「福井モデル?(家でもマスク)」に専門家は何を思うか

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先日、福井県知事が菅総理に呼び出され面会し、福井県で行われたコロナ感染者への調査の結果について説明していました。

そこで、福井モデル、なるものが出てきたようです。

会談の中で杉本知事は、4月の県内の新規感染者286人のうちおよそ85パーセントは“マスクなしの会話”または“接触”によって感染したことが確認されたとする調査結果を菅総理に伝えました。さらに・・・

 「会社の中でも更衣室でも、たばこを吸う時も、お話はマスクということを福井県は徹底している」(福井県 杉本達治知事)

 “話をする時はマスク”と呼びかけ、マスク会食を推進する飲食店には10万円の奨励金を交付するなど、“福井モデル”と呼ばれる独自の取り組みを行っている福井県。

 「頑張っている人には積極的にお金がもらえる。インセンティブ、前向きなことに経費を使っていく、もしくは皆さんに声をかけていく。そのためにもエビデンスの数字をしっかりと皆さんにお伝えするということが大事」(福井県 杉本達治知事)

 「家の中でもね、マスクをつけていればいいということだね。これから専門家に議論してもらう」(政府関係者)

 政府は、“福井モデル”を国の対策に反映できないか検討に入っていて、今月末に期限を迎える東京などへの緊急事態宣言の“出口戦略”にも影響しそうです。

「話す時はマスクを」“福井モデル”に菅首相が関心|TBS NEWS

この報道をみて、まず気になったのは「家の中でもマスクをつけていればいいと言うことだね」とさも初めて知ったかのようなコメントを「政府関係者」が発している点です。

この「家の中でもマスク」というのは、2020年5月4日に専門家会議が「新しい生活様式」というものを発表した中に入っていたものです。

新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践例を公表しました
新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践例を公表しました

「□外出時や屋内でも会話をするとき、人との間隔が十分とれない場合は、症状がなくてもマスクを着用する。ただし、夏場は、熱中症に十分注意する。」というものが、該当します。

これの根拠が福井県から出てきたと言うことなのでしょうが、少なくとも家の中でもマスクについては「専門家に議論してもらおう」という段階はもう過ぎているのではないかと思います。

ただ、この「専門家に議論してもらおう」と言っているものが別なものの可能性もあるようです。

 福井県が進める新型コロナウイルス対策と経済活動再開の両立を図る取り組みを聞き取り、緊急事態宣言などの「出口戦略」を探る狙いがある。

 福井県では、新型コロナ対策として、感染経路を割り出す積極的疫学調査に力を入れている。その結果、4月の感染者286人のうち、242人(約85%)の感染原因が「マスクなしの会話」によるものと特定。感染対策にマスクが極めて有効と判断し、マスク会食の推進店に10万円の奨励金を交付し、「Go To イート」事業の食事券利用を容認するなど、独自の経済再開策を行っている。

首相、感染対策と経済両立の「福井モデル」に関心…知事説明に「こういうデータは初めて」

このような、経済を動かしながらの「ウィズコロナ」をどう設計するかの話として「マスクを奨励すれば大丈夫」という仮説を採用したいと言うことなのかもしれません。

個人的には、神奈川県のマスク飲食推奨制度を思い出します。

お店や施設等での感染防止対策
お店や施設等での感染防止対策についてご案内します。

 申請時に条件を満たしていると判断すれば認証するが、その後、県民から募集する「県民モニター」らに定期的に店を訪問してもらい、店の対応や他の客がマスク飲食しているか確認する。口コミ投稿用サイトの書き込みも参考にする。徹底されていなければ県職員が「助言」に行くという。

 県は、マスク飲食の「完全実施」を確認した店を、時短営業の対象から外せないか国と協議する方針を明らかにしている。「完全実施店」に当たるか判断するマニュアルを今後つくる。

これがコロナ対策の切り札に? 神奈川県が「マスク飲食店」に認証制度 無料配布などに7億円

マスク飲食推奨自体は正直、そもそも飲食をするなという選択肢を削除していることについては悪影響がある気がするのですが、その選択肢が経済重視である政権・企業・国民を前提にすると、妥協案としてマスク飲食推奨となるのは、仕方ないのかな、という気はしています。
あくまでも「仕方ない」ですが。

ただ、仕方ないではなく、「これが経済とコロナ対策両立できる最高の案です!」みたいに推進し始める可能性が高いように思え、そうなった際に、分科会の専門家の方々はどういう反応になるのか、個人的に非常に気になります。

専門家以外に、気になるのは、この都合のいいデータが見つかって嬉しそうな菅義偉総理大臣の姿勢です。

今回、福井県知事が首相官邸に訪れることになったのは、どうも首相側が乗り気だったからのようなのです。

 翌日、菅総理が会ったのが福井県の杉本知事でした。杉本知事は17日に出演したTBS系の情報番組の中で、菅総理から招かれた経緯を明かしています。

 「総理に金曜日の朝にメールでご連絡したらですね、すぐにご本人から電話が来まして、それで明日、土曜日に話を聞かせてよと」(福井県 杉本達治知事)

「話す時はマスクを」“福井モデル”に菅首相が関心

コロナ対策で政府と県が連絡を取り合う中で調査結果が話題になり、首相サイドから面会要請を受けたという。

感染者の85%「マスクなし会話」 福井県調査結果に首相関心

この、興味を持っていきなり話を聞きたいと言い出しているのが、どうも「都合のいい話にばかりに食いついていく」様子に見えてしまってしょうがないんですよね。

以下の時事通信の記事の書き方は、そういう印象が特に強い書き方のように思います。

 杉本氏は県内感染者のうち85%が会話や飲食時にマスクを着用していなかったとする県独自の調査結果を説明。首相は「こうしたデータが出てきたのは初めてだ」と関心を示したという。

 調査は今年4月の県内感染者を対象に感染経路を確認したもの。首相は飲食の際も会話時はマスクを着ける「静かなマスク会食」を国民に呼び掛けてきた。調査で正しさが裏付けられた格好で、杉本氏は面会後、記者団に「非常に合点がいったのだろう」と語った

福井、感染8割「マスクなし」 杉本知事が菅首相に報告

なぜそういう印象が強いかと言うと、こういう自己の正しさが裏付けられる情報への食いつきの強さと、過去にコロナ対策の情報を挙げた政治家などへの対応の温度差を感じるからです。

 菅首相は、コロナ対策の司令塔を担う西村康稔大臣とも溝が深まっている。

 最近の西村氏は全国で感染が急拡大している現状を見据え、政府の新型コロナ分科会の尾身茂会長とともに、首相により厳しい対策を取るよう日に影に求めている。

 しかし首相は12月上旬、気の置けない党内の若手議員と会食した際、「Go To トラベル」を全国一斉に即時停止するよう暗に求めた西村氏への不満をまくし立てたという。

「新幹線や飛行機に乗って移動することが感染を広げるわけではないでしょ。旅先だろうが日常生活だろうが、大人数の会食やマスクの非着用や取り外しが感染拡大の理由であることには変わりない。なのに医者たちは、感染者がゼロになるために最適な手段ばかり考える。最近の西村は『医者の側』に行ってしまった」

 政治家ならば、一定のリスクを負っても経済不況を忘れてはならない――。言下にこう言いたかったのだろう。

 西村氏は12月13日夕、官邸で首相と加藤氏、田村憲久厚生労働相を交えた協議に臨み、尾身氏の助言をもとに、「年末年始の人の移動を極力抑えなければならない」として、全国一斉の運用一時停止に踏み切るよう強く求めた。

 しかし、当時の首相はこの場で難色を示したばかりか、西村氏に北海道が感染拡大のピークを越えたとして、事業を一時停止している札幌市の規制を緩和できないか打診したという。西村氏は、「そんなのは世論が持ちません」と激高。

 結局、首相は提案を取り下げ、翌14日に28日から1月11日まで事業を全国一斉に一時停止することを発表した。

「軍師不在」で「裸の王様」菅首相の機能不全 深層レポート 日本の政治(216)

 「こんなんじゃ話にならないんだよ」

 昨年12月上旬、首相官邸の執務室。菅義偉首相が発した怒声に、その場は凍り付いた。

 財務省主計局長の矢野康治は、脱炭素技術の研究・開発を支援する基金に1兆円を充てる案を主張したが、菅は倍増するよう迫った。「そんなことはできません」。かつて官房長官秘書官として菅に仕えた矢野が食い下がると、いらだった菅は説明資料を投げつけた。菅の意向通り、金額は2兆円に積み増された。

 官房長官時代も、菅が官僚をどなりつけることはあった。「自らの政策に反対するのであれば、異動してもらう」と公言もしていた。ただ、あくまで政権ナンバー2の立場であり、最終決定権者は安倍晋三首相だった。「首相の発言は重い。今は、誰も菅さんに反対できなくなっている」。安倍政権も知る政府関係者は語る。

資料投げつけ「話にならないんだよ」苦悩する元・最強の官房長官…[菅流政治]検証半年<1>

このように都合のいい話は、「あいつは医師の側に行ってしまった」という言葉を吐いたり、資料を投げつけたり、挙句左遷したりという行為をスピーカーに行うことで退けていく一方、都合のいい話をする人間は即座に呼び出して会うわけです。
(このようなパワハラで自らの政策を推進している様子は、まるで「すまんですむか。立ち退きさせてこい、お前らで。きょう火付けてこい。燃やしてしまえ。ふざけんな。今から建物壊してこい。損害賠償を個人で負え。安全対策でしょうが。はよせーよ。誰や、現場の責任者は」という暴言で仕事を進めさせようとした明石市長のようですね。明石市長のようにそれに続いていい話をすればごまかされてくれる人も多いかもしれませんが)

このような姿勢で、本人の現状把握が歪まないわけがありません。

そのような歪んだ認識を、自らの手でさらに歪ませていく姿勢が、福井県知事との面会に出ているように思えるのです。

このような姿勢がある限り、菅首相が「現実的な対応」はできる可能性は低いように思いますし、「医師の側」である可能性が高い専門家の提言が拾われるようにはとても思えないのです。

本当の福井モデル

ちなみに、記事のタイトルで「福井モデル?」とクエスチョンマークを付けたのは、福井モデルと言うのは、どうもマスクよりも重要なものが中心のように思えるからです。

それは以下の記事で知りました。

 新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた福井県の取り組みが医療現場から評価を受けている。福井県医師会と連携したPCR検査や医療体制の充実により感染拡大を防止し、入手困難だったマスクの購入券を全世帯に配布する独自の施策は全国から注目を集めた。全国の医師を対象に勤務先の都道府県知事のコロナ対応とリーダーシップを尋ねたアンケートでは、杉本達治知事の評価点が全国トップとなった。

 杉本知事は第1波(3~4月)の際、早期に国の疫学専門家チーム「クラスター対策班」の派遣を要請し、感染拡大に歯止めをかけた。医療機関が重症者らの治療に専念できるよう、「福井市少年自然の家」を全国初の軽症・無症状感染者向け一時生活施設として開設。さらに民間ホテルにも施設を拡大し、軽症患者の療養生活の質を高めた。

 感染症指定医療機関の負担を軽減するため、県医師会と連携して発熱者外来「感染症対策センター」を開設。「少しでも基幹病院の助けになれば」と開業医らが交代で出向き、PCR検査のための検体採取に当たってきた。インフルエンザの同時流行に備え、11月からは約250の医療機関の協力を得て、新型コロナの検査体制を増強した。

(中略)

 都市部では自治体と医師会のスムーズな連携が必ずしも実現していない中、福井県医師会の池端幸彦会長は「危機管理はトップが現場の状況を即理解し、即決断して即行動に移すかにかかっている。杉本知事は現場の声をしっかり聞いてくれる」と評価。県幹部や県医師会長、県看護協会長らが原則週1回ミーティングを続け情報共有を図っており、「これほど連携を密にしている県は他にないのでは」と話している。

福井県のコロナ対策、医師から高評価 全国アンケートで杉本達治知事トップ

福井県では「福井モデル」として、検査や入院の調整を一元化して現場の保健師の負担を減らし、感染経路の特定に注力する体制をアピールしている。判明した感染経路を分析すれば、マスク会食の推進など先手の感染防止対策がとれるとする。

福井県、コロナ警戒レベル引き下げ 宿泊割引など再開

このように、医師会ときちんと連携し、感染者をしっかり把握する体制を築くことで、結果的に「どう対策したらよいのか」を導き出せるようになるのが、「福井モデル」であって、「マスク会食を推進する」ことが福井モデルとしてしまうと中身が変わってしまうように思うのです。

それを知事が理解しているのかどうか、今後の振る舞いでそれが明らかになるでしょう。

ちなみにm3.comにて、福井県の医療関係者の方などが対談をしている記事があるのですが、この検査の姿勢も重要なのではないかと思うのです。(この中には医師会のトップの方もいるのですが、そういう方面がしっかりしているかも重要なように思います。個人的に信じられない医師会がコロナ下で、いくつか見えてしまったので、特に感じてしまいます。)

(以下で検査について語っているのは、福井大学の方のようで、東京オリンピックについて、「安全にやろうとするには首都圏の都市封鎖しかない。その効果を出すには今しかない」と述べているようです。この方は比較的信頼できる方のような気がしています。)

岩崎:検査が全然追い付いてなかったことです。症状が出たら、「37.5℃が4日以上」を待たずとも検査する。でも第1波の時は、検査を待っている間に重症になってしまい、検査をしたら陽性だったという方が見られました。「検査をせずに、ただ待っているだけの怖さ」を思い知りました。

 さらに陽性者が1人出たら、濃厚接触者も徹底的に調べることも重要。他にもたくさんいる陽性者の1人しか見ていない可能性があるからです。昨年の3月28日、その話を保健所長の集まりに呼ばれた際に、かなり強く迫ったこともありました。ただ当時はやはり「37.5℃が4日以上」が基本で、結局は症状が出てきたら検査をする。症状がなければ2週間の自宅待機をお願いするという結論に落ち着いてしまったのですが。

――なぜそこまで検査に消極的だったのか。

岩崎:これは推測ですが、当時は十分に検査ができなかったこともありますが、「陽性者がたくさん出ると、福井の医療が破綻してしまうかもしれない」と考えたのでは。でもそれはむしろ逆。陽性の可能性がある人を先手を打って調べて、感染を拡大させないことが結果的に“医療崩壊”を防ぐことにつながるというのが、僕ら臨床の現場の感覚でした。

池端:福井テレビの「タイムリーふくい」(編集部注:毎週日曜日の番組で、池端氏らが頻回に出演)でも、検査が話題になった時がありましたね。福井市の福祉保健部の方も出演した回で、岩崎先生と私が検査の必要性を強調したら、「2人が、そうおっしゃるなら考えます」と答えてくださいました。でも、結局その時はまだ進みませんでしたが……。

――今、政府は感染の予兆を早期に発見するために、都市部の街角でのモニタリング検査を実施しています。

池端:街中で検査しても、あまり意味がないのでは。

岩崎:我々が主張しているのは、陽性の可能性がある方への検査の必要です。国が定める濃厚接触者の定義に当てはまらない場合でも、少しの時間でも陽性者と一緒にいたなら「濃厚接触者じゃないけど、やりましょう」と。第1波の途中から徐々に変わり、第2波の時はかなり改善されて、濃厚接触者だけでなく、「接触者」まで検査対象を広げて検査したのです。

池端:学校の教員で陽性者が出たら、教員全員の検査を行う。そうするとだいたい2次感染で収まります。

病床確保、国に先んじて「福井モデル」作成 – COVID-19座談会(福井編)◆Vol.4(m3はGoogle検索すると全文が見れるしくみになっています)

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