2018/03/13 予算委員会の中央公聴会にて、渡邉美樹議員が過労死遺族会の方に対し質問していたという話

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https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180314-00007567-bengocom-soci
http://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/304859
http://ch.nicovideo.jp/misa/blomaga/ar1449394

森友関連の決裁文書が改ざんされていた問題でグチャグチャしている中、自民·公明·維新·無所属クラブの4会派にて、参議院予算委員会の中央公聴会が行われました。

全体で言うと3テーマで公述が行われたようですが、その中でも一番最初に行われた、働き方改革に関連する公述について、渡辺美樹参議院議員が質問したことが話題になりました。

正直言って、自民党の自由度にびっくりしたと言いますか、野党がいないからと言って気を抜いていたのかな?とか、参議院で働き方改革について興味あるやつ他にいないのか?とか思ったんです。
そう思った上で、参議院予算委員会の中央公聴会を見てみました。

働き方改革関連の公述人は二人です。
一人は日本総研理事の山田久さん。

山田 久|研究員紹介|日本総研
日本総合研究所は、システムインテグレーション・コンサルティング・シンクタンクの3つの機能を有する総合情報サービス企業です。

そして、もう一方が、今回話題になった『東京過労死を考える家族の会』の代表の中原のり子さんです。

全国過労死を考える家族の会
日本から過労死をなくすために

公聴会はまず、公述人の公述からスタートします。

山田久さんは、裁量労働制も高度プロフェッショナル制度も、制度の趣旨自体は問題なく、必要なものではある、としています。
しかし、どちらの制度も『対象者の範囲の限定』をしっかりと行うこと、そして、過重労働防止措置や健康確保の措置がしっかりと行われることが大事であって、そこが不十分なのではないか、という内容の公述であったと理解しています。

特に裁量労働制では、仕事量の裁量がないケースが多く、仕事量をコントロールする仕組みがきちんと構築できているのかをしっかりと見ていかないといけない、としていました。
また、長時間労働が習慣化している場合もあるので、健康管理措置を明確化する、具体的には、インターバル規制や上限規制について、個々に当てはめていく必要があるのではないか、と言うことを述べていたように思います。

また、高度プロフェッショナル制度については、裁量労働制よりも厳格な適性運用管理が必要であるとし、特に『転職という対抗手段を持っている』個人で対等に立てる労働者に限り適用されるようにすべきであるとしていました。
また、相対的に裁量などに疑念がある場合には、インターバル規制や上限規制も必要では?とのことでした。

また、日本の働き方の実態は、まだ本当に裁量労働制や高度プロフェッショナル制度に当てはまる人の割合は少ないのではないか?と言う事と、集団的労使関係が形だけになっていて、充分にワークしていないことも問題で、それを再建する必要があるだろう、ということでした。

一方、中原さんは、高度プロフェッショナル制度も裁量労働制とセットで取り下げてほしいと要望。

また、残業時間上限について、もっと厳格化しないと逆効果になるのでは?という懸念。
残業時間上限の例外となる職種が本当は一番残業時間の規制をしないといけない職種なのではないか?という懸念。
これらの法制が、過労死認定に悪影響をもたらさないかという懸念などの指摘がありました。

ちなみに高度プロフェッショナル制度について、過労死を促進する制度を制定してしまうのは、過労死対策を約束した、過労死遺族への裏切りではないか?という趣旨の強い言葉もありました。

そして、最後に、途中で号泣しつつお父さんを過労死でなくした小学生の詩を読み上げ(この報道に出ている詩です)、過労死をなくす議論を国会でしてほしいということを要求して、公述は終わりました。
(公述中、感情の昂ぶりが多くあったのですが、その後の国会議員とのやりとりでは、とても冷静な意見を述べていたので、過労死防止への強い願いがあったことと、国会という場にとても緊張していたんだろうなぁ、と)

そして、話題の渡邉美樹議員の質問です。

これは偏見ありきの感想なのでしょうが、私が一番驚いたのは質問の冒頭の渡邉美樹議員の表情でした。

正直、多少いたたまれない空気といいますか、非常に難しい空気でした。
そこで、質問に出てきた渡邉美樹議員の表情はこちらです。

スマートフォンでスクショしたので、画像が荒くて分かりづらいかもしれませんが、笑みを浮かべていました。
これは個人の癖としていたたまれない空気になるとどうしても笑ってしまうのかもしれませんし、公述人の緊張を解すための笑顔なのかもしれませんし、そこは断定できません。

しかし、私は、偏見かもしれませんが、この、笑みを浮かべながら、「過労死を無くしたいという中原さんに私も共鳴します。私も10年前に愛する社員を亡くしている経営者でございます。過労死のない社会をなんとしても実現したいと、そのように私も考えております」と述べる様から、どうしても軽薄さを感じ取ってしまいました。

そして、渡邉美樹議員は第一の質問として、「働く」という概念について問い始めます。

渡邉美樹議員は、国会の議論を聞いていると、働くことが悪いことのように聞こえてしまう。できることなら、週休七日が人間にとって一番幸せであると述べているように聞こえてくるそうです。
しかし、渡邉美樹議員は、働くことは悪いことではなく、生きがいであり自己実現であり、また、働くことでたくさんのありがとうを集めて成長していく、大事なものだ、と主張します。
また、日本には人しか資源がないのに、国を挙げて『働くな、働くな』と言っていては、これから増える高齢者を守れない、とも主張した上で、二人に、『働く』とは?を質問しました。

日本総研の山田さんは、働くことにはいろいろな意義があるが、その中には、社会参画がある。働かないと社会から隔離される可能性が出てきてしまう。
『共に働く』ということが重要であり、そういう部分の再認識が必要なのではないか?ということを述べていました。
また、過労死について『健全な組織なら過労死も避けられるのではないか』という趣旨の発言もありました。(渡邉美樹議員の質問に、この返答ということに、個人的には皮肉めいた趣旨も感じてしまいます)

一方、中原さんは、冒頭の公述内容にあった『小学生の詩』の中に出てきた「仕事のための命じゃなくて、命のための仕事だと僕は伝えたい」という言葉にあるように、命のための労働であることが前提である、と。
その上で、自らも薬剤師として働いていて、患者さんと様々なコミュニケーションをとっているという経験から、社会参画という観点もある。
そして、労働のすべてを否定しているわけではなく、当人が喜びをもってイキイキするための仕事であるべきで、苦しいだけやノルマだけというのは違うのではないか、ということを主張していることを答えていました。

それを受けて、渡邉美樹議員は、中原さんの過労により自死してしまったご主人は、仕事を生きがいだとしていたことに注目し、なぜ、生きがいであった仕事が苦痛に変わってしまったのか、それはどうやったら防げたのかを教えてほしい。という質問を中原さんに投げかけます。

中原さんは、小児科医だった夫が働いていた職場がスタッフ不足に陥っていたことを指摘します。
亡くなる直前、スタッフが6人から3人に減ってしまっていたということなのです。
一方、小児科医は、仕事が過酷であったりし、なかなか新しい人員を確保することが困難である、と。(医学生の志願段階では多いらしいのですが、研修などを受ける流れで別な方面に行ってしまうことも多いようです)
その結果、自然と長時間労働を強いられたのが一番大きいだろう、と述べていました。
この点に関して、当直が労基法適用除外にあたる可能性があることなどのシステムが関係してくることもあるということも述べ、制度を整備してほしい旨の主張をしていました。

渡邉美樹議員は、話題を、高度プロフェッショナル制度について、に切り替えます。
一応『安易な導入は反対』とし、徹底した、健康措置を前提とし、成果と労働時間が比例しないものに適用することを前提としないといけないと、していました。
その上で、高度プロフェッショナル制度は会社にとってはどうでもいいと思うが、労働者にとってはよいことなのではないか、と渡邉美樹議員は述べています。(なら、ホワイトカラーエグゼンプションの時代から、なぜ経団連などの経営者の団体が推進しているのでしょうか?)

また、この制度は本人に力量があり、それを上司が認め、その上で本人の希望があることも大前提であると。
その中であれば、時間に縛られないで成果を約束した仕事が行われ、それが、労働者の生活の充実や生産性向上につながり、結果として労働時間も減って、みんなハッピーになるのではないか?と述べています。

その上で、高度プロフェッショナル制度について、全否定せずに、前提条件ありで導入を。この制度を望んでいる方もいる。として、どういう条件なら高度プロフェッショナル制度導入を検討できるのかについて二人に問うています。

日本総研の山田さんは、高度プロフェッショナル制度には2つの問題があって、一つは制度が想定している人にだけ適用するにはどうすればいいか?という問題で、もう一つは、長時間働いてしまう習慣があり、それが過重労働につながってしまう問題である、といいます。

適用の問題は、転職可能であることや能力が高いことという部分が大事で、原則の部分は大丈夫だと思うが、具体的な部分について、法案成立した後に労政審で話し合うことになっているので、そこで精査する必要がある、とのことでした。
長時間労働については、労働者か仕事の量についての裁量性があるかをきちんと見る必要があるということです。そこの実態は個々人で違うので、ケースによって健康管理措置が必要になるだろう、としています。

一方の中原さんは、インターバル規制会社を導入できているのは日本企業の約3%だけ(根拠は、厚労省が平成二十七年に調査した際の2.2%でしょうか?)、労働組合組織率も低い(中原さんはここで「労使協定も18%を切っている」と述べていましたが、それにあう数字が見当たらず、一方、労働組合組織率は17%台になっているので、そういう趣旨だろうと思われます。労組組織率、過去最低17.1%:朝日新聞デジタル )、そのような状況では、あの手この手の手当がないと導入は難しいと思う、ということでした。

これで渡邉美樹議員の質問は終了でした。

この後の質問では、公明党の熊野議員は当日の公述内容を踏まえつつ、一方、日本維新の片山大介議員は事前に公述人の文献を読むなどし、どちらも公述人の主張に沿うような、どういう規制をすべきかとか、規制の実効性についてなどの、質問が多かったように思いますし、無所属クラブの薬師寺議員も産業医の経験を踏まえ、労働者になる前に義務教育時点からワーキングルールを学ぶことができるかなどの質問を行うなど、いかに労働者を守るかという観点が強かったように思われます。
(日本維新の片山大介議員がジャーナリストの経験を踏まえて、労働者の自己申告で労働時間把握する仕組みは機能するのか疑問視していたのが、個人的には印象的でした。)

一方、渡邉美樹議員の質問だけは、そういう問題意識が軽薄であったように思えました。
制度の前提条件についての言及があまりにも軽かったように私には思えてしまいました。

このような質問者が出てくるという点で、自民党として、本当に働き方改革のきちんとした制度設計をまともにやる気があるのか、疑問視してしまいます。

追記
議事録から一部削除だそうです。

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