アメリカ下院にて、議長を決める流れで近年では異例の事態が起こっているようです。
【ワシントン=坂口幸裕】3日開会した米連邦議会は、野党・共和党が過半数を握った下院の議長選で、1回の投票で選出できない100年ぶりの事態に陥った。同党のマッカーシー院内総務の議長就任に反対する議員が造反したためだ。共和の迷走は、超党派による政策調整を一段と難しくする恐れがある。
3日には下院議長選の投票が3回実施されたが、本命視されていた共和のマッカーシー氏は1~2回目は203票、3回目は202票にとどまった。共和は下院で222議席を持つが、約20人の造反が出て過半数の218に届かなかった。
4日に投票を再開し、出席議員の過半数を得る候補が出るまで繰り返す。1回目の投票で下院議長を選出できなかった直近の例は1923年で、3日間におよんだ9回目の投票で決まった。
同じ共和にもかかわらず、マッカーシー氏の対抗馬となったジョーダン氏に賛成票を投じた約20人は下院に30~40人ほどいる保守強硬派「フリーダム・コーカス(自由議連)」に所属する議員が多い。フリーダム・コーカス議長のペリー氏はマッカーシー氏について「現状を変革する意欲を示せなかった」と断じた。
米共和党、下院議長選で迷走 保守強硬派が造反: 日本経済新聞
このように、議長選が接戦で多数を握った共和党の内輪もめで決まらず、なんども投票を繰り返す事態になっているようです。
今回反対しているのは引用した日経の記事に書いてある通り、共和党の中でも最右派と言えるような集まりでティーパーティ運動も源流にあるような議連に所属する人たちのようです。
しかし、造反者が投票している先であるジムジョーンズ氏本人は、今回マッカーシー氏に投票しているらしく、投票先は誰でも良く、とにかく議長決定を妨害して自らの要求を通したい、的な雰囲気が強そうです。(終わりのないフィリバスター的な・・・)
続けて行われた2、3回目の投票では、ジョーダン氏自身がマッカーシー氏の応援演説に立って同僚議員の説得を試みたが、ビグス氏や他候補を支持していた議員らはジョーダン氏に投票した。
米下院議長選、共和内紛で100年ぶり再選挙 トランプ氏影響力低下 | 毎日新聞
で、どんな要求があるのかな、と調べていると、どうもアメリカ国内では済まない影響が出る可能性があるようで・・・。
懸念されるのは、ウクライナ支援の縮小です。
というのも、造反議員の多くは、ウクライナに巨額の支援を続けることに批判的な発言をしてきています。
先月、この議事堂にゼレンスキー大統領が来た時も、造反議員の多くは欠席したり、ツイッターで批判を書いたり、出席しても拍手も立ち上がりもせず、スマートフォンを見ながら、無言の抗議を示す光景も見られました。
マッカーシー氏は、造反議員の主張を知っていますので、これまでに2回「ウクライナに白紙小切手は切らせない(=無制限にお金は渡さない)」と公言してきましたが、さらに踏み込んだ対応を示す可能性があります。
ただ、造反議員に配慮するあまり、ウクライナの“生命線”とも言える、アメリカの巨額の軍事支援が今後、縮減することにつながるのかが、注目されます。
【報ステ】「ウクライナ支援縮小も…」100年ぶり“異例事態”米議会混乱の意外な影響
このようにウクライナ支援について反対することが要求される可能性があるのではないか、ということが言われているようです。(ただ、現在は議長解任投票を容易にできるようにすることなどが話し合われているようですが)
ウクライナ支援について共和党が反対気味なのは、昨年末のゼレンスキー氏の訪米演説時にも言われていました。
しかし、共和党強硬派の一部は支援を打ち切り、資金がどのように使われているか検証するよう求めている。
下院の保守強硬派「フリーダム・コーカス(自由議連)」に属する共和党のアンディー・ビグス議員はゼレンスキー氏訪米の数時間前に「もはやウクライナに白紙小切手は切らない」とツイート。
共和党の中でも最も強硬なローレン・ボーバート、マット・ゲイツ両下院議員はゼレンスキー氏の演説中、周囲が立ち上がって拍手を送る中でも座ったまま携帯電話に目を向けていた。両議員はその後、ウクライナへの追加支援は支持しないと記者団に述べた。
一方、多くの共和党議員は、監視を強める必要があるものの、支援は続けなければならないとの考えを示した。
ゼレンスキー氏、米共和党の支援消極派に協力訴え 新議会控え | ロイター
で、このウクライナ支援に反対する共和党の一部議員、の報道で個人的に印象に残っている報道があります。それが以下の記事です。
米下院共和党のマージョリー・テイラー・グリーン議員率いる極右議員らは17日の記者会見で、ウクライナ支援に反対する意向を明言した。今後の党内対立を予見させる会見となった。
米下院共和党の極右議員ら、ウクライナ支援の打ち切りを模索 – CNN.co.jp
これらを見て思ったのが「え?あのマージョリー・テイラー・グリーンが議員率いてんの?」ということで。
マージョリー・テイラー・グリーンという政治家は、トランプが作った流れであるMAGA系の議員の中でも極端なことを言っている人、という感じで、選挙アピール映像として、Socialismと書いた車に銃を発砲して爆破させる映像を作っていたり、映像でも名前が出ているナンシーペロシ氏に対し死刑や銃撃を望むような言動を行っていたり、コロナ関連の発信でTwitterアカウントを凍結されたり、2012年にコネティカット州ニュータウンのサンディフック小学校で起きた学校銃乱射事件をねつ造だと主張したり、QAnonを信じているような、そんな方です。
BBCの記事にあるグリーン氏の「共和党にとっての本当のがんは、潔く負けることしか能のない弱腰の共和党議員たちだ。」という言動から見えるように、(銃規制論者に対しても嫌がらせをしていましたが)どんな手段でもいいから相手を蹴落とすと言うのが、グリーン氏の信条のようです。
個人的にこの信条は杉田水脈氏に近いのかなと思ったり、あと最近。掛谷英紀が、日本のQAnon的な情報の元になっている大紀元の連載で「左翼には良識がないので、右翼も良識を捨てましょう」みたいな内容の事を書いているのを見つけてしまい、そういう流れは日本にもあるよな、とは思いました。
ですが、さすがに議員を率いるのは・・・と思ったところで、青山繫晴が議連トップとしていろいろ動いてるのを思い出して、日本も変わんないか、と思ったりしたのでした。
今年は、こういう勢力への批判が少しでも増える一年になるといいですね・・・
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