以下のツイートを見かけました

このツイートをきっかけにいくつか不動産の相続関連の粗雑な発信を見かけました。特に目立ったツイートを以下に貼ります。


(このドニーというアカウントは、AI生成の画像で高齢者や医療・福祉への憎悪を煽るアカウントです)

今回はこの辺の話をまとめておきます。
まず、今回の相続税云々と言われてる話の発端が、清水ともみ氏が触れている話なのですが、何の話かと言うと、『相続土地国家帰属制度』で引き取った土地を国が早く売りたがっているというはなしです。
財務省が、相続人に引き継ぐ意思がなく一定額の支払いを受けて国が引き取った「相続土地」について、売買を促す新たな仕組みを導入する方針を固めたことが16日分かった。需要動向に応じて評価額を段階的に引き下げ、最大93%の減額を可能にする。人口減少を背景に、地方を中心に急増する相続土地の有効活用につなげる。所有者が不明となる土地をなくす目的で2023年に始めた「相続土地国庫帰属制度」の効果的な運用を目指す。
【独自】財務省、国の相続土地売買を促進 評価額最大93%引き下げ
これまで国が引き取った土地は一般競争入札で買い手を募ってきたが、宅地などの売却実績はゼロだった。維持管理の負担は増え続けており、売買を通じた活用やコスト削減の必要性が指摘されている。
方針案では、随意契約での売却を可能にした上で、測量や地下埋設物の調査を手がけない「現状有姿売買」を採用する。代わりに土地の評価額をまず3割程度下げ、その後も需要がなければ3カ月ごとに1割ずつ減額する。下限となる価格水準は当初の評価額の7%に設定する。
この話をきちんと理解するには、『相続人に引き継ぐ意思がなく一定額の支払いを受けて国が引き取った「相続土地」』、つまり『相続土地国庫帰属制度』についてきちんと把握する必要があります。
相続土地国庫帰属制度というのは2023年に出来た制度で、相続登記の申請の義務化とセットで土地の所有者が不明なものを無くすために導入されたものです。
これまでは、相続財産に不要な土地があってもその土地だけを放棄することができず、不要な土地を含め全て相続するか、他の資産も含め全て相続放棄をするかしかありませんでした。
相続した土地を手放したいときの「相続土地国庫帰属制度」 | 政府広報オンライン
昨今、土地利用のニーズが低下し、土地を相続したものの土地を手放したいと考えるかたが増加する傾向にあります。これらが、相続の際に登記がされないまま土地が放置される「所有者不明土地」が発生する要因の一つと言われています。
所有者不明土地の発生を予防するための方策として、相続登記の申請の義務化などとあわせて、相続した土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度が創設されることになりました。
日本国内では、相続や所有者の転居などがあったものの、それに伴う相続登記や住所変更登記がなされないまま時間が経過してしまい、現所有者となる人の行方が分からなくなり、管理実態もない「所有者不明土地」が増加してきました。これは、このような手続きが必要であることを知らない、うっかり手続き忘れになってしまったケースも一定数あると予想されます。
しかし、特に利用価値を見出されていない不動産は、その所有者や相続人にとって、わざわざ手続きをする意識が芽生えにくいこともあり、結果として必要な手続きをしないままになっているケースも相当数あると考えられています。
所有者不明土地が増えると、公共事業の用地取得が進まない、災害時に危険な崖や斜面の対策が遅れる、地域の土地利用計画が立てにくくなるなど、さまざまな社会的弊害が生じます。そこで国は、これまで義務ではなかった相続登記手続きを義務化し、罰則規定も新設してこれら弊害の対策を推進しています。この義務化により、本当は相続したくない不動産を相続するケースがさらに増えていくという予想から、一定の要件のもとで国が引き取る仕組みを用意したことが、この制度の設立背景です。
「負動産」を手放せる相続土地国庫帰属制度の承認率は「約49%」? 利用前に知っておきたい費用と“落とし穴” – MONEY PLUS
「負動産」という言葉を使った記事が存在するように、そもそもこの制度で国が引き取る土地は外資も内資も誰しも見向きしないような、まともに売れない土地です。
冒頭の清水ともみ氏のツイートの「何のための国庫返納なの?」への答えは「まともに売れないから国に引き取ってもらってる」です。海外資本が買うような土地ならば、この制度で国庫に帰属する前に民間で売られています。
また「元から相続税や固定資産税、そんなに取らなきゃ維持できた話でしよ」への回答としては、土地の維持には相続税や固定資産税がなくとも、一定の維持管理費用が必要なのは言うまでもなく、それが大きな負担になり得ることも本来は容易く想像できるのではないでしょうか。(税金に気を取られて想像できなくなる人が昨今は多そうですが)
土地保有中は、たとえ使用していなくとも固定資産税や維持管理にかかる諸経費が続き、雑草繁茂や倒木加害、不法投棄被害、災害リスクなども負い続けます。その土地が遠方にある場合には、予防的な管理が不十分になりがちであったり、近隣苦情等に迅速に対応できなかったりと、悪意がなくとも歯がゆい状況に置かれてしまうことも少なくありません。
「負動産」を手放せる相続土地国庫帰属制度の承認率は「約49%」? 利用前に知っておきたい費用と“落とし穴” – MONEY PLUS
相続土地国庫帰属制度では、これらの負担やリスクから解放され、子どもや孫の代にそれらを押し付けてしまうような事態も防げます。市場で売れにくい土地処分の「最後の選択肢」として機能しているともいえます。
また、この制度を利用して土地を引き取ってもらうには一定の審査手数料と負担金が必要であったり、建物がある場合はその建物を解体する必要があることなど、一定の負担が必要なことからして、税金がなかったとしても引き取ってほしいような土地である可能性が高いように見えます。
制度利用にかかる費用は、まずは審査申請の時点で、1筆あたり14,000円の審査手数料がかかります。もし、審査に通過しなかった場合でも手数料の返還はされません。
審査を通過した後は、原則として1箇所あたり20万円の負担金がかかります。ただし、住宅地が形成されているような市街化区域内の土地や山林の土地などは、一律額ではなく、所定の算定式で計算された金額が負担金となり、特に宅地は高額になる傾向にあります。例えば、市街化区域内にある500㎡の宅地の場合は、145.4万円の負担金となります。
このことから、例えば地方部において時々ある「山林の土地を100筆手放したい」場合には、審査手数料だけで140万円になってしまいますし、万一審査却下された場合には返還されないというリスクを伴う申請となります。また、審査通過後においても、一体の土地でなく複数箇所に点在しているような場合には、「箇所数×20万円」の負担金を伴うため、所有状態によっては、かなり高額な支出を伴う可能性もあります。
「負動産」を手放せる相続土地国庫帰属制度の承認率は「約49%」? 利用前に知っておきたい費用と“落とし穴” – MONEY PLUS
例えば、建物があったり、境界が明示されていない土地は申請の段階で却下されますので、この制度を利用する前提として建物の解体費用や測量士への依頼費用として場合によっては数十万円から数百万円が必要になります。
また、田舎の不動産ですと所有者が都市部に出て行ってしまっているなどにより、境界を確定するにも多大な時間を要することもあります。
さらに、勾配が大きかったり、崖があったり、土地に埋設物があったりすると申請が承認されませんので、場合によっては勾配、崖の調整や埋設物の除去費用が掛かってくる可能性もあります。
以上の要件をクリアした上で、20万円以上の負担金を納めることでやっと国庫に帰属させることができるようになります。ここまで読んで頂いた方であれば容易に想像ができるかと思いますが、建物の解体が済んで更地になっており、境界が確定し、近隣の方と揉めるリスクをクリアした土地については経済的に利用しやすい土地になりますので、多くの場合では不動産業者に依頼をして売却することができてしまいます。
相続土地国庫帰属制度の落とし穴 | 遺言専門サイト
したがって、国庫帰属制度は何の問題もない土地なのであるけれども、ひとえにまったく買い手の需要がない何の使い道もないような土地で不動産業者に依頼しても処分できないような場合の最終手段となるでしょう。
上にスクショを貼ったドニー氏の貼っている画像については、そもそも相続税評価額についての理解がおかしい点が一つと、そして『相続土地国庫帰属制度』に照らし合わせるとおかしい点が一つ、明確に存在しています。
相続税評価額について触れると、基本的に相続税評価額の基礎となる路線価は、国土交通省が出す公示価格(土地の価格)より安く出され(公示価格の80%程度が目安と多くの税理士法人のサイトに記述がある)、実際に取引される価格(実勢価格)は公示価格より高くなることが多いというのが基本的な考え方です。(地方だと下回る場合もある)
一般的な目安は「公示価格の1.1倍〜1.2倍」
全国的な傾向として、実勢価格は公示価格の1.1倍〜1.2倍程度になることが多いとされています。公示価格が「正常な価格」として算定される一方、実際の取引では売主・買主の事情や需給バランスが価格に上乗せされるためです。たとえば、公示価格が1㎡あたり20万円の土地であれば、実勢価格は22万〜24万円程度を目安として試算できます。ただし、あくまで推測の域を出ないため、国土交通省の不動産取引価格情報で実際の取引事例の確認をおすすめします。
エリアによって、乖離幅は大きく変わります。東京23区や大阪・名古屋の都心部では、実勢価格が公示価格の2倍〜3倍に達するケースも珍しくありません。駅徒歩5分以内や商業地に隣接する土地など、需要が集中するエリアほど差が開く傾向があります。
一方、地方の過疎地域では実勢価格が公示価格を下回ることもあります。
実勢価格と公示価格の違いを知らないと損?売却前に確認すべき調べ方のコツ|ナカジツの「住まいのお役立ち情報」
そもそも公示価格よりも高く売れることが基本である都市部以外で、相続税評価額一億の土地建物が相続される時点で、画像のような事案ではないように思います。(都市部だったらいくら安くても評価額一億の土地建物が二千万でしか売れないということはないので。)
また、画像のような一軒家ならば実際の相続税の支払いには、空き家を売ると受けられる特例があったり、小規模宅地の特例などが存在したりするなど、様々な特例を駆使して相続放棄ではなく、自己で売却なりすればいい事案である可能性が高いように思います(また、究極、相続放棄ではなく物納で処理するのではないでしょうか?)
この考え方をもとにすると、画像のような事例は、相続税批判、財務省批判を煽るために作られたとても特殊な創作話としか言いようがありません。
また、タイミングとして『相続土地国庫帰属制度』で国が安く売る話と組み合わせて話されていますが、そもそも画像のような状態では制度は適用できません。
上で触れたように、相続土地国庫帰属制度では建物がある土地は管理コストが高いとして、申請が却下される対象です。あくまでも更地である土地が対象の制度です。なのでドニー氏の画像の話は当てはまりません。まずは建物を解体してください。
建物がある土地
法務省:相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件
建物は、一般に管理コストが土地以上に高額であること、また、老朽化すると、管理に要する費用や労力が更に増加するだけでなく、最終的には建替えや取壊しが必要になるため、承認申請を行うことができません。
今回の『相続土地国庫帰属制度』の話を発端に、財務省解体デモに賛同するような考え方の財務省嫌悪の減税主義者が騒いでいますが、そんな人たちの非現実的な言及に惑わされず、冷静な議論がどこかでできるといいですね



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