子育ての負担も少子化の原因も子供を育てる人たちに押し付ける社会(というか与党)

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最近、こんな一文に出会いました。

(前略)疑いもせず親にばかり子供の養育や教育の責任を課す日本社会で、責任に尻込みしないで、なんて安易に言うのは、正直に言えばどうしても気が引ける。

自粛生活を支えた「オンライン家族」との2ヶ月間 – 紫原明子

『疑いもせず親にばかり子供の養育や教育の責任を課す日本社会』という文章を聞いて、私は最近の日本政府の副総理の言葉を思い出しました。

 麻生太郎財務相は18日の衆院財務金融委員会で、少子化の原因について「一番は、『結婚して子どもを産んだら大変だ』ばかり言っているからそうなる」などの「持論」を展開した。古本伸一郎氏(無所属)が「少子化対策のため、政府が新婚カップルを応援してはどうか」と質問したことに答えた。

 麻生氏は、「独身者に『おまえ、結婚は夢があるぞ』と堂々と語っている先輩の人はほとんど聞いたことない。結婚だけはやめとけ、大変だぞ、とみんな言うから。結婚は夢がある、子どもを育てるのはおもしろいって話がもっと世の中に出てこないと、なかなか(子どもが増えるという)動きにならないんじゃないかというのが正直な実感」と語った。

少子化の原因「産んだら大変とばかり言うから」 麻生氏:朝日新聞デジタル

動画を見て確認したのですが、古本議員が日本の現状について「結婚を前提にしないと子供を産むことができない」現状からすると、「祝い金」や「(祝い金の物価格差などの問題を指摘しつつ)新婚減税」など国費を投入してもっと思い切って結婚する人を応援できないか?という質問をして、それに関する大臣所見を求めました。
そして、麻生副総理の答弁は、フランスは結婚する年齢は日本よりだいぶ高いが結婚せずに子供を産んでいるから子供を産む年齢は結婚年齢より低い、日本はそのようなかたちになる政策を取っていないが、古本議員が例示した福岡県で人口が減っておらず出生率が高い自治体があるので、「一回それを良く分析してみにゃいかんとこなぁという感じがしますけれど」といった上で「やっぱり一番はやっぱり『結婚して子どもを産んだら大変だ』ばかり言っているからそうなっちゃうんですよありゃあ」と続くのです。

下のリンクの動画は、途中の副大臣答弁や祝い金についての古本議員の見解などなど、それなりにカットされていますが、おおざっぱに把握するならこれでいい気がします。おおざっぱですが。

そもそも麻生大臣の発言は「自分が聞いたことない」という、あくまでも自分の視点だけで話しているのですが(まさに放言)、そんな狭い視点で出てくるのが「結婚した奴が愚痴ってるのが悪い」という話です。

結婚して子育てするのを家庭の責任にして、それで苦労したのを愚痴ったら「お前らが少子化の原因だ」と言われる。
なんて理不尽な話なんでしょうか。

結婚して子育てするのを家庭の責任にするというのは、例えば、野党時代の自民党が民主党を批判する中で、現在の総理大臣が掲げた言葉「自助・共助・公助。そして絆」の中の「自助」の概念のようなものを掲げつつほぼ明言しています。

自民党の進める政策は、「自ら努力する人を、国が応援する」ことが基本であり、子育ても、一義的には家庭でなされるべきものです。
民主党は「子どもを社会全体で育てる」ことを第一義とし、家庭における子育てを軽視しており、私たちと考え方が大きく違います。

自民党ならこんな子育て支援策を! | 政策 | ニュース | 自由民主党

また当時、安倍前総理大臣はWILLでこんなことを言っていました

「子ども手当によって民主党が目指しているのは財政を破綻させることだけではなく、子育てを家族から奪い取り、国家や社会が行う子育ての国家化、社会化です。これは、実際にポル・ポトやスターリンが行おうとしたことです」

【衆院予算委】「楽観的に財政再建を考えると国を誤る」と岡田代表 – 民進党

 問題となったのは、2月29日の衆院予算委での首相の発言。岡田克也代表に「子育てを家族から奪い去り、国家や社会が行う子育ての国家化、社会化だ。これは実際にポルポトやスターリンが行おうとしたことだ」とした過去の発言の真意を問われ、首相は「私は全てを社会化、あるいは国家が担うことは間違っていると申し上げた」と述べた。

 さらに「民主党の中でこういう発言をした方もおられたのだと思うが、子ども手当は、両親や家族から養育費が払われるということではなくて、国家から直接子供たちに養育費がいくことによって、自分たちは両親に対し何の義務を感じる必要がないという議論もあった」と指摘していた。

 これに対し、1日の衆院予算委で、民主党の緒方林太郎氏は「民主党内にそんな議論はなかった。テレビで根拠のない事実無根のことをいっている。撤回してほしい」と迫った。

 首相は、民主党政権下の平成22年3月に同党議員が子ども手当について「今後は子供は社会で育てるものという考え方だ」と述べた発言を紹介し、「民主党の中でそういう発言をした人がいる、というのが前段の趣旨だ。『議論』というのは、発言を受けて、自民党内であった議論だ。見解の相違だ」と釈明。

【衆院予算委】民主党、安倍首相の子ども手当めぐる発言にかみつき紛糾 「撤回を」「見解の相違だ」(1/2ページ) – 産経ニュース

こんな発言をしていますが、子どもを社会で育てる、のような話は安倍氏が内閣官房副長官をやっていたような2002年の文科省がまとめた「今後の家庭教育支援の充実についての懇談会」についての報告文でも、『子どもを育てることは未来の日本を支える人材を育てるものであり、親のみならず、社会の一人一人、みんなが主役なのです』としているわけですから、それ自体を真っ向から否定するというのは、いくら何でも、というのは本人たちもわかっているはずです。
・・・ですよね?

子育ては親だけが担うものと思っていませんか
子育ては、親だけが担うものと思っていませんか。そうではありません。親に、家庭で子どもを教育する責任があることは当然ですが、子どもは家庭の中だけで育つわけではありません。学校や地域の様々な人たちに見守られて成長していきます。また、子どもを育てることは未来の日本を支える人材を育てるものであり、親のみならず、社会の一人一人、みんなが主役なのです。
子育てには多大な努力が必要であり、困難も伴いますが、親にとって子どもの成長は何ものにもかえがたい喜びです。そして、子ども達が健やかに成長することを社会全体で支え喜ぶようにすることが重要と考えます。

「社会の宝」として子どもを育てよう!(報告) :文部科学省

ここで、真っ向から否定できない、ということで出てくるのが「自助・共助・公助」という優先順位なのでしょう。
「子どもを社会で育てる」かのような概念も含まれていた報告が行われた懇談会も、「家庭教育」が主役で社会の役割はあくまでもその「支援」としているように、菅首相も「まずは、自分でできることは自分でやってみる。そして、地域や家族で助け合う。その上で、政府がセーフティーネットで守る」としています。これは、一見セーフティーネットを否定していないように見えますが、結局は「自分でできること」と「家族」の領域をどこまでも拡大することで、セーフティーネットは用意はされているが利用できない状態にしてしまうことにより、事実上の公助否定、子どもを社会で育てることができない状態が出来上がります。
そういう意味で酷い言い方をすると、どこまでも生活保護などを受給しようとする人のできていないところをあら捜しすることにより社会保障にたどり着くことを阻害する、水際作戦のような状態が自民党の理想であるように私には見えます。

「まず自分でできることは自分でやる、自分でできなくなったらまずは家族とかあるいは地域で支えてもらう、そしてそれでもダメであればそれは必ず国が責任を持って守ってくれる。そうした信頼のある国づくりというものを行っていきたいと思います」

菅義偉氏が「自助・共助・公助の国づくり」と発言。菅氏個人への批判が『的外れ』な理由 | ハフポスト

 「まずは、自分でできることは自分でやってみる。そして、地域や家族で助け合う。その上で、政府がセーフティーネットで守る」
 菅氏は14日、新総裁に選出された直後のあいさつで、目指す社会像として重ねて「自助・共助・公助」を掲げ、こう語った。

菅氏の描く社会像は… 「自助」優先、弱者置き去りの懸念:東京新聞 TOKYO Web

これは私の解釈ですが、子ども手当を行うなどの民主党の子育て政策は、家庭によって子どもの未来が左右される割合を減らそうとする方向であったようには思います。

その「家庭によって子どもの未来が左右される割合を減らす」ことが、安倍晋三氏や自民党にとって「子育てを家族から奪い去る」行為になるのかもしれませんが、それを奪い去ると否定されてしまっている以上、やはり現状の子育ては家庭に責任を押し付ける方向にになっていかざるを得ないのだろうに思います。

(そりゃ、家庭に恵まれて議員になった人が多いであろう自民党の議員が家庭の影響を引き下げる方向には否定的になるのは当然なのかもしれませんが・・・)

で、そんな子育てが自助をせざるを得ない状態では過負担に追い込まれる人が増えていくばかりでしょうし、その結果、だれにも相談できずに虐待まで至ってしまったり、そんな状態で子育てなんでか負担なことはできない、と考える人が増えていくのではないでしょうか?

なのに、子育て(だけではなく)を最大でも家族同士までの協力で凌ぐような、自助?の状態で苦労している人が、周囲に愚痴ることにたいして「だから少子化になるんだ」というような言動が、副総理と言う役職の人間から放たれることには、少なくとも数年は、日本の社会設計はろくなものにならないんだろうと言う絶望を私は抱きました。

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