「メディアと自民党」を読んで、独占の恐怖を考える

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結構前なんですが、「メディアと自民党」という書籍を読みました。

勢力の大きさ的に自民党一強といえる状況がしばらく続いている政界ですが、その状況を作り上げる要素の一部分がこの本を読むことで理解できると思います。

私は何度か『自民党が分裂なり、解党なりしないと、蓄積された物が大きすぎてそれ以外の組織では太刀打ち出来ない』ということを考えたことがあるのですが、今回、この本を読むことでその考えが強まったように思います。

もっと具体的に言うと『一つの政党に資本が蓄積しすぎていて、その資本を分散化させたりしないと、市場的に独占状態であり、公正で自由な競争が成り立ちそうもない』という感じでしょうか。

 

この独占状態は自民党が悪いとかそういうわけではなく、自然と成り立ってしまったんだと思います。様々な勢力が部分最適で動いていった結果といいますか。少なくともここまでの独占状態は自民党の中の人達は意図していなかったようにも思います。(2016年8月30日現在の総理周辺の方々は除く)

ただ、様々な要素が揃った結果、自民党の独占市場が自然と出来上がっている、という風に私は思うのです。

そして、今回読んだ『メディアと自民党』という書籍には、その「自民党の独占市場」の一部を作り上げたとも言える、メディアと自民党の関係性についての考察が書かれています。

書籍の中に「おわりに」の文章には「政策形成に間接的でありながら大きな影響を与えうるメディア戦略や手法の改革、組織能力の向上が自民党に一極集中している現状」という言葉が出てきます。
実際、様々な手を打つための資本があるのは現在自民党一極となっているように思います。

その例の1つとして、自民党が行ったT2(Truth Team)という施策がこの書籍には書かれています。
インターネット上でも『自民党がネットを監視している』という話が出てくる、アレです。

この施策は、2013年の参院選にて、ネット選挙解禁を受けた、選挙対策として行われました。

自民党はこのチームをネットメディア局という党本部の組織の中に作りました。
トップは「黙ればばあ」「橋下、逃亡か?」「あべぴょんがんばれ」とニコニコ生放送での党首討論にてコメントを打ったと言われている平井たくや議員です。
(こういう点、自前の「シンクタンク」を作っていたが、政権交代などで消耗し、なくなってしまった某党とは真逆の動きのように思う)

 

個人的にこのチームが行った事ですごいと思ったのは、書籍に出てくる『立候補者全員にタブレット端末を配り、毎日配信するレポート』です。

具体的な中身は『今日の打ち手(日本語的に「打つ手」じゃないの?)』という端的に取り組まないといけない施策を配信していたり、自民党がどれだけメディア露出したり、SNSやブログで言及されていたかを数字でデータ化していたり(SNSやブログに関しては言及がネガティブかポジティブかの割合も出ている)、他党との露出量シェアがどうなっているかをウェブニュースとTV番組の数で比較していたり、世の中キーワードという時事キーワードなどが簡潔にまとめてあったり、どういう言及をしたら良いのかのサンプルがあったり。

選挙の候補者じゃない政治趣味者である私でも、こういうレポートが有ったら毎日配信してほしい、と思うくらい面白い物が候補者に配信されていたようです。

 

こういう施策は本当に重要だと思うんです。

「監視」という点では不安な部分もありますが、自分たちがどのように言及されているのか、とかの把握は重要だと思います。

こういう情報収集、分析の経験まで与党に独占されてしまうというのは、それこそ危険な傾向だと思うんです。

ただ、その危険な傾向を加速させる1つの鍵として『忖度』というワードが書籍内に出ています。

T2などのネット施策を行う際に、電通やその他関連企業が、自民党との関係を構築し、継続して案件を獲得できる事を(勝手に)期待して自ら提案、協力していったと言うことがこの書籍では言及されています。
資本を持っているから、そこにさらに資本になり得るものが集まってくる、格差社会が自然と作られるメカニズムが見えてくるような、そんな動きです。

 

この書籍で、情報も人的資本もどんどん自民党に集まっていく、そういう様子を改めて見せられた気がして、本当に危機感を抱きました。

しかし、野党は正直ほとんどの人間が「落選予備軍」であり、その場しのぎを続けていくしか余裕が無いのが現状のように思います。

政治資本が自民党以外でも貯まる仕組みをつくり上げるというのは、中々困難なように思いますが、個人では政治資本を持つ政治家も居るように思いますし、党という形でもそういう仕組みが作れるようになること、それが重要なのではないかな、などと「メディアと自民党」を読みながらかんがえていました。

(その他、自民党とジャーナリズムの関係性とか、自民党の広報戦略についてなどの記述も興味深いです)

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