派遣法の審議を振り返る3 肝心なことが省令で決まるため詳細不明だった

この記事のアクセス数
59PV
この記事は約4分で読めます。
記事内にアフィリエイトリンク等の広告が含まれています。

2014年11月5日 厚生労働委員会 大串博志議員(民主党)質疑

この日の質疑では、後日訂正することになる発言が塩崎恭久厚生労働大臣から出ていたり、初回の質疑から大荒れな委員会になっていたのですが、その中でも、大串博志議員の質問が気になりました。

 派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの業務について、派遣元事業主から三年を超える期間継続して労働者派遣(第一項各号のいずれかに該当するものを除く。以下この項において同じ。)の役務の提供を受けようとするときは、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの業務に係る労働者派遣の役務の提供が開始された日(この項の規定により派遣可能期間を延長した場合にあつては、当該延長前の派遣可能期間が経過した日)以後当該事業所その他派遣就業の場所ごとの業務について第一項の規定に抵触することとなる最初の日の一月前の日までの間(次項において「意見聴取期間」という。)に、厚生労働省令で定めるところにより、三年を限り、派遣可能期間を延長することができる。当該延長に係る期間が経過した場合において、これを更に延長しようとするときも、同様とする。

 派遣先は、派遣可能期間を延長しようとするときは、意見聴取期間に、厚生労働省令で定めるところにより、過半数労働組合等(当該派遣先の事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者をいう。次項において同じ。)の意見を聴かなければならない。

 

今回派遣法で注目されていた部分の一つである『過半数の労働組合などから意見を聞かないといけない』という部分。

ここで塩崎厚生労働大臣は『例えば反対一色だった、それを強行したといったときには、それはもう企業内の民主主義も成り立たないわけでありまして、それを強行するということであるならば、労働局としても指導せざるを得ないということになるのではないかと私は思うんですね。』と私見を述べた結果、後日『反対一色の場合に対応方針を説明しなかった場合には、労働局が指導・助言を行う』と事実上訂正されたのです(要するに『強行した』かどうかは関係なく『説明』していれば指導は入らないということになります)

参考:労働者派遣法改悪 厚労相答弁を“訂正”/期間延長で虚偽繰り返す

その塩崎大臣が翌日、事実上訂正せざるを得なかった発言の他にも、この法案の問題といえる部分が、この日の質問で顕になっていました。

それが、法案の重要な部分が『厚生労働省令で定めるところにより』となっているところです。

さきほど引用した条文の『厚生労働省令で定めるところにより』という部分が、何を省令に委ねていることになるかというと、労働者の過半数で形成されている労働組合がない場合に、どのように代表者を決めるのか?という部分なんです。

省令は国会に諮る必要はなく、厚生労働省令の場合、厚生労働省のみで決めることが出来ます。

しかし、この『過半数で形成する労働組合がない場合』というのは、労働組合がどんどん弱体化している現状では、非常に重要な部分であるわけです。

しかし、それをどうするかを大臣に聞いても『法案成立後の労働政策審議会の場で御議論いただいて適切な手続を定めたい』という答弁が返ってきてしまい、どのような内容になるのかさっぱりわからないわけです。

現在(審議当時)の実態として、他の法律にもこのような省令で過半数代表者を定めている法律があり、そういう法律では定められている方法が約半数の企業で適用されず、正統性が乏しい状態にあることが調査でわかっている。

そこで、そういう他の法律での省令と、今回の省令は変わるのか?きちんと守られるような省令になるのか?という事を聞いても『しかし、問題は、今そうなっているというよりは、これからどうやって民主的なプロセスを確立してこの過半数代表者を選んでいくかということが大事なので。』と、他の法律での現状がどうであるのかは無問題という態度を表明したり、『労政審での議論もいただきながら、これまでの、やや実効性がなかったと先生御指摘のようなことにならないような省令をどうつくっていくかということだろう』と完全に大臣が他人ごとの答弁をしていたりと、これで野党が賛成するというのはありえないだろう、という答弁が行われていました。

(大抵こういう政府側のクソ答弁が野党の反対に火をつけているのに(これは民主党政権も自民党政権も同じ)、野党の反対する場面のみがニュースになり、結果『政治の仕事を邪魔するために存在する政党』とかわけわかんない評価をしたり顔で下す輩が現れるの、どうにかならないんですかね・・・)

この肝心な部分を省令で決めてしまうというのは、法律を作るテクニカルな面とか、実務的な面とかでは仕方ないのかもしれないのですが、国会があることを考えると、このような法律の実効性がどうなのか?という部分に関わるような重要な部分で省令を使う(しかもそれを国会に示さない)というのは、国会軽視であり、国会軽視は国民主権的な意味で不味いのではないかな?と思ってしまいます。

まぁ、国民に選ばれた議員が政府を形成しているので、政府は行政主導でなんでもやっていい、みたいな国民主権の見方もあるのかもしれないですが、その場合国会質疑をどう位置づけるのかが非常に気になりますね。(そういう人は大抵、国会質疑を野党バッシング材料採取機能みたいな感じで見てる気がしますが)

コメント

タイトルとURLをコピーしました