政党要件を小さくして見てみる

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政党、というものが日本で成立するためには、公職選挙法などに基準が定められている「政党要件」を満たす必要があります。

政党要件で有名なのは、年末の「駆け込み新党」という、政党助成金狙いのように見える形で結党されるときに利用される「国会議員を5人」という要件でしょう。

政党要件にはもう一つあります。

それは、直近の選挙での比例区もしくは選挙区で、総得票数が有効投票の総数の百分の二以上を上回ること、です。

現在の社民党は公職選挙法上は2019年まで、政党助成法上は2022年まで政党要件を維持していますが、これは2016年の参議院議員通常選挙の比例区で総得票率2.74%を確保したことが理由です。

2%の大きさ

さて、総得票数が有効投票総数の百分の二以上、という数字は、実際にはどの程度の規模になっているでしょうか?

直近5つの選挙を振り返ると、以下のような数字になります。
(以下の数字は比例区です。選挙区とは多少ズレがあります。また千の位で四捨五入しています。)

  • 2012年衆議院 約120万票
  • 2013年参院選 約103万票
  • 2014年衆院選 約107万票
  • 2016年参院選 約113万票
  • 2017年衆院選 約111万票

このように、最低でも100万〜120万票が総得票数の2%を確保するには必要となります。
(ちなみに、比例制度が加わった後の選挙で、一番ハードルが上がった選挙は2009年の政権交代選挙で、約141万票必要となっていました。その結果、この選挙で国民新党が約122万票を確保したのですが、この選挙の結果は政党要件を満たせませんでした。2007年の参院選で確保していたのでこの段階で失うわけではないのですが。)

2%について考える

この政党要件に必要な総得票数の2%という数字。

政党要件以外のインパクトとしてどうかを考えるために、ある一つの法則を見てみましょう。

その法則とはランチェスター戦略という、経営戦略にて用いられる「クープマンの目標値」です。

シェアの目標数値(しぇあのもくひょうすうち)
market share targets / 目標管理としての占拠率とそのシンボル数値 / クープマン目標値
10分でわかる! 競争戦略のバイブル「ランチェスター戦略」第2章ランチェスター法則と弱者の戦略
競争戦略のバイブル「ランチェスター戦略」 はじめに ランチェスター戦略とは、企業間の営業・販売競争に勝ち残るための理論と実務の体系です。

上記記事の数字でいうと2.8%拠点目標値が一番近い指標でしょう。この数字に乗ることで参入した勢力はようやく「競争」の土台に乗ることが出来る、競争するための足場となる拠点ができたと判断する、そういう数字だそうです。

新興勢力がまず目指すべき数字が、ランチェスター戦略でいうと2.8%だということのようです。(そこに届かなかったら参入失敗、ということ)

今回私が触れている得票率2%では0.8ポイント足りませんが、政党要件という継続的に戦うための土台を得られるという点では、新興勢力としては同じようなインパクトを与える数字なのではないかと思います。
(一方で、シェアが下がってきた場合の撤退基準となる数字は6.8%であることには注意が必要です。参入後6.8%に乗らないと競争には参加できていない、参加できないという判断を下す必要性が高いということになります)

小さく区切って考えるということ

ランチェスター戦略では、強者はどう戦うと良いのか、弱者はどう戦うと良いのか、という内容が触れられることが多いです。

強者は「真似をして弱者との差異を潰す」ということが戦略としては最適だそうです。(安倍政権…)

一方で、弱者が取るべき基本戦略は「差異化」というのがメインになります。
それだけでなく「局地戦」できるだけ領域を限定して戦うこと、「接近戦」できるだけ顧客と近づいて戦うこと、などが弱者戦略として掲げられていることが多いように思います。

これらを政治の文脈にのせると、局地戦というのは、全国区ではなく選挙区や自治体に区切ってみるとか、政策分野を限定して一部に集中するという戦い方に変換できるでしょう。
(これを書いて思ったのですが菅直人氏とか好きそうですね、ランチェスター戦略。)
接近戦というのは、(選挙運動としては日本では禁止ですが)戸別訪問をできるだけ行うとか、タウンミーティングを行うとか、有権者一人ひとりと政党関係者が直接接触すること、ということに変換できそうです。地上戦ってやつですね。

ランチェスター戦略というのは、「1位の勢力が、一定の規模を確保したら安泰」というのが基本的な考え方なので、狭い領域で1位を確保して安泰な分野を増やすことで、全体的な強者との規模の差を狭めていくことを狙い、やがて順位をひっくり返す、という形にするために市場を小さく区切って考えることを弱者にすすめるわけです。

想像しやすくするため小さく区切る

ただ、ここで私は区切ることの効果として別なことを提案します。
それは、想像が容易になることです。

例えば、国政で得票率2%というと、100〜120万票とかいう数字が出てきて、そんな数字を前にして、有権者一人で何が出来るの?という考えも出てくると思うんです。

でも、これを細分化して考えることで、考えれば良いことが小さくなって、何をしたら良いか見えてくる、というのがあると思うんです。
(ライフハックでは、目標・タスク・習慣を小さくして手を付けやすくする、というのは定番だと思います)

私は、戦略的というより、人間心理的な方面で、そういうことをしたほうが良いと思っているのです。

例えば、120万票というのをいろんな単位で割ってみると、以下のようになります。

120万票÷47都道府県=約2万6000票
120万票÷289小選挙区=約4200票
120万票÷(792市+東京23区)=約1500票
120万票÷1741市区町村=約690票

自治体数(2000-2020)(都道府県データランキング)
都道府県の市区町村の数として、市数、区数、町数、村数、総数についてランキングしました。平成の大合併(2000年)以降毎年12月31日現在のデータです。併せて、前年からの増減数(当該年の増減数)についても一覧にしました。

このようにしていくと、ようやく規模感が手応えのあるものになってくるのではないでしょうか。
(本当は各自治体の有権者数の2%や、過去の投票率を考慮した2%、などを計算して見るのが良いと思うのですが、ここでは簡易的な計算を採用しています。)

更にいうと、これを運動員数で割ることが、組織的な考え方を取ると出来るわけです。(これも組織の大きさが強さにつながる理由ですよね。)

最後に

こういうふうにして、自分への足枷を外してみるというのも、政治参加という観点では重要なことなのだろうと思います。

一方で、選挙などの数字を見るときに、どんなに小さかろうが、こういう積み上げでその数字は出来ているということを、頭の片隅においておいてほしいな、と思うのです。
そういう考え方をする人のシェアが増えることも、個人的には世の中を変える一歩になると思っているので。

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