現金給付周りの報道などを色々と

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 今回、緊急事態宣言を全国に拡大することによって、すべての国民の皆さまにさらなるご協力をいただくことになる。緊急経済対策においては、収入が著しく減少し厳しい状況にあるご家庭に限って、1世帯あたり30万円を給付する措置を予定していたが、この際、これに代わり、さらに給付対象を拡大した措置を講ずべきだと考える。

 今回の緊急事態宣言により、外出自粛をはじめ、様々な行動が制約されることとなる全国すべての国民の皆さまを対象に、一律1人あたり10万円の給付を行う方向で、与党において再度検討を行っていただく。

緊急事態宣言、全国で5月6日まで「人の移動を最小化」:朝日新聞デジタル

閣議決定までした補正予算が結果的に公明党の抵抗によりひっくり返ることとなりましたので、それまでの現金給付周りの話を私が把握できた範囲で並べてみます。

最初に具体的な額を出したのは多分国民民主党

10兆円の給付に関しては、「まず緊急に急ぐ対策として個人の生活保障。学校の休校などで会社を休まなければいけない。あるいはお客様が来なくて働く時間が短くなっている。さまざまな理由で生活が非常に苦しくなってる方がいる。また消費が非常に縮んでいる中で、迅速に且つシンプルに消費の減少、そして所得補償に応えるために国民1人当たり10万円の給付、約10兆円規模の給付措置を行うもの」と説明した。

総額30兆円の「家計第一」の緊急経済対策を発表、玉木代表

こういう現金給付について、最初に公式で言及したのは、多分この国民民主党の案(の前にあった玉木私案)ではないでしょうか?

共産党の議員も玉木氏がいち早く主張と言っています

このように玉木私案時点では、期限付きの金券か電子マネーと述べていて、その後党でまとめた際には、記者会見の質疑応答にて貯蓄に回る可能性についての質問を受けて「方法はこれから考える」「現金が一番早くて便利」「貯蓄に回さない方法として期限付きの金券や電子マネーも検討」「とにかく速やかに簡潔に支払える方法でやっていくことが大事」と述べていて、電子マネーや金券という発想は党を通すタイミングで消えていったのかな、というように見えます。

質問は6分30秒くらいから

(国民民主党はこのようなコンサル的というか、企画立案能力は高いように見えます。一方で浜田ひろき元渋谷区議が『国民民主党の「新しい答え」が対案路線を意味するなら間違いで、こういう戦略は間違った現状認識を持つ与党に引きずられるだけ。』と書いているのにもとても共感します。一方で、立憲民主党は弁護士的というか、法廷戦術的な方面に強いように見えます。各々党首のイメージに引きずられすぎかもしれませんが。)

この国民民主党がぶち上げた案と同時期に、立憲民主党は、「まずはこれをやるべき」という補填中心の最低限の提案をしています。

2.国民の暮らしと経済を守るための緊急対策

○政府の自粛要請にともなうイベントなどの中止、学校の一斉休校、入国制限などにより影響を被った事業者、そしてパート、フリーランスを含む個人について、その事業継続や生活維持が可能になるよう「直接の損失の一定割合」や「前年同月比での収益・所得の減少額の一定割合」を補填するスキームを速やかに作る

○これから納税の時期を迎える。地方税や消費税の予定納税など含め、希望する方には1年間の納税猶予を確実に実施するとともに、次年度の所得状況に応じた減免を可能とすること。また、社会保険料負担、公共料金の減免等の措置を早急に講ずる

○資金繰り対策のため、政府系金融機関による無利子貸付や無担保枠、融資上限額の拡大、据置期間や返済期限の延長など更なる負担軽減措置を講ずる。そして、直接補助等の大胆な措置をあわせて実施をしていく
 ※政府系金融機関が対応しないと、民間に後押しをしても資金繰りが成り立たないことは、3.11の時に相当な融資策を講じたにも関わらずそうした事態が起きている。政府系金融機関が前面に出て、資金繰りを助けなければならない

○一斉休校の影響を受けている子育て世代に対して、一斉休校の影響が出ている期間、児童手当を倍増する児童手当のスキームを利用した支援を行う
 ※現金を配るといっても、スキームがないと配る実務・事務・体制を整えるだけで時間がかかる。今回、一斉休校の影響を受けている子育て世代に対して、児童手当のスキームを利用し、自宅に長時間いざるを得ず、休業補償などがあってもさまざまな負担が上乗せになっている皆さんに対し、児童手当を少なくとも一斉休校の期間については倍増することを求める

○今年進学をされる方、あるいは、さまざまな自粛等経済活動の影響を受けている家庭などに向け、給付型奨学金の支給要件を大幅に緩和し、対象者を大幅に増やす

○年金生活者支援給付金を上乗せし、一定所得水準以下の高齢者等の生活保障のための支援を行う

○雇用調整助成金の補助額を全国一律で10/10にするとともに、欠勤扱いや時短分などについても給与補填を可能とする

【新型コロナ】枝野代表が感染拡大防止のための緊急対策と国民の暮らしと経済を守るための緊急対策について要望

また、立憲の個々の議員の中では、(ぼんやりとした形で)現金給付案が語られていたようだということは、須藤元気議員のTwitterや、その後の立憲有志の提言から察することが出来ます。(ただし消費税減税の方が表に出て、現金給付は二の次だったようにも見えますが。)

立憲の福田昭夫、高井崇志両氏ら野党有志議員は3月19日、枝野氏や国民民主党の玉木雄一郎代表らに、消費税率5%への引き下げなどを盛り込んだ経済対策案を提出。趣旨に賛同した約70人の過半数を占めた立憲議員は、枝野氏の打ち出しに期待した。

 だがその後、立憲は独自策をまとめるに至らず与野党の中で埋没。先の対策案を無視された形の立憲議員らは今月1日、改めて消費税減税や国民1人当たり10万円の現金給付を含む提言を枝野氏らに提出、再考を求めた。提出の中心となった高井氏は記者団に「立憲として大きな柱となる政策議論が進んでいない」といらだちを隠さなかった。

立憲、「枝野1強」に陰り コロナ対応で不満表面化:時事ドットコム

(高井崇志・・・)

一方、3月の政府与野党協議会にて、野党統一会派として政府に提出したものの中で「広く大胆に国民へ給付を行うこと。」というのが第一回からありました。

3.生活の危機から国民を守る

〇既存のスキームを活用すること等を含め、子育て世帯をはじめ広く大胆に国民へ給付を行うこと。

〇給付型奨学金の支給要件緩和、対象者の大幅増の措置を行うこと。また、奨学金の返済猶予や、所得の実態に応じた授業料減免の措置を行うこと。

〇年金生活者支援給付金の上乗せなど、一定所得水準以下の高齢者等の生活保障のための支援を行うこと。

〇全国の自治体等と連携し、自殺対策(生きることの包括的支援)を万全に講じること。

新型コロナウイルス対策 会派要請 | ニュース | 社民党OfficialWeb

その後、4月2日の政府与野党協議会にて、野党統一会派の具体的な補正予算などへの施策が出てきまして、そこでは緊急対策期の施策として明確に金額が出てきています。

1.家計支援

〇 すべての国民に対して一人当たり10万円以上、総額十数兆円規模を現金で給付する。なお、給付金は課税対象とすることなどにより、実質的に高額所得者への給付金の減額を行う。

〇 経済の落ち込みや家庭の置かれた状況に応じて、給付金は一回限りではなく、継続・上乗せすることも検討する。

〇 所得税・住民税などの租税、社会保険料、公共料金等の支払い猶予を実施する。

〇 家主に対する支援を前提として、家計の状況に応じた家賃への支援を実施する。

〇 奨学金、教育ローン、住宅ローンなどの返済猶予を実施する。

新型コロナウイルス 補正予算を含め取り組むべき対策について(会派緊急提言) | ニュース | 社民党OfficialWeb

これが野党統一会派としての統一見解として現在まで続いています。

日本維新の会

与党と野党の間にいて、独自路線を突っ走ることの多い日本維新の会ですが、調べたところ現金給付には、3月25日に安倍総理に提出した提言書にて「緊急の生活費を支える観点からの1人当たり10万円迅速給付」に触れていたようです。

新型コロナ対策についての取り組み|活動情報|日本維新の会
日本維新の会ウェブサイト

一方政府・与党を中心とした時系列

3月18日、政府が現金給付を検討している、というニュースが朝日新聞に掲載されています。
ニュアンスとしては、貯金に回ってしまうとか、所得制限への言及など、一律給付には否定的なのが伺える内容です。

政府高官は現金給付について「今議論している。あとはみんなに配るのか、線引きをするのか」と述べた。自民党からは「現金を給付しなきゃいけない人はいるが、あくまで低所得者に限る」(幹部)という意見が出ている。

 公明党の石田祝稔政調会長は18日の記者会見で「現金給付を頭から否定はしない。検討していきたい」と述べた。その上で、「貯金に回るとの心配は常につきまとう」と指摘。地域振興券のような商品券を含めて、家計への支援策を今後検討する考えを示した。

 財務省幹部は全業種が影響を受けたリーマン時と比べ、「今回は悪いところがはっきりしている。全国民に渡すと、本当に困っている人に役立てるほど渡すことができなくなる」と語った。

コロナ対策で現金給付、政府が検討 低所得者に限定案も [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル

調べたところ、当時の一部報道では、5万円一律給付という考えが自民党内には当時あったとされています。

自民党関係者によると経済対策には、現金の給付などが盛り込まれる見通しで、国民1人当たり5万円を超える金額が検討されているという。

コロナ・経済対策で現金給付案・国民全員に5万円超? TBSテレビ【Nスタ】|JCCテレビすべて

今、取りざたされている金額が、例えば、まずは1人1万2,000円超。

この金額は、先日、安倍首相が「今までの発想にとらわれない対策をとっていく」と発言している。

この1万2,000円という金額は、2009年のリーマン・ショックを受けて、定額給付金として配られた額と同じ。

そのため、この金額以上になるのではないかということが、首相の発言からうかがえるという。

そして、自民党内から5万円という案、そして、3つ目は国民・玉木代表は10万円という案も出てきているが

“コロナ危機”大規模な対策 現金給付案…1人いくらに

3月20日、青山繁晴氏を代表とした議員連盟が首相に提言をしていますが、ここでは現金給付ではなく、購買券の配布を主張しています。

一方、提言の2番目にあげた「10万円の期限付き購買券の全国民への配布」のポイントについては、「配る対象を限定せず全国民にする意味とどこでも使えること。また、期限付きにしたのは、その場で使う人がほとんどで、おいておく意味がないからだ」と説明する。経済対策の規模感については「最大40兆円前後」と想定し、「消費税で12.5兆円の財源。購買券10万円給付で13兆円にとどめれば計算が合う」とした。

(略)

こうした中、安倍首相は17日に自民党の岸田政調会長に対し、緊急の経済対策の検討を指示した。政府・与党内では具体策の1つとして“現金給付”が検討され、支給対象については「すべての国民」とする案などが浮上している。閣僚経験者の一人は「全国民に5万円を配ることも可能だ」と指摘している。

しかし青山議員はこの現金給付案については「現金だと貯蓄に回る」と語った。ただ、自民党内からは青山氏らの提唱する購買券の給付について、「購買券を今から刷り始めても時間的に間に合わない」と実現を疑問視する声も聞かれる。一方である自民党幹部は、観光等に使用目的を限定した「クーポン券」の創設を主張するなど、現金給付以外の何らかの券の給付についての議論自体は続いている。

自民保守派が「全国民に10万円の購買券」「消費税5%減税」を提案 現金給付案に異議あり!

3月24日、公明党内の部会から、所得制限なしの1人10万円現金給付が提案されます。

公明党財政・金融部会は24日、新型コロナウイルス感染拡大に伴う追加経済対策の党提言について、所得制限を設けない一人10万円の現金給付とプレミアム付き商品券発行を柱とする案を石田祝稔政調会長に提出した。現金給付に関しては支給対象を絞るべきだとの意見もあり、党内で内容を詰め、週内に提言をまとめる。

現金10万円・商品券の給付案 公明部会―新型コロナ:時事ドットコム

3月25日、朝日新聞が政府内で一部の世帯に自己申告で20万円を配布する案があることを報じています。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて政府・与党が4月にまとめる緊急経済対策の一環で、一部の世帯に限り1世帯当たり20万円程度の現金を給付する案が検討されていることが分かった。対策の事業規模は、平成以降で最大だった2009年4月の56・8兆円(うち国費15・4兆円)を目安に調整が続いている。

 安倍晋三首相が20年度当初予算が成立する27日以降に、経済対策の取りまとめを正式に指示する見通し。給付額は調整中だが、官邸幹部は「20万円で収まるかどうか」と話し、上積みの可能性も示唆する。給付方式は自己申告制とし、対象を生活困窮世帯とすることも検討されている。

現金給付、世帯20万円案を検討 上積みの可能性も:朝日新聞デジタル

3月27日、産経新聞が政府の所得制限付き現金給付案について党内から否定の声が出ていると報じています。

 「所得が減った人をどのように把握するのか」「減収を把握するのに時間がかかりすぎるのではないか」

 自民党が27日に開いた政調幹部会議では、給付世帯を限定する方法をめぐり政府案への疑問が相次いだ。

 ただ、「所得が減った一部世帯に限り給付」という案は、商品券の配布や全世帯への現金一律給付など、さまざまな案をせめぎ合わせた結果編み出した産物でもある。政府は、約5300万の全世帯のうち、対象を一定の所得水準を設けるなどして1千万世帯に絞り込むことも検討している。

 現金給付案にいち早く言及したのは、自民党の岸田文雄政調会長だ。22日には、即効性のある経済対策として「現金給付をはじめ思い切った対策を考えなければいけない」と指摘。党内には、国民にイベント自粛などの協力を要請していることを踏まえ、一時はすべての国民に一律給付という案もあった。

 しかし、現金給付は貯蓄に回り、消費拡大につながらないとの懸念もある。麻生太郎副総理兼財務相は現金の一律給付に消極姿勢を見せた。

 そこで出てきたのが、給付を新型コロナに関連して「所得が減った世帯に限る」という案だ。自民党案も政府の考えに沿った内容となる見込みで、自民党幹部によると、給付方法は自己申告制が有力という。

 しかし、党内では二階俊博幹事長らのように商品券の配布を望む声も残っており、情勢はなお流動的だ。

 一方、公明党の斉藤鉄夫幹事長は27日の記者会見で、所得制限など一定の線引きを設けた上で、1人当たり10万円を給付する案を政府に提言する考えを示した。山口那津男代表は同日、記者団に「収入が激減したり、現実に生活に困っている人が大勢いる」と指摘。「党として一番困っている方々にきちっと対応ができるような意味を含め、生活支援の現金給付、1人当たり10万円を目安にと主張する」と明言した。

 党内には当初、平成21年に全世帯に支給した「定額給付金」がばらまきとの批判を浴びた経緯を踏まえ、現金給付には消極的な意見もあった。

 ただ、迅速な生活支援には商品券の配布などよりはよいと判断した。党幹部は「斉藤氏が表明した以上、党一丸となって政府に働きかける」と語った。

現金給付 政府案に与党から異論 新型コロナ経済対策

予算成立後の3月28日、安倍首相が記者会見で現金給付について明言しました。

首相は会見で「あらゆる政策を動員して、かつてない強大な政策パッケージを練り上げ実行に移す。リーマン・ショック時の経済対策を上回る対策を講じていく」などと語った。その中で、現金給付策を行うことも表明。「効果などを考えればターゲットをおいて思い切った給付を行っていくべきなんだろう」と語り、一定の条件の対象者に限る考えもにじませた。

対象者を絞り現金給付へ 安倍首相「効果などを考え…」:朝日新聞デジタル

3月30日、自民党と公明党が提言書を取りまとめ、それと同日にTBSが「1世帯あたり10万円を超える現金を支給する方向」と報じました。

関心を集めている現金の給付金額は明記せず、「日々の生活の支えとなる大胆な給付を継続的に実施」とするにとどめた。

 対象者についても「所得が大きく減少し、日常生活に支障を来している世帯・個人」とあいまいな表現に終始し、どこで線引きするかは示さなかった。公明党が「一人10万円の現金給付」を党提言に盛り込むのとは対照的だ。

 経済対策をめぐり、岸田氏は今月に入り、首相官邸で2回、東京都内のホテルで1回の計3回、首相と一対一で意見交換している。一連の会談が岸田氏の提言取りまとめの判断に影響を与えた可能性がある。

 提言が具体性に欠けた背景について、岸田氏周辺は「実際に政府が出す数字と党の意見がずれると困る」と解説する。「岸田氏が首相に花を持たせようとしたのだろう」(中堅議員)と見る向きもある。

 提言を取りまとめた30日の自民党会合では、現金給付について出席者から「一人20万円ずつ配るべきだ」「対象者は絞るべきでない」といった意見が続出。一律給付などを求めていた声が提言に反映されていないことへの不満もにじんだ。

現金給付、具体性欠く 安倍首相に気兼ねか、金額・対象「政府一任」―自民提言:時事ドットコム

焦点の現金給付については、自己申告に基づき生活に困っている世帯などに1世帯あたり10万円を超える額を支給する方向だということです。また、感染拡大が終息した後の中長期的な景気対策としては、「商品券」の支給を軸に詰めの調整を行っています。

政府・与党、10万円超の現金給付で調整

公明党は収入が大幅に減少した人などに対し、1人あたり10万円の現金給付を求めました。

与党が政府に経済対策申し入れ 公明党は“10万円”

4月1日、麻生太郎氏が現金給付について否定的な答弁を国会で行いました。3日の記者会見でも同じ話をしています。

麻生太郎財務相は1日の参院決算委員会で、リーマン・ショック後の2009年に実施した一律の現金給付に触れ、「二度と同じ失敗はしたくない」と述べた。麻生氏は当時、首相だった。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が策定する緊急経済対策には一律の現金給付を盛り込まない考えを示したものだ。共産党の大門実紀史氏への答弁。

 リーマン後の「定額給付金」では、全国民に1万2000円(若年者と高齢者は2万円)を配布した。これについて、麻生氏は「何に使ったか誰も覚えていない。(国民に)受けなかった」と振り返った。その上で、緊急経済対策の現金給付は「必要なところにまとめて(給付する)という方が、より効果がある」と語り、収入が減少した個人や世帯などに絞る考えを強調した。

麻生氏「同じ失敗したくない」 現金給付、一律では実施せず:時事ドットコム

麻生太郎財務相は3日の閣議後記者会見で、リーマン・ショック後の2009年、自身の首相在任時に実施した1人当たり1万2000円の「定額給付金」について、「失敗だったとつくづく反省している」と述べた。

新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急経済対策で検討する現金給付は「仕事がなくなるなど(給付を)必要としている人がいる」と述べ、対象を限定することが必要だとの認識を示した。

定額給付金は全国民に支給し、所得減少などの要件を設けなかった。麻生氏は「役に立ったと思っている人はほとんどいない。また同じ事をやったら学習効果がないと言われる」と話した。

麻生氏、定額給付金「失敗だったとつくづく反省」 – 社会 : 日刊スポーツ

4月3日、朝に読売新聞が独自報道として一世帯20万自己申告給付で検討と報じましたが、結局30万円で決着しました。この増額について産経新聞は政府が岸田氏に花をもたせたとしています。

政府は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で所得の減った世帯などを対象とする現金給付について、1世帯あたり20万円とする方向で調整に入った。給付を望む人から所得の金額や減少幅の申請を受けて給付する「自己申告制」とすることを検討している。

【独自】コロナで所得減、世帯あたり現金20万円給付…自己申告制で政府調整 : 政治 : ニュース : 読売新聞オンライン

 新型コロナウイルス感染症に対応するため、政府・与党が緊急経済対策として検討していた個人への現金給付額が3日、「1世帯30万円」で固まった。「1人あたり10万円」を求めていた公明党もこれを容認。一方、野党からは所得制限などを設けない全国民への給付を求める声が上がる。

 自民党の岸田文雄政調会長が安倍晋三首相との面会後、記者団に「30万円」を明らかにし、「スピード感が大事だと強く申し入れた」と述べた。自民党幹部は「新型コロナウイルスがひるむようなことをやらなくてはならない」と語り、十分な給付額を積み上げたと胸を張った。

 公明党は3月末の提言で、「家計に深刻な影響を生じている方々」に「1人10万円」の給付を求めていた。同党の石田祝稔政調会長は3日の記者会見で、30万円の給付額について「1世帯あたりの人数は大体2・27人。3人世帯なら30万円と計算がピタリと合う」と容認する考えを示した。

「1世帯30万円」、胸を張る自民幹部 公明も容認:朝日新聞デジタル

首相から先月17日、経済対策の取りまとめを指示された岸田氏は早い段階から「支援が直接、国民の手に届く施策が求められている」と訴え、全ての国民一律の現金給付が妥当との考えを示してきた。しかし、政府・与党内からは消費税の減税措置や商品券の配布などを求める声が相次ぎ、“商品券派”の二階俊博幹事長と岸田氏との綱引きもあった。

 さらに岸田氏の前に立ちはだかったのが麻生太郎副総理兼財務相だった。リーマン・ショック後の平成21年、当時、首相だった麻生氏は全国民に1万2千円(若年者と高齢者は2万円)を配る「定額給付金」を実施したが、効果は「限定的」とされた。岸田氏は麻生氏の意向をくみ、所得が大きく減った世帯に限り現金を給付する案にかじを切り、配慮を示した。

 ただ、リーマン・ショック時を上回る財政措置20兆円、事業規模60兆円の対策を求めた自民党提言に対し党内には「まだ不十分」との意見もくすぶる。「ポスト安倍」として存在感を示したかった岸田氏は苦しい立場に追い込まれていた。

 しかし、政府内で「1世帯20万円」が有力視される中、首相との会談では10万円の上積みを認めさせた。麻生氏との会談でも自治体への1兆円規模の臨時交付金も引き出し、面目は保たれた。岸田氏周辺は「ありがたいことだ」と胸をなでおろした

首相、現金給付で岸田氏に花 「ポスト安倍」メッセージ?

ちなみに立憲民主党の枝野氏はその日の記者会見で、所得制限と世帯単位について批判しています。

立憲民主党の枝野代表は、記者会見で「金額が大きくなるのは歓迎すべきだが、世帯と言っても1人世帯から何人も扶養がいる世帯まであるし、所得減少の要件を厳格に審査すれば相当な時間がかかる。今、生活が困っている人に迅速に対応するためには、1人当たりで配るしかない」と述べました。

新型コロナ 現金給付1世帯30万円 一定水準まで所得減少の世帯 | NHKニュース

4月4日、岸田氏の側近と言われる木原誠二氏に産経新聞がインタビュー。一律給付を諦めていない旨が語られています。

--岸田氏は当初、全ての国民を対象にした現金給付を考えていた

 「まずは所得が大きく減少した個人や、売り上げの大幅減に見舞われた事業者にしっかり現金給付をする。次のステージまで乗り切ってもらうようにすることが大切だ。党の提言では、感染拡大が終息に向かって反転攻勢期に入り、経済をしっかり動かせるようになったときには、全ての国民が消費活性化の動きに参加してもらえるよう、現金給付やデジタル商品券、クーポンなどの活用を提言している。自民党が一律現金給付をあきらめたということではない。しっかりとフェーズを分けて、対策は講じるべきという考えだ」

新型コロナ 木原誠二・自民政調副会長「反転攻勢期には全国民に現金給付を」

4月6日、不満はありながらも、追加対策を求めることを前提に?経済対策案が与党内で了承され、翌日閣議決定されました。

 自民党では「(対象を限定せず)一律給付にすべきだ」との声が出た。岸田文雄政調会長が「今後も追加の現金給付をはじめとした、さらなる追加経済対策を政府に求めていく」と理解を求め、党の意向を安倍晋三首相に伝えた。

 「1人10万円」の給付を求めていた公明党でも「少なすぎる」「国民の期待が高まった分、落胆の声も多い」との声が上がり、政府側は「1300万世帯を対象に計3・9兆円の予算を組む」と説明し、理解を求めた。

1世帯30万円給付「少なすぎる」との声も 自公が了承:朝日新聞デジタル

ただ、6日の党会議では低所得世帯などに限定して30万円とした現金給付について「一律で1人10万円ずつ配るべきだ」といった意見が相次いだ。党幹部は「今回は感染拡大防止と経済基盤を守るための対策。反転攻勢期には追加対策が必要だ。消費拡大に向け全国民への現金給付を求めていく」と語る。

 公明党にも不満が残る。「1人10万円」を求めたが、世帯単位となった。山口那津男代表は7日、1世帯当たりの平均人数が2・2人程度だとし「1世帯30万円は党の主張に実質的にはかなっている」と強調したが、「国民の納得が得られるかどうか」(中堅)との声が漏れる。一方、追加要求した児童手当の1人1万円の上乗せ給付は盛り込まれ、同党幹部は「何よりだ」と胸をなでおろした。

 全国民への現金給付を求めてきた野党からは、要件を設けたことへの批判が相次いだ。立憲民主党の枝野幸男代表は「多くの人が支援を受けられるという誤ったメッセージを出している」と述べ、共産党の志位和夫委員長も「困っている人の中に分断や不公平を持ち込む」ことになると批判した。国民民主党の玉木雄一郎代表は給付には一定の評価をしたが「(要件が)複雑でわかりにくい」と改善を求めた。

緊急経済対策 与党提言反映も対象限定の給付に不満

4月8日、青山繁晴氏が代表の議員連盟が再び提言書を提出。第二弾の経済対策としての10万円の現金給付を主張しました。

さらに青山氏は「このウイルスの危機は全国民に降りかかっている」と指摘し、次の経済対策に一律10万円以上の給付を実現すべきと強調した。新たな経済対策の財源には、躊躇なく国債を発行すべきとした。こうした新たな経済対策の策定時期については「(GWの)連休明けには第二弾の対策が出てこないといけない」として、更なる経済対策の断行を求めた。

「小さすぎて遅すぎる」自民内から政府の経済対策に異論 青山氏ら一律10万円以上の給付など首相官邸に直談判

朝日新聞の記者によると、自民党内で感染拡大にビビって案を一律給付から線引きをする話に切り替えたとされています。

私は、対策のメニューを政府と連携して練り上げていく自民党の政策部門(政務調査会)を担当している。党内では当初、経済の下ぶれ対策を重視する一律給付が主流で、貯蓄してしまわないよう商品券にする、という案もあった。だが感染拡大は止まらず、党政調幹部は「こんなに悪化するなんて」と絶句。生活維持や倒産防止を優先することが迫られ、金額を上げるため、給付対象を減収が大きい世帯や中小企業に絞る方向に転じた。

 個人への給付は、連立相手の公明党や野党の主張する「1人10万円」を考慮。岸田文雄政調会長が安倍晋三首相に直談判し、「1世帯30万円」に決めた。1世帯の平均は2人強で、1人あたりで見れば10万円を超えるとの理屈だった。

 一方で、対象の検討は難航した。線引きが難しかったからだ。生活困窮の一つの水準である住民税非課税レベルまで収入が落ちた世帯を対象としたものの不満が噴出。政府が対策を決定し、公表した直後に基準の見直しを迫られる異例の展開をたどった。

(取材考記)緊急経済対策、首相「世界的にも最大級」 現金給付、目立つ不十分さ 西村圭史:朝日新聞デジタル

4月10日・14日。上の記事にあるように現金給付の条件への批判が相次いだ結果、条件の見直しが繰り返されます。

新しい基準は、支給対象を世帯主の「月収」で判断する。2~6月のいずれかの月収が昨年より減った場合、単身世帯など扶養親族がいない家庭では、減収後の月収が「10万円以下」の世帯が対象となる。扶養親族が1人なら「15万円以下」、2人なら「20万円以下」と、1人増えるごとに基準額が5万円ずつ上がる。世帯主の月収が半分以下に減った場合はそれぞれ2倍の額が基準になる。当初は「住民税が非課税になる水準」などを基準としていたが、地域ごとに違ううえ、対象がわかりにくいとの批判もあり、一律の基準額に改めた。

 給付時期や申請方法の詳細は決まっておらず、迅速な給付を求める声に応え切れていない。郵送やインターネットでの申請を中心とする方向で、給付は5月以降になる見込み。手続きは各市区町村が担うため、支給時期は全国一律にはならない見通しだ。

30万円給付、基準統一 国、批判受け見直し コロナ対応:朝日新聞デジタル

政府は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた30万円の家計向け現金給付の支給要件について、世帯主以外で家計を支える人の減収も判断基準に含める方針を固めた。週内にも新たな基準を公表する方向で担当する総務省などが調整している。政府関係者が明らかにした。

30万円給付の要件緩和へ 世帯主以外の減収も対象に:朝日新聞デジタル

そんな給付条件も定まらない中、安倍首相の意向で衆参の審議を1日ずつにしてほしい、と野党に要望しているという記事を時事通信が出していました。

 衆院予算委員会の与野党筆頭理事は14日、国会内で補正の審議日程について協議。自民党の坂本哲志氏は22日成立を念頭に、21日の委員会質疑と採決を提案。国民民主党の渡辺周氏は審議時間が足りないとして応じず、平行線に終わった。

 一方、首相は14日の衆院本会議で、緊急経済対策について「事業規模108兆円、国内総生産(GDP)の2割に当たる対策規模は世界的にも最大級だ」と強調し、補正の早期成立を訴えた。自民党幹部によると、首相は13日の党役員会で22日の成立へ努力するよう指示した。

自民、22日成立を模索 補正予算―新型コロナ:時事ドットコム

その一方で週末を使って調査された世論調査にて、今回の現金給付について軒並み不評であるといえるような結果が出てきました。

新型コロナの影響で、収入が大幅に減った世帯に30万円の現金給付を行う方針には39・0%が賛同したが、50・9%が「支給額が下がってもすべての国民に給付すべきだ」と答えた。

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経済対策として、収入が減少し、一定の基準以下となった世帯に現金30万円を給付する方針については、「不十分だ」58%、「適切だ」26%、「行き過ぎだ」5%となった。

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緊急経済対策のうち、世帯主の月収が一定の水準まで落ち込んだ世帯などに限って1世帯当たり現金30万円を給付することについて、
▽「大いに評価する」が8%、
▽「ある程度評価する」が35%
▽「あまり評価しない」が34%
▽「まったく評価しない」が16%でした。

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そんな中、自民党の二階幹事長が、一律10万円給付に言及し始めます。しかし、この段階では2次補正予算が前提でした。

自民党の二階俊博幹事長は14日、2020年度第2次補正予算案の編成を念頭に、国民への一律10万円の現金給付を政府に要請する考えを示した。「一律10万円の現金給付を求めるなどの切実な声がある」としたうえで「できることは速やかに実行に移すよう政府に強力に申し入れたい」と述べた。高額所得者の扱いは検討する方向だ。

党本部で記者団に語った。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、追加の経済対策を検討する構えだ。二階氏は「早ければ早いほどいい。(20年度1次補正が)成立後、直ちにということも念頭にある」と強調した。

受給者の所得制限を設けるかどうかについては「所得がたくさんの方々に対してまでやっていくだけの財政的なゆとりはなかなか困難だと思うが、これから関係者の間で十分検討願おうと思う」と語った。一律10万円という金額は「(党内で)まとまればそういう方向でいく」と話した。

新型コロナが日本経済に大きな打撃となっている現状を踏まえ「国民に安心の気持ちを持ってもらうためにそういう対策も必要だ」と主張した。今後、所得制限を設けるかどうかなど詳細な制度設計を党内で議論する。

二階氏「一律10万円給付を」 所得制限は今後検討: 日本経済新聞

この翌日、時事通信の報道等によると、これで慌てた公明党の山口代表が総理に突っ込んでいきます。

公明党関係者は「ごみみたいな経済対策」と酷評。支持母体の創価学会は「閣外協力も視野に入れる」と激怒し、政府への要求を強めるよう公明幹部に迫った。自民党の二階俊博幹事長が14日に「一律給付」を急きょ打ち上げたため、慌てた山口氏が首相に直談判を申し入れた。

一律10万円、与党圧力に安倍首相転換 所得制限不評、危機感広がる―追加経済対策:時事ドットコム

田崎氏は「二階さんは本気じゃないんですよ、はっきり言って」と指摘。そして「一昨日の夕方に発言されているんですけど、一昨日の昼、自民党と公明党の幹事長と国対委員長が会談がありまして、そこで公明党の幹事長の斎藤さんが10万円の給付を実現してほしい、30万円の給付が非常に評判が悪いってことをお願いしたんですね。それを受けて二階さんが発言した」と説明。

 その上で「二階さんの思惑としては、30万円給付の問題は岸田政調会長がしゃべっているんですよ、安倍総理との会談の後に。で、二階さんにすればこういう重要問題は幹事長が発言すべき問題だと。俺にしゃべらせろってことなんですよ。そういう理解で自民党内は収まったんですけれど、それで慌てたのが公明党なんですよ」と言い、「昨日午前中10時前くらいにね、公明党の代表の山口さんが官邸に駆け込んでいるんです。で、これ異例の会談で9時40分ごろに山口さんが総理秘書官室に電話して、今すぐ会いたいとアポイント申し込んでそれで20分間くらい会われているんですね。そこで10万円の給付をしてほしいと。所得制限なしでということを言っているんです」と解説した。

田崎史郎氏 自民・二階幹事長の10万円給付要求に「二階さんは本気じゃないんですよ、はっきり言って」― スポニチ Sponichi Annex 芸能

この公明党の要求に対して、政府と自民党は、二次補正予算を組む方向で検討しますが、公明党が不退転の決意で反発。なんと、補正予算の審議をする予算委員会の日程を決める理事懇談会を欠席すると言い出しました。事実上の与党による審議拒否です。

断続的に行われた与党協議で、公明党は収入が減少した世帯への30万円の現金給付は国民の評価が厳しく、それに代わる一律給付を早期に行うべきだとして、今年度の補正予算案の組み替えを求めました。

これに対し自民党は、補正予算案は閣議で決定しているうえ、組み替えを行えば、経済対策全体の実行が遅くなり応じられないという考えを伝えました。

政府・自民党としては、予定どおり30万円の現金給付などの経済対策を盛り込んだ補正予算案を来週、成立させたうえで、一律給付の検討を本格化させる構えです。

「10万円一律給付」補正予算案成立後に検討の構え 政府・自民 | NHKニュース

15日夜の協議で、両党は、一律給付の方向性は共有したものの、公明党が、収入が減少した世帯への30万円の給付を撤回したうえで、一律10万円給付を早期に実現するよう求めたのに対し、自民党は、2次補正で検討すべきだとして応じなかった。

両党は、16日も協議を続ける見通しだが、政府関係者は、所得制限なしの給付に否定的な考えを示しているほか、ある閣僚は、「いまさら言う話ではない」と、公明党への不快感をにじませている。

公明党幹部は、「山口代表は不退転の決意だ」と語るなど、1歩も引かない姿勢で、協議が難航すれば、国民への給付に遅れが生じかねないだけに、安倍首相は難しい判断を迫られている。

【速報】安倍首相が麻生氏、二階氏らと会談へ 「一律10万円」自公紛糾

新型コロナウイルスの感染拡大を受けた経済対策を盛り込んだ補正予算案をめぐって、衆議院予算委員会は16日、理事懇談会を開き、審議日程などを協議する予定でした。

しかし、公明党が、補正予算案を組み替えて現金10万円の一律給付を実現するよう求めて、理事懇談会を欠席する意向を自民党に伝え、理事懇談会の開催は見送られました。

公明 山口代表 現金10万円の一律給付実現を安倍首相に再要請 | NHKニュース

また、公明党は連立離脱まで言及していた、または野党案への賛成をちらつかせていた、という報道もありました。

「今、やらないと私も首相もおしまいですよ」。15日午前の首相官邸。公明党の山口那津男代表は首相に語気を強めて一律10万円給付の実現を迫った。複数の与党関係者によると、山口氏はこの際、「連立離脱」の可能性に踏み込んだとされ、あまりのけんまくに首相も動揺を隠せなかった。

 公明党は当初から10万円の給付を主張したものの、減収世帯に対象を絞った30万円給付で決着。公明支持層からは「受け取れない人が多い」との怒りが渦巻いた。公明党幹部によると、支持母体の創価学会から「このままでは公明の選挙に協力できない」と通告を受け、山口氏は危機感を募らせていた。

 30万円給付は自民党内でも不評で、同党の二階俊博幹事長が14日、国民1人当たり10万円の現金給付を行うべきだと表明。お株を奪われた公明党は「所得制限なし、一律10万円」実現へと一気にかじを切った。二階氏は追加の経済対策として検討の必要性を訴えたものだったが、公明党は失地回復の機会とみて攻勢を強め、予算の組み替えを要求。山口氏は斉藤鉄夫幹事長らに「決して妥協するな」と号令をかけた。

 首相周辺は15日夜、「公明党が連立を降りると言っている。今回は譲らざるを得ない」と環境整備に着手。16日に麻生太郎副総理兼財務相、二階幹事長を相次いで首相官邸に呼び、こうした方針を正式に伝えた。

 30万円給付は経済対策の目玉政策だったはずだが、結局実現しなかった。調整に汗をかいてきた自民党の岸田文雄政調会長の周辺からは「メンツをつぶされたように映り腹が立つ」(岸田派若手)と恨み節が漏れた。

 一連のコロナ対応をめぐっては、布マスクの全戸配布や、首相が自宅でくつろぐ動画の公開などで政権は批判を浴び、内閣支持率も下落傾向にある。公明党関係者は「首相が自分の周辺だけで物事を決めるからだ」と語り、トップダウンの政治手法を厳しく断じた。

 安全保障関連法を制定するため集団的自衛権の行使を容認した15年でも封印していた連立離脱カードを切るほど公明党内の不満が高まっていたことが明らかとなり、自民党幹部は「公明は押せば通ると思っていた。根回し不足だった」と唇をかんだ。

公明、「連立離脱」論で押し切る 官邸主導の政治手法に影―現金給付1人10万円:時事ドットコム

二階氏の発言後、公明党は一気に攻勢をかけた。山口那津男代表は15日朝に急きょ決まった首相との面会で、所得制限を設けず1人一律10万円を給付するよう促した。

公明党幹部らによると、山口氏はその場で「内閣の評判が非常に悪くなっている。危機的状況だ」と伝達した。「国民をとるか自民党をとるかといったら国民をとる。今のままなら補正に反対する」と続けた。

首相は「補正予算を速やかに成立させた上で、方向性を持ってよく検討したい」と引き取った。来週に成立予定だった補正予算後の2次補正が念頭にあった。

山口氏を動かしたのは支援者の声だった。手紙や電話など党に届いた約1万5千通のメッセージ一つ一つに目を通した。

15日午後にも山口氏は首相に電話し、補正を組み替えて10万円給付の予算を計上するよう求めた。支持母体の意向でもあった。首相は「それはできない」といったんは拒んだ。それでも食い下がり、再び16日午前に山口氏は電話で詰め寄った。

16日午前、麻生太郎副総理・財務相は首相に「二度と同じ失敗はしたくない」と難色を示した。麻生氏自身、09年のリーマン・ショック後に首相として1万2千円の定額給付金を支給し、効果は薄かったとみていた。

首相は押し切り、その後、会談した岸田文雄政調会長らに公明案の受け入れを指示した。

関係者によると、公明党は立憲民主党など野党が提出を検討する補正予算案の組み替え動議に賛成することもちらつかせた。野党はかねて一律10万円給付を訴えていた。

揺らぐ政権「10万円」へ異例の補正組み替え 公明攻勢: 日本経済新聞

その結果、安倍首相が折れて一律10万円給付案に補正予算を組み替える方針を発表。
しかし、折れたという印象を薄めるために、緊急事態宣言を利用してごまかしたのでは、と朝日新聞は指摘しています。

担当の西村康稔経済再生担当相は「大型連休期間中における人の移動を最小化する、そのための対応を取ることが急務だ」と、全国拡大の理由を説明した。しかし、政府が定めた基本的対処方針には、「不要不急の帰省や旅行など、都道府県をまたいで人が移動することは、まん延防止の観点から、極力避けるよう、(中略)住民に冷静な対応を促す」とあり、対象区域の都道府県が移動自粛を促すことができるとされている。政府としてはすでに対策を取ってきているのが実情だ。

 むしろ首相の政治決断の背後に見え隠れするのは、公明党からの圧力を受けて余儀なくされた現金給付をめぐる政策変更だ。首相はこの日、緊急経済対策の「目玉」だった所得が減収する世帯向けに30万円を給付する案に替え、新たに全国民一律に1人あたり10万円を給付することを決定した。

 政権幹部はこの政策変更について、「宣言を全国に拡大するから一律10万円になった」と説明したが、額面通り受け取る与党議員は少ない。自民幹部の一人は「公明党に言われたからやりますっていうわけにはいかない」と語り、緊急事態宣言の拡大を一律10万円給付への政策変更の「口実」にしたとみる。別の党幹部も「宣言の対象は広くした方が良い。その方が補正を組み替える理由になる」と漏らした。党ベテラン議員は「10万円の給付金にする理由として緊急事態宣言を政治利用している」と言った。

「全国拡大は不要」のはずが 見え隠れする「10万円」 [新型コロナウイルス][緊急事態宣言]:朝日新聞デジタル

補正予算組み換えへのいろんな反応

まずは野党系の反応から。どの政党も「国民の声は一律給付を要求していた」ということを前提に語っているように見えます。

○補正予算の審議直前に、与党から急きょ組み替えの議論がなされ、方針が変更されるなどということは、前代未聞のことである。安倍政権のガバナンスの欠如、そして与党との調整不足は明らかであり、その責任は重大である。

○10万円一律給付は、政府・与野党連絡協議会で、かねてより再三再四、野党が強く求めてきたものであり、国民の声や野党の意見を真摯に受け入れていれば、このような混乱には至らなかったはずである。

○野党の幹事長・書記局長は、改めて10万円一律給付、休業要請と補償はセット、PCR検査のさらなる拡充を含む、野党統一の補正予算の組み替え案の速やかな策定作業に入るよう、それぞれの政策責任者に指示をさせていただいた。

○中小企業や地方への支援策、さらには医療機関への支援策も含めて、これから野党が検討する組み替え案の内容は、コロナの感染拡大防止や、国民生活を守り医療崩壊を防ぐ観点から組み替えるものであり、政府・与党においては、野党案を真摯に受け入れ、速やかにこれを成立させることを強く求める。

総理の補正予算組み換え指示は「前代未聞」。10万円一律給付は政府・与野党連絡協議会で再三、野党が強く求めてきたもの

国民民主党の玉木雄一郎代表は16日、安倍晋三首相が新型コロナウイルス関連の経済対策で「一律10万円」の現金給付に向け、令和2年度補正予算案の組み替えを指示したことについて「いよいよ審議というときに与党の要求で組み替えられるのは前代未聞、空前絶後だ。首相から説明いただきたい」と述べ、与野党党首会談を開いて経緯を説明するよう求めた。党本部で記者団に語った。

 国民は3月18日に一律10万円給付を含む経済対策案をまとめており、玉木氏は「われわれの政策が実現見込みとなったことはよかった」と評価。一方で「これで給付が遅れる責任は首相にある。自民党の岸田文雄政調会長ら、与党の政策責任者の責任も問われるのではないか」と指摘した。

 玉木氏は組み替えにあたり、事業者向けの「持続化給付金」の予算拡充や、国民がまとめる方針の「家賃支払いモラトリアム(猶予)法案」への協力などを求める考えを表明。政府・与党の対応次第で「(成立に)協力、賛成することにやぶさかではない」と語った。

国民・玉木代表「首相は党首会談で説明を」

野党は16日、緊急経済対策に盛り込む現金給付をめぐり、政府・与党が迷走したことを一斉に批判した。野党は早い段階から、手続きに時間のかからない国民1人当たり10万円の一律給付を求めてきたが、政府は一貫して拒んできただけに「安倍晋三内閣は総辞職すべきだ」(野党幹部)と強気の構えを見せている。

 「自己否定だし、朝令暮改だ。首相も内閣も信用できなくなる。責任を取らないといけない」

 立憲民主党の安住淳国対委員長は記者団にこう述べ、閣議決定した令和2年度補正予算案の組み替えを厳しく批判した。野党はかねて国民1人当たり一律10万円の給付を訴えていただけに、首相の方針転換に攻勢を強めた。共産党の志位和夫委員長も記者会見で「(1世帯30万円の給付案は)破綻した。すべての人に10万円を配る方がスピードの面でも公平性の面でも合理的だ」と胸を張った。

 野党は16日、政府との連絡協議会であらためて10万円の一律給付を要求。さらに立民など主要野党の幹事長・書記局長は、補正予算案を独自に組み替え、共同提案することで一致した。

 強気の背景には世論の追い風がある。布マスクの全世帯配布などに批判が強いとみており、報道各社の直近の世論調査でも安倍内閣の支持率は軒並み低下しているからだ。立民幹部は「政府が決めた予算案を土壇場でひっくり返すのはクーデターだ。首相は与党側から内閣不信任案を突き付けられた」と言い放った。

10万円給付 存在感示す公明、自民はガバナンスの危機 迷走に野党は批判

立憲民主党・福山幹事長:「前代未聞。安倍政権のガバナンス欠如だ。10万給付はかねてから野党が強く求めたもので、国民の声を真摯に受け入れていればこのような混乱にはならなかった」

 政府は来週に提出予定だった2020年度補正予算案を組み替えて対応する方針です。これに対して立憲民主党などの野党は、一律10万円の給付に加えて自粛要請と補償をセットで行うことや医療機関への支援策などを盛り込んだ野党統一の補正予算の組み換え案を提出する考えです。

1人10万円…野党「ガバナンスの欠如だ」政府を批判

立民 安住国対委員長「給付見直しなら首相責任を」

立憲民主党の安住国会対策委員長は会派の代議士会で「30万円の現金給付は自民党と公明党が進めてきたもので、直前になって公明党が現金10万円の一律給付を求めるのは朝令暮改で、事実上の反乱だ。政府には統治能力がなく、混乱以外の何物でもない。仮に見直すならば、安倍総理大臣と関係者全員の責任を問うべき事態だ」と述べました。

国民 玉木代表「10万円で足りるのかという議論も必要に」

国民民主党の玉木代表は記者団に対し「すべての国民に10万円を一律給付することは、各党に先駆けてずっと主張してきたので、実現の見込みとなったことはよかった。ただ、給付が遅れることで傷が広がり、救うべき人が増えることが懸念され、10万円で足りるのかという議論も必要になってくると思う。直前になって補正予算案を組み替えるのは前代未聞であり、経緯などを党首会談を開いて安倍総理大臣に説明してもらいたい」と述べました。

維新 浅田政調会長「所得制限つけず一律で」

日本維新の会の浅田政務調査会長は、政府と与野党の連絡協議会のあと、記者会見し「所得制限など条件をつけると、国民に届く時期が遅れてしまう。いま必要なことは早さだ。一律で10万円を給付することは当初から強く求めてきたので、主張の正当性が認められたと思う」と述べました。

共産 志位委員長「外国人含めすべての人に支給を」

共産党の志位委員長は記者会見で、「最初の30万円の案は不公平で、とてもじゃないが使い物にならず、破綻したということだ。10万円を急いで配るほうが合理的で、所得が多い人には後で税金で返してもらえばよい。外国人も含め、日本に住むすべての人を対象に支給するべきで、今の補正予算案に組み入れて即、執行することを強く求めたい」と述べました。

社民 吉田幹事長「一刻も早く給付金が届くよう」

社民党の吉田幹事長は、記者会見で「補正予算案を組み替えるということは、与党内で調整が不足していたと指摘せざるをえない。収入が減少した世帯への30万円の現金給付は対象の線引きが難しい。厳しい状況にある国民の手元に一刻も早く給付金が届くよう全力で取り組んでほしい」と述べました。

首相 10万円給付へ補正予算案組み替え方針 自民幹部に伝える | NHKニュース  

一方で、与党側の気になる言動として、一部自民党議員がTwitterにて、「自分たちの声では動かないのに、公明党がいえば動くのか」という趣旨の嘆きの声が漏れているように見めます。この失望がどこまで続いて、言動にどんな影響を与えるのかは気になるところです。

便乗マイナンバーカード普及?
一方でこのように全面擁護する議員も

また、自民党内などには、30万円給付案を二次補正予算として行うという話もあるらしく、枝野幸男氏も取り下げに批判的なので、そういう話がどうなるかも気になるところです。

減収世帯向け30万円給付を巡っては、補正予算成立後に想定される第2弾の経済対策に入れてはどうかとの意見が自民党内で出ている。

コロナ対策一律10万円給付 所得制限はしない方向 – 社会 : 日刊スポーツ

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