自民党のヘイトスピーチ定義が杜撰

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自民・公明両党は、いわゆる「ヘイトスピーチ」を解消するための法整備に向け、作業チームを設けて検討を進めていて、31日に開いた会合で与党としての法案の原案をまとめました。
それによりますと、ヘイトスピーチを「公然と、生命や身体、自由や財産などに危害を加えることを告知するなど、日本以外の国や地域の出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動」と定義しています。

自公 ヘイトスピーチ解消に向けた法案の原案 | NHKニュース

自民党が民進党&社民党のヘイトスピーチ撤廃法に対する対案となる法律の原案をまとめたようです。

で、その案でのヘイトスピーチの定義がNHKによって報じられました。

そのヘイトスピーチの定義について今回は書いておきます。

民進党などが去年の通常国会に規制するための法案を提出?

その前に、NHKニュースなどの報道が民進党&社民党が提出したヘイトスピーチの法律について触れる際に毎度毎度『ヘイトスピーチを規制するための法律』と書いていて、今回の自民党の法律が『ヘイトスピーチを解消するための法整備』と書かれていることが非常に気になりました。

大抵規制法と言われるものは、法律の目的を定める条文に『必要な規制を行うことにより』とか書かれていると思うんです。例えば『ストーカー行為等の規制等に関する法律』『インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律』を例としますけど。

その一方で今回の民進党&社民党が提出した法案「人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律案」は目的に『基本原則を定める』『国や地方公共団体の責務、基本的施策その他の基本事項を定める』という文言があるわけです。

なので、確かにこの先に『規制』が想定されているのかもしれませんが、この法律自体では規制には踏み込んでいるとは言えないように思うのです。

それを考えると、規制のための法律では無いと思われる自民党の『解消のための法律』はどうなっているんだろう?と思いました。

個人的に『国にはヘイトスピーチの解消に向けた施策を実施する責務があるとして、相談体制の整備や教育、それに啓発活動に取り組むよう求めているほか、地方自治体に対しても、地域の実情に応じた施策を講じるよう努めることを求めています。』という記述からして、こういう部分は殆ど変わらないように思うのですが。

(多分、『インターネット上の自主的な取り組みの支援』とか『人種差別防止政策審議会』という部分に踏み込んでないというのが、施策関係の自民党と民進党&社民党の施策の違いなのではないかと想定します。)

自民党のヘイトスピーチの定義が変

さて、NHK曰く、自民党案のヘイトスピーチの定義は

公然と、生命や身体、自由や財産などに危害を加えることを告知するなど、日本以外の国や地域の出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動

だそうです。この定義、要するに外国の出身者と、地域というのは朝鮮籍を想定しているのでしょうが、そういう日本以外の出身者を対象としているようです。

あえて『民族』や『人種』という言葉を使わないことが自民党案のポイントなのでしょうか?これまで民進党&社民党が提出した案や、大阪市で成立した条例では、この二つの言葉は明確に定義に入っていました。

この民族という言葉を使わずに『出身者』という言葉を使うことで起きることとして想定できることは、日本国出身の『在日2世』とか『アイヌ』の方々の排除は枠外になる可能性がある、ということではないでしょうか?

また、『人種』という言葉も使っていませんが、それによって『黒色人種差別』『白色人種差別』『黄色人種差別』という分野も枠外となる可能性が高いです。

記事タイトルはこういう抜け落ちる事を杜撰と表現していますが、こういう部分(特に「民族」を使わなかったこと)に杜撰さを越えた何らかの明確な意図を感じてしまうのですが、それは私だけでしょうか。

また『地域社会から排除することを扇動』という記述も自民党案の特徴でしょうか。こんな記述ヘイトスピーチ関連で見たことなかったので、ちょっと驚きです。

あと『公然と、生命や身体、自由や財産などに危害を加えることを告知』という部分の定義も独特な記述なんで、なんというか評価しづらいですね。本当にいろいろと定義から抜け落ちていきそうですが・・・。

 

これまでの関連法案&条例の定義例

民進党&社民党案

二 定義

1 この法律において「人種等を理由とする差別とは、三の1又は2に違反する行為をいうこと
2 「人種等」とは、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身をいうこと

三 人種等を理由とする差別の禁止等の基本原則

1 何人も、次に掲げる行為その他人種等を理由とする不当な差別的行為により、他人の権利利益を侵害してはならないこと
① 特定の者に対し、その者の人種等を理由とする不当な差別的取扱いをすること
② 特定の者について、その者の人種等を理由とする侮辱、嫌がらせその他の不当な差別的言動をすること
2 何人も、人種等の共通の属性を有する不特定の者について、それらの者に著しく不安若しくは迷惑を覚えさせる目的又はそれらの者に対する当該属性を理由とする不当な差別的言動をしてはならないこと

(略)

民主党 | 人種差別撤廃施策推進法案を参院に提出

(この民進党&社民党案の人種云々の部分は、外務省が和訳した人種差別撤廃条約の第1条の1を参考にした内容なのだと思います。)

第1条

1 この条約において、「人種差別」とは、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するものをいう。

International Convention on the Elimination of All Forms of Racial Discrimination

大阪市の場合(評価については一度当ブログで触れたのでそちらを 『大阪市の条例でのヘイトスピーチの定義 | 興味乱舞に引きこもれず』)

第2条 この条例において「ヘイトスピーチ」とは、次に掲げる要件のいずれにも該当する表現活動をいう。

(1) 次のいずれかを目的として行われるものであること(ウについては、当該目的が明らかに認められるものであること)

ア 人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は当該個人により構成される集団(以下「特定人等」という。)を社会から排除すること

イ 特定人等の権利又は自由を制限すること

ウ 特定人等に対する憎悪若しくは差別の意識又は暴力をあおること

(2) 表現の内容又は表現活動の態様が次のいずれかに該当すること

ア 特定人等を相当程度侮蔑し又は誹謗中傷するものであること

イ 特定人等(当該特定人等が集団であるときは、当該集団に属する個人の相当数)に脅威を感じさせるものであること

(3) 不特定多数の者が表現の内容を知り得る状態に置くような場所又は方法で行われるものであること

2 この条例にいう「表現活動」には、次に掲げる活動を含むものとする。

(1) 他の表現活動の内容を記録した印刷物、光ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録することができる物を含む。)その他の物の販売若しくは頒布又は上映

(2) インターネットその他の高度情報通信ネットワークを利用して他の表現活動の内容を記録した文書図画又は画像等を不特定多数の者による閲覧又は視聴ができる状態に置くこと

(3) その他他の表現活動の内容を拡散する活動

3 この条例において「市民」とは、本市の区域内に居住する者又は本市の区域内に通勤し若しくは通学する者をいう。

4 この条例において「市民等」とは、市民又は人種若しくは民族に係る特定の属性を有する市民により構成される団体をいう。

大阪市市民の方へ 「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」について

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