続・特定枠考察

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前回の特定枠考察という記事にて、以下のように専門家や活動家を支えるのに使える可能性があることに触れました。

特定枠考察
昨日の衆議院本会議にて、参議院の定数を6増し、比例に特定枠を導入する法案が可決成立した。 与党は、次回の参議院に向けてできるだけ早く周知するためなどという理由から、ほとんど審議時間を確保せずに通したのだが、今回の特定枠について改めて考えてみ...

一方、その他の使い方として、争点などになる社会問題についての専門家や活動家を特定枠に載せることにより、政党としてのその問題に対する姿勢を強調する、という使いみちも可能である。
これは、参議院が(自称)良識の府であることからしても、ある程度望ましい使い方であると個人的には思う。

しかし、このような使い方をするための、党内での了承取り付けは、一定の議席を絶対に確保できるという見通しが無いと困難であるように思う。
また、少しでも異論を残したまま、特定枠をこのように利用して選挙に突入し、負けてしまった場合、この特定枠に入った候補者への風当たりは相当厳しいものとなる。
(希望の党の井上一徳議員も、党内での立場は厳しいものだっただろう)

この点について、より使いづらくなるだろうという仕様があることを、東洋経済オンラインの記事で知りました。

さらに驚くことに特定枠の候補者は「選挙事務所の設置、自動車などの使用、文書図画の頒布や掲示、個人演説会は認めない」とされている。つまり特定枠の候補者は選挙運動を行えないのである。そうした理由について、自民党は特定枠の候補者はほかの比例区候補と異なり個人名の得票数によって当選するのではないから、選挙運動をしなくていいと説明している。

参院「定数6増」より筋の悪い「特定枠」の正体

この点について確認したところ、参議院のホームページに以下のような要旨が掲載されていました。

 4 特定枠の候補者には、参議院名簿登載者としての選挙運動である選挙事務所の設置、自動車等の使用、文書図画の頒布及び掲示、個人演説会等は認めない。

公職選挙法の一部を改正する法律案

このように、しっかり意図的に選挙活動を禁じる形になっているようです。
これでは、特定枠に専門家が出ていることを宣伝しづらくなってしまうのではないか?と思いますし、もう少し丁寧な立法が必要だった部分のように思います。

特に選挙カーを使えないというのは、選挙戦略的に「もったいない」と考えて、特定枠をなるべく使わない方向に作用するように思います。
(特定枠の軽い使用を防止する意図だったとしたら狙い通りでしょうが。)

前回触れましたが、全国一区であることも特定枠が使いづらいことにつながるように思います。
例えば、公明党などは過去の比例区の結果を見るに、各地区代表の複数人を特定枠に入れたいでしょうが、特定枠内の順位を決めないといけません。
これによって、地区ごとの順位付けを本部が基準を作って積極的に行わないといけなくなってしまいます。
これは組織内での不満の発生に繋がりかねないので、できる限り避けたいのではないでしょうか。

また、東洋経済オンラインの記事に小政党の党首の当選可能性を高めるのに利用できる、という指摘があるのですが、小政党の場合、特定枠を使うほど、党首格の候補者を脅かす候補は出てこないことが普通なので、わざわざ他の候補の不満を招く制度を使う必要はないのではないかと思います。

前回の参院選で、入党していなかった?山田太郎候補が躍進した新党改革ぐらいではないでしょうか。特定枠を使えそうな構図は。

前回の社民党も本来は党首である吉田忠智氏が特定枠を利用する可能性はあったとは思いますが、一方で同時に前党首であった福島みずほ氏も改選だったので、福島みずほ氏の意向次第だったのではないかと思います。
その上で、支持率苦戦を受けて、福島みずほ氏を東京選挙区転出させるという噂があったりした上で、比例区で出たのを考慮すると、検討したとして、利用することはできなかったのではないかと思います。

それ以外では、わざわざ特定枠を使わないといけない党首格は居ないのではないかと思います。
社民党の例のように、そのような落選危機のある党首格の場合、特定枠を利用するための党内説得ができなさそうですし。

また、小政党の場合、候補者一人分の選挙運動をへらすという選択も取るとは思えません。

そう考えると、本当に自民党以外が利用する例がなかなか思いつかない、というのが今回の特定枠なのではないか、と思います。
実際、法案を提示した自民党も、広い利用は想定せず、自民党が合区対象の候補者に使うことだけを想定して設計しているのでしょうし。

そう考えると、次回の参議院選挙の後、すぐに、少なくとも特定枠周りの制度を改正する議論を始めたほうがよいのではないかと思います。

理想としては、現行制度が継ぎ接ぎが過ぎる状態なので、衆参である程度一本の設計思想に基づいた選挙制度にする必要があると思うのですが・・・。

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