統一名簿について思うこと

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今年行われる参院選について、野党統一の比例名簿を作ることを小沢一郎氏などが主張し、枝野幸男氏が否定するというやり取りが行われました。

立憲民主党の枝野幸男代表は30日の会見で、夏の参院選をめぐり、自由党の小沢一郎共同代表らが求める比例代表での野党各党による「統一名簿」の作成のついて、声を荒らげて拒否した。「わが党が統一名簿に加わることは、全くない。消極的なのではなく、あり得ない。これ以上、(話を)持ち込まれるのは迷惑です」と述べた。

否定的な理由を問われると「(各党は)政策が違う。名簿をつくってもどの候補が当選するか分からず、わが党の支持者も票を入れてくれない。トータルでは間違いなく(票が)減る」と述べた。その上で「でも、1人区(の候補者調整)については、徹底して協力したい」と述べ、与野党対決で勝敗の鍵を握る32ある1人区では、野党各党との協議に応じる意向を示した。

枝野代表「迷惑です」小沢氏求める統一名簿を拒否

この統一名簿というものですが、私は基本的にそんなに効果があるものとは思えません。
なぜ私がそう思うのかも含め、統一名簿について、どのような効果があるのかについてこの記事では書いていきます。

数字だけを見た足し算効果

野党について悪意がありそうな政治記事が多い東スポで説明されているのは死に票を減らす効果です。

野党が分散していた際は多くの死に票が出ていたが、統一名簿方式なら分散していた票が一つに集約され、死に票を減らすことでより多くの当選者を出すことができる。デメリットは、当選後にどの政党に所属するかで、しこりを残す可能性が指摘されている。

また出た「野党統一名簿」案に立民アレルギー反応

ただ、想定として、統一名簿に合流した各党がバラバラの際に得られる得票がそのまま統一名簿に一本化されたとして、死票をへらして増えるであろう議席は最大で(合流した政党数-1)であろうと思われます。

各党が、一議席を得るほどではなかった端数票が足し算されることで、一議席に届く、という効果でしかないので、数字の理論としてそこまで大きい効果にはならないわけです。

例えとして、前回2016年の参院選の結果を用いて考えてみます。

以下、画像はWikipediaの参院選の結果をまとめたグラフのスクショです。

まず、2016年の参院選比例区で1議席確保に必要な票数を調べてみましょう。

上記比例当選者一覧は、各党の議席確保の順番も表しています。
これを見ると、48議席目を確保しているのは、自民党であることがわかります。

つまり、自民党が最終議席を確保したラインが、1議席を確保するために必要な最低ラインだったことになります。

ドント式で議席を確保するということは「党の得票÷○○議席目」という計算結果が、他党の計算結果を上回っていることが条件です。

つまり、自民党の得票を自民党の議席確保数「19」で割った答えが、1議席確保に必要な得票となります。

今回は、数字の大きさを小さくすることでわかりやすくするために、簡易的な計算として得票数ではなく得票率を用います。

35.91(%)÷19=1.89(%)

合計した得票率を現在の議席数より1大きい数で割った答えが1.89%を超えていれば、合流することによって自民党の19議席目を押し出して議席を確保することができる、と言えるということになります。

数字だけを見ると、例えばおおさか維新の会と日本のこころを大切にする党の得票を合わせると、実際の結果はおおさか維新が4議席で日本のこころが0議席だったのですが、(9.2+1.31)÷5=2.012となるので、5議席目の確保が可能になります。

また、ありえない想定でいうと、社民党と共産党、社民党と日本のこころ、等がこの効果が出てくる組み合わせではないかと思われます。

ここまで私が好きなので数字の話を長々としてきましたが、小沢一郎氏や連合の神津氏と枝野幸男氏が話している話は、このような死に票足し算効果ではないのではないでしょう。
そのことについて以下で触れていきます。

印象効果について

野党統一名簿について、一番大きい効果として語られているのは、有権者に強烈な印象を与えることであるように私には見えます。

そして、この強烈な印象について、どういう方向の印象が出てくるか、ということで、統一名簿について肯定的か否定的かが違うのであろうと思います。

例えば枝野幸男氏はこのような認識です。

否定的な理由を問われると「(各党は)政策が違う。名簿をつくってもどの候補が当選するか分からず、わが党の支持者も票を入れてくれない。トータルでは間違いなく(票が)減る」と述べた。

枝野代表「迷惑です」小沢氏求める統一名簿を拒否

このように政策の曖昧化や各党支持者が当選させたい候補者が当選できなくなる可能性が高まることによる支持者票の減少等を統一名簿否定の理由にしています。

その他、Twitterなどでは「選挙のための野合」と言われて終わるだろう、ということが言われています。

一方で、統一名簿肯定論というのは、本気で政権を倒そうとする意思があることを証明すれば、政権不支持層の票が全部確保できて、与党と勝負ができる、というようなことを述べているように思います。

神津氏は30日、「野党が力を合わせる姿を明示的に示すのが統一名簿だ」と記者団に語った。

小沢氏と連合会長が会談 「比例代表の統一名簿」で一致

また、最低限の政策一致で政権構想などは十分、としているのも統一名簿肯定論にある特徴のように思います。
重要なのは政策ではなく、政権を担おうとする本気を認めてもらうこと、というような傾向もあるように思います。

その野党連携実現で肝になるのが、各議員の「自分を捨てる」、「自分を殺す」という利他の精神です。そういう中で連携の輪が広がり、大事ができるようになります。「オレがオレが」と主張していては大事を成就できません。
大事とは何か。それは「国民のためにより良い政治を我々が行わなければならない」という使命と責任感。このことを常に肝に銘じて個人的な感情を捨て大義につく。極めて常識的なことですが、こうした認識を共有できれば、野党連携は必ず実現できます。
野党はそのくらいの気概をもって参院選に臨み、次の総選挙で政権を取る道筋を国民に示すべきです。次の総選挙できちんと野党が連携できれば、政権交代はすぐにでも実現可能だと思います。野党が本気でやる心意気と勇気をもって政権交代に立ち向かう姿勢を示せば、必ず国民の信頼を得ることができ、道は拓かれていくと確信しています。

政権交代こそ野党連携の最大の目的(談話)(この談話は2016年の参院選への動きなのですが、参考に)

私が統一名簿に否定的な理由

私は、統一名簿についてそんなに効果がないと思っていることを冒頭に書きました。

なぜそう思っているのかというと、世論調査の結果に理由があります。

例えば、朝日新聞の世論調査。

◆いまの政治などについてうかがいます。あなたは、安倍内閣を支持しますか。支持しませんか。
 支持する43(40)
 支持しない38(41)
 その他・答えない19(19)
◇(「支持する」と答えた人に)それはどうしてですか。(選択肢から一つ選ぶ=択一)
 首相が安倍さん11〈5〉
 自民党中心の内閣18〈8〉
 政策の面15〈7〉
 他よりよさそう54〈23〉
 その他・答えない1〈0〉
◇(「支持しない」と答えた人に)それはどうしてですか。(択一)
 首相が安倍さん17〈6〉
 自民党中心の内閣21〈8〉
 政策の面49〈19〉
 他のほうがよさそう9〈3〉
 その他・答えない4〈2〉

世論調査―質問と回答〈1月19、20日実施〉

どうも、統一名簿実現を立憲に迫る勢力は、こういう世論調査の結果について、「他よりよさそう」という結果を消極的支持と捉え、そういう層は政権交代への本気さを示せば、政権不支持層ないし中立の立場へと変わる、というような考えをしているように思います。

しかし、たとえこれが消極的支持だったとしても、そもそも既存勢力の印象を覆さない限り、比較されて負けている勢力たちだけで足し算しても、選挙目当て程度にしか思われず、そこで発揮される覚悟は、希望の党に合流する人たちの覚悟程度の扱いしかされないのではないか?と思うのです。

で、実はこのことを小沢一郎氏や玉木雄一郎氏などはわかっているんじゃないかと思うんです。
わかっているからこその以下の行動なんじゃないんでしょうか?

国民民主党の玉木代表と自由党の小沢共同代表が、橋下徹・前日本維新の会代表の政界復帰に秋波を送っている。

 両氏は7日、橋下氏が進行役を務めるインターネット番組で共演した。玉木氏は「ポスト安倍」に言及し、「安倍政権に代わる政権ということになってくれば、(野党が)英知と人材を結集して政権を樹立しなければならない」と橋下氏に水を向けた。小沢氏も「(橋下氏に)決断してもらったらいい。やるなら、全野党をまとめるリーダーだ」と持ち上げた。

橋下徹氏の政界復帰、小沢一郎氏ら期待寄せる

既存勢力の足し算ではどうにもならないと思っているから、橋下徹という新しい登場人物の出現に秋波を送るような言動になってしまうのではないでしょうか。

ただ、ここで全野党を統一するリーダーとして橋下氏を担ぐのは、正直言って希望の党の二の舞じゃないの?と思うのです。

私としては、コロコロと言ってることを変えることで主導権を手放さないようにするのが得意な政治家として小池百合子氏と橋下徹氏は似通っていると思うのですが、そう考えれば事故に都合のいい勢力にするために後戻りできない状態になってから「排除」を模索するのは当然だと思うのです。
そのような人をリーダーとして一大政治勢力を形成するのは、私はどうも肯定的にはなれません。

一方で、そのような心理について鈍感そうな人たちが、排除を行わずに多党統一勢力として丁寧な意思統一作業をできるとも思えません。
思えないのですが、排除を行わない限り、丁寧な意思統一作業を行わないと、民主党政権時代に何度も見てきたマニフェスト解釈論争や、マニフェスト外の政策をどうするか論争が目立ちだして、それが統一関係の破綻に繋がる可能性が非常に高いのではないかと思うのです。

そして、このような懸念は、政権交代という出来事が非常に強烈であったからこそ、その後の政権崩壊も実態以上に強烈に根強い印象として残ってしまっているように私は思うのです。

そして、統一名簿実現は、このような印象を想起させてしまう恐れが非常に高いように思うのです。

そういう意味で効果も薄いし、枝野氏が述べる事以上に票を減らす可能性が高いのが統一名簿なのではないか、というのが私の印象です。

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