維新の同性婚の公約はなんだったのか?

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日本維新の会は2022年の参院選にて、検討牧場というコンテンツを作り、課題の放置をしないという文脈で、同性婚について以下のような記述をしていました。

日本以外の主要7か国(G7)では同性婚が認められている中、古い価値観にとらわれ、同性婚の議論が進まない日本。パートナーシップ制度も広まりつつありますが、あくまで戸籍は他人であり、法制度上結婚とは大きな違いがあるのが現状です。

維新は、同性婚を認め、LGBTQなど性的少数者が不当な差別をされないための立法措置を早急に講じることで、多様性を確保。すべての人が自分らしく生きられる社会構築を目指します。

日本維新の会 参議院議員選挙2022 進まない同性婚導入

この文章を素直に読めば、維新は党として、古い価値観で同性婚の議論が止まっている現状を否定し、『法制度上結婚とは大きな違いがある』パートナーシップ制度ではなく、法制度上結婚相当の『同性婚』制度の立法措置をする、と述べているように見えるのではないでしょうか。私はそう読みました。

しかし、少なくとも日本維新の会現代表の馬場伸幸氏は違ったようです。

この同性婚の話題になったのは、馬場伸幸氏が、櫻井よしこ氏がやっているインターネット番組、櫻LIVEに出演したときの、性同一性障害特例法の性別変更要件の生殖不能要件についての違憲判決についてのコメントが発端でした。

また、馬場氏は、性同一性障害の人の性別変更には生殖機能をなくす手術を受ける必要があるとする法律の要件を最高裁判所が憲法違反で無効だと判断したことをめぐり、「戸籍上、女性と女性の間で子どもが生まれることも出てくる。家族が壊れると思う」と述べました。

維新 馬場代表 “岸田首相の自民党内の評価 かなり低下か” | NHK | LGBTQ

私はこれを読んだときに、あれ?家族観みたいな話ししてるけど、性別変更とかの話だけでは済まなくない?と思ったのですが、案の定そうなりました。

この櫻LIVEでの発言について、2023/11/09の記者会見にて記者から質問が飛び、それに馬場伸幸氏が答えましたが、冒頭の2022参院選時の認識を前提にすると、え?と思うような答えが出てきました。

記者 先日、インターネット番組の櫻LIVEに出演されたときに、この判決(=性同一性障害特例法の性別変更要件の生殖不能要件についての違憲判決)の話になったと思うのですが、発言として『こういう事が続いていけば、戸籍上女性と女性で子供が生まれるとか出てくると、むちゃくちゃになってくると思う』『家族も壊れますし生まれた子供もどちらかといえば悪い影響を受けるだろう』という発言をされていたかと思います。この『むちゃくちゃになってくる』とか『家族も壊れる』あるいは『子供が悪い影響を受ける』というのは、どういう思い・文脈で発言されたことになるのでしょうか?

馬場伸幸 日本は戸籍制度がありますから、女性と女性の戸籍のカップルから子供が生まれるということについて、子供がそれをすぐに理解できるかどうかといえば、私は子供ではなかなかそういうことを理解するということは難しいと思います。ですから、一般的な家庭の環境ではない、そういうところに育った場合に、それはいい部分もあるかもしれませんが、必ずメリットデメリットありますから、悪い影響も出てくるのではないか、ということを心配しているということであります。

記者 具体的な心配はあるのでしょうか

馬場伸幸 例えば子供の世界では、やはりそういう差別的なことを相手の立場を慮って控えるということは、なかなか子供の世界ではありません。ですから、子供がそういった差別的な発言を当事者の子供に投げかけるということは簡単に予想ができますから、そういうことを、学校、また地域で言われる当事者の子供が、不快な思いをしないかといえば、私はかなり心身両面に影響があるのではないかと。そういう心配をしている。

記者 同じ番組で大阪のパートナーシップ制度についてご説明されていたかと思うのですが、『そういうところまでいかない防波堤が必要だ、ということで大阪のパートナーシップは形式上認めています。政治の力で防波堤をこれから作っていく必要があるのかなぁ』という言い方をされたかと思いますが、『防波堤』とはどういう意味で仰ったのでしょうか?

馬場 先ほど仰っていただいたように、女性と女性が戸籍上結婚するということについて、戸籍にそれが書かれるということが、果てしない波及効果があると思いますので、影響が出てくると思いますので、そういったところに、まだ日本が踏み込んでいくという状況にないと思いますから、ですから、そういう意味での防波堤と言うんですか。そういった事を望んでいる方が片方にいるのも事実ですから。そういった皆さん方、カップルの思いを受け止める。そういう意味でも防波堤という言い方をさせていただいた。

https://twitter.com/Shoji_Kaoru/status/1722461446498615552?t=sooF7M_ltuZZzYGm_SPTlw&s=19 の動画を文字起こし

記者 女性と女性の戸籍から子供が生まれるということについて問題意識を持たれているということだと思うのですけど、前回の参院選の公約で維新は同性婚については認めるべきと掲げていたと思うのですけれども、性別変更された方とは位置づけが、また違うかもしれませんけれども、同性婚を認めるけれども子供を産む、同性婚の世帯が子供を育てるということについては慎重な立場なのか。そのあたり整理して教えていただければ。

馬場伸幸 この話も先程の繰り返しになりますが、やはり日本は戸籍制度がありますので、同性同士の結婚を戸籍上認めるということについては、かなり、まだクリアしないといけない課題があると思うんですね。ですから、同性の方がパートナーとして一緒に生活をしていくということについて、我々は否定はしません、という意味合いですね。

記者 制度として、政治として新しく作るということには、同性婚制度を作る、法律を変えるということには慎重ということでいいのでしょうか。

馬場伸幸 それは戸籍制度を変えないとなかなか、諸課題が残ると思いますから、そこが解消されない限りは、先程申し上げたようなパートナーシップ制度で、きちんとそういう皆さんの思いも受け止められるような、そういう受け皿を作ると、そういうことです。

https://twitter.com/sorairozch/status/1722524652852187268?t=JJcP2OjEmQEm5hiqBRfXrg&s=19 の動画を文字起こし

この質疑応答を見るに、私には馬場氏が子供と戸籍制度を言い訳にして『古い価値観にとらわれ、同性婚の議論が進まない日本』を肯定したように見えますし、『パートナーシップ制度も広まりつつありますが、あくまで戸籍は他人であり、法制度上結婚とは大きな違いがあるのが現状』と、同性婚と比較して不足しているかのように説明したはずの、パートナーシップ制度を『防波堤』として肯定して、『同性婚を認め』という文言を放棄したように見えます。

そもそも冒頭の参院選当時のページの維新案に『パートナーシップ制度拡大 同性婚実現へ』とあることから、維新の方針は始めから『法制度上結婚とは大きな違い』がないパートナーシップ制度を作る、ということなのかもしれませんが、それならばパートナーシップ制度についての説明がおかしいと思いますし、説明文に『同性婚を認め』とだけ書いてそれがパートナーシップ制度という形を取ることを説明していないのはおかしいのではないでしょうか。(この『同性婚を認め』という文言は政策集にも載っていました)

(そもそも検討牧場は進まない現状を否定する話なわけで「現状」という言葉を使って説明された制度については否定的なはずだと思うのですが。)

また、そういう婚姻制度のような強い法的効力を持つパートナーシップ制度を作ること自体、戸籍制度や婚姻制度との関係で『戸籍制度を変えないとなかなか、諸課題が残る』やらなんやら言われてしまいかねない気がしますが…。

で、さらに思うこととして、『女性と女性の戸籍のカップルから子供が生まれるということについて、子供がそれをすぐに理解できるかどうか』とか言ってますか、そういう「差別的なこと」に戸籍制度関係ないですよね。

戸籍制度なんかなくても同性カップルでの子育てについて差別的な認識を持つのはありえますし、現在差別的な認識を持つ人も一々戸籍制度なんか気にしてなくて、馬場伸幸氏も口にした「一般的な家庭の環境」という認識がそういう話の原因ですよね。

結局、馬場伸幸氏は、子供を盾にして「一般的な家庭の環境」という『古い価値観』を肯定したように見えてしまいます。

(子供を心配するという形式を取ることで、『古い価値観にとらわれる』ことを正当化しているように見える。と言ったほうがいいだろうか)

馬場伸幸氏は2021年の衆院選でのNHKのアンケートでは『同性婚を可能とする法改正』について「どちらかといえば賛成」と答えていたり、毎日新聞のアンケートにも「制度として認めるべき」と回答していましたが、遡って2017年衆院選での朝日新聞のアンケートにて、『男性同士、女性同士の結婚を法律で認めるべきだ』に対して『反対』と回答していました。

[NHK衆議院選挙]堺市中区・西区など大阪17区の候補者アンケート - 衆院選2021 NHK
【NHK独自アンケート】衆議院選挙2021。堺市中区・西区など大阪17区の候補者に聞いたNHKのアンケートを掲載しています。衆議院議員選挙2021(公示日2021年10月19日/投票日10月31日)の情報はNHK「衆院選2021」特設サイトで。
維新 大阪17区 馬場伸幸 | 第49回衆院選 | 毎日新聞
毎日新聞のニュース・情報サイト。2021年 第49回衆院選 候補者の特集ページです。
2017衆院選 候補者アンケート(朝日・東大谷口研究室共同調査) - 朝日新聞デジタル
政党や候補者の政策スタンスが一目でわかる「朝日・東大谷口研究室共同調査」。衆院選、行くつもりだけどどこに投票すれば・・・。このサイトでじっくり見極めてください。

結局、馬場伸幸氏は、本音では同性婚に反対だけど、世論受けが悪いから表向き賛成と言っておいて、戸籍制度などを言い訳に検討し続けることで時間稼ぎきたり、パートナーシップ制度を防波堤として誤魔化そうとしていませんか?

今回のような、『同性婚を認め』といいながら実際はパートナーシップ制度、というようなことをされてしまうと、日本維新が出してくる公約を文言通り受け取れないわけですが、そんな公約を投げてくる政党、対有権者という観点でとても不誠実だと思うのですが。

そんな不誠実な対応をするのが「政党を経営する」結果だったり、市民感覚で物事を考えられる政治の結果だったりするのてしょうか?(確かにめちゃくちゃな顧客対応の企業やら、よく読まないと騙される契約って多々ありますけど…)

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