安保法制賛成デモのビラが杜撰

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このツイートで『拾い物』とされているビラ、どこが作ったビラなんだと思ったら、NHKニュースで『東京・新宿で安保法案に賛成の集会』と取り上げられたデモを主催した『まもにち』という団体が作成し、配布しているビラのようです。

ただ、このビラの内容は非常に杜撰であり『印象操作』まで含まれているように思いますので、そういう点について書いてみようと思います。

 

・集団的自衛権と個別的自衛権について。

このチラシにて『どちらが襲われやすいですか?』という質問の選択肢にされている『集団的自衛権』と『個別的自衛権』。ここで選択肢にされているものと、その言葉を一般的に使うときに指される内容が全く異なっています。

 

『個別的自衛権』

まず、この選択肢で印象操作を行うためにこういう内容にしたとしか思えないものが『B 個別的自衛権』という選択肢です。

 

まず『個別的自衛権』として『スイス、北朝鮮』という国名をあげていますが、これが根本的に間違いです。この例示が私には、永世中立国のスイスや、外交的に孤立気味の北朝鮮を挙げることで(徴兵制なども含め)印象操作を図っているように思えてならないのですが、実際は個別的自衛権は『他国からの攻撃が有った時に、防衛する権利』のことであって、すべての国が利用して良いとされている権利です。なので例示として特定国を挙げる方法そのものが間違っています。すべての国が所持しているものであり、すべての国が使っている権利なのですから。(”他国に”集団的自衛権を使われないまま防衛する、という選択肢ならスイスが例示されるのは正しい。今回の集団的自衛権反対の主張は『自国が』集団的自衛権を行使しない話なのでおかしい。)

 

また、そこから派生して『自国だけで防衛』という要素は、個別的自衛権には存在しません。あくまでも個別的自衛権は攻撃された当事者国のみが行使できる権利、という意味以上のものはなく、複数国が攻撃された場合や、他国が集団的自衛権を使用した際などには、共同して防衛することも個別的自衛権行使国として可能です。(なので逆に集団的自衛権の特徴として「同盟国と一緒に防衛」と書いているのは間違いです。「同盟国”を”一緒に防衛」と書いているなら正しいですが)

 

そして、『単独プレーなので勝手に戦争できる』と書いているのも間違いです。あくまでも「自衛権」ですから、自国を守る以上の反撃はこの『個別的自衛権』で認められた権利には当てはまりません。

このように『個別的』という字面を利用した「孤立自衛」を行うという印象操作を行っているのがこのビラでの「B 個別的自衛権」という選択肢です。(ここまでの批判は、表面の『個別的自衛権でいいのでは?』という設問への回答への批判でもあります)

 

『集団的自衛権』

まず、集団的自衛権というものは『軍事同盟国などの密接な関係にある国が攻撃された時に、それが自国の安全を危うくするということなので、自国が攻撃されているのと同様に反撃する』ということが出来る様になる権利のことです。

そしてこれもまた個別的自衛権と同じくすべての国に認められた権利なのです。あくまでも『スイス』も国家政策として放棄しているだけで、いつでも中立を放棄し、集団的自衛権を行使する、される関係を結ぶ方針にうつることは可能です。そして日本も政策的にこれまでは放棄してきたわけです。権利を行使するかどうかは自国の利益になるかどうかで判断すればいい話なので、自由です。

 

このビラでは例示として(ほぼ全ての先進国:徴兵制廃止)とあるのですが、これも大きな間違いを含んでいます。

現在、集団的自衛権を放棄していない国家でも徴兵制を維持している国はいくつもあります。例えば『ロシア』は規模を縮小しているが、徴兵制を維持していますし、ウクライナやリトアニアなどは徴兵制を復活させています(ウクライナやリトアニアは他国の『集団的自衛権』に頼らない[頼れない]ために徴兵制を使ったといえる。詳しくは『旧ソ連諸国で徴兵制が復活 徴兵制は「ありえない」か?』参照。この資料がビラの表面の「徴兵制は100%ありえません」の反論ともなっていると思う。)。また韓国シンガポールタイノルウェーなんかも徴兵制度がそんざいしています。なので『集団的自衛権=徴兵制廃止』というのは明らかにありえない構図だと思います。

 

また、集団的自衛権の特徴に『軍事費の縮小』とありますが、これも間違いです。それを証明するのはアメリカの存在でしょうか。アメリカが一番集団的自衛権を行使していると覚えているのですが、アメリカは世界の警察というほどに軍事規模が大きく、軍事費も膨大な額になっていて、如何に節約するか、が課題になっていたはずです(そして結局、そういう他国の騒動に絡むのを辞める方向に動いているというのが通説だったような)

要するに集団的自衛権は、活動の幅を広げることになるので、『軍事費縮小』というのはありえず『横ばい~増加』が通常のうごきなのではないか、と思われます。(個別的自衛権だから軍事費縮小というわけでもない)

 

さらに『団体プレーだから勝手に戦争できない』や表面にある『集団的自衛権を認めて戦争になった国は一つもありません』というのも間違いです。まず団体プレーと言っていますが、集団的自衛権を行使するかどうかは、当事者国の判断です。行使までは個人プレーです。実際に冷戦期にはアメリカやソ連等が集団的自衛権を主張し、勝手に他国に派兵したことが何度もありました。そしてそこからどれだけ連携するかも同盟の内容次第です。『集団的自衛権=団体プレー』というのも「集団的」という言葉を使った印象操作だと私は思います。

また、「集団的自衛権を認めて」ではないのかもしれませんが、「集団的自衛権の行使の結果」戦争になったことは普通にあります。それはベトナム戦争です。ベトナム戦争にアメリカが介入した根拠は「集団的自衛権」であったと言われています。また湾岸戦争やイラク戦争にも集団的自衛権は関わっていたりするので『集団的自衛権で戦争にならない』というのは間違いといえるでしょう。というか、むしろ戦争になりそうなときに、同盟国を守る事で自国の利益を守るのが集団的自衛権の重要な要素なのではないでしょうか?

最後に、戦争に巻き込まれない根拠について。後方支援活動について触れていますが(集団的自衛権には関係ないが安保法制ということで触れているのだろう)、これもまた危ういものだと思います。昔、小泉総理が『自衛隊が活動している地域は非戦闘地域』なんて変な答弁を行っていましたが、そんな感じで定義を説明できず、定義に当てはまっているのかも曖昧なまま送られてしまっているのが、現状ではないのでしょうか?

そして、更に今回の法案では『現状戦闘行為が行われていない地域ならOK』というように条件が緩和されています。そこで問題になっているのは『現状戦闘行為が行われていない場所って、将来戦闘行為が行われる可能性高いこともあるんじゃないの?そこは判断しないの?』ということです。更に対テロの場合の危険性も指摘されています。

さらに言えば『危険な状況になったら退去する』とありますが、この『危険な状況』というのはどういう状況なのかも曖昧ですし、薄氷を踏むような逃げなのではないか?そして逃げるということは実質巻き込まれているのではないか?という疑問が私にはあります。

 

このように、このビラには非常に杜撰なところがたくさんありました。そんなビラが安保法制の内容の参考として回覧されているのを見ると、『画像を作って拡散して印象を根付かせたもの勝ちなんだな』という最近のインターネットを見て思っている印象が強化されていくのでした。

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