海外右翼の東洋へのあこがれ

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2011年、ノルウェーで引き起こされた反多文化主義を信念と主張する人間による、ノルウェー労働党青年部への銃乱射や、首相府等の省庁爆破という連続テロ事件。

その首謀者は、日本・韓国・台湾の政治システムを多文化主義を完全に否定していて素晴らしい、と高く評価していることを公言していました。

1350ページ目付近では、「テンプル騎士団司令官のインタビュー」との見出しが出てくる。文書の中でブレイビク容疑者は、中世の欧州で活躍した騎士修道会「テンプル騎士団」の司令官を名乗っており、この章では各種の質問にブレイビク容疑者が答える形式で進行する。

章自体が長編だが、この中に「今日の国家の政治システムで最も高く評価しているのはどこか」という質問があった。これにブレイビク容疑者は

「日本と韓国、台湾のシステムは特にすばらしい」

いずれも「多文化主義を完全に否定」し、「自分たちの単一文化の維持、保護に努めている」という解釈だ。欧米から教育や科学、テクノロジー、経済のメカニズムを学びとる一方で「固有の文化だけは譲らない姿勢」と分析、共感を寄せた。

英フィナンシャルタイムズ紙(電子版)の2011年7月25日付記事は、この点に触れた。ブレイビク容疑者が日本などアジアの国をモデルにしていることから「白人至上主義者や北欧の国家主義者でもない、言わば『大欧州主義者』」「極右思想でも特別な考え方の持ち主」と分析した専門家の言葉を紹介している。

「麻生太郎元首相に会いたい」 ノルウェーテロ犯の理想郷は日本だった: J-CAST ニュース【全文表示】

ブレイビク被告は多文化主義に対する嫌悪感を繰り返し表明し、「単一文化を持った完全な社会」として韓国や日本に言及した後、「そのような国では人と人の調和をよりよく成し遂げられる」と話した。

ノルウェー乱射被告「韓国と日本は完全な社会」 | Joongang Ilbo | 中央日報

これはこの犯人特有の見方ではなく、何人もの単一文化、単一人種を理想とする人物から発せられているようです。

ジャレッド・テイラーは、日本を「人種的、文化的に均質」であるとして、多様化した西側諸国より優れた国になるだろうと発言している。元KKKリーダーのデヴィッド・デューク(70)、オルタナ右翼リーダーのリチャード・スペンサー(42)、2015年にサウス・カロライナ州の黒人教会で乱射し、信者9人を殺害した単独犯ディラン・ルーフ(26)、2011年にノルウェーでの連続テロ事件で計77人を殺害したとされるアンネシュ・ベーリング・ブレイビク容疑者(41)など、所属グループ・年齢・国を問わず、多くの白人至上主義者が同様の意見を掲げている。

今から10年以上も前となるが、筆者は取材で「ガン・ショー」を訪れたことがある。大きなイベント会場に多数の銃販売のブースが並び、観客が訪れ、銃を品定めしては買っていく見本市だ。

 会場はニューヨーク州都のオルバニーだったが、販売者も客もほとんどが白人だった。黒人は、米軍が出店しているブースで大型銃の説明をしていた兵士と、わずか2〜3人の客のみ。アジア系はおそらく筆者と同行の編集者だけであり、他には見掛けなかった。無数の銃器に囲まれ、非常に居心地の悪い空間であったが、主催者、出店者、共に筆者の質問には問題なく答えてくれた。

 銃以外に小物販売のブースもあり、ナチス関連の小物を売るテーブルがあった。その隣では旭日旗の小物が販売されていた。アジア諸国を攻め、統治した「単一民族」日本の象徴と受け取られているのだろう。

「日本アゲ」をしてるあの白人は誰? オルタナ右翼が日本に抱く「ゆがんだ憧れ」 | 文春オンライン

そういう流れは、新しい登場人物も引き継いでいるんだな、と最近Twitterでアンチリベラルな人がブラックライブズマターを批判する際に引用すること多々見かけるキャンディス・オーウェンズさんについて色々と調べたことをきっかけに思ったのです。

保守派の政治評論家、キャンディス・オーウェンズ氏は自身のツイッターでこう発言した。

「強い男性なしで生き残れる社会はない。東洋は、このことを知っている。西洋では、子どもたちにマルクス主義が教えられ、男性の『女性化』が進んでいる。これは偶然ではない。これは攻撃なのだ。男らしい男を取り戻せ」

男性歌手のドレス姿に「男らしさが失われる」と批判→「服装の自由」求める反論が噴出

東洋は強い男性なしでは生き残れないと知っていて、それを守ろうとしているらしいです。

そんなに東洋社会は単純ではないでしょうし、むしろ女性装をして良くも悪くも男性らしさを手放そうとしている一部の男性に対し「女性の都合のいい部分だけ搔っ攫おうとするな」という批判も(そこにトランスジェンダーも巻き込まれたりしながら)起き始めているのが現状のように私には見えています。
(これは「強い男性なしで生き残れる社会はない」とは違う流れでしょうし、西洋と似たような流れなのではないでしょうか)

またマルクス主義と女性化は関係ないように私には見えますが、やはり右翼にとって左翼のテンプレート「共産主義・ジェンダーフリー」は欠かせないのでしょう。

この方について、法輪功系のメディア、大紀元が書いた記事も読みましたが、そこにも日本人に関する記述がありました。

被害者意識に伴うのは怒りや恨みである。しかし、彼女にとって成功の秘訣とは勤勉に働き家族を大事にすることであって、怒りではない。これは、あらゆる人種に共通する価値観である。彼女は、アメリカに移住した日本人が、かつて過酷な差別を受けながらも他の移民に比べて比較的豊かだったことを挙げ、よい価値観に基づいた生活と自助努力が大切だと語っている。

「被害者意識から抜け出して」米黒人女性が左派の支持者に呼びかけ

やはり良い価値観の持ち主として、移住して差別を受けた日本人を持ち出しています。

しかし、ここで語られている「過酷な差別を受けながらも他の移民に比べて比較的豊か」というのは、あくまでも他の移民との比較であり、なんだったらその「比較的豊かである」ことすら差別の理由になり得るでしょうし、また第二次世界大戦中の日系移民は強制収容所に入れられるという、意識どころではないまさしく「被害者」であり「良い価値観に基づいた生活」なんて送る余地もなかったであろうとしか思えません。

また、日系移民も公民権運動に参加したり、国に対して裁判を仕掛けたりなど、決してキャンディス・オーウェンズ氏が理想とするような態度に終始していたわけではなかったはずです。
(アジア系アメリカ人運動は「良い価値観に基づいた生活」に近づける一面はあったでしょうが)

再び戦争が起きたら私たちは強制収容されますか? - 現地情報誌ライトハウス
「第二次世界大戦中、アメリカ西海岸に暮らしていた日系人、日本人が、国籍にかかわらず、人種だけを理由に、強制的に

このような事例を見るに、(全くの的外れではないでしょうが)多少なりとも事実誤認が含まれる等、日本人などの東洋が右翼思想に都合よく理想化して利用されているように思います。

この利用されていることが今後どう転ぶかわかりませんが、少なくとも移民批判・移民排除の根拠に使われてしまったりするのは、とても良くない因縁を負うことになるような気がしてなりません。

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