『(夫婦別姓が結婚の障害)だったら結婚しなくていい』ヤジ問題

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2020/01/22に行われた、総理大臣の施政方針演説への代表質問にて、自民党議員のとあるやじが取り上げられました。

玉木氏は質問で、若い男性から「交際女性から『姓を変えないといけないから結婚できない』と言われた」と相談されたことを紹介したうえで、「夫婦同姓も結婚の障害になっている」と指摘した。この際、ヤジが飛んだという。

 玉木氏はすぐに「今、ヤジで『だったら結婚しなくていい』とあった」と取り上げ、「結婚数や結婚率を上げていくことが、国難突破の少子化対策になるんじゃないか」と訴えた。

「だったら結婚するな」国会でヤジ 夫婦別姓で質問中に:朝日新聞デジタル

『姓を変えたくないなら結婚するな』という自民党の女性議員がいたと言うことです。

結婚という制度が、一部の思想の方々にとっては神聖なものとなっているというのがよくわかるヤジです。

先日、とあるきっかけから、パートナーシップ制度を異性カップルでも使える自治体や国について調べていたところ、結婚制度は挙式が必須など宗教の影響が大きく、そこを避ける意味もある、みたいな情報をいくつか目にしたのですが、日本では挙式必須ではないものの「夫婦同姓必須」というようなものが、結婚観等の思想等の影響の大きさを証明し、そこが今後も結婚を避ける人の増加に寄与していく、という構図になるのでしょう。

英国では、同性カップルが異性間の婚姻に準ずるものとして「シビル・パートナーシップ」という法的関係を持つことができるようになった(2014年のシビル・パートナーシップ法による)。

 同性及び異性カップルが利用できる「結婚」と、同性カップルのみが利用できる「シビル・パートナーシップ」を比べてみると、どちらの場合でもカップルは同等の権利と義務(遺産相続、税金、年金、最近親者として扱われるなど)を付与される。

 違いはシビル・パートナーシップの対象が同性カップルに限られていること。また、宗教性がないことだ。

 英国では結婚というと、異性カップルの法律上の結びつきであると同時に、宗教儀式としても認識されてきた歴史がある。

英国で異性カップルでも「シビル・パートナーシップ制」が可能になるか? 結婚を避ける人が増えている : 小林恭子の英国メディア・ウオッチ

英国では2004年、当時まだ法的に結婚できなかった同性カップルに対し、結婚している異性カップルと同様の法的・金銭的保護を認めるシビル・パートナーシップ制度を制定した。異性カップルには適用されなかった。

その後、2013年にイングランドとウェールズで、2014年にはスコットランドで同性婚が合法化された。これにより、同性カップルは結婚とシビル・パートナーシップのどちらかを選べるようになった。なお、北アイルランドでは同性婚は合法化されていない。

しかしこの時、逆も真なりとはならず、異性カップルはシビル・パートナー制度の適用を受けなかった。今回改正が加えられるのはこの部分だ。

英国では日本と異なり、結婚にはお互いの結婚の誓いと挙式が必須条件。一方、シビル・パートナーシップは書類に署名するだけで認められる。

異性カップルもシビル・パートナーシップ制度を選べるように 英国 – BBC News ニュース

また、伝統的な結婚のかたちには宗教の影響が大きい。性的な関係を結婚するまで禁ずる宗教もあり、信者同士であれば未婚のままで子供を作るということは考えられない。

さらに、結婚は個人だけでなく家と家との結びつき、という見方は、インド系あるいはイスラム系イギリス人のコミュニティーに多い。この中では適齢期の男女がいつまでも結婚しないのは、世間体が悪いとか、収入の高い男性の家に嫁ぎ専業主婦となり、男子を産むことが女性の幸福、などと日本人にもわかりやすい結婚観が聞かれる。

中流層のイギリス人には無宗教でリベラルな人が多い。女性も経済的に自立していて、旧型の結婚とは男性が女性の所有を宣言する不平等な制度だと見る。同棲のままか、シビル・パートナーシップを選ぶ層だ。逆に上流階級になると、昔から良家同士がつながりを持つために結婚を利用してきたが、そういった慣習がなくなった現代でも、結婚する当人同士が社会的な地位や経済的な結びつきを強く意識していることも多い。

兄弟でパートナー婚! 結婚よりパートナーシップ? どうなってるイギリスの結婚制度|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

このあたりの話で重要なのは、結婚制度に「権利と義務」「法的・金銭的保護」が存在していることに言及されていることでしょう。

その権利は何を前提に与えられているのか、その義務は何を前提に課されているのか、その保護は何を前提に保護しているのか、そういうことを一つ一つ見直していかないと行けないのだろうと思います。
(特に婚姻制度の話と少子化の話が結び付けられがちな状態を踏まえると。)

「結婚」とは?民法で見る義務や権利、事実婚との違い|今どきウェディングの最新情報と結婚準備完全ガイド「Pridal
「結婚」=「婚姻」は民法で定められているものなので、「婚姻届」を出すとその二人は結婚したということになり、夫婦となった二人にはそれまでとは違う法律上の義務や権利が生じます。同姓や同居、扶養、婚姻費用の分担の義務や、財産分与などの権利が生じます。

夫婦別姓を求める人に「それなら結婚するな」と野次ってしまう人にとっては、既婚カップルの法的保護は『国家にとって「こうあるべきだ」の模範に従っているから保護する』というようなものなのでしょう。
同じような人が同性婚を「子供を作れない人が云々」と主張するのは、その「こうあるべきだ」に子供を作ることも含まれている、という話というだけで、実態としては同性だろうが同姓だろうが子供を作っていようが模範的でない人への保護や権利は不本意なのでしょう。
「義務を果たしているから権利を主張できる」という話に、婚姻制度も含まれるというメカニズムで。
(以下のTweetは今回のヤジとも無関係ですし、婚姻制度とも無関係ですが、「義務と権利」観にはズバリ関わるので引用しました)

今回のヤジに話を戻すと、(2020/01/23 11:32現在)Google検索などで調べるとフジニュースネットワークが独自取材して得たと思われる、他メディアはそこまで踏み込んでいないように見える情報があります。

近くにいた議員らは、ヤジを飛ばしたのは自民党の杉田水脈議員だったと証言しているが、杉田氏の事務所は、事実関係を確認中としている。

夫婦別姓問題発言中 女性議員がヤジ「結婚しなければいい」 – FNNプライムオンライン

この報道で気になったのは「近くにいた議員ら」が“どこの”近くにいた議員なのか、という点です。

当初、私はこの記事を読んで「杉田水脈氏の近くにいた人たち」と判断しました。
そして「杉田水脈氏の近くにいるのって、基本同会派、つまり自民党議員が証言したの?」と考えたのですが、もう一つ可能性があることにふと気づきました。
それは、ヤジを飛ばされた側である玉木雄一郎氏の近くにいた議員、つまり登壇場所に近い議員のことです。

国会の座席表というのは、ホームページには掲載されていないのですが、きちんと衆議院は「議席表」という形でまとめられてはいるようです。
今国会の座席表も、「議会雑感」というブログを書いている方がTwitterに上げてくださっています。

ちょっと文字が潰れて見づらいのですが、演壇から議席に向かって右斜め前、282番に杉田水脈氏の名前があるように見えます。
(ちなみにフジのニュース映像を見ると演説時、玉木氏が「今やじで」とヤジについて述べる前に、前の発言が終わったあと右斜め前に目線を送り、発言の冒頭で右手を特定方向に向けているように私には見えるのですが、手の向いている先がちょうどそういう方向のように私には見えますが、気のせいかもしれません)

視線を向けて(出典:夫婦別姓問題発言中 女性議員がヤジ「結婚しなければいい」 – FNNプライムオンライン
手を向けながらヤジの指摘開始(出典:夫婦別姓問題発言中 女性議員がヤジ「結婚しなければいい」 – FNNプライムオンライン

どうしても見つからない場合は以下のTweetに載っている過去の議席表で尾身朝子氏の名前がある場所と同じだと見ると、杉田水脈氏の周囲がどうなっているかがわかりやすいのではないでしょうか。

これを見るに杉田水脈氏自身はどう見ても自民党会派の議員に囲まれた中央前列に座っているので、杉田水脈氏の「近くにいた議員ら」ならばどう考えても自民党会派の議員になります。
自民党会派の議員ではない可能性は演壇の「近くにいた議員」と解釈し、演壇の近く、つまり、他会派の最前列の議席に座っている議員が考えられます。

とここまで書いたところ(2020/01/23 12:57)で、朝日新聞がこの情報に関する記事を出したことを確認しました。

 22日の衆院代表質問で国民民主党の玉木雄一郎代表が選択的夫婦別姓に関する質問をした際、「それなら結婚しなくていい」という趣旨のヤジが飛んだとされる問題で、野党は23日の衆院議院運営委員会で自民党の杉田水脈衆院議員の発言ではないかとして自民に確認を求めた。

 同委の高木毅委員長によると、野党側は▽杉田氏と認識しているのか▽杉田氏だとすれば本人が撤回、謝罪をするか▽自民としての考えはどうか――と問題提起した。同委の手塚仁雄筆頭理事(立憲民主党)は記者団に「前列に座っている(野党の)若手議員から杉田氏だとの話もあった。事実確認してもらいたい」と説明。自民に対して事実確認を求めたと明らかにした。

 朝日新聞は22日、杉田氏の事務所に確認を求めたが、同日深夜、「現時点で本人と連絡がついていない。明日改めてご連絡する」との回答があった。23日午前には記者団が杉田氏に発言の意図を尋ねたが、答えなかった

選択的夫婦別姓ヤジ、自民の杉田氏か 野党が確認求める:朝日新聞デジタル

他社の記事なので、フジのニュースの「近くにいた議員」の意図はわかりませんが、少なくとも前列に座っていた立憲民主党議員に杉田水脈氏のヤジだと認識している人がいたことはわかりました。

どこの誰が情報源なのか、というのは情報の信頼性や、情報の背景にある意図などを読み解くために重要な要素、事実の一つです。
そういう意味で、関係者談などの話にしても、取材源の秘匿という観点はあるとはいえ、できる限りわかりずらい書き方はできる限り避けてほしいと思います。
わかりやすい情報の書き方の原則と言える5W1Hを調べると、「もとは新聞記事を書くときの原則」なんて書いてあるわけですから。

Bitly

追記(2020/01/23 19時頃)

フジが杉田水脈の件の詳報を夕方のニュースに合わせて報じました。

近くにいた自民党議員によると、このヤジを飛ばしたのが杉田議員だという。

記者からの「だったら結婚しなければいいという発言、杉田さんのでしょうか?」、「否定はされないんですね?」などの質問に、一言も答えなかった。

それも、そのはず。

自民党関係者から、「答えるな」と指示があったという。

ヤジ疑惑と高額資金に批判 水脈議員と杏里議員を直撃 – FNNプライムオンライン

この報道で、フジは自民党議員の証言を確保したことが明示されています。

また、杉田水脈議員に誰かが取材に答えないように指示したようです。
「自民党関係者」というのが幅広すぎる気がしますが、役付きではない、ということでしょうか?

この指示は、杉田水脈議員の過去の言動を考慮すると、単に取材に反応するなと言うことだけではない意味を持ちます。

それは、自民党の竹下亘氏のごまかし方を見るとわかります。

自民党の竹下元総務会長は派閥の会合のあと、記者団に対し、「乱暴な言葉だが、売り言葉に買い言葉のような感じで、深く考えずに軽く言ってしまったのではないか」と述べました。

夫婦別姓質問に「だったら結婚しなくていい」 野党側 確認要求 | NHKニュース

杉田水脈議員を少しでも知っている人なら、支持する人も批判する人も同じ返答を、この誤魔化しに返すはずです。

「杉田水脈議員は深く考えた上で、普段から夫婦別姓に反対している。今回のヤジはそういう『深く考えた』ヤジだ」と。

「相手の姓になるのが嫌」なら、その人と結婚しないことをお薦めします。

  事実婚をして、子どもを作るくらい相手が好きなのに「相手の姓になりたくない」とかたくなに言う人がそんなにたくさん存在するとは思えません。

夫婦別姓〜賛成の人が増えているようですが。 : 杉田 水脈(すぎた みお) 公式ブログ

この通りに。
上記の杉田水脈議員のブログは2015/12/07に更新されていて、少なくとも4年以上考えていることをヤジとして発したのです。

なので竹下亘氏の『深く考えずに軽く言ってしまった』が真実ならば、4年以上杉田水脈議員は『深く考えずに軽く』喋り続けていることになります。
もっと言うならば政治活動すべてが『深く考えずに軽く』行われていると評価されてもおかしくないでしょう。
だから竹下亘氏の誤魔化しには、支持者は『侮辱だ』と反発することになる、と推測するのです。

一方、杉田水脈議員自身は、ヤジの発信者であるかどうか、昨夜から事務所に問い合わせが行っている中、倉山満氏などとカラオケに行った様子を堂々とツイートしています。

このTweetで「本人」とされているのは、どうも科学戦隊ダイナマンという作品でダイナピンクを演じた女優の萩原佐代子さんのようだ。
過去に共演している様子がInstagramに投稿されていた。

杉田水脈議員は先程のTweetに続いて、曲の歌詞と歌唱動画をTweetしているが、個人的にはこのタイミングで、この歌詞を取り上げた意図をどうしても私は憶測してしまいます。

(以下、あくまでも「憶測」です)
「自分を誤魔化すな」というのは、ヤジをしたことについて、自分を誤魔化さないためにやったんだと言っているかのようです。

「友を裏切るな」というのは同僚自民党議員への警告だったりして・・・。
もしくは、友でないから、夫婦別姓を求める人間はどうでもいい、という感じでしょうか。

くだらない憶測はここまでにして、もとの話題に戻しますが、竹下亘氏の誤魔化し方や杉田水脈氏のこれまでの言動から察せられることとして「答えるな」という指示は「お前の持論を黙って誤魔化せ」という指示だということが実態なのではないでしょうか。

黙っていれば誰かが勝手に主張を代弁して、その人と批判者の争いになり、そのうち杉田水脈氏の存在や持論は問われなくなる、とでも考えているのではないでしょうか。

それこそ、都議会でのヤジで問題になった鈴木章浩氏が、普通に都議選にて再選し、自民会派の政調会長や幹事長を行っているように。

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