアンチビラ』でした。(参考:同性パートナー条例案に絡み「反同性婚」のチラシが渋谷区でポスティングされる、統一教会との関連指摘も)
冒頭の発言は『HIVは同性愛者だけの病気ではないので、今回の条例がなくてもHIV感染の中心には日本全国なりえます』『同性愛者が集まっただけでHIV感染の中心になるなんてことは無く、性行為などの粘膜接触等で感染する行為だという事をきちんと情報発信します』『「同性愛者が集まる=性の乱れ」というような偏見を無くす事も条例に組み込みます』『検討中の条例は性行為を推進する条例ではありません』『コンドームなどのエイズ啓発も行います』『むしろHIVなどの対策最先端の街になることで、異性愛者にもメリットが有ります』等々の反論が出来ます。
『HIVは、特に男性間の性的な接触によって広がっている。条例ができた場合、話題性もあり、たくさんの人が集まり、HIV感染の中心になったらどうするのか、という議論』の可能性を肯定することは『性的少数者が集うことは全体の利益を損なう』要するに『性的少数者の集まりは、迷惑施設と同等』とこの市議は意思表明しているようなものだと言えます。そのような意思はまさに『差別』と言わざるを得ないのではないでしょうか?
福島原発事故での被害者や性的少数者などの当事者側が『こう思われるのでは』とか『こうなっちゃうのでは』と悩み、その不安を取り上げるのなら理解できるのですが、社会的に多数派(と見せかけているだけ?)の側が劣等感を押し付けるような当事者への拒絶反応を取り上げて見せるのは、『全体の利益』などではなく、単に個人の利益の集合体による、別な個人の利益の否定にすぎないのではないでしょうか?
更に今回の発言で『差別の意図はない』という言い訳が私にとって白々しく聞こえるのは、『そもそも条例がなくても宝塚市にLGBTコミュニティが存在していることを想定してない』『「という議論が市民から出てくる」とあくまでも自分が思っているわけではないかのように装っているが、実際は自分が思っている事を架空の“市民”に代弁させている』『人権は大切だが全体の利益の中でのバランスが必要だという全体の利益にとって性的少数者は邪魔だという趣旨のトンチンカン発言(そもそもここで言う全体の利益って何ですか?)』『「学校での児童生徒への啓発活動が同性愛を誘発する可能性を否定できない」という事を勝手にデメリットのように話しているが、同性愛を誘発することの何が悪いのか?』『「学校での児童生徒への啓発活動が同性愛を誘発する可能性を否定できない」ならば「普段の異性愛を前提とした物々が異性愛を誘発する可能性を否定できない」といわれた場合、どう反応するのか』などという差別以前の問題外な要素がたくさんあるからです。
今回この発言をした大河内茂太市議のような認識の方が少しでも減り、無事宝塚市にLGBT支援条例が出来上がることを祈っております。
HIVについての参考資料
- HIV・エイズって何? | HIV検査・相談マップ
- 平成25(2013)年エイズ発生動向年報
- HIV感染症/エイズとは|STD研究所 性病についてのお悩み解決サイト
- HIVの基礎知識|北海道HIV/AIDS情報
- 世界のエイズ史
- エイズについて|山の手クリニック
- API-Net(AIDS Prevention Information Network) エイズ予防情報ネット
- Futures Japan HIV陽性者のための総合情報サイト
2023/10/12追記
その後、大河内氏は、繁内氏に色々と学んで稲田氏にLGBT支援を働きかける側になっていた、ということを書いていなかったので、追記として触れておきます。ただし、かなり保守的な考え方ですが。
稲田氏にLGBT支援を働きかけ、きっかけをつくった一人が、兵庫県宝塚市の大河内茂太市議(45)=自民党=だった。大河内氏は昨年6月の市議会で、市が検討していたLGBT支援をめぐって「『同性愛者が集まり、HIV感染の中心になったらどうするんだ』という議論も市民から起こる」と発言。誤解を招きかねないとの批判を受けて発言を撤回した後、繁内代表からLGBTの現状や課題を学び直し、今年1月に稲田氏に対策の必要性を直接訴えた。
その流れを受けて自民党の特命委も「考え方」の中で「保守政党たるわが党が果たすべき役割は大きい」とうたいあげ、「性的指向・性自認の多様なあり方を受容する社会」「当事者が抱える困難の解消」を目標に設定。目指すべきものとして「カムアウトできる社会ではなく、カムアウトする必要のない社会」を掲げた。
どういう意味か。
繁内代表は「大多数の当事者は人権問題だととらえているものの、オープンな問題になることを望んでいない」と解説する。
【関西の議論】ジェンダー・フリーと一緒にするな! 保守政治家・稲田朋美氏が先陣、LGBT支援の真意(3/5ページ) – 産経ニュース
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