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自己責任が選ばれる理由の一端

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現在『「体を売る彼女たち」の事情――自立と依存の性風俗』という書籍を読んでいます。

この本を書いている坂爪真吾氏は、正直逆張り根性が強く見えて苦手なのですが、その苦手意識を超えるくらい、貴重な情報が手に入りそうだったので購入しました。
そして、この記事を書いている段階では、まだ第一章を読み終えて、それ以降はざっくりと読んだだけの状態なのですが、この段階で、すごい「それなぁ」と言いたくなる記述にいくつか出会ったので、それを記事に残しておきます。

ざっくりというと「社会保障がなぜ貧困者を捕捉できないのか?」ということについて、この本を読むことで、いくつか見えてくるものがあった、ということです。

社会福祉のスティグマという、「落ちこぼれや弱者、可哀想という烙印を押されるのが嫌だから、社会福祉につながるのを拒む」という仕組みはよく言及されていると思いますが、今回は、それだけではないよね?ということに触れます。

では、スティグマ以外に何が、社会福祉への接続を阻害しているか、ここで触れるのは「自己決定(選択肢)の不足」と「信頼関係の欠如」についてです。

自己決定(選択肢)の不足

社会的排除の研究を参照すると、「恥」とか「失敗の烙印」というスティグマが「その人らしさを喪失」させていく、という流れがあるようです。

この「その人らしさの喪失」というのは、ものすごい重要な概念だと思うのです。

先日、安田純平氏を巡って自己責任論争のようなものが発生しました。
この自己責任という概念を見る際に重要な作用として、自ら責任を取ることを引き受けることで、他人からの干渉を減らすことができて、自己決定の幅を広げることが出来る、という点があるように私には思います。
だからこそ、安田純平氏自身「紛争地に行く以上は自己責任。自分自身に起こることは自業自得だと思っている」とすべてを引き受けようとしたのだと思うのです。
(一方、問題となる自己責任論は、責任を引き受けるかどうかの自由を、他人により束縛する行為です。この自己責任論、結局は社会無責任論、もしくは他者に無責任に言及する論だったりします。)

烙印を押されなかったとしても、公的な社会福祉につながるということは、ケースワーカーとの連絡をしなければいけないなどの一定の法的束縛が存在してしまう可能性が非常に高いわけです。

そうなると、自由の領域は狭まることとなり、生活の中で取れる可能性のある選択肢が、(短期的には)狭まることとなります。

その可能性の減少に耐えられない人は、生活保護よりも、より大きいリスクを取ってでも、少しでも自由を確保できそうな方向に動いていくのだろうと思うのです。

信頼関係の欠如

この話と自己決定はつながっているように私は思うのですが、人って、信頼できないものとつながろうとしませんよね?

そういう信頼できないものとでも関係をもたないといけない、というのが社会ではあると思うのですが、そういう場合、出来る限り、浅い関係にとどめたいと思うのが人間だと思うんです。

しかし、社会福祉となると、けっこうガッツリと距離を近づけないとメリットが得られないように思うんです。
しかも「余計なお世話」を覚悟したりしないといけなかったりもするじゃないですか(偏見の可能性が高いとは思いますが)

そういう信頼の不在というリスクを避ける・軽減化する、という考えは、僕自身がとても強固に抱いているものなのですが、この本に出てくる人たちからも、そういう考え方が読み取れるんです。

信頼できない存在と関わっても逃げられるような自由があるような状態を確保したい。

そういう気持ちが社会福祉とつながらない方向に作用するのではないでしょうか?

最後に

これらのことは容易に解消できるとは思えません。

冒頭で紹介した書籍の後半に『「助け合い」の果てに』『共助の中で生み出される落とし穴』という見出しがあるのですが、様々な理由から走った先でようやく助け合えたとしても、それはそれでとてつもない困難が待ち受けているのです。

そう考えると、社会福祉の設計を、マイナス面を考慮して、より人々が繋がりやすい制度に設計し直し続けることは、社会の責任であるように思うのです。

しかし、片山さつきのような人間が大臣になってしまうような世の中では、そんな気運は起き得ないとしか思えませんし、そういう社会からの自己防衛として、自己責任を自ら背負わざるを得なくなる人が増えるという負の連鎖が起こっていることは、常に頭の片隅においておかないといけない、と思うのです。

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