興味乱舞に引きこもれず

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外国人労働者の人生を気軽に借りようとする政府

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政権が、外国人労働者を増やすための出入国管理法改正を行おうとして、それに対して注目が集まっています。

この法整備を行うきっかけは、菅官房長官であったという話を時事通信は伝えています。

政府関係者によると、発端は菅義偉官房長官に地元から「人材難で介護施設を開けない」との訴えが寄せられたことだった。調べてみると、他業種の人手不足も判明。長官は首相に相談し、2人で来年4月の新制度スタートの流れを固めた。準備作業が本格化したのは昨年夏ごろだ。
 改正案を審査した自民党法務部会は結論ありきだった。先月22日の議論開始時点で、党は26日の了承を目指す日程を早々に公表。出席者からなぜ急ぐのかただされると、法務省は「首相と官房長官から来年4月と発言があった」と苦しい受け答えを余儀なくされた。

官邸主導で見切り発車=新在留資格、制度生煮え-国会審議に不透明感

この話、前にどこかで読んだ覚えがあったのですが、調べてみたら、今年8月の朝日新聞でした。

政権の方針転換を主導したのは、急激に進む人手不足に危機感を抱いた菅義偉官房長官だった。
 「介護施設を開設しても介護福祉士不足で使えない。なんとかしてほしい」
 昨秋、菅氏の元に民間の介護事業者からこんな声が寄せられた。調査を指示すると、介護施設が人材不足で定員の8割程度までしか受け入れられないという結果が出た。厚生労働省の需給推計では、2025年度には、介護人材は約34万人不足すると見込む。
 少子高齢化も踏まえ、早期に対策を講じた方がいい――。菅氏が安倍晋三首相に掛け合うと、首相は「移民政策はだめだけど」と釘を刺しつつ、「必要なものはやっていこう」と応じた。

移民ダメなのに働く外国人は拡大へ 陰に菅長官の危機感

この朝日新聞の有料記事には、他にも参考になる情報が書かれています。

一方、日本社会は既に、外国人労働者なしでは成り立たなくなっている。厚労省の統計では、17年に日本で働く外国人は過去最高の約127万9千人。5年間で約60万人増え、日本の就業者の約2%にあたる。もっとも、正式に労働者として受け入れられたのは高度な専門人材とされる約24万人のみ。その他は留学生のアルバイト(約26万人)や「国際貢献」を名目にした技能実習生(約26万人)らが多くを占める。

この文章のソースは厚労省の外国人雇用状況の届出状況についての発表だと思われますが、ここに書かれていない数字に永住者や「定住者」、日本人の配偶者等が存在し、それが約46万人います。
この方々も外国人とするのが妥当なのかは個人的には判断しかねますが、その人達も含めた数字としてみても、約半数は留学生のアルバイトと技能実習生が締めていることとなります。
(ここには出てこない「不法就労」とされてしまうようなケースの労働者も多数いるであろうことも付記しておきます)

もし、今回の法整備がこの事実を認め、それらの労働をカバーする法案を出してくるというのならまだ理解できるものの、今回の法律がカバーする領域はそうなるのか不透明であるという状況です。(ちなみに、産経新聞が報じている立憲民主党の対案は、正確な内容なのかはわかりませんが、『制度変更に伴い、現行の外国人技能実習制度は段階的に廃止する。』形のようです)

それを判断するには、政府の想定する規模や、資格の対象となる業種や職種がはっきりしないといけないのですが、それらについては正式には成立後に閣議決定されるという建付けになっているので、成立してみるまでどの業種が対象になるのかわからないのです。
(もっとも正式に「技能実習制度=労働力確保」の構図が認められない以上、制度が移行を想定してそうな形になっていても、そういうことにはなかなかならないとは思いますが)

朝日新聞の記事で注目される記述は他にもあり、それは経産省が前のめりになっているという点です。

「外国人技能実習制度とどう違うのか」「求められる技術レベルや日本語能力の水準は」。説明会では、制度の仕組みの説明を求める質問が出た。経産省の担当者は「法務省から中身の説明がまだない」「(骨太に)書いてある以上のことは分からない」などとあいまいな答えに終始する一方、「骨太の方針に業種は明記されておらず、要件さえ満たせば製造業も対象になる」と力説した。前のめりな経産省にせかされるように、人手不足に悩む業界は対象業種に加えてもらおうと慌ただしく動き出している。

経産省が旗を振りつつ、細部は法務省に投げているというのがこの制度の実情だということと、外国人技能実習生の制度との違いが聞かれているなど、外国人技能実習生が労働者受け入れ政策として機能していて、その制度と今回の制度が近い距離にあると認識されていることがわかります。
(それ以外に、朝日新聞の記事の中には。対象業種になろうと動いている例が書かれているのですが、それも「現在技能実習生を受け入れているけど本当は色々と任せられる労働者を受け入れたい業界」と「技能実習の対象業種になりたかったコンビニ業界(と外食業界)」だったりします)

その一方総理大臣は、今回の新制度について以下のように述べたそうです。

「外国人労働者を増やすのはニーズがあるからだ。人手不足が経済成長を阻害する大きな要因になり始めている」。安倍晋三首相は2日の衆院予算委員会で、新在留資格創設の意義を強調した。

官邸主導で見切り発車=新在留資格、制度生煮え-国会審議に不透明感

経産省が動いていることも含め、全ては「経済成長」というもののために動かしていることがはっきりと分かります。

それに関連して、近頃、安倍総理応援団と化している和田政宗議員が「一定期間外国人労働者の力を借りる」という表現を使っているのは、興味深いことだと思います。

この記事で和田政宗議員は「その国でずっと滞在することを前提に家族も含めて生活の根拠を移す者」が移民だと述べています。

しかし、ずっと滞在しなくても、家族がいなくても、数年住んでる土地を「第二の故郷」と呼ぶことがあるように、数年の生活でも、地域や人に様々な影響を及ぼす可能性があることは十分に想定できるのではないでしょうか?
そのように人の人生が左右される可能性があることについて、全て「関係者の自己責任」に投げつけているかのような動きに見えるのは、非常に不安です。

また、「力を借りる」という貸借関係があるような表現をしていることが興味深いと思います。
「借りる」ならば、「返す」物があるはずです。
それについて和田政宗議員はこう述べています。

今回は、依然所得の低いアジアの人々に日本で稼いでもらい、技能水準もより上げてもらって帰国いただこうというものです。

これでは結局、技能実習制度の建前と同じ趣旨であるようにしか読めないのは気のせいでしょうか?
(正確に言うと「稼げる技能実習制度」でしょうか)

国家・政府という大きな主体になったつもりで考えてしまうと、その程度の貸借関係だという認識で入国させても別に問題がないと言えるようになるのかもしれません。

でも、私はそうは思えないのです。

例えば、借りるものを「労働者の力を借りる」と述べることで、まるで労働力だけを借りているかのように錯覚してしまいますが、住む場所を一時的に移すことも考えると、借りているものは労働力だけではなく、その人の人生そのものなのではないでしょうか?

だからこそ、返す内容に、その人の今後の人生に大きく関わるであろう「技能水準」というものが入り込んでくるのではないでしょうか?

そう考えると、人の人生を借りるということについて、軽く考えすぎなのではないでしょうか?

(個人的には、そういう思考の欠如が、難民などへの入管行政にも影響しているように思うのです)



人の人生のような、すごい貴重なものを借りると考えれば、借りる際にきちんと借りたもの(人の人生)を扱えるような体制を整えたりするでしょう。

そういう整備を行う責任について「移民ではない」という文言を駆使することで、国家として人生を借りる当事者になることを回避することで、責任回避しているという点が、今回の一番の問題点なのではないでしょうか?

そういう政府が回避した責任は「現場」と言われる地域行政等々が拾わざるを得なくなったりします。それどころか個人責任で収集をつけないといけない事態もありえるでしょう。

そういう過度な責任を負った「現場」は、ときに責任回避のために暴走を始めます。

個人的には、外国人医療費の事例が、そういう暴走に近づいている傾向を示しているのではないか?と思います。

こうした姿勢は、医療現場の声を踏まえたものだ。病院関係者の間では、母国で病気になってから留学ビザで来日して国保に加入したケースや、企業の従業員が入る被用者保険で、扶養家族として10人以上も病院に連れてきたりするなど、「不正が疑われる事例」を勉強会で共有する動きもある。

「医療保険を外国人が不正利用」裏付けないまま対策先行:朝日新聞デジタル 

暴走を誘発しないためにも、政府は責任を回避せず、認めることを認め、相応の責任を負うべきなのです。

それを認めずに、気軽に労働者の人生を借りるような姿勢が見えるような制度には、反対せざるを得ないでしょう。

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