「最後は金目」すらなくなった震災復興?

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福島民友新聞が、震災事故時点で大熊町長であった渡辺利綱氏の証言を記事にしていたのを読んだのですが、そこで石原伸晃氏について触れられていました。

―当時の石原伸晃環境相の「最後は金目でしょ」などの発言もあったが、どう感じていたか。

 「石原大臣はいつも『自分の任期中に頼まれたことは実現する。そのためにはお金が必要だ。それは自分が財務省から引っ張ってくる』と言っていた。それがぽろっと出たのだろう。その気持ちは分かっていたし、実際にいろいろ町のためにしてくれたことはたくさんあり、逆に『この失言で辞めてもらっては困る』という感じだった」
 「確かに環境大臣として駄目な発言だった。すぐに環境省のトップクラスの人から『町長、失言して申し訳ないけれども、実は本心はこうなんだ』と連絡があった。『いや、われわれも分かっているから』と。続いて環境大臣になった人たちは失言もしないけれども仕事もしなかったという印象だ」

【証言あの時】前大熊町長・渡辺利綱氏 中間貯蔵一人腹固めた:震災10年:福島民友新聞社 みんゆうNet

石原伸晃氏については、実際に金目を引っ張ってこようとしていたなど、仕事はしていた。
一方でこの失言で交代して以降の環境大臣は失言もしないけれども仕事もしなかった、という評価のようです。

この「最後は金目でしょ」という発言は、その発言に便乗した、一部保守勢力の「働きもせずに金をもらおうとしている」という被災者バッシングのようなものすら引き出してしまった、被災自治体・被災者への視線を悪化させる効果しかない、そんな最悪の発言であったと言えます。
(自助・共助・公助を振り回す人たちの生活保護などの社会保障批判と同じ話。)

「最後は金目でしょ」と発言した石原伸晃環境相が「私の品を欠く発言」と、平謝りに謝った。氏の謝罪通り、発言は著しく品格を欠いていた。環境大臣としての氏の仕事ぶりも、被災者のために粉骨砕身の頑張りを見せるべき地位にあるにもかかわらず、どう見ても評価できない。氏は大反省すべきだと指摘した上で、福島の現状について人々が口を噤(つぐ)んでいる微妙な問題に触れたい。

原子力発電所の事故で全住民に避難命令が出された8町村の住民たちの中に、石原発言は許し難いが的を射た発言だったと言う人が少なくない。福島で復興話となると、議題はいつも補償をどこまで積み上げるかという話題になるとも、彼らは言う。その1人、NPO法人、ハッピーロードネット代表の西本由美子氏が耐え難い実情があると語る。

「悪いのは政府か、自治体か、住民か。とにかく8町村はカネカネの世界になってしまいました。石原発言がその異常さを反映しています」

西本氏は、復興にも生活再建にもおカネが掛かるが、その使い方が根本から間違っていて、働かなくてもおカネがもらえるようにする方向で事態が動いてきたと嘆く。

(中略)

だが古里に戻っての生活には多くの困難がある。医療機関も食料品店、新聞配達もない。そうした中で古里再生に頑張る人々にこそ、援助すべきだが、援助は避難先にとどまり働いていない人々に注がれると、氏は嘆く。

「してもらうことを要求する傾向が強くなって、福島県人の良さはどこに消えたのかと、危機感を抱きます。広野町でも昨年11月の町長選挙で現職が大差で敗れました。新町長は毎月10万円もらえるよう東電と交渉すると公約して当選しました」

石原発言は品格を欠いてはいたが、一面の真実を突いていたと、福島の人々が語るゆえんである。東電、政府のおカネを使うなら、いまこそ品格を保ち勇気を奮い起こさせる力とすべきだ。福島に注入するおカネは、前向きに復興にいそしむ人をこそ支えるものでなければならない。

「 石原“最後は金目”発言が突いていた一面の真実 」 | 櫻井よしこ オフィシャルサイト

地元の方のためにいくら働いていても、失言をすることでバッシングの犬笛を意識せず吹いてしまった。
こういう意図してんだかして無いんだかわからないが、とにかく発言で犬笛を吹いてしまうのが、石原伸晃氏が残念な政治家である大きな理由と言えるでしょう。

政治家が使う秘密の「犬笛」  隠れた人種差別メッセージとは - BBCニュース
政治家が特定の有権者を意識して暗号のような表現を使い、「人心を操る」政治手法のことを、「犬笛」戦術と呼ぶ。

しかし、一方でそれ以降の大臣が「失言もしないけれども仕事もしなかった」と言われているのは、いろいろ考えさせられると言うか。
一番失言しない方法は、物事に関与しないこと、つまり仕事をしないこと、ということなのかもしれませんし、失言に注目しすぎると、評価を誤るのかもしれません。(かといって、失言を無視するのもあり得ないと思いますが)

そういう意味で、この事案で思い出したのは、今回の菅義偉内閣で、復興大臣に平沢勝栄氏が就任したというのは、とても気になる話で。

そのタイミングで、閣議決定される内閣の「基本方針」というものから、復興関連の内容がなくなったというのは、とても象徴的というか、大臣人事と連動している話なのではないかと思うのです。
(能力が怪しい平沢勝栄氏を大臣にしても、仕事しなければ何もミスせずノーダメージで済む、という意味で)

平沢氏は23日に首相官邸で菅義偉首相と会談し、震災や復興の記述が消えたことを記者会見で聞かれた際、「軽視していることは全くない」と説明したことを伝えた。これに対し首相は「全くその通りだ。最も重要な課題の一つと考えている」と応じ、近く福島県を訪問する意向を示したという。

 平沢氏は会談後、記者団に「その時の(基本方針の)字数とか、いろいろなあれの中であれしたけれども、軽視しているわけでは全くない」と繰り返した。

内閣方針に「東日本大震災からの復興」記載なし 平沢氏「たまたまそうなった」 – 毎日新聞

平沢勝栄氏は「あれの中であれした」という説明の中で、「字数」というキーワードを発しています。字数制限の中で漏れた、ということなのかもしれません。

しかし、これは要するに優先順位が落ちていることの表れでしかないでしょう。

まず、安倍晋三内閣最後の基本方針と菅義偉内閣の基本方針を比べてみると優先順位の違いや、なぜ復興が抜けたのか、見えてくるのではないでしょうか。

令和元年9月11日 基本方針 | 令和元年 | 主な閣議決定・本部決定 | 内閣 | 首相官邸ホームページ
閣議決定・本部決定(総理が本部長であるもの)された政府の基本方針をご覧になれます。
令和2年9月16日 基本方針 | 主な閣議決定・本部決定 | 首相官邸ホームページ
閣議決定・本部決定(総理が本部長であるもの)された政府の基本方針をご覧になれます。

1.復興・国土強靱化の推進→1.新型コロナウイルス感染症への対処

2.頑張った人が報われる経済成長→2.雇用を確保し暮らしを守る

3.全ての世代が安心できる社会保障改革→3.活力ある地方を創る

4.美しく伝統ある故郷(ふるさと)を守り、次世代へ引き渡す→4.少子化に対処し安心の社会保障を構築

5.新しい時代のアジア太平洋の平和と繁栄の礎を築く→5.国益を守る外交・危機管理

こう見ると、復興の問題がCOVID-19の問題にまるっと入れ替わっていることが推測されます。

(また、ちょっと話はずれますが、経済成長が暮らしを守るに変化していたり、社会保障や外交の文言の簡素さ等から、安倍晋三内閣の攻めの姿勢と、菅義偉内閣の姿勢はだいぶ違うように文言からは推測できます。)

つまり、復興よりCOVID-19の事案が重要であるという認識が、今回の基本方針からの復興の欠落の大きな原因なのだろうと思います。

思いますが、実は文字数と言う観点から言うと、安倍晋三内閣の基本方針が約1550字あるのに対し、菅義偉内閣の基本方針は約1170字と、明らかに分量が減っているんです。そう考えると復興が抜け落ちたと言うのに、字数は言い訳にはしにくいのではないかと思います。

民主党政権時に定められた東日本大震災からの復興の基本方針にて、復興期間は10年と定められ、それを自民党政権も継承してきたはずなのですが、10年を経過する前、政権の基本方針から抜け落ちた。

COVID-19や総理交代のどさくさまぎれに行われた感がありますが、ある種、震災が風化しているという国民意識の反映を行うと言う「国民のために働く内閣」の誠実な仕事ぶりなのかもしれません。

(個人的には、自民党の東日本大震災復興加速化本部の本部長が額賀福四郎ということも、本部長が完全に名誉職となっているというか、本部がほとんど仕事してないという証明のように見えてしまうのですが・・・)

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