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有権者が主役か政治家が主役か ~小選挙区制と比例代表制の比較~

2017/04/12 284views

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この記事の所要時間: 536

最終的にはいずれにせよ投票により社会の多様な意見を集約して政府が1つの政策として実施することを考えれば、小選挙区制は有権者レベルの投票でその意見集約を行っている一方で、大選挙区制・比例代表制は有権者レベルの投票では「先送り」し、議会レベルでの投票で意見集約を行っていると言える。

政治行動論という書籍の中で、選挙制度について考察されていたのでご紹介。

なぜ、選挙制度に注目するかというと、選挙制度によって、同じ有権者の選好分布が与えられたとしても、候補者の投票数や政党の得票率、議席数の差が起きる、要するに当選者が変わってしまう程の影響が起きてしまうからです。(機械的効果)

更に、選挙制度はルールですので、プレイヤーたる有権者へ行動に影響を与えます。(心理的効果)

この二つの面が選挙制度にあることを前提にすることで、選挙関連の動きを見る時に面白くなるのではないでしょうか?

一番有名な選挙制度による影響として『デュヴェルジェの法則』というものがあります。

これは選挙区内の候補者数は、次第に「当選者数+1」に収束していく、という法則です。

この法則が一番有名なように、選挙制度で一番大きな影響を与えるのは、選挙区内の当選者数です。

なぜそうなるかと言うと、様々な理由があるのですが、1つ、大きな心理的効果を例示します。

直近の衆院選の大阪14区の選挙結果は以下のとおりです。

無題

この場合、自身が次世代の党支持者だった場合を想像してみてください。

そのまま次世代の党の候補者に投票しても当選可能性は0だと報道で悟ってしまった。

その場合、本当にそのまま次世代の党に投票するのか?それとも次善の候補者を見つけるのか?棄権するのか?

もう一つ例を上げましょう。

同じく次世代の党の支持者だったとして、この愛知5区の有権者だったらどうするか、考えてみてください。

無題

自党に入れるか、次善の候補に入れるか、棄権するか。

で、この時、小選挙区と比例ブロックだと考える枠が違うのが理解できると思います。

小選挙区だと一位にならないと議席獲得にはつながりませんが、比例ブロックだと一定の得票率を獲れば議席獲得につながります。つまり善戦しても意味が無い小選挙区と善戦すれば議席に繋がる比例ブロックという違いがあるのです。

また、参院選とも比較してみましょう。

参院の東京選挙区を御覧ください。

無題

東京選挙区は5議席が割り振られていますが、この場合当選可能性が上がりやすいわけです。得票率10%で当選できるので、当選できるかどうかを最初に考える可能性は、衆院選の小選挙区よりは少ないですよね。下の方の候補の支持者だった場合考える可能性ありますけど。

このように『デュヴェルジェの法則』はどうして発生するかというと、投票する際に人は当選可能性を考えてしまい、「当選可能性=『当選者数+1の順位』に入れるかどうか」で考えるため、結果的に『当選者数+1』の候補者数に近づいていく、という段階を踏むためです。

そして、参院選の東京選挙区で見たように、当選者数の割り振りが多かったり、その選挙区がごちゃごちゃしていて『当選者数+1の順位』に入れそうな候補が多い場合は、『当選者数+1』に候補者が収束する動きが働きにくくなります。

一方、『デュヴェルジェの法則』のように『当選現実性が絞られていく』過程で起きる票の収束に伴い、投票率の低下も起こります。
(次善の候補を見つけずに棄権をする選択肢が存在しているため)

『政治行動論』の中では衆院選の選挙制度が中選挙区制から小選挙区制に変わった1996年以降の選挙5回と、1993年以前の選挙5回の投票率の平均値が載っていて、1993年以前の平均値が『70.9%』であるのに対し、1996年以降の平均値が『63.8%』と7%の減少が起こっているのに対し、同時期の参院選を比較すると全く平均値は変わっていない(どちらも57.7%)という結果となっています。

この結果は小選挙区制になったことで投票率が減少したことを示唆している可能性が高いです
(他にも投票率を左右する要因は存在するため、明確にそうだとはいえない)

昨今、投票率の低下を嘆き、投票率を上げる運動を行っていますが、定数削減を行うなど、制度が当選可能性のある候補者を減らす方向に改正される限り、投票率は低下する一方になるのではないかと思われますが、そこの矛盾を指摘している論説は私の見聞きした中には中々存在しないですね
(比例中心の選挙制度を訴えている共産党や社民党は言及していそうですが)

それ以外にも書籍の中では様々なデータが載っていて、以下の4つの仮説の妥当性が検証され妥当だと判断されています。

  1. 選挙区定数が小さいほど、投票率が下がる
  2. 選挙区定数が小さいほど、特定の政党・候補者に票が集まる
  3. 選挙区定数が小さいほど、候補者の数が少なくなる
  4. 結果として選挙区定数が小さいほど、政治家によって議会に代表される意見の多様性は小さくなる

そして、冒頭に引用した言葉につながります。

小選挙区制は意見集約を有権者レベルで行う制度で、議会レベルでは迅速な意思決定と政策の策定・実施主体の明確化が出来る、というポジティブな効果もある、ともいえる。

小選挙区制は有権者がメインで議論する制度で、大選挙区制は政治家がメインで議論する制度、と言えるのです。

この事を考慮した上で、どちらが良いと考えるかは各人次第なのでしょうが、とりあえず現状は小選挙区制であり、参院選も定数削減で定数1議席の選挙区が増えている(それどころか合区で選挙区自体も減っている)状態なので、有権者が自ら議論をして選択肢を検討する形にしないといけない、政治家に多様性を期待してはいけない状態である、という事がいえます。

それを考慮して行動しないと、政治に関する分野が機能不全に陥る可能性が高いです。

しかし、有権者側も政治関連の優先順位を上げることが出来ず、そういう知識や行動をふやす事が出来ない可能性が高いわけで、その優先順位をいかにあげられるようにするか、というのが小選挙区制を機能させるための大きな課題なのかもしれません。

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