本日、党首討論が行われましたが、それに関する報道を見ると、現在議論を深めないインセンティブがどこにあるのか、が明白になるように思います。
持ち時間が一番長い立憲民主党の枝野代表ですら、わずか3問3答で終わってしまった。これは野党分裂の影響で一党の持ち時間が減ったこと、さらに安倍首相の答弁が長いことなどが理由だが、議論は深まらなかったと言わざるをえない。
このように、議論が深まらなかった原因として、野党分裂による時間不足と、総理の答弁が長いことが、日本テレビの青山記者によって挙げられてます。
ちなみに枝野幸男党首の党首討論について、実際に時間を測った結果のツイートがありました。
発言時間を計算しました。さっきの党首討論、枝野さんの所は
枝野代表 6分37秒
安倍首相11分48秒
でした。— 円転 (@enten01) May 30, 2018
このように枝野幸男党首の時間の約三分の二は総理答弁で費やしたようです。
一方、フジテレビが党首討論の見通しについて書いた記事では、このような記述があります。
これに対抗する安倍首相の作戦について、官邸関係者は「挑発にのらないことだ。これまで通りの答弁をすればいい話だ」と冷静さを保ち、新たな言質を与えないことが大事だと強調している。
フジテレビの見立てと、日本テレビなどの結果を合わせると、やはりほとんどの時間がこれまでの答弁を繰り替す答弁で費やされたのだろうと思います。
このように、少なくとも現在、総理側は「これまでの答弁しかしない」ことを作戦としています。
これは要するに議論を深めないことが与党の作戦であると言えるのではないでしょうか。
実際、国会の様子を見聞していると、これまでのいくつもの審議でもそのような姿勢があり、議論を深めないことが与党にとって武器となっていることは否めないと思います。
それを受けて、野党がどんな判断をするのかは色々あります。
与党が議論を深めない戦線に残って、与党がどんな姿勢であろうが無理矢理にでも議論を進めようと仕掛け続けるのか
与党が議論を深めないことを受けて別な戦線に移動して打開を図るのか
そして、その判断に対する評価も様々なされて当然だと思います。
ちなみに今回の党首討論では、国民民主党の玉木雄一郎代表が、別な戦線に移動する作戦を採ったようで、その結果、以下のような反応があったようです。
首相周辺からは「玉木氏の森友・加計にこだわらない姿勢は良かった」と評価する声が上がった。
これを「与党は健全な議論がしたいと思ってる証拠」と見るのか「玉木雄一郎代表の動き方は与党に都合のいい動き方」と見るのか「これでまともな論戦を国会に取り戻せる」と見るのか、他にも色々見方はあると思います。
どうも『議論を深めないことは、与党の作戦であり、武器になっている』ことが前提にない評価が多々あるように思い、それはちょっとどうなのかな、と言うのが個人的な思いとしてある、という話がしたかったのです。
そこを振り返っても、結局
『そういう武器を得たのは、野党が発端であり、野党が不甲斐ないからである。だから野党が悪い。』
と考える人も多いでしょうが。
ただ、この話以外にも、そもそも与野党の動きは、与野党相互作用であり与野党の連鎖反応であることが多いのに、いろんな方面で、単純に一箇所に原因を求めすぎている場合が多いように感じます。
政治関連だけではなく、いろんな方面で、もっと全体の構造を見ていく、ということを踏まえていく必要があるように、最近何度も思います。
(そして、構造を見て「だめだこりゃ」と頭を抱えることがよくあるのですが…)
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