Twitterをうろついていたら、『「レジ袋禁止」にしたら、むしろゴミが一気に増えた理由』という記事に対してたくさんの反応があるのを見つけました。
しかし、その反応の殆どが、記事の中身を都合よく読んだものであるような気がしたので、ブログで触れてみます。
Twitterでは以下のような日本の環境省批判をするような反応が大多数のようでした。(ここでピックアップしたアカウントがおかしいという話ではなく、ここでピックアップしたアカウントは大多数の一部でしかありません)
この反応は記事の前半のレジ袋が運搬コストや生産コストについてはエコであるということを解説した部分を読んで、そこをピックアップしてそういう反応になっているようです。
消費者はおそらく、①紙袋の利用を増やす、②エコバッグを持参する、③袋を使わなくなる、のどれかの行動を取るだろう。 ここで、最初の驚きがやってくる。紙袋やエコバッグは、水路に入り込まないという点ではレジ袋よりずっと優れているが、劣っている点もあるのだ。
それらはレジ袋より嵩も重さもあるので、製造と輸送にずっと多くのエネルギーを消費し、炭素排出量が増える。イギリス環境省は、さまざまな種類の袋を1回使用するごとの環境負荷を算出し、紙袋なら3回、綿のエコバッグなら131回使わなければ、レジ袋よりもエコにならないとしている。
おまけに紙袋やエコバッグの製造過程は、レジ袋に比べて大気や水質を汚染する物質の排出が多い。レジ袋に比べてリサイクルもずっと難しい。
そんなこんなで、部分と全体の利益相反の問題が生じる。河川や海の生物の保護が主な狙いなら、レジ袋を禁止するのは得策だ。だが環境全体の改善をめざすなら、得策とは言い切れない。相反する影響を考え合わせる必要がある。
「レジ袋禁止」にしたら、むしろゴミが一気に増えた理由 | 上流思考 | ダイヤモンド・オンライン
たしかに製作過程や運搬コストなどの環境コストは批判されているのですが、『河川や海の生物の保護が主な狙いなら、レジ袋を禁止するのは得策だ。だが環境全体の改善をめざすなら、得策とは言い切れない。』というように、レジ袋を減らすことでの環境保護について全否定しているわけではないのです。
更にいうとエコバッグや紙袋もリサイクルには課題がありますが、少なくとも繰り返し使う回数きちんと使えば環境負担が減らせるという点も落としてはいけないでしょう。131回というのは、毎日買い物するとしたら4ヶ月半の買い物をエコバッグに代替すると満たせる話です。これは人によって、もしくは生活の仕方によっては達成できるやり方なのではないでしょうか。
また、この記事は『コンビニ袋禁止』についての改良が必要であるという記事であることが、ここから読み進めた先でわかる記述が続くのです。
記事ではシカゴで禁止したところ、店側が分厚いレジ袋を再利用できるとして使ったものの、客側が全く再利用しなかったからゴミが増えたという事を例示したり、ほかにも以下のカリフォルニアの話を引いています。
カリフォルニア州では2016年に住民投票でレジ袋の全面禁止が決まった。厚い袋の抜け穴もなかった。だが禁止後に、今度はゴミ箱用の小さいポリ袋の売上が急増した(おそらく店から持ち帰ったレジ袋を、家のゴミ袋にしたり、飼い犬の糞を拾ったりするのに使っていた人が一定数いたのだろう。だからレジ袋がなくなると、代用品を買い始めた)。
経済学者レベッカ・テイラーの研究によると、このケースではレジ袋禁止によってプラスチックゴミは削減されたが、ほかの袋の使用が増えたせいで削減効果の28.5%が相殺されたという。
だがたとえそうだとしても、相殺されたのは100%ではなく、28.5%にすぎない。禁止によって使い捨てのプラスチックゴミが大幅に減ったことは間違いない(おまけに、この問題を分析するために誰かがレジ袋の代用品の売上を注意深く追跡してくれたおかげで、フィードバックの情報源が1つ増えた)。
「レジ袋禁止」にしたら、むしろゴミが一気に増えた理由 | 上流思考 | ダイヤモンド・オンライン
『だがたとえそうだとしても、相殺されたのは100%ではなく、28.5%にすぎない。禁止によって使い捨てのプラスチックゴミが大幅に減ったことは間違いない』と書いているように、そもそも禁止の一定の効果が認められています。
で、この禁止の改良案としてでてくる事例が、日本でのこの記事への反応が後半の内容を無視した反応であることがわかります。
シカゴでは2016年に、むしろプラスチックゴミを増やす結果になったレジ袋禁止条例が廃止された。代わって市議会は、レジで配布される紙袋とレジ袋1枚につき7セントの税金を徴収することを決定し、2017年初頭から実施している。効果はどうだろう? それが結構うまくいっているのだ。
経済学者のタティアナ・ホモノフ率いる研究チームが、数軒の大規模食料品店から収集したデータによると、税金導入前に紙袋やレジ袋を使っていたのは買い物客の10人中約8人だったが、導入後は10人中約5人に減った。袋を使わなくなった3人はどうしたのか?
半数は持参したエコバッグを使い、半数は購入品を袋に入れずに持ち帰った。そして袋を使い続ける5人が税を払ってくれるおかげで、市民サービスの原資が増えた。
シカゴはまず薄いレジ袋を禁止することによって、実験を行った。最初は失敗したが、失敗の理由はわかった。そこで別の実験を行い、成功したのだ。失敗したやり方を、今後ほかの市が繰り返さないことを願いたい。
「レジ袋禁止」にしたら、むしろゴミが一気に増えた理由 | 上流思考 | ダイヤモンド・オンライン
レジ袋禁止令の改良したものは『レジ袋に税を課す』という有料化案であったわけです。
日本ではこれと比べるとレジ袋に載せられてる料金が税にはなっていない部分がこの話とは違うため『そして袋を使い続ける5人が税を払ってくれるおかげで、市民サービスの原資が増えた。』の部分が実現できていません。
が、この記事の内容でいうと『税金導入前に紙袋やレジ袋を使っていたのは買い物客の10人中約8人だったが、導入後は10人中約5人に減った。』の部分は単なる有料化でも実現できそうとは言えるように思いますし、この記事を引きながら単純に無料化しろという発信をするのは、この記事を最後まで読んでいるのか疑問を抱きます。
この記事は私には『レジ袋に対して減らすなどの何らかの対策が必要』『全面禁止にすると逆効果になることも』『禁止ではなく税金を乗せる緩やかな形に改良するといい感じになってるっぽい』という記事に読めますが…
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