韓国で2024/04/10に総選挙の投開票が行われます。
それに先駆けて、日本で言う期日前投票が行われていたのですが、今年も比例代表の投票に関する混乱?の話題が韓国ではいくつか報道されていたようです。
韓国では、2019年に選挙制度が改正され、選挙権を得る年齢と、比例代表の議席配分方法に関しての制度変更が行われました。
この議席配分方法の変更に関する動きで、韓国の有権者に混乱をもたらす動きが出てきてしまっているのです。
議席配分方法の変更について。
韓国では、2020年の総選挙から比例代表の議席配分の計算方法について『準連動式』を導入し始めました。こま
細かい計算方法については、日本の国会図書館が出している『外国の立法』の『No.283-2 (2020年5月:月刊版)』にある『【韓国】選挙制度改革―選挙権年齢の引下げと議席配分方式の変更― (PDF: 1180KB)』を読んでほしいのですが、ざっくりいうと、小選挙区で議席を得るほど比例代表分の議席配分が減り、小選挙区で議席を得られない政党への比例代表の議席配分が(以前の制度より)増える、という方向になるはずの制度変更でした。
しかし、この制度変更に関して当時野党であった右派勢力(自由韓国党など。その後未来統合党となる勢力)が反対し、形骸化させるために『衛星政党』と呼ばれることになる比例代表専用の政党(未来韓国党)を作ってしまい、与党(共に民主党)も、それに対抗すべく、共に民主党も「比例連合政党」という他の小政党と連合したという体での衛星政党を作ってしまい、結局なんの意味もない選挙制度改革となってしまいました。
しかも、韓国の比例の投票用紙は、政党名と番号が書いてある一覧が載っていて、政党の名前の隣りにある空欄に判子を押すという形式になっているのですが、本来の政党が掲載されず衛星政党が掲載されることになり、本来一番見やすい先頭の1番と2番に「共に民主党」と「未来統合党」があるはずが、1番と2番が欠番となり3番から政党が並ぶという事態になってしまい、「私が投票したい政党はどれ?」となる有権者が多々いたらしいのです。ちなみにこの衛星政党による制度の骨抜きと混乱は今回も発生しています。
立候補政党の激増
一方、比例代表制度が変わったためか、比例代表に名簿を提出する政党がとても多い数となっています。
韓国の政党法では、日本の都道府県支部にあたるであろう市道党を5つ以上もち、その市道党には党員が1000人以上いないと政党として登録できないという制限があります。(国会図書館 レファレンス 平成17年1月号 「韓国の政党・政治資金制度―政党法・政治資金法の概要−」参照)
また、比例代表の阻止条項として、小選挙区での当選5名以上、もしくは得票率が有効得票総数の3%以上ないと議席配分されません。
しかし、比例制度が注目されているからか、大量の政党が登録されています。
具体的な数字をだすと、2020年の総選挙では35政党、今回の2024年の総選挙では38政党が登録されました。
その結果、政党が一覧で載っている投票用紙が「51.7cm」になったとして、投票用紙の長さを図った画像を載せたウェブニュース記事がいくつも韓国では書かれたようです。
ちなみに、最大69政党が並ぶ可能性があるみたいな記事を事前に東亜日報が書いていました。
衛星政党を通じて比例代表を出す2大政党を除く69ヵ所がすべて比例代表候補を出せば、有権者が受け取る投票用紙は88.9センチになる見通しだ。投票用紙の上下余白(6.5センチ)と記票欄(1センチ)、区分区間(0.2センチ)を合わせた数値だ。第21代総選挙では35の政党が比例代表候補を出し、投票用紙の長さは48.1センチだった。第20代総選挙(21政党)では33.5センチ、第19代総選挙(20政党)では31.2センチだった。
比例投票用紙、野球バットより長い89センチ | 東亜日報
比例代表候補を出す政党が50ヵ所を超えると、開票時に紙を記号別に分類する分類器はもとより、紙を数える計数機も使えないため、開票が遅れる事態が発生するものと予想される。分類機は34政党、長さ46.9センチを超えると使用できず、計数機は50政党まで処理できる。選管委が政党数の増加に備え、174億ウォンの予算を投入して新型の分類機と計数機を導入したが、無駄になる可能性がある。
記事に書いているように改正前の選挙は21政党であったわけで、そこから倍近く増加した形となります。どれだけ当選を目指す政党があるかはわかりませんが…
ちなみに、日本だと1989年の参院選に40政党、1992年の参院選に38党が比例代表に並んだことがありました。(UFO党とか日本愛酢党などがありました。)
しかし、近年ではほとんど比例代表に小政党が出てくることはなく、産経新聞が7政党ミニ政党が出てきただけで「ミニ政党乱立」と書くくらいインパクトが出てしまう状態になっています。(数というより、当選圏内に入ってくる政党が存在していたことが書かれた理由でしょうが)
一方、参院選の東京選挙区が当選枠が多いため候補者が乱立することが多く、2022年は34名、2016年は31名が出馬していました。
ここまで選択肢が多いと、なかなか一つ一つを知ろうとする意欲を削られる人も多いのではないかと思うのですが、どうなのでしょうか…
(台湾の『「小民参政欧巴桑聯盟」(こども参政おばさん連盟:Taiwan Obasang Political Equality Party)』のように、見所のある政党も出てくるでしょうが)
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