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労働問題

「いわゆる単純労働」と「単純労働」と「ブルーカラー」〜介護を例に〜

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今回の外国人労働者受け入れ拡大について、以下のような反応が起こっています。

こういう報道やらを受けて、介護は単純労働ではない!という反応が起こっているのですが、そこら編について整理してみたいと思います。

在留資格の観点から

まず、今回の入管法改正の発端は菅官房長官に介護周りで要望が届いたことが発端であるということは先日書いた記事で引用したニュースに書いてありました。

外国人労働者の人生を気軽に借りようとする政府

「介護施設を開設しても介護福祉士不足で使えない。なんとかしてほしい」これがスタートなのです。

その後、他業種の労働力不足も判明し、それらを一括で解消しようという動きが結実したのが、今回の入管法改正案なのです。

その上で、今年の6月なのですが、今回の改正案につながる文言が、骨太の改革に掲載されたときに、介護福祉士協会が、介護を単純労働の中に含めるような報道に対して抗議を行っています。

やはり介護職・介護士の地位向上を!

上記の記事の中にその抗議の文面などが掲載されているのですが、ここで注目してほしいのは、単純労働ではないという証明に以下の事実が引っ張られていることです。

介護福祉士取得が要件とされている在留資格の「介護」が、専門的・技術的分野の在留資格に位置づいていること

この在留資格の建付けが「単純労働」とそうでないものを左右する要因となっているのです。

このブログの記事「外国人労働者の人生を気軽に借りようとする政府」でも数字を引用している厚労省の「外国人雇用状況の届出状況」でも、外国人労働者の受け入れを許可されている業種に就労するための在留資格を「専門的・技術的分野の在留資格」とまとめています。

つまり、現状認められている職種は「専門的・技術的分野」であるから、それ以外は禁止されていることになっている「単純労働」ということなのでであろう、というのが現行の受け止めであって、それが報道での「単純労働」という言葉の使われ方なのだろうと思うのです。

また、この単純労働と在留資格の関係では、単純労働の穴埋めのために技能実習制度が活用されてしまっているという実態があると言われていて、その技能実習制度に在留資格新設と同時期に介護が採用されているのも、いわゆる単純労働との関係が複雑になっている一要素だと思います。
(このブログの記事「外国人労働者の人生を気軽に借りようとする政府」でもコンビニ業界が技能実習制度に入れてもらえるように要望していたことなどの技能実習制度と在留資格新設の関係についての朝日新聞の報道を引用しています。)

介護業界における働き手としての外国人の活用策

このような背景を知ると、個人的には報道をみて「介護は単純労働なのか」という議論を始めると、ちょっと違う方向に議論が転んでしまうのではないか?と思うのです。

少なくとも在留資格を扱うときの単純労働という言葉に当てはまる基準は、普通と違う基準で使われているというのを前提にしたほうがいいように思います。

ここまで色々と書いてきましたが、それをまとめる解説がブリタニカ百科事典に書いてありましたので引用します

一般的には特別な職業訓練を受けていない未熟練労働者を指すが,外国人労働者の受け入れ問題について議論されるときは,「いわゆる単純労働者」という言葉が用いられている。単純労働者とは入国を認めうる専門的な技術・知識を有する労働者との対比で用いられており,無技能・未熟練労働者のみならず,販売員,家事サービス職業,技能工などある程度の技術・技能・知識等を有する労働者を含むものである。第6次雇用対策基本計画に示されたように,外国人労働者のうち「いわゆる単純労働者」の受け入れは,受け入れに伴う日本の経済社会に及ぼす広範囲の影響にかんがみ十分慎重に対応することとしており,現在認められていない。しかし最近人手不足問題が深刻化してきている折から,こうした単純労働者の導入をめぐる議論も盛んになされている。

単純労働者

ちなみに、政府答弁によると、骨太の方針時点では単純労働者の受け入れは目的ではないという見解です。

そういうことにするための日本語と技能の試験導入なのでしょうし、政府見解はこの時と今回の制度への見解では何ら変わらないであろうと思います。

「単純労働“者”」と「単純労働」

先程引用したブリタニカと政府答弁を見て、あれ?と気になった方も多いと思いますが、ブリタニカの項目名は単純労働“者”です。

また、今回の改正でも「「相当程度の知識または経験を要する技能」を持つ外国人に就労可能な「特定技能1号」を与える。最長5年の技能実習を修了するか、技能と日本語能力の試験に合格すれば資格を得られる。(by日経新聞)」とされているように、労働者に技能があるかどうか、という観点で就労資格付与を語っていますし、答弁も単純労働者についての答弁ですから、今回の制度改正で政府が行っているのは「単純労働者」であるかどうかの判定基準の提示です。

一方で、「単純労働」という言葉が使われる際には職種がどういう職種かで語られています。

今回、政府は「人材不足の業種を認める」と語っているので、業種の選別基準に、本来は「単純労働かどうか」は関係ないはずです。
それが「単純労働受け入れ」と報じられる理由は、先程述べたように、すでに単純労働ではない業種では在留資格を創設して、人材受入を一定程度行っているという前提があります。

その上で人材不足業種について制度を新設する、という話になっているので、「専門的・技術的分野の在留資格」の外にある「単純労働」の職種に外国人労働者を本格的に受け入れる、という報じ方をしているわけです。

「いわゆる単純労働」ではない「単純労働」とブルーカラーの混線

ここまでは先程まで書いたことを繰り返しているだけなのですが、一方で、在留資格議論ではない「単純労働」という話について、曖昧な根拠しかないのですが、単純労働とブルーカラーという概念の混線や誤解が混ざった結果が「介護は単純労働といわれている」という話につながるのかな、と。

ブルーカラーは、いわゆる3Kというような「きつい (Kitsui) 」「汚い (Kitanai) 」「危険 (Kiken) 」が当てはまるものだ、という印象があると思います。

この定義と(Wikipediaに『単純労働の従事者を指して、「ブルーカラー」と呼ばれる。』と書かれてしまうくらいに)単純労働が混ざってしまっているのが問題なのではないでしょうか。

ブルーカラーが行う労働というのは、確かに3Kではあるのですが、ブルーカラーだとしても熟練労働、つまり日本語の単純労働にはそぐわない労働内容も含まれているはずなのです。

この、熟練かどうかという単純労働の基準と3Kかどうかというブルーカラーの基準みたいなものが混ざった結果、3Kである=単純労働、みたいな誤認識が生まれているような気がするんです。単純労働と3Kってなにも関係ないと思うんですが。

そこの混線を解くのが、労働を考える際には重要なのだろうと思いますし、単純労働という言葉を使う際には、このような混線を意識したほうが良いのだろうと思いました。

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