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特定枠考察

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昨日の衆議院本会議にて、参議院の定数を6増し、比例に特定枠を導入する法案が可決成立した。

与党は、次回の参議院に向けてできるだけ早く周知するためなどという理由から、ほとんど審議時間を確保せずに通したのだが、今回の特定枠について改めて考えてみたい。

改めて、今回の特定枠関係の改正について説明すると、というものは、参議院の現行制度である、あらかじめ当選する順位を決めずに名簿に候補者を掲載する非拘束名簿式比例代表制に、一部、衆議院のように当選する順位を決めて載せることができる枠(特定枠)を導入することができる、というものである。
導入できる範囲は「一部」となっているが、実態としては一議席でも非拘束名簿式の状態になっていれば、それ以外は特定枠にすることができる、とのこと。

参議院の非拘束名簿式比例代表制のように、候補者の名前だけを書いて投票することが可能である状態を経験していると勘違いをしてしまいそうになるが、そもそも、比例制度というものは、基本的に政党に票を投じて、その票数に応じて政党に議席が分配されている制度である。
参議院の非拘束名簿式比例代表制の場合、名簿に掲載されている候補者名のみで投票ができてしまうが、それも本来は「〇〇党 〇〇」と書いていると考えなくてはいけない。(実際の処理としても政党に1票と個人票1票となる)
そして、あくまでも個人票の部分は政党枠内での当選順位を決めるためだけに使われる。
なので、いくら個人票が多かったとしても、政党に議席が分配されない限りは、その個人票は無駄なものとなる。それが比例代表制度というものだ。
個人票の多寡と、当落についてリンクさせてしまうことは、比例代表という制度を採用していることを前提にしないと、おかしな議論になるだろう。

ここまでで書いたことからもわかるように、衆議院の拘束名簿式比例代表制と、参議院の非拘束名簿式比例代表制の違いは、政党に分配された議席を誰に渡すのか、ということを予め政党が順位づけして決めるか、個人への投票によって有権者が決めるのか、という違いである。
そして、特定枠という制度は、衆議院の拘束名簿のように、政党が確保した議席を誰に割り振るかを、一部(実質すきなだけ)、政党が予め決めておくことを可能とする制度である。

なぜ、自民党がこのような制度を導入することにこだわるかと言うと、2016年の参議院選挙の結果に原因がある。
2016年の参議院選挙は、鳥取・島根、徳島・高知という2つの合区が決められてから初めて行われた選挙である。
自民党は、この際に、高知選挙区からでる予定であった候補者と、鳥取選挙区から出る予定であった候補者を、比例区に回すという調整を行っている。
この際、自民党は普段はカナ順で掲載している候補者名簿にて、合区対象の候補者を先頭に掲載するという配慮まで行っている。

そして、高知の候補者は無事当選したものの、鳥取の候補者は以下のような結果になった。

このように、惜しくも落選してしまったのだ。
今回の特定枠というのは、自民党としては、この事態が再び起きてしまうことを避けたかったのだろう。

また、この出来事の当事者である、島根県を地盤とする竹下氏の派閥が参議院を握っているということも、今回の審議の強硬姿勢に拍車をかけたようだ。

このように制度の提案者である自民党は特定枠の使いみちが決まっている。
一方、その他の政党や、自民党もその他の使い道ができるか、と考えてみると、相当厳しいのではないか、と考えざるを得ないように思う。

過去の衆議院の比例を参照すると、公明党と共産党は各ブロックの名簿にて、党内身分での順位付けが明確になされているようで、それを考えると、一見今回の特定枠も使いやすいように見える、
しかし、衆議院のブロックと違って、参議院は全国区であることを考えると、場合によっては地区などの余計な優劣をつけることにつながりかねず、それを考えると現行のように個人票を集中させて順位付けをする形でやったほうが、余計な揉める材料を増やさずに済むのではないかと思われ、特に利用するメリットはなさろうである。

一方、その他の使い方として、争点などになる社会問題についての専門家や活動家を特定枠に載せることにより、政党としてのその問題に対する姿勢を強調する、という使いみちも可能である。
これは、参議院が(自称)良識の府であることからしても、ある程度望ましい使い方であると個人的には思う。

しかし、このような使い方をするための、党内での了承取り付けは、一定の議席を絶対に確保できるという見通しが無いと困難であるように思う。
また、少しでも異論を残したまま、特定枠をこのように利用して選挙に突入し、負けてしまった場合、この特定枠に入った候補者への風当たりは相当厳しいものとなる。
(希望の党の井上一徳議員も、党内での立場は厳しいものだっただろう)

また、特定枠を利用した際の説明責任は相当重いものになるだろう。
納得されなければ、「えこひいき」や「お金、もしくは票で枠を買った」などの誹りを受ける可能性が高い。
(希望の党の井上一徳議員や、2012年衆院選の日本維新の会の一部候補者にそういう噂が立っていた記憶がある)

そう考えると、相当強力に党員の手綱を握れていて、かつ有権者に対し相当説得力のある執行部でないと特定枠の活用は困難であるように思う。

このようにほとんどの政党にとって使いづらそうな制度が、一党の意思によって導入されてしまった、というのが今回の特定枠だ。

次回参議院選挙にて、この制度が自民党以外に使われるのかは不明だが、その利用状況などを見て、改めてそのまま残しておいていいのか議論しないといけない制度だと今のところは考える。

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