塚田一郎国土交通副大臣、忖度発言の末、辞任

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塚田一郎国土交通副大臣が、下関北九州道路建設計画について、自身が忖度して調査費用の国負担が決まったと言い出しました。

 麻生太郎衆院議員にお仕えして、はや20年近く。最初の総裁選は大変でした。その時代から、麻生太郎命、一筋でやってきた。筋金入りの麻生派です。

 実は公務で(福岡県に)来ました。福岡空港の民営化の開設式です。私は新潟の自民県連会長もやっているので、50人の同士の応援要請があったが、かわいい弟分の大家敏志参院議員(麻生派)の要請があり、おやじ(麻生氏)の顔が浮かんで足を運びました。麻生派は渡世の義理だけで動いている。ほとんどやせ我慢の団体です。私は夏に参院選があるが、自分の票を削って北九州に参りました。
 国交副大臣なのでちょっとだけ仕事の話を。大家さんが私が逆らえない吉田博美・自民参院幹事長と一緒に「地元の要望がある」と副大臣室に来た。下関北九州道路(の要請)です。これにはいきさつがありまして、11年前に凍結されています。何でか分かります? 「コンクリートから人へ」の流れで、とんでもない内閣があったでしょ(※事実上凍結した2008年当時は自公政権)。総理は悪夢のようだと言ったがその通りです。
 何とかしないといけないと。下関と北九州ですよ。よく考えてください。下関は誰の地盤ですか? 安倍晋三総理です。麻生副総理の地元でもある北九州への道路事業が止まっている。吉田先生が私の顔をみて、「塚田、分かっているな」と。「これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」と。「俺が何で来たか分かるか」と。私は物わかりがいい。すぐ忖度(そんたく)します。「分かりました」と。
 そりゃ総理とか副総理はそんなこと言えません。私は忖度しました。この事業を再スタートするには、いったん国で調査を引き取らせてもらいます、と。今回の新年度の予算で国直轄の調査計画に引き上げました。
 別に知事に頼まれたからではありません。大家敏志が言ってきた、そして私が忖度したということですので。
 いろいろ計画があります。トンネルが良いという人がいるが、橋がいいのではないかということで、おそらく橋を架ける形で調査を進めて、できるだけ早く、みなさまのもとに橋が通っていけるように頑張りたい。

「安倍・麻生氏忖度し調査」 国交副大臣、発言を撤回 下関北九州道路|【西日本新聞】

この事業は、民主党政権が止めたが、私が安倍晋三総理大臣や麻生太郎副総理の意思を忖度して動かしたんだ、と言うことを述べています。

ちなみに、上に引用した西日本新聞の記事の引用していない部分には、この事業は民主党政権時代ではなく自民党政権時代に凍結されていることが指摘されています。

下北道路は、08年3月に当時の自公政権が調査中止を決めたが、17年度予算で2100万円を復活させ、地元自治体などによる調査を支援してきた。19年度予算では、国直轄調査費として約4千万円を計上している。

これについて、民主党の批判がこの事業を止めたんだ。という批判もあるようです。

「民主党が(下北道路を)パーにした」。ベテランの北九州市議は今でもこう憤る。ねじれ国会だった08年3月、野党民主党などから道路特定財源への批判にさらされていた当時の自公政権は、下北道路を含む全国6カ所の海峡横断プロジェクトの調査中止を決めた。その後の政権交代、奪還を経て、調査が再開されたのは昨年度だった。
 「安定した安倍政権の時だからこそ、早く建設を決定してほしい」。16日の促進大会で九州経済連合会の麻生泰会長はこう訴えた。
 山口、福岡両県は、安倍晋三首相と麻生太郎副総理の地元だけに「安倍・麻生道路」ともやゆされる。関係自治体の調査が終わる来年3月以降、国の本格的な事業評価に移行できるかが最大の焦点になっている。
 11月に発足した「整備促進を図る参議院議員の会」会長の吉田博美議員(自民)は促進大会前、北九州市側の建設予定エリアを視察した。「やっぱり必要な公共事業もある。地方創生の中で(下北道路が)一丁目一番地だ」と打ち上げた。

「下関北九州道」争点に浮上 北九州市長選 10年前に白紙 現職、自民が推進|【西日本新聞】

ただ、道路特定財源への批判というのは、野党民主党だけではなく、小泉内閣以降の自民党政権も批判的な視点で様々な発言が出ていたように思います。

実際、『道路特定財源の見直しに関する具体策』という文章が出ているのは第一次安倍内閣の下ですし、第一次安倍内閣にて官房長官経験者である塩崎恭久氏のインタビューでも道路特定財源に関する議論が与党側が仕掛けていたイシューに含まれていたことが読み取れるであろうと思います。

塩崎やすひさ 前衆議院議員
前衆議院議員,塩崎やすひさ オフィシャルサイト

このように日本が全体的にそういう民意に煽られていた時期だったわけで、一概に民主党だけを悪夢だと言っていればいいものではないように思うのですが。

2002年度(平成14年度)からは、改革を掲げた小泉内閣の一連の施策により、公共事業関係費は毎年減少を続けた。政府が2006年7月に閣議決定した「骨太の方針2006」に盛り込んだ歳出入改革案においても、今後5年間で1-3%ずつ削減していく方針が明記されていた。公的固定資本形成は、2001年度には32兆円であったが、2006年度には22兆円と5年間で10兆円削減された

公共事業 – Wikipedia

また、この発言に関連する重要な点は、この道路が「忖度したのではないか」というような種類の批判を常に受け続けていた非常にセンシティブな案件であるということです。

下北道路がつなぐ下関市と福岡県は、安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相それぞれの地元だけに「安倍・麻生道路」とやゆされてきた。現職副大臣が利益誘導を認めた「忖度」発言は、大きな批判を呼びそうだ。

 塚田一郎国土交通副大臣の「忖度」発言で浮上した疑念に対し、国交省幹部の多くは予算配分の正当性を強調し、予定通り調査を進める構えを見せる。しかし、ある幹部は予算配分作業が大詰めを迎えていた3月中旬、西日本新聞の取材に対し、麻生氏らへの「配慮」を示唆する発言をしていた。
 「麻生さんには逆らえない。山口出身の吉田さんの言うとおりにしないわけにもいかないしね」。3月中旬。この幹部は麻生氏と自民党の吉田博美参院幹事長の名を挙げ、下北道路への予算配分に麻生氏らの存在が影響していることをほのめかした。吉田氏は、塚田氏が北九州市での集会で「『これは総理と副総理の地元の事業だよ』と発言した」人物として挙げた実力者だ。
 その数日後、石井啓一国交相は国交省を訪れた福岡県の小川洋知事らに直接調査の方針を伝達。財政難で一度は打ち切られた国による調査が、11年ぶりに復活することが決まった。3月末には、調査費4千万円の配分を決定。福岡、山口両県などの検討会の調査を補助する形で計上していた2017年度、18年度の事業費各2100万円から倍増した。
 結果として、忖度が予算配分に影響したのか-。別の複数の国交省幹部は「首相や麻生氏、吉田氏らの顔が頭に浮かんだことはあるかもしれないが、配慮は全くない」などと全面否定。ある幹部は「配分過程を丁寧に説明すれば、疑念は晴れるだろう」と話す。
 ただ、下北道路の実現が首相らの悲願だったことは間違いない。「11年前の調査凍結後、首相は酒席で『進めよう』と言っていた」と証言する自民党衆院議員もいる。

「忖度」予算に見え隠れ 下関北九州道路 専門家「配分過程の徹底検証を」|【西日本新聞】

この発言について、一部では「ジョークすら言ってはいけないのか」というような事が言われていますが、そのような疑惑の目が常に潜んでいるような案件で、ジョークであったとしてもこのような発言をしてしまうのは、副大臣として他の案件でも事態を混乱させかねない、資質に疑惑がある大臣であるとしか言えないのではないのでしょうか?

一方で「本音を語って何が悪い」とか「利益誘導の何が悪い」と言い出す方もいるようですが、物事の優先順位が役職を持つ政治家を排出しているかどうかで決まってしまっては、誘導された地区にとっては良いでしょうが、野党政治家が排出された地区は例え必要であっても何ら考慮されないという、国家としてとても不公平な状態になることは言わずもがなであり、そうなったら国内が足の引っ張り合いになって必要な事業が回らなくなるのは明白ではないでしょうか?
その程度も考えられないような政治家ではとてもとても・・・ということになるのではないでしょうか?

 地元自治体や経済界が求める下関北九州道路は、財政難から2008年に計画が凍結されたが、19年度予算で国は再び調査費を計上。自民関係者が困惑するのは、事業推進がアピール材料だったが、一転して疑惑の的になったからだ。県内の麻生氏の勢力圏で県議選を戦う保守系候補は「自分の選挙に必死の中、世間から『政治家はみんな利益誘導する』とみられかねない」と迷惑がった。

忖度発言、地元統一選に影響 アピール材料が一転、疑惑の的に – 毎日新聞

塚田一郎国土交通副大臣が辞任の意向を示したことについて、自民党福岡県連の幹部は「当然だ」と語った。

 塚田副大臣は、福岡県知事選の自民推薦候補への応援演説で「忖度(そんたく)」発言をし、この幹部はその集会に参加していた。


 下関北九州道路を国直轄事業に引き上げたことについての発言だったが、「みんなで何回(政府に)陳情に上がったか。やっとここまで来たのに俺たちの努力を無駄にしてくれた。選挙への影響よりも、ちょっとでも(道路計画が)遅れることになれば、北九州市民、下関市民にとっても良くない」と話した。

 一方、塚田副大臣の応援を受けた福岡知事選の自民党推薦候補の陣営関係者は「こんなことを言って選挙の応援になると思っていることが、自民1強のおごりだ、と支援者から批判を受けた。厳しい」と話した。

自民福岡県連幹部「努力無駄にしてくれた」 塚田氏辞意:朝日新聞デジタル

ところで、この発言で重要なのは、どうも『別に知事に頼まれたからではありません。大家敏志が言ってきた、そして私が忖度したということですので。』というところのようなのです。

このような、現職知事はなにもしていないという話と、国会議員が動いたから調査費は復活したんだ、それで重要な国会議員と関係が良好なのは自民党推薦の候補者だよね、という話をやりたかったのが今回の塚田一郎氏の発言のようです。
ちなみに現職知事は何もしていない、という説は産経新聞が取り上げています。
さすが自民党に都合のいいストーリーには敏感のようで・・・

【検証・小川県政】(3)関門新ルート 麻生氏への陳情から「逃避」
関係者があきれた事件は、平成30年12月21日に起きた。

 自民推薦で新人の武内和久氏(47)の陣営関係者は「選挙に関係ない。我々は有権者と毎日触れあうだけだ」と打ち消しに必死だ。小川洋氏(69)は現職として下関北九州道路推進の立場。国直轄の調査移行を実績として訴えてきただけに、陣営関係者は「下関北九州道路の問題を政争の具にするなど許されない。我々は正々堂々と政策として(必要な道路だと)訴えていく」と話した。
 一方で、共産推薦の新人、篠田清氏(70)は「(武内氏と小川氏の)2人とも下関北九州道路の推進を表明している。忖度政治のもとで、大型開発に熱中するような県政でいいのか」と保守系の両候補を矛先に批判を強めている。

忖度発言、地元統一選に影響 アピール材料が一転、疑惑の的に – 毎日新聞

この発言にて、塚田一郎氏は副大臣を辞任することになりましたが、この発言にて道路の必要性を正確に測りづらくなった、必要性以外の論点が強くなってしまったという点で、辞任だけで済まないような影響を残してしまったのではないか、と思わざるを得ません。

時事ドットコム

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