新党改革は10日、夏の参院選東京選挙区に新人で女優の高樹沙耶(本名・益戸育江)氏(52)を擁立すると発表した。高樹氏は東京都内で記者会見し、「医療用大麻の使用の実現、脱原発を訴えていきたい」と述べた。
同党はまた、比例代表にいずれも新人で会社役員の藤岡佳代子氏(50)と橘高薫子氏(46)を擁立することも決めた。
さて、新党改革が正式に候補者の擁立を表明しました。
益戸育江氏は東京選挙区に出馬するとのことで、正直東京選挙区は『与党3野党3』という住み分けが出来てしまいそうな気配があるので、そこに一石を投じるぐらいの活躍を見せて欲しいです。
ちなみに、比例代表に擁立すると表明された2名、藤岡佳代子氏は2013年の参院選にてみんなの党から愛媛選挙区に立候補していた方で、橘高薫子氏は2015年の新宿区議会議員選挙に維新の党から立候補していた方だと思われます。
さて、幾つかの新党改革を巡る報道で『参院選で選挙区、比例で計10人程度を擁立する方針』という記述があります。この記述に私は違和感があります。
“10人程度”という記述だと10人を下回る可能性があると取れますが、新党改革の場合、比例名簿を提出するという前提がある以上、10人を下回ることは考えられないからです。
なぜ考えられないかというと、新党改革の場合、比例名簿を提出するために必要な、公職選挙法上の政党要件を満たしていないからです。
そして、公職選挙法上の政党要件を満たしていない場合、参議院議員選挙で比例名簿を提出するためには10名以上の候補者を擁立する必要があるのです。
この理由をみて、1つ疑問を覚える方も居るのではないでしょうか?
新党改革は政党要件を満たしているから、毎年政党交付金をもらっているんじゃないのか?と。
確かに新党改革は、今年も約1億円の政党交付金を受け取っています。しかし、公職選挙法上の政党要件は満たしていないのです。
どういうことかと説明しますと、政党交付金を受けるための『政党助成法』上の政党要件と、選挙活動等で政党として認められるための公職選挙法上の政党要件は、微妙な違いが存在するのです。
その証拠として以下に二つの政党要件を抜き出して掲載してみます。
公職選挙法八十六条の三の政党要件(参院の比例の要件。衆院だと三の部分が変わります。)
一 当該政党その他の政治団体に所属する衆議院議員又は参議院議員を五人以上有すること。
二 直近において行われた衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙若しくは比例代表選出議員の選挙又は参議院議員の通常選挙における比例代表選出議員の選挙若しくは選挙区選出議員の選挙における当該政党その他の政治団体の得票総数が当該選挙における有効投票の総数の百分の二以上であること。
三 当該参議院議員の選挙において候補者(この項の規定による届出をすることにより候補者となる参議院名簿登載者を含む。)を十人以上有すること。
政党助成法第二条の政党要件
一 当該政治団体に所属する衆議院議員又は参議院議員を五人以上有するもの
二 前号の規定に該当する政治団体に所属していない衆議院議員又は参議院議員を有するもので、直近において行われた衆議院議員の総選挙(以下単に「総選挙」という。)における小選挙区選出議員の選挙若しくは比例代表選出議員の選挙又は直近において行われた参議院議員の通常選挙(以下単に「通常選挙」という。)若しくは当該通常選挙の直近において行われた通常選挙における比例代表選出議員の選挙若しくは選挙区選出議員の選挙における当該政治団体の得票総数が当該選挙における有効投票の総数の百分の二以上であるもの
太字の部分に注目していただきたいのですが、公職選挙法上の政党要件では単に『直近において行われた(中略)参議院議員の通常選挙』となっているのに対し、政党助成法上の政党要件では、それに加えて『当該通常選挙の直近において行われた通常選挙』というものも含むのです。
この『当該通常選挙の直近において行われた通常選挙』というのは、要するに直近の選挙のひとつ前の選挙を示します。現在で言うと2010年の参議院選挙のことになります。
新党改革は2010年の参議院議員選挙では、比例で1議席を獲得(現在代表の荒井広幸議員が当選)し、政党要件を満たす得票率2%を満たしたために政党交付金を受け取ることが出来ます。
しかし、その選挙の結果は公職選挙法上の政党要件では、2013年の参議院議員選挙を経たあとは“直近”ではなくなるために使用できません。
そして、2013年の参議院議員選挙では新党改革は出馬をしていないのでこの時点で参議院議員選挙では公職選挙法上の政党要件は満たすことができなくなりました。
また2014年の衆議院議員総選挙で、東京選挙区に新党改革は東京選挙区に比例名簿を提出していますが、この時点で新党改革は公職選挙法上の政党要件を失っていたために、『当該選挙において、この項の規定による届出をすることにより候補者となる衆議院名簿登載者の数が当該選挙区における議員の定数の十分の二以上であること。』という名簿提出要件を満たす必要がありました。その結果、新党改革は4名を比例で擁立することに。
(東京ブロックは17名が定数なので、3名以上の擁立が必要。ちなみに政党要件をみたいしている政党の例として、社民党が石川大我氏1名のみで比例名簿を提出している。)
しかし、その4名は知名度が全くない候補者だったため、選挙結果は幸福実現党にすら得票数で負ける大惨敗。もちろん公職選挙法上の政党要件を回復するには至りませんでした。
ちなみに、この2014年の衆議院議員総選挙の時に新党改革が政党助成法と公職選挙法での政党要件のズレに嵌っている事が報道されていたことが、日経新聞のサイトにて確認できます。
日本記者クラブによると、1日の党首討論会の対象は公職選挙法で「政党」にあたる団体の代表とした。このため、党首討論会に参加したのは8党で、政治資金規正法と政党助成法では政党にあたる新党改革の荒井広幸代表は参加しなかった。
公選法は第86条で「政党」の要件を(1)国会議員が5人以上(2)前回の衆院選または参院選で有効投票の2%以上を得ている――のどちらかを満たすことと規定。政治資金規正法と政党助成法は得票率の対象となる参院選を前々回のものも含むなど、法律によって「政党」の定義が異なる。
公選法で「政党」にあたらない場合、小選挙区と比例代表との重複立候補も認められない。新党改革は「(政党要件が)総務省は整理できていない」として、公選法のあり方に異議を唱えている。
新党改革、公選法上の政党要件満たさず 重複立候補も禁止 2014/12/1 19:36
個人的にはこの政党助成法と公職選挙法での政党要件のズレはどうしてこうなった?としか言いようが無い気がします。
新党改革以外には引っかかった政党の存在を知らないですし、引っかかる政党は所詮『小政党』の部類なので、改正を訴えても国会では話題にならないのだと思うのですが、私は政党要件は統一したものに整理すべきであると思います。
政党要件というのは国政の様々な行動に対し関わってくるので、こういう微妙なズレによって面倒くさいことになるのは避けるべきでしょう。
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